婚約破棄された悪役令嬢は、階段から突き落とされ記憶を失う。気がつけば召使いに〜。

鼻血の親分

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第22話 お前こそ身分をわきまえよっ!!

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「ご婚約おめでとうございます。心よりお喜び申し上げます」


 会場はざわつき、全員が主役のシンクリア王子やモモシャリーよりもわたくしに注目する。そしてお給仕の召使いを指揮していたサラーニャが、鬼の形相で怒鳴りつけてきた。

「お、お前ーっ! どのツラ下げて来たんだ! それに何だ、そのド派手なドレスは⁈ 奴隷如きが身分をわきまえよっ!」

 ズカズカズカと迫り来るサラーニャに対し、団員らがわたくしの周りを固め護衛する。

「あらあらお騒がしいこと。女官さん、わたくしも同級生として婚約パーティーに参った次第だけどー?」

 わたくしは招待状を差し出した。

「あっ、それは捨てろと命じただろうが!」
「命じた? 公爵家に対し女官如きが何を命じるのかしら。お前こそ身分をわきまえよっ!」
「なっ……何を言ってるんだ⁈ お前はゼアス家の召使いだろ。それを忘れたか⁈」
「召使いごっこは終わったのよ、サラーニャ!」
「終わった⁈ 何を勝手なことを⁈」
「そこの王子に婚約破棄されたわたくしの罪は解かれたと言ってるのよ」

 ここで婚約パーティーを突然台無しにされたモモシャリーが、堪らず口を挟んだ。

「ララコスティ、どういう訳で騎士団を巻き込んでこのパーティーを滅茶苦茶にしようとなさってるのか理解できないけど、貴女って本当は記憶喪失じゃなかったのね? あれは演技だったんだ。流石は悪役令嬢ね!」
「演技ですって⁈ ふざけないでくださる⁈ わたくしはこの女官に階段から突き落とされて記憶を失ったのよ? あれは立派な傷害罪ですわ!」

 と、護衛をしていた団員らが今度はサラーニャを取り囲んだ。

「ち、ちょっと待て……証拠があるのか⁈」

 すると突如、大勢の騎士団がパーティー会場へ押し寄せて来た。

「──証拠なら私が目撃している!」

 タカフミィーニさま、お待ちしてましたー!

「な、何て仰々しい……」
「騎士団長の私が見ていたのだ。サラーニャ、お前を傷害罪で連行する!」
「あ、あー……」

 抵抗する間もなくサラーニャは押し倒され、後ろ手に縄を括られる。

 ふん、ざまあだわ! ホントは1発殴ってやりたかったけどねー!

「待て、タカフミィーニ! 王子である私の前で一体何のマネだ、無礼であろう!」
「これは王子さま、大変失礼致しました。婚約パーティーを邪魔する気は毛頭ございません。私はただ犯罪者を捕まえに来ただけです。どうか、盛大にお祝いなさってください」
「いいや、許さん、許さんぞ! サラーニャを即刻解放せよ! これは私の命令だ!」
「……いくら貴方の命令でも従いかねます」
「この私の命を聞けぬと申すのか⁈ お前こそ反逆罪で捕らえるぞ!」
「シンクリア王子さま、ララコスティも私たちの婚約パーティーを害した罪で捕らえるべきかと……」
「そうだな、モモシャリーの言う通りだ。おい、コイツらを確保しろ!」

 しかし騎士団は誰1人として王子の言うことを聞かない。

「何をしている⁈ 次期国王である私の命だぞ!」
「次期国王? シンクリア、誰が決めたのだ?」

 ──その御方はあまりにも突然現れた。

 あっ、あれは国王陛下……! 陛下がおいでになられたわ! な、何ということでしょう!

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