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転機
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「卒業試験……?」
「あぁそうさ。あの女と過ごした五年間、別れてからの一年間。その全ての記憶にサヨナラしよう」
「何言ってんだよ……お前」
言ってる意味がよく分からない。俺に六年分の記憶を失えと言うのか?そんな事出来る訳無いだろ。
そうだ、出来る訳無い。そう思いつつも、俺は得体の知れない恐怖心を感じていた。何故だか、今のクニハルから警戒を解く事は出来なかった。
「僕はね、これ以上見たく無いんだよ」
ゆっくりと、クニハルが話し始めた。
「あの女の姿も、自分の人生が、つまり君の人生が狂っていくのも」
「俺の人生が狂う……?」
「自覚が無いなら教えてやるよ。元々、君の人生は素晴らしいものだったんだ」
元々?元々っていつだ?充実した人生なんて、一度でも過ごした事があったか?
「中学時代が君のピークだった。成績は常に上位、部活でもレギュラーを務めていたね。おまけに人間関係も良好で、仲の良い友達が沢山いただろ?」
「あ……」
「自分の事ながら感心したよ。将来性に満ち溢れた、素晴らしい子供だ!ってね」
一つ、クニハルは大きなため息を吐いた。
「それが……どうだ?あの女と付き合いだしてから、君は彼女の事ばかり考えるようになった。その結果、君は勉強をやらなくなった。部活の練習にも身が入らなくなった」
「そんなの……お前に関係無いだろ……」
「本来なら、もっと偏差値の高い高校に進学出来たはずなのに、それも出来なくなった。大学のレベルを大幅に落とす必要があった。明るかった筈の未来が無くなった」
「関係無いだろって……」
「こんな風に、僕らはあの女に人生を壊された。結局、僕らは利用されてただけなんだよ」
「利用されてた?どう言う事だよ!」
「アイツはステータスが欲しかっただけさ。高スペックの男と付き合っているっていうステータスがね。全く、当時中学生とは思えない性格の悪さだよ」
哀れむような、冷たい目をしながらクニハルが言った。
「そこには愛なんて存在しない。消耗品の様に僕らを扱って、使い物にならなくなったから捨てられた。それだけさ。彼女にとって僕らは使い古した雑巾に過ぎないんだよ」
「そんな訳無いだろ!優衣はそんな奴じゃない!」
「そんな奴だから捨てられたんだろ。じゃあ聞くけど、アイツに一度でも好きだと言われた事があったか?」
答えはノーだった。昔の記憶を必死に掘り起こしてみても、思い当たる節は見当たらなかった。五年も一緒にいた筈なのに。
「もし、君があの時アイツと付き合っていなかったら?僕らは今よりもずっと良い大学に通えていた筈だ。将来は医者か?弁護士か?想像するだけでゾクゾクするよ」
「……」
「そんな僕らの未来を!将来を!アイツは潰してしまった!僕は絶対にあの女を許さない……!このままでは済まさない。そこで、丁度良い復讐方法を思いついたんだ。なんだと思う?」
なあに、簡単な話さ。首を横に振った俺に対してクニハルはこう言った。
「殺せばいいんだよ。死ねばそれで終わりだ」
「なっ……!お前それ本気で……!」
「僕はいつだって本気さ、まぁそう怖がるな。初めに会った時にも言った通り、僕は君を救いに来たんだ。僕の言う通りにしていれば、必ず君は幸せになれる……」
どこからともなく、クニハルは拳銃を取り出した。慣れた手つきで、ジャラジャラと音をたてながら玉を装填していく。
「弾は二発だけ込めておく。女の頭と、その彼氏の頭……いや、もう旦那と呼ぶべきか?それぞれ一発ずつだ」
そう言うと、クニハルは拳銃を投げてよこした。
俺は、それを落としそうになりながらも受け止めた。初めて握った拳銃は、氷の様に冷たく感じた。
「さぁ、これも運命だ。ここから人生を変えていこう……!」
「クニハル……俺は……」
「予備は無いぞ、しっかり狙えよ。狙って狙って……撃ち抜いて……君自身の手でこの悪循環を断ち切るんだ」
クニハルの目は、まるで拳銃の様に冷えていた。
「あぁそうさ。あの女と過ごした五年間、別れてからの一年間。その全ての記憶にサヨナラしよう」
「何言ってんだよ……お前」
言ってる意味がよく分からない。俺に六年分の記憶を失えと言うのか?そんな事出来る訳無いだろ。
そうだ、出来る訳無い。そう思いつつも、俺は得体の知れない恐怖心を感じていた。何故だか、今のクニハルから警戒を解く事は出来なかった。
「僕はね、これ以上見たく無いんだよ」
ゆっくりと、クニハルが話し始めた。
「あの女の姿も、自分の人生が、つまり君の人生が狂っていくのも」
「俺の人生が狂う……?」
「自覚が無いなら教えてやるよ。元々、君の人生は素晴らしいものだったんだ」
元々?元々っていつだ?充実した人生なんて、一度でも過ごした事があったか?
「中学時代が君のピークだった。成績は常に上位、部活でもレギュラーを務めていたね。おまけに人間関係も良好で、仲の良い友達が沢山いただろ?」
「あ……」
「自分の事ながら感心したよ。将来性に満ち溢れた、素晴らしい子供だ!ってね」
一つ、クニハルは大きなため息を吐いた。
「それが……どうだ?あの女と付き合いだしてから、君は彼女の事ばかり考えるようになった。その結果、君は勉強をやらなくなった。部活の練習にも身が入らなくなった」
「そんなの……お前に関係無いだろ……」
「本来なら、もっと偏差値の高い高校に進学出来たはずなのに、それも出来なくなった。大学のレベルを大幅に落とす必要があった。明るかった筈の未来が無くなった」
「関係無いだろって……」
「こんな風に、僕らはあの女に人生を壊された。結局、僕らは利用されてただけなんだよ」
「利用されてた?どう言う事だよ!」
「アイツはステータスが欲しかっただけさ。高スペックの男と付き合っているっていうステータスがね。全く、当時中学生とは思えない性格の悪さだよ」
哀れむような、冷たい目をしながらクニハルが言った。
「そこには愛なんて存在しない。消耗品の様に僕らを扱って、使い物にならなくなったから捨てられた。それだけさ。彼女にとって僕らは使い古した雑巾に過ぎないんだよ」
「そんな訳無いだろ!優衣はそんな奴じゃない!」
「そんな奴だから捨てられたんだろ。じゃあ聞くけど、アイツに一度でも好きだと言われた事があったか?」
答えはノーだった。昔の記憶を必死に掘り起こしてみても、思い当たる節は見当たらなかった。五年も一緒にいた筈なのに。
「もし、君があの時アイツと付き合っていなかったら?僕らは今よりもずっと良い大学に通えていた筈だ。将来は医者か?弁護士か?想像するだけでゾクゾクするよ」
「……」
「そんな僕らの未来を!将来を!アイツは潰してしまった!僕は絶対にあの女を許さない……!このままでは済まさない。そこで、丁度良い復讐方法を思いついたんだ。なんだと思う?」
なあに、簡単な話さ。首を横に振った俺に対してクニハルはこう言った。
「殺せばいいんだよ。死ねばそれで終わりだ」
「なっ……!お前それ本気で……!」
「僕はいつだって本気さ、まぁそう怖がるな。初めに会った時にも言った通り、僕は君を救いに来たんだ。僕の言う通りにしていれば、必ず君は幸せになれる……」
どこからともなく、クニハルは拳銃を取り出した。慣れた手つきで、ジャラジャラと音をたてながら玉を装填していく。
「弾は二発だけ込めておく。女の頭と、その彼氏の頭……いや、もう旦那と呼ぶべきか?それぞれ一発ずつだ」
そう言うと、クニハルは拳銃を投げてよこした。
俺は、それを落としそうになりながらも受け止めた。初めて握った拳銃は、氷の様に冷たく感じた。
「さぁ、これも運命だ。ここから人生を変えていこう……!」
「クニハル……俺は……」
「予備は無いぞ、しっかり狙えよ。狙って狙って……撃ち抜いて……君自身の手でこの悪循環を断ち切るんだ」
クニハルの目は、まるで拳銃の様に冷えていた。
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