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奪え
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「ごめんね。私、貴方との未来がどうしても見えないんだ」
あまりに突然の出来事だった。お互い別々の大学に通っていて、会う機会が少ないとは言え僕達の仲は良好だと、勝手にそう思っていた。
「今までありがと。さよなら」
好きな人から言われるありがとうが、こんなに悲しくて切ないだなんて。俺は知らなかった。
これが彼女と交わした最後の会話。それからと言うもの、俺は何をやっても上手くいかなくて。いや、クニハルの言う通り、もうずっと前から何も出来なくなっていた。
そんな過去に、今もなお俺を蝕み続ける過去に、終止符を。
「そうだ、罪悪感にとらわれる必要は無い。君は幸福屋で色々な人を幸せにしたんだ……今度は自分が幸せになる番さ」
聞き慣れたクニハルの声が俺を後押しする。だが、いつまで経っても俺は拳銃を構える事が出来なかった。
こんな事で、終止符を打てるのか?今、ここで二人を殺したとする。それで一体何かが解決するのか?人二人を殺しておいて、罪悪感を感じるなって方が無理な話だ。結局、後に残るのは醜い犯罪者となった自分だけじゃないか。
「駄目だ……出来ないよ、俺には」
「何故?撃てば全てが終わるのに?」
「きっと……きっとあいつは今、幸せなんだ。俺と一緒にいた時なんかより遥かに……人生を楽しんでる。そんな幸せを……俺は奪いたくない」
「奪えば自分が幸せになれるのに?」
「自分が幸せになる為に、人を不幸にする必要があるのなら、俺は一生不幸者で構わない」
しばらくの沈黙の後、クニハルが重い口を開いた。
「はぁ……君は何も分かっていないな。君は既に、他の人から幸せを奪っていると言うのに」
「え……?」
「忘れたのか?君は夢の中でそれに気づいたハズだよ。さっき見た夢の内容を思い出してみな」
さっき見た夢とは、冴えないサラリーマンがヤクザの男にシメられていた夢の事だろう。
俺は大川と言う男を幸せにする為に、ギャンブルで大勝利を収めさせた。だが、その対戦相手となったサラリーマンは、大川の代わりに多額の借金を背負うことになってしまった。
確かそんな様な内容だった。
「君が幸福屋として介入しなければ、あの勝負は発生しなかった。幸せ者を作ろうとして、全然関係の無い人に不幸を押し付けてしまった罪悪感に、君は胸を痛めていたね。あのサラリーマン、これからどうやって生きていくんだろうね?」
「……!いや、あれは夢で……」
「思い描いた事を実現させる。それが幸福屋の力だ。夢であろうと何であろうと、頭の中で想像した事は全て現実になる。あの時、君は紛れもなくサラリーマンの幸せを奪った」
要はそう言う事さ。クニハルが続ける。
「幸せを感じる為には、誰かを不幸にしなければならない。誰かから幸福を奪わないといけない。世の中はそう言う風に出来てるんだよ。勝者がいれば敗者がいるし、夢を叶える為には、同じ夢を持った人間を蹴落とさなければならない様にね」
「……」
「自分の為に人の幸せを奪う事は悪なんかじゃ無い。現代社会を生き抜く上で必要なスキルであり、当然の事なんだ」
「当然の……事?」
「さぁ、君も本当はもう楽になりたいだろ?幸せになりたいだろ?それで良いんだよ蜂谷君……自分に嘘はつかないって約束したばかりじゃ無いか……」
気持ちが、少し揺らいだ。
あまりに突然の出来事だった。お互い別々の大学に通っていて、会う機会が少ないとは言え僕達の仲は良好だと、勝手にそう思っていた。
「今までありがと。さよなら」
好きな人から言われるありがとうが、こんなに悲しくて切ないだなんて。俺は知らなかった。
これが彼女と交わした最後の会話。それからと言うもの、俺は何をやっても上手くいかなくて。いや、クニハルの言う通り、もうずっと前から何も出来なくなっていた。
そんな過去に、今もなお俺を蝕み続ける過去に、終止符を。
「そうだ、罪悪感にとらわれる必要は無い。君は幸福屋で色々な人を幸せにしたんだ……今度は自分が幸せになる番さ」
聞き慣れたクニハルの声が俺を後押しする。だが、いつまで経っても俺は拳銃を構える事が出来なかった。
こんな事で、終止符を打てるのか?今、ここで二人を殺したとする。それで一体何かが解決するのか?人二人を殺しておいて、罪悪感を感じるなって方が無理な話だ。結局、後に残るのは醜い犯罪者となった自分だけじゃないか。
「駄目だ……出来ないよ、俺には」
「何故?撃てば全てが終わるのに?」
「きっと……きっとあいつは今、幸せなんだ。俺と一緒にいた時なんかより遥かに……人生を楽しんでる。そんな幸せを……俺は奪いたくない」
「奪えば自分が幸せになれるのに?」
「自分が幸せになる為に、人を不幸にする必要があるのなら、俺は一生不幸者で構わない」
しばらくの沈黙の後、クニハルが重い口を開いた。
「はぁ……君は何も分かっていないな。君は既に、他の人から幸せを奪っていると言うのに」
「え……?」
「忘れたのか?君は夢の中でそれに気づいたハズだよ。さっき見た夢の内容を思い出してみな」
さっき見た夢とは、冴えないサラリーマンがヤクザの男にシメられていた夢の事だろう。
俺は大川と言う男を幸せにする為に、ギャンブルで大勝利を収めさせた。だが、その対戦相手となったサラリーマンは、大川の代わりに多額の借金を背負うことになってしまった。
確かそんな様な内容だった。
「君が幸福屋として介入しなければ、あの勝負は発生しなかった。幸せ者を作ろうとして、全然関係の無い人に不幸を押し付けてしまった罪悪感に、君は胸を痛めていたね。あのサラリーマン、これからどうやって生きていくんだろうね?」
「……!いや、あれは夢で……」
「思い描いた事を実現させる。それが幸福屋の力だ。夢であろうと何であろうと、頭の中で想像した事は全て現実になる。あの時、君は紛れもなくサラリーマンの幸せを奪った」
要はそう言う事さ。クニハルが続ける。
「幸せを感じる為には、誰かを不幸にしなければならない。誰かから幸福を奪わないといけない。世の中はそう言う風に出来てるんだよ。勝者がいれば敗者がいるし、夢を叶える為には、同じ夢を持った人間を蹴落とさなければならない様にね」
「……」
「自分の為に人の幸せを奪う事は悪なんかじゃ無い。現代社会を生き抜く上で必要なスキルであり、当然の事なんだ」
「当然の……事?」
「さぁ、君も本当はもう楽になりたいだろ?幸せになりたいだろ?それで良いんだよ蜂谷君……自分に嘘はつかないって約束したばかりじゃ無いか……」
気持ちが、少し揺らいだ。
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