【完結】大魔術師は庶民の味方です

枇杷水月

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第15話 エロ系美男子VS彫刻級美男子のマウント-2

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「……アンドレ王子殿下、エクトル卿、こんにちは。まさか、ここでお会いできるとは思っておらず、驚きました。ようこそ、ミュリエル薬店へ」

「君の噂を聞いて、どうしているのかと気になって来てみたんだ。とてもいい店じゃないか」

 誰が訪ねて来たのか気がついたミュリエルが、目を丸くして驚いている姿を可愛いと思い、驚かせることに成功したアンドレは、満足そうに笑った。

「ありがとうございます。皆に支えられ、充実した日々を過ごしております」

 工房からフィンが顔を出した。「ミュリエルさん、急患ですか?」

「いいえ、以前お世話になった方が、店の噂を聞きつけ、訪ねてくださったのです。アンドレ様とエクトル様です」

 フィンがアンドレに会うのは、この一度きりだろうし、アンドレが王子だと、フィンが知る必要はない。フィンは感が良いから、アンドレたちが、商人の格好をしていたとしても、高貴な身分だと、すぐに気が付くだろう。それに、お忍びで来ているのだから、黙っておいたほうがいいだろうと、ミュリエルは判断した。

「初めまして。ここで働いています、フィンです」

 アンドレは、フィンが差し出した手を取って握手した。「初めまして、アンドレです。ミュリエルとは昔馴染みでね、どうしているのか気になって来てみたのですよ。だが、今日は休診日のはずなのに、どうして従業員がいるのかな」

 アンドレは当然、フィンの存在を知っていた。ミュリエルの店で、数日前から若い男が働き出したと、エクトルから報告を受けた後で、いてもたってもいられず、訪ねてきたのだ。

 休診日を狙って来たのは、ミュリエルとゆっくり話がしたかったからだ。

「今日は、ポーションの作り方を教わりに来たんです。薬店で働いているんだから、そのくらいのことは、知っておかなければならないだろうと思ったんです」

「向上心があるとはいいことですね。人は向上心がなければ成長しませんから、いい従業員だなミュリエル」心なしか従業員という言葉に、力が入ってしまったとアンドレは思った。

「アンドレ様、今日は、どのようなご用件でお越しになられたのですか?まさか、ご病気を患っておられるのですか?」

「いいや、私は元気だ。でも、ミュリエルが私を心配してくれるとは嬉しいな。来た甲斐があった。本当にただ、君の顔が見たくて来ただけなんだ」

 さっきから、このアンドレという男——ミュリエルの態度から察するに、貴族なんだろう。ミュリエルは、日頃から誰に対しても、子供のギャビーにも、正しいフランクール語を使うが、アンドレに対しては、殊更に気を遣っているようだ、まるで彼の立場を重んじているかのように。

 彼の言葉の端々に、嫌味を感じる気がしていたが、気のせいではないらしい。最初は貴族特有の、傲慢さの現れかと思ったが、どうやらアンドレは、ミュリエルを好いているようだ。ミュリエルを見つめる目が、そう語っている。

 ただの従業員が休日に、ミュリエルと2人きりで店内にいたんだ、嫉妬しているといったところだろう。

 これはモーリスに報告したいところだが、そうなると、自分も窮地に立たされる。休診日にミュリエルと2人っきりで、何をしていたんだと責められてしまうから、黙っている方が身のためか?まあ、そのうちアンドレも、モーリスと鉢合わせすることになるだろう、熊のような大男のモーリスから、尻尾を巻いて逃げ出すアンドレは、見ものだなとフィンは意地悪く思った。

「アンドレ様のお心遣いに、感謝いたします。私は元気にやっております。アンドレ様も、お変わりないようで、安心いたしました」

 顔が見たいというのは、どういう意味だろうかとミュリエルは考えた。今までアンドレは、ミュリエルの顔など、見ようともしなかったはずなのに。

「よかったら私にも、調合の様子を見せてもらえないか」

「もちろん歓迎いたします。どうぞ狭いところですが」

 なるほど、毒薬でも作っているのではないかと、偵察に来たといったところだろうと、ミュリエルは思った。アンドレはミュリエルが本気で、マドゥレーヌに毒を盛るとでも思っているのだろうか。

 ミュリエルは、アンドレとエクトルを工房に案内した。大人の男が3人も入ると、少し窮屈に感じた。
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