学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第4部 カント決戦編

第41話 発表!総選挙中間報告!

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 後漢学園中のテレビ・スピーカーより聞き覚えのある女性の声が響き渡る。

「生徒会総選挙中間発表!司会はお馴染み校内美少女ランキングの産みの親、サジがお送りいたします!」

 テレビに写ったのは橙色のショートカットをした元気のいい女生徒・サジだ。

「そんなランキング作ってたんですか?」

「解説はもちろんこの人、リューキョー学園長です!」

 サジの隣に立つのはスーツに、髪をサイドアップにまとめた若い女性・リューキョー学園長だ。

「もうリューキョーの名前でいくんですね…」

 リューキョー学園長のため息混じりの言葉を無視してサジはさっさと本題に移る。

「さて、先日ついにリョフが敗れ、選挙戦初日と勢力図が大きく変わりつつあります。

 ここでは改めて現在の勢力図を見直してみたいと思います」

 画面にはデカデカと、薄紫のウェーブがかった長い髪、小鳥の髪飾りに、胸元のリボン、白いマントを羽織ったスタイルのいい美少女の画像が映し出された。


「まずはこの人、エンショウ。

 今も変わらず最有力候補!現在、コウソンサンと対立中ですが、着々と勢力を拡大。

 北校舎をほぼ勢力圏に収め、生徒会長代理も務める。今最も生徒会長に近い女生徒!」

「生徒会長代理ですが、実際に生徒会を運営しているのはソウソウさんですし、どう影響するのでしょうか」

 サジの紹介にリューキョーがコメントをつける。

「では、先ほど学園長の話にも出ましたソウソウを紹介していきましょう。

 現在、中央校舎を中心に勢力を拡大中。生徒会を事実上運営しており、彼女もまた最有力候補と言えるかもしれません。エンショウとの対決はあるのでしょうか?」

 画面にはエンショウに代わって、赤黒い髪と眼、胸元を大きく開け、ヘソ出し、ミニスカートと、その白く透き通る肌の露出がやたら多い美少女がデカデカと映し出された。


「ソウソウさんは生徒会の運営をよくやってくれていると思います。あの格好はどうかと思いますが」

「この調子でパッパと行きましょう」

 次に映し出されたのは、濃い紫の長い髪に、エンショウの顔を幼くしたような小柄な美少女・エンジュツだった。

「では、続いてエンジュツの紹介です。

 中央校舎から東校舎にかけて勢力を持つ有力候補者の一角でしたが、ソウソウやリョフに敗れ、急速に勢力が縮小。現在、力を蓄えているということですが、巻き返しはあるのでしょうか?」

「有力候補者でも、判断を誤れば勢力が一気に縮小するというのも怖い話ですねー」

 続いて画面には、大きなツインテールに三日月の髪飾りを付け、ミニスカートにブーツを履いた細身の美少女が、何故かファイティングポーズで映し出された。


「お次はソンサク。

 中小部活を制圧し、一気に勢力を伸ばした東校舎の雄。

 前回の解説では兄ソンケンの影に隠れて無名でしたが、一気に名を上げました」

「場合によっては無名でも一気に有力候補者になれるのもこの学園の選挙戦の醍醐味でしょうか」

 画像の絵は再び変わり、薄い水色の長い髪を三つ編みのおさげにした、アンダーリムの眼鏡に、長めのスカートの美少女となった。


「続いてはリュウヒョウ。

 南校舎で文化部連合を結成。勢力自体は拡大していますが、他勢力との戦いにはあまり積極的ではありませんね」

「何も戦いばかりが選挙戦ではありませんからね。…普通はそうなんですけど」

「一方、西校舎の最大勢力であった美術部の部長はリュウエンからリュウショウに代替わりしました。アート部のチョウロと対立中みたいですが、そこまで大規模な戦いにはなってませんね。

 まあ、状況としてはそれぞれの校舎毎に代表者が決まり始めているところですね。これが更にどうまとまっていくのか楽しみです」

 北校舎はエンショウ、中央校舎はソウソウ、東校舎はソンサク、南校舎はリュウヒョウ、西校舎はリュウショウを中心にまとまりつつあった。だが、エンジュツ、コウソンサン、チョウロといった対立勢力は残っており、統一にはまだまだ時間が必要であった。

 一通り勢力の紹介を終えた後、画面にはある男子生徒が映し出された。

「では、最後に特別枠としてリュービを紹介しましょう。

 彼はエンショウ、ソウソウ、エンジュツ、リョフと転戦し、名が知られるようになりました。

 一時、文芸部部長でしたが、今はソウソウの元にいるようです。もしかしたら生徒会役員ぐらいなるかもしれませんね」


 その顔にリューキョーは見覚えがあった。かつてリカク・カクシの襲撃に助けに入り、介抱してくれた生徒であった。

「おや、彼は…そうですか、彼はリュービというのですね」

「では、皆さん。引き続き選挙戦頑張っていきましょう!」



 放送終了したテレビの前で、背が低めの、頭に中華風のお団子カバーを二つつけた美少女が、八重歯を見せながら大きくガッツポーズをとった。

「よーし、遂にアニキの名前が呼ばれるようになったぜ!」

 その横に立つ背が高めの、腰まで届く長く美しい黒髪を翻すお嬢様風の美少女も頷きながら答える。

「まあ、兄さんの功績を思えば当然です。

 …ソウソウさんの部下扱いなのが気に入りませんが…」

 お団子ヘアーの女の子がチョーヒ、長い黒髪の女の子がカンウ、共にリュービと兄妹の誓いを行い、数々の激戦を潜り抜けてきた二人だ。



 一方、三兄妹の長兄・リュービは臨時生徒会室に招かれていた。

「リュービ、ヨウホウ捕獲の功績により君を美化委員長に仮任命する。これを受けて欲しい」

 事実上の生徒会を運営するソウソウはリュービに委員会バッジを手渡そうとする。

「いや、でも俺は美化委員がどういう仕事かも知らないし…」

「何、建前上のものだ。あまり大きく受け止めなくていい。

 部活や委員に所属していない者があまり多くの人を率いて動くというのは格好がつかないからな。今は生徒会の一員として動いてもらいたいための仮処置だ。

 将来的には何かしら委員長か役員を務め、学園運営に協力して欲しいと思っている。最も私が会長になればの話だが」

「わかった、それなら慎んで美化委員長を受けるよ」

 リュービはソウソウより委員会バッジを受け取った。

「それと逃亡していたリカク・カクシだが、先ほど捕らえられたと報告が入った。

 リョフ戦の時にカンセンも捕らえたし、これにより、生徒会襲撃事件の犯人及び加担者はほぼ一掃されたと見ていいだろう」

 トータクの乱以降の懸念事項であったリカク・カクシはソウソウの部下に倒されたそうだ。

 カンウ・チョーヒの二人は委員会バッジを受け取った俺の下に寄ってきた。

「ここまま行けばアニキが生徒会役員になったりするかもな」

「これもカンウ・チョーヒやみんなのお陰でだよ」

「兄さん…

 そうですね。このお返しは将来的に返してもらいましょうか。

 例えば卒業しても一緒に…」

 カンウが言葉を続けようとしたところに、一人の女生徒が割って入ってきた。

「リュービ、すげぇじゃねぇか。さすが、アタイの見込んだ男だぜ」

 金髪ロングにピンクの特効服、胸にサラシを巻いた目付きの鋭い女生徒…それはかつて黄巾の乱の首謀者、チョウ三姉弟の次姉・チョウホウだった。


「チョウホウ!なんでここに?」

「西涼高校への交換学生は期間限定ですからね。先日、戻ってきました」

 後ろの声に振り返ると、そこに現れたのは、地面に届きそうな白い髪に、道士服を羽織った小学生のように小さな女の子…チョウ三姉弟の長姉・チョウカクだった。


 彼女たちに末弟・チョウリョウを加えたチョウ三姉弟は、かつて黄巾党を率い、学園と対立。後に和解し、西涼高校への交換生徒として学園を離れていた。

「チョウカク!トータクは早々に帰ったのに、結構長かったね」

「あれはトータクさんが騒ぎ起こして強制送還されただけですし、本来はこのぐらいまでいるはずなんですよ。

 今は黄巾党の大部分はソウソウに編入されましたので、私たちもソウソウ軍に加わることにしました」

「アタイらも同じソウソウ軍だからな、リュービ、これから一緒にいれるな!」

「チョウホウ、顔近い…」

 チョウホウが満面の笑みでこちらに寄ってくる。

「チョウホウさん、兄さんに近付きすぎじゃないですか」

 カンウが不機嫌そうにチョウホウに釘を差す。

「アタイとリュービは恋人同士なんだから、くっついたって別にいいじゃねぇか!」

「誰が恋人ですか!」

「そうか、まだ恋人じゃなかったか。

 まあ、そのうちなるんだからいいじゃねーか」

 チョウホウはそのまま俺の腕に抱きついてきた。

「「よくない!」」

 カンウ・チョーヒが怒鳴って、俺からチョウホウを引き離す。

「完全にあなたの勝手な妄想じゃないですか!」

「お前がアニキの恋人なんて百年早いぜ!」

「なんだと!」

 カンウ・チョーヒとチョウホウが睨み合い一触即発の状況になってしまった。どうしたものかとあたふたしてると、チョウカクが隣に寄って話しかけてきた。

「すまない、リュービ殿。君たちの噂は西涼でも有名でね。トータクを倒し、リョフを服従させたとね。

 妹は君の恋人だと吹聴して、西涼で大きな顔をしていたからね。どうもその気になってしまったようだ」

「まあ、実害がある訳じゃないですし…」

「でも妹の好意は本物だ。もし君が良ければ受け入れてあげて欲しい」

「え、いや、その…」

「まあ、姉がお節介を焼くようなことではなかったね」

 チョウカクはくすりと笑って歩きだした。



 校内・中庭~

「ここにおられましたか」

 ポニーテールに男装姿の女生徒、ソウソウ軍参謀・カクカが、一人教室より離れて空を見つめる赤黒い髪と眼を持つ彼女たちの主君・ソウソウの下に向かって歩み寄る。


「カクカか、少し考え事をしていてな」

「エンショウですか?」

「そうだ。お互い勢力を拡大していけば、必ずぶつかる。そしてエンショウはそれを望んでいる。

 あいつは今や最大勢力となった。私の戦力で果たして勝てるだろうか。

 今や私にはお前たちがいる。私の敗北は私一人の問題ではない」

「そんな弱気な言葉、ソウソウ様に似合いませんよ」

 カクカはソウソウの真正面に立つとその場でひざまずいた。

「ソウソウ様とエンショウを比べた時、勝る点が十あります。

 エンショウは時勢に疎く、ソウソウ様は時勢に乗っている、これが一。

 生徒会を運営し義を掲げでいる、これが二、人材の活用、これが三、決断力の有無、これが四、用兵の巧みさ、これが五。

 その他、治・徳・仁・明・法全てにおいてソウソウ様が勝っております」

「そこまで誉められると照れ臭いな」

 ソウソウは微笑み、カクカの頬に手を添えた。

「我らが生徒会運営するにあたり、多くの人材が集まりました。

 エンカン、ジョエキ、カキ、ショーヨー、リュウフク、シバロウ、トキ、リツウ、チングン、トシュウ、チョウゲン…皆、ソウソウ様こそ時期会長に相応しいと見込んで加わっているのです」

「ふふ…少し弱気になっていたようだ。

 しかし、私の運命は最早私でさえ止めることはできない。それはエンショウも同じ事」

 ソウソウはカクカの頬より手を離すと、空を見上げた。

「それが英雄というものです」

「…カクカ、リュービをどう思う」

「前に言った様に希代きだいのタラシです。

 しかし…運命さえタラシ込む力をも持った人物かと」

「運命さえ…か。

 かつてテイイクは言った。カンウ・チョーヒと引き離し、飼い殺しにせよと。それも考えねばならぬかも知れんな」
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