悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第2章 何故、わたくしを!?

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 王子様とすれ違うのが怖い。無視されて傷つくのが目に見えてる。だから彼を見ない様に心掛けていた。でも凄く気になる。もしミーアと仲良く歩いてるのを見かけたら嫉妬で狂いそうになるだろう。出来れば院には行きたくないけど、行かなくてはならない理由があった。取り巻きの暴走を止める為だ。

「ミーアをあのまま野放しになさるのですか⁈」

「もうほっときなさい。アイツは皇室の推薦で来てるから王子も無碍むげにはできないのでしょう」

 ミーアがわたくしに微笑んだ事が余程気に入らない様ね。でもその時、ポピーだったから全く実感ないけど…。

 ともあれ、取り巻きをなだめるのに一苦労だ。あと僅かでわたくしたちは卒業する。それまでミーアとは何事もなく過ごさなければならない。これ以上、王子様に嫌われたくはない。

 そんなある日の事。

「シェリー様、卒業パーティーの件でございますが、リハーサルの日程が決まりました」

 秘密のお部屋でポピーからパーティー入場の際、慣例となっている王子様のエスコートについて、事前打ち合わせの必要性を問われた。

「えーっ⁈ 打ち合わせー⁈ …まあ、そうだろうねえ。わたくし婚約者だし、エスコートされて当然だわね」

 はたしてエスコートされるのかな…? それに今の状況で王子様とお話するなんてムリ! 絶対ムリムリ!

「あー、でも彼とお話するのは面倒臭いわ。アンタが確認しといて頂戴」

「ーーはい⁈」

「いいわね! 明日、わたくしの代わりに王子と打ち合わせするのよ!」

 そう言い放って逃げる様にお部屋を後にした。ここは用務員のポピーに取り次いで貰うしかない。きっとわたくしは足が竦んでお話にならないに決まってるから。それに。そう思うと不安で胸が張り裂けそうだった。だから、ある決心をしたーー。


 ***


「お父様、お話がございます」

 わたくしはお母様やライラの目を盗んで、お屋敷の執務室をノックする。もうお父様に助けを求めるしかない。それほど精神的に追い詰められていた。

「どうした、シェリー。珍しいな」

「小耳に挟んだのですが…、王子様がわたくしと婚約破棄したいと仰ってるのです!」

「何だと⁈」

 わたくしは感情的になって、お父様の前で涙を流した。

「おいおい、もしかしてあの事か?」

「えっ?」

「先日、王子が私のところへ来て色々言ってたよ」

「な、何を⁈」

 お父様に王子様はこう発言したらしい。卒業パーティーで慣例となっている、皇族の婚約者に対するエスコートをやらない。これは自分たちだけが特別扱いされるのは控えたいとの意向だと。でも言い訳にしか聞こえなかった。

 そしてわたくしへの苦情。院内でお酒を飲んで、編入生を執拗に虐めていると…。

「も、申し訳ありません。わたくしはミーアに嫉妬してました。お酒を飲まなければ精神的に耐えられなかったのです…」

「酒を飲むなとは言わん。が、院内で飲むのはけしからんな」

「はい」

「それと編入生への虐めだが…まあ、もうするな。咎めはせん。しかし皇室にも困ったもんだ。突然、編入させろと言われてな。調べたら何の特技もないだった。やんわり断りを入れたが押し通されたのだ。察するに…いや、憶測なので言うまい」

「もしかして王子様のですか?」

「かもしれんな…これまでの例もある。だがな、お前は婚約者だ。正室だ。あんな平民など公妾にもなれん。気にする価値もない」

「ではお父様、婚約破棄と言うのは?」

「ありえない。王子の一存では決められないし、今更そんな事言ったら私が黙ってはいない。心配するな」

「…それが聞けて良かったです」

 わたくしは卒業したら王子様と結婚する。その事には変わりない安堵感がある。一方で「王子様に愛人が居てわたくしは嫌われてる」と言う現実に耐えられるか、天秤にかけてもその自信はなかった…。















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