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第15話 エロ系美男子VS彫刻級美男子のマウント-4
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頬を染めたミュリエルから、アンドレは目が離せなかった。
どうしてもっと早くに、こんな表情を見せてくれなかったのかと思ったが、結局のところ、自分に見せてくれた表情ではない、フィンに見せた顔だ。
自分は今まで、ミュリエルを傷つけることしかしてこなかった。ミュリエルが打ち解けてくれなかったのも当然だ。
「この界隈の男たちは、皆アンドレさんに嫉妬しますね。それで、アンドレさんもミュリエルさんを忘れられず、口説きに来たってところですか?」
(ここから一気に畳みかけるぞ、ミュリエルの心を掴もうなんて空想をするのも烏滸がましいと思うほどに、こっぴどく振られるがいい)
「あり得ませんよ、アンドレ様には心に決めた恋人がいるのです」ミュリエルはマジックワンドを取り出し、ポーションに魔力を注いだ。
彼らはポーション作りの見学がしたいと言って来たのに、なぜポーションそっちのけで話をしているのだろうかと、ミュリエルは首を捻った。
「え!じゃあミュリエルさんは、身を引いたってことですか?」
(何と何と、婚約者がいながら恋人を作り、両方手に入れたいだと、こんな不埒な奴は許しておけない!)
「利害が一致したのです。私は薬師になりたかった、アンドレ様は、その恋人と結婚したかった。だから、お互いのために、婚約を解消したのです。そういえば、マドゥレーヌ嬢はお元気ですか」
「——ああ、元気にしている」
マドゥレーヌに、あれほど心惹かれていたというのに、今は心が揺れている。ミュリエルが気になって仕方がない。
毎週、顔を合わせていたときは、鬱陶しいとさえ思っていたのに、ミュリエルに会えなくなってからは、今頃何をしているだろうかと、ことあるごとに考えてしまう。
「婚約の発表がないので、心配しておりました。マドゥレーヌ嬢の身分が、影響しているのでしょうか?」
「そうだな、周囲から反対の声が出ている」
子爵令嬢であるマドゥレーヌを、快く思わない声が、少なからずあるだろうことは、想定していた。
だから、正式に婚約を発表する前に、何かしら手を打たなければならないと考えていたが、そう考えると、アンドレはいつも憂鬱になった。
僅かに微笑んだミュリエルの顔が、頭に浮かんで離れなくなってしまうからだ。
「お辛いでしょうね、アンドレ様もマドゥレーヌ嬢も。お二方が結ばれることを、心から祈っております」
好きな人に言われてショックな言葉ナンバーワン!他の人と幸せになることを祈っているなんて、残酷極まりない。しかもミュリエルが悪気なく、本心からそう思っているというところが、アンドレの心をえぐったなと、敵ながらフィンは同情した。
「悲恋ってやつですね、俺も応援しますよ」
「——それは、どうもありがとう」勝ち誇ったフィンの顔面に、アンドレは一発拳を、お見舞いしてやりたくなった。
「そろそろ、お戻りになりませんと」エクトルがアンドレに耳打ちした。
「そうだな、そろそろ暇するとしよう。フィンさんも、帰った方がいいのではないでしょうか?ミュリエルの仕事の邪魔になってしまうでしょう」
「いえいえ、俺はまだ見習いなので、1日でも早く即戦力になれるよう、勉強しなければなりませんからね、もう少しここにいますよ」
アンドレは、上機嫌そうに見えるフィンを、本格的に殴り倒したくなったが、ここで乱闘騒ぎを起こせば、ミュリエルに迷惑がかかってしまうと思い、どうにか堪えた。気を取り直して、ミュリエルに伝家の宝刀、王子様スマイルで笑いかけた。
「ミュリエル、今日は色々と話せてよかった。また時間を見つけて、様子を見に来させてもらう」
「遠くまで足をお運びくださり、ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください。エクトル様、今度いらした時は、お茶を淹れますので、立ち寄ってください。ケクラン様にも、よろしくお伝えください」
フィンはおや?と思った。ミュリエルはアンドレに対して畏まった対応をしていたが、エクトルに対しては、友人のような態度で接している。というのも、物理的にアンドレとの距離より、エクトルとの距離の方が近い。
「次に来たときは、お茶をご馳走になります」どうやら、アンドレの命令で、こっそりと様子を伺っていたことが、バレているようだと、エクトルは推察した。
十分に注意したつもりだったが、それを上回る人物が、彼女にはついているらしい、自分はまだまだだなと、未熟さを思い知った。
エクトルが敵わないのも当然だ。ミュリエルに情報を渡していたのは、ミュリエルが使役している鳥や鼠たちだからだ。その事実を、エクトルが知ることはない。
アンドレとエクトルは馬車に乗り込み、王城へと向かった。
「ミュリエルは、フィンと打ち解けているのだな。いつもより、よく喋っていたし、笑ってもいた」
「そうですか?」
「そういえば、お前とは普通に話していたのだったか」
「僕は話す機会が多かったですからね、城門から執務室までの間に、よく会話をしていましたよ。質問すれば、必ず答えてくれる方ですから」
「打ち解けていないのは私だけか——マドゥレーヌとも、話をするのか?」
「いいえ、マドゥレーヌ嬢と言葉を交わしたことはありません」
「なぜだ?」
「話しかけても、無視されるからです。僕は嫌われているようです」
「嫌われる理由は?」
「分かりません。私は何もしていませんよ」
エクトルは控えめで、女と揉めるようなタイプではない。なぜマドゥレーヌがエクトルを嫌うのか、アンドレには見当もつかなかった。
どうしてもっと早くに、こんな表情を見せてくれなかったのかと思ったが、結局のところ、自分に見せてくれた表情ではない、フィンに見せた顔だ。
自分は今まで、ミュリエルを傷つけることしかしてこなかった。ミュリエルが打ち解けてくれなかったのも当然だ。
「この界隈の男たちは、皆アンドレさんに嫉妬しますね。それで、アンドレさんもミュリエルさんを忘れられず、口説きに来たってところですか?」
(ここから一気に畳みかけるぞ、ミュリエルの心を掴もうなんて空想をするのも烏滸がましいと思うほどに、こっぴどく振られるがいい)
「あり得ませんよ、アンドレ様には心に決めた恋人がいるのです」ミュリエルはマジックワンドを取り出し、ポーションに魔力を注いだ。
彼らはポーション作りの見学がしたいと言って来たのに、なぜポーションそっちのけで話をしているのだろうかと、ミュリエルは首を捻った。
「え!じゃあミュリエルさんは、身を引いたってことですか?」
(何と何と、婚約者がいながら恋人を作り、両方手に入れたいだと、こんな不埒な奴は許しておけない!)
「利害が一致したのです。私は薬師になりたかった、アンドレ様は、その恋人と結婚したかった。だから、お互いのために、婚約を解消したのです。そういえば、マドゥレーヌ嬢はお元気ですか」
「——ああ、元気にしている」
マドゥレーヌに、あれほど心惹かれていたというのに、今は心が揺れている。ミュリエルが気になって仕方がない。
毎週、顔を合わせていたときは、鬱陶しいとさえ思っていたのに、ミュリエルに会えなくなってからは、今頃何をしているだろうかと、ことあるごとに考えてしまう。
「婚約の発表がないので、心配しておりました。マドゥレーヌ嬢の身分が、影響しているのでしょうか?」
「そうだな、周囲から反対の声が出ている」
子爵令嬢であるマドゥレーヌを、快く思わない声が、少なからずあるだろうことは、想定していた。
だから、正式に婚約を発表する前に、何かしら手を打たなければならないと考えていたが、そう考えると、アンドレはいつも憂鬱になった。
僅かに微笑んだミュリエルの顔が、頭に浮かんで離れなくなってしまうからだ。
「お辛いでしょうね、アンドレ様もマドゥレーヌ嬢も。お二方が結ばれることを、心から祈っております」
好きな人に言われてショックな言葉ナンバーワン!他の人と幸せになることを祈っているなんて、残酷極まりない。しかもミュリエルが悪気なく、本心からそう思っているというところが、アンドレの心をえぐったなと、敵ながらフィンは同情した。
「悲恋ってやつですね、俺も応援しますよ」
「——それは、どうもありがとう」勝ち誇ったフィンの顔面に、アンドレは一発拳を、お見舞いしてやりたくなった。
「そろそろ、お戻りになりませんと」エクトルがアンドレに耳打ちした。
「そうだな、そろそろ暇するとしよう。フィンさんも、帰った方がいいのではないでしょうか?ミュリエルの仕事の邪魔になってしまうでしょう」
「いえいえ、俺はまだ見習いなので、1日でも早く即戦力になれるよう、勉強しなければなりませんからね、もう少しここにいますよ」
アンドレは、上機嫌そうに見えるフィンを、本格的に殴り倒したくなったが、ここで乱闘騒ぎを起こせば、ミュリエルに迷惑がかかってしまうと思い、どうにか堪えた。気を取り直して、ミュリエルに伝家の宝刀、王子様スマイルで笑いかけた。
「ミュリエル、今日は色々と話せてよかった。また時間を見つけて、様子を見に来させてもらう」
「遠くまで足をお運びくださり、ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください。エクトル様、今度いらした時は、お茶を淹れますので、立ち寄ってください。ケクラン様にも、よろしくお伝えください」
フィンはおや?と思った。ミュリエルはアンドレに対して畏まった対応をしていたが、エクトルに対しては、友人のような態度で接している。というのも、物理的にアンドレとの距離より、エクトルとの距離の方が近い。
「次に来たときは、お茶をご馳走になります」どうやら、アンドレの命令で、こっそりと様子を伺っていたことが、バレているようだと、エクトルは推察した。
十分に注意したつもりだったが、それを上回る人物が、彼女にはついているらしい、自分はまだまだだなと、未熟さを思い知った。
エクトルが敵わないのも当然だ。ミュリエルに情報を渡していたのは、ミュリエルが使役している鳥や鼠たちだからだ。その事実を、エクトルが知ることはない。
アンドレとエクトルは馬車に乗り込み、王城へと向かった。
「ミュリエルは、フィンと打ち解けているのだな。いつもより、よく喋っていたし、笑ってもいた」
「そうですか?」
「そういえば、お前とは普通に話していたのだったか」
「僕は話す機会が多かったですからね、城門から執務室までの間に、よく会話をしていましたよ。質問すれば、必ず答えてくれる方ですから」
「打ち解けていないのは私だけか——マドゥレーヌとも、話をするのか?」
「いいえ、マドゥレーヌ嬢と言葉を交わしたことはありません」
「なぜだ?」
「話しかけても、無視されるからです。僕は嫌われているようです」
「嫌われる理由は?」
「分かりません。私は何もしていませんよ」
エクトルは控えめで、女と揉めるようなタイプではない。なぜマドゥレーヌがエクトルを嫌うのか、アンドレには見当もつかなかった。
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