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第31話 アンドレの挽回?-3
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「ミュリエル、どういうことだ?説明してくれ」アンドレは険しい顔をした。
「アンドレ王子殿下、滅多に市井へ行かない人が、マルセル領の子爵令嬢が、マルセルから遠く離れたパトリーで、危険な目にあっている所へ出くわすのは、どれほどの確率でしょうか」
「……仕組まれていたのか」
「王城の情報漏洩は問題にすべきと思いますが、マドゥレーヌ嬢はただ、アンドレ王子殿下と、お近づきになりたかっただけでしょう。出会いがどうであれ、恋に落ちたことは事実なのですから、あまり目くじらを立てられなくても、よいかと存じます」
「何よそれ、バカにしないでよ!あんたなんかに庇ってもらいたくないわ。いつも無表情で気味が悪いのよ——何が天使よ、マリオネットのくせに!この人はね、私に毒を盛ろうとして、貴族の身分を剥奪されて、平民に落とされたのよ」マドゥレーヌは病棟中に聞こえるよう大声で言った。
「マドゥレーヌ!」アンドレが叱責した。
マドゥレーヌの頬を叩こうとするアンドレの手を、ミュリエルが止めた。
「私は、あなた様に毒を盛ったことはありません」
「嘘よ。あなたが毒を盛ったことは大勢が知ってるんだから、言い逃れできないわよ」
「あれは毒ではありません。私があの日、持参していたポーションは、毒ではなく栄養ドリンクです。それを、アンドレ王子殿下が、誤解しただけなのです」ミュリエルも同じように、ここにいる人たちに聞こえるように言った。
フィンは突然の事態に、どう助け舟を出すべきか思案していたが、『ミュリエル薬師が、毒なんて盛るはずがない』、『慈愛の天使が、人を殺めるわけないだろう』、『なんであの女は、そんな嘘をつくんだ』といった声が聞こえてきて、何をそんなに焦っていたのかと、フィンは自分自身に呆れ返った。
ここにミュリエルの味方をしないのは、マドゥレーヌだけだ、皆ミュリエルに命を救われ、ミュリエルが夜遅くまで患者のために働き、ポーションを作成していることを知っているのだ。誰もミュリエルが、毒を盛ったなどという戯言を信じるはずがない。
「は?嘘よ、だってあれは、アンドレ様と婚約解消したいから、薬師になりたいから、毒を盛ったと思わせるって、言ってたじゃない」
今度はマドゥレーヌにだけ聞こえるように、ミュリエルは声を落として言った。
「そうです。思わせるだけで良かったのです。実際、毒を盛る必要はありませんでした。万が一、事故があってはいけないと思い、用意した薬は、ただの栄養ドリンクです。たとえ、どんな理由であれ、他人に毒を盛るなど、私にはできませんでした。薬瓶は王室に渡してあります。中身を調べていただいて構いません」ミュリエルはアンドレを見た。「アンドレ王子殿下、騙すようなことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いいんだ。君を追い込んでしまったのは私だ。全ては馬鹿だった私が悪いんだ。何も見えていなかった」アンドレは沈んだ表情で、ミュリエルの肩を撫でた。
「馬鹿ではありません。アンドレ王子殿下は優しいのです。優しすぎるくらいに」
「マドゥレーヌを馬車に乗せろ」アンドレはマドゥレーヌを、ここまで護衛してきた王城の兵士に命令した。
「待って、アンドレ様。嘘をついていたことは謝ります。あなたのことを、本当に愛しているの。許して」
「マドゥレーヌ、君とは後で話をしなければならない、先に王城へ戻り、待っていてくれ」アンドレは兵士に連れられ、歩き去るマドゥレーヌから顔を背け、ミュリエルと向かい合った。「なぜ教えてくれなかったんだ?」
「マドゥレーヌ嬢のことは、婚約解消の交渉に使えると思いました。お2人には愛し合っていて欲しかったのです。自分勝手でした。申し訳ありません」ミュリエルは頭を下げた。
「君は何も悪くないんだから、謝る必要はない。私も少し混乱しているようだ。邪魔して悪かったな、今日は帰るとするよ。また様子を見にくるから」アンドレは肩を落として、馬車へ向かって歩いた。
騒ぎを聞きつけたらしく、いつの間にか人集りができていた。
モーリスがアンドレを見る目つきも、フィン同様凶悪だった。
「あれが、お前を蔑ろにした王子か。クソ野郎め、あいつが王子じゃなかったら、一発殴ってやるところだ」
「王子でなくとも、人を殴るのはどうかと思います」ミュリエルは呆れて言った。
「俺にはミュリエルが、わざとシスターフェリシテの所に、王子とマドゥレーヌ嬢を案内して、問題を起こさせようとしたように見えたんだけど?」フィンが悪戯な笑みを浮かべて言った。
「少し意地悪でしたでしょうか、皆が怖がるので、アンドレ王子殿下に、早く帰っていただきたかったのです。ですが、また来ると仰っていましたし、困りましたね」
フィンとモーリスは声をたてて笑った。
「ミュリエルの以外な一面を見たよ。婚約解消するために嘘をついたり、毒を盛ったり、意地悪で大胆なんだな。でもまさか、ミュリエルの元婚約者が王子だったとはね」
「フィンさんには言っていませんでしたね、私はブリヨン侯爵カルヴァン家の長女です。訳あって家出をしました。その時に王子殿下が尽力してくださったのです。確かに婚約者として、大事に扱われたことはありませんでしたが、それは、私がアンドレ王子殿下の期待に応えられなかったのが原因ですし、今は感謝していますよ。さあ、のんびりしている暇はありません、フィンさん診察に戻りましょう」
ミュリエルは診察室に戻っていった。
「アンドレ王子殿下、滅多に市井へ行かない人が、マルセル領の子爵令嬢が、マルセルから遠く離れたパトリーで、危険な目にあっている所へ出くわすのは、どれほどの確率でしょうか」
「……仕組まれていたのか」
「王城の情報漏洩は問題にすべきと思いますが、マドゥレーヌ嬢はただ、アンドレ王子殿下と、お近づきになりたかっただけでしょう。出会いがどうであれ、恋に落ちたことは事実なのですから、あまり目くじらを立てられなくても、よいかと存じます」
「何よそれ、バカにしないでよ!あんたなんかに庇ってもらいたくないわ。いつも無表情で気味が悪いのよ——何が天使よ、マリオネットのくせに!この人はね、私に毒を盛ろうとして、貴族の身分を剥奪されて、平民に落とされたのよ」マドゥレーヌは病棟中に聞こえるよう大声で言った。
「マドゥレーヌ!」アンドレが叱責した。
マドゥレーヌの頬を叩こうとするアンドレの手を、ミュリエルが止めた。
「私は、あなた様に毒を盛ったことはありません」
「嘘よ。あなたが毒を盛ったことは大勢が知ってるんだから、言い逃れできないわよ」
「あれは毒ではありません。私があの日、持参していたポーションは、毒ではなく栄養ドリンクです。それを、アンドレ王子殿下が、誤解しただけなのです」ミュリエルも同じように、ここにいる人たちに聞こえるように言った。
フィンは突然の事態に、どう助け舟を出すべきか思案していたが、『ミュリエル薬師が、毒なんて盛るはずがない』、『慈愛の天使が、人を殺めるわけないだろう』、『なんであの女は、そんな嘘をつくんだ』といった声が聞こえてきて、何をそんなに焦っていたのかと、フィンは自分自身に呆れ返った。
ここにミュリエルの味方をしないのは、マドゥレーヌだけだ、皆ミュリエルに命を救われ、ミュリエルが夜遅くまで患者のために働き、ポーションを作成していることを知っているのだ。誰もミュリエルが、毒を盛ったなどという戯言を信じるはずがない。
「は?嘘よ、だってあれは、アンドレ様と婚約解消したいから、薬師になりたいから、毒を盛ったと思わせるって、言ってたじゃない」
今度はマドゥレーヌにだけ聞こえるように、ミュリエルは声を落として言った。
「そうです。思わせるだけで良かったのです。実際、毒を盛る必要はありませんでした。万が一、事故があってはいけないと思い、用意した薬は、ただの栄養ドリンクです。たとえ、どんな理由であれ、他人に毒を盛るなど、私にはできませんでした。薬瓶は王室に渡してあります。中身を調べていただいて構いません」ミュリエルはアンドレを見た。「アンドレ王子殿下、騙すようなことをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いいんだ。君を追い込んでしまったのは私だ。全ては馬鹿だった私が悪いんだ。何も見えていなかった」アンドレは沈んだ表情で、ミュリエルの肩を撫でた。
「馬鹿ではありません。アンドレ王子殿下は優しいのです。優しすぎるくらいに」
「マドゥレーヌを馬車に乗せろ」アンドレはマドゥレーヌを、ここまで護衛してきた王城の兵士に命令した。
「待って、アンドレ様。嘘をついていたことは謝ります。あなたのことを、本当に愛しているの。許して」
「マドゥレーヌ、君とは後で話をしなければならない、先に王城へ戻り、待っていてくれ」アンドレは兵士に連れられ、歩き去るマドゥレーヌから顔を背け、ミュリエルと向かい合った。「なぜ教えてくれなかったんだ?」
「マドゥレーヌ嬢のことは、婚約解消の交渉に使えると思いました。お2人には愛し合っていて欲しかったのです。自分勝手でした。申し訳ありません」ミュリエルは頭を下げた。
「君は何も悪くないんだから、謝る必要はない。私も少し混乱しているようだ。邪魔して悪かったな、今日は帰るとするよ。また様子を見にくるから」アンドレは肩を落として、馬車へ向かって歩いた。
騒ぎを聞きつけたらしく、いつの間にか人集りができていた。
モーリスがアンドレを見る目つきも、フィン同様凶悪だった。
「あれが、お前を蔑ろにした王子か。クソ野郎め、あいつが王子じゃなかったら、一発殴ってやるところだ」
「王子でなくとも、人を殴るのはどうかと思います」ミュリエルは呆れて言った。
「俺にはミュリエルが、わざとシスターフェリシテの所に、王子とマドゥレーヌ嬢を案内して、問題を起こさせようとしたように見えたんだけど?」フィンが悪戯な笑みを浮かべて言った。
「少し意地悪でしたでしょうか、皆が怖がるので、アンドレ王子殿下に、早く帰っていただきたかったのです。ですが、また来ると仰っていましたし、困りましたね」
フィンとモーリスは声をたてて笑った。
「ミュリエルの以外な一面を見たよ。婚約解消するために嘘をついたり、毒を盛ったり、意地悪で大胆なんだな。でもまさか、ミュリエルの元婚約者が王子だったとはね」
「フィンさんには言っていませんでしたね、私はブリヨン侯爵カルヴァン家の長女です。訳あって家出をしました。その時に王子殿下が尽力してくださったのです。確かに婚約者として、大事に扱われたことはありませんでしたが、それは、私がアンドレ王子殿下の期待に応えられなかったのが原因ですし、今は感謝していますよ。さあ、のんびりしている暇はありません、フィンさん診察に戻りましょう」
ミュリエルは診察室に戻っていった。
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