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伯爵家編
王子様なんかじゃない
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ずっと、この想いは胸に仕舞っておくつもりだった。
はじめは罪悪感から、そして今では己の不甲斐なさゆえに。伝える資格などありはしない、だからせめて遠くから見守っていよう。そう、言い聞かせてきた。
けれど──
『それは逃げじゃないのか』
騒動のあと、レオナルドに『彼女を頼む』と告げた。レオナルド──身の危険を省みず、彼女を凶刃から庇った男。それを知った時、『完敗だ』と思った。
彼には敵わない。いや──最初から勝敗は決していた。本当はそんなこと、わかっていたのに。うしろ暗い秘密を抱えた自分に、彼女の隣に立つ資格などありはしないのだと、改めて思い知らされた。
だからせめて自分の手で幕を引こう。ありもしない夢を見ないように、未練など生まれないように。この醜い恋心にこそナイフを突き立て、息の根を奪ってほしかった。
けれどレオナルドは『何を言うかと思えば』と顔を顰めた。
『彼女を頼むだの、幸せにしてくれだの、子どもの顔が早くみたいだの、いったい何様のつもりなんだ?』
『いや、そこまでは言ってない……』
『だから僕はキミが嫌いなんだよ、リチャード。戦うことすら放棄して、物分かりのいいふりをして。僕が何を言おうと涼しい顔を崩さない、そんなキミが嫌いで仕方なかった』
不愉快だ。そう、ありありと書かれた顔。隠しもせずにレオナルドは吐き捨てる。
侮蔑と──哀れみの混じる目で。
『キミのそれは【逃げ】だよ。自分が傷つきたくないからって、彼女から逃げてるだけ。まったく、そんな男が僕の終生のライバルだったとは……がっかりだよ』
『ライバル……?君はそんな風に思っていたのか?』
『いや待て、ライバルだろう!?共に切磋琢磨した仲じゃないのか!?まさか眼中にすら……!?』
『いや、そういったことは考えもしなかったから……』
『……ほんっとうに嫌みなヤツだな……』
ひとしきり騒いでから、レオナルドはやれやれと溜め息をつく。
それからなぜか年上ぶった表情で、『仕方ないな』と笑った。
『ライバルの背中を押すなんて本意ではない。が、へんに未練を持たれても困るからね。告白する権利ぐらいは与えてやろう』
『その権利は君から貰うものなのか?』
『うるさいな、いちいち口を挟まないと息もできないのか?』
『すまない、こういったことは勝手がわからなくて』
『……ああ、そう』
何しろ色恋沙汰とは縁がない。学生時代、(一方的に)彼女と知り合って以来、女性とは儀礼的な付き合いしかしてこなかった。年頃のご令嬢方を紹介されるようになってからは、休暇の際に家族の元へ帰るのすら億劫で、理由をつけては逃げ回っていたくらいだ。そう考えると……なるほど、逃げ癖がついているというレオナルドの指摘は尤もといえる。
『……だが、迷惑ではないだろうか?彼女の負担にはなりたくない』
なおも踏ん切りがつかないでいると、レオナルドには『それはオマエが決めることじゃないだろ』と呆れられてしまった。
『どう感じるかなんて彼女本人にしかわからない。なのに勝手にわかった気になっているなんて、ひどく傲慢じゃないのか?』
そうなのだろうか。それこそ自分にとっては都合のいい解釈ではないだろうか。
そう思いもしたが、けれど『逃避』であるという指摘も間違いではない。決定権を彼女に委ねるのが怖かった。拒絶されるより先に、自分から手を離そうとした。──傷つきたくない、ただそれだけのために。
だから──、
「──君のことが、好きだから」
それは告白であり告解でもあった。
月明かりに照らし出された庭園、薔薇の生垣のなかで跪き、彼女の手をとる。そんなことにすら震えてしまう自分の指先が情けない。侮蔑も糾弾も、どんな反応であれ受け入れると決めたはずなのに。なのにまだ、胸中には恐れが巣食う。
辺りを支配するのは緊張感のある静寂。けれどざわめく心臓の鼓動が耳について、落ち着かない。息を吸うにも躊躇いが先立ち、喉元は干上がる一方。
……沈黙が、これほど恐ろしいものだとは知らなかった。
「……すまない、何か言ってもらえると助かる」
答えが聞きたかったわけじゃない。そんな権利などないということくらい、とうに理解している。ただそれでも、拷問に等しい沈黙には耐えられなかった。
思わず口を開くと、目の前の少女はハッと肩を揺らす。
たったいま息を吹き返したみたいな、その仕草。どうやら息をつめていたのはリチャードだけではなかったらしい。メイベルはひどく狼狽えた様子で「ええっと、」と視線をさ迷わせる。
「……いたっ」
……かと思えば、いきなり自分の頬を平手打ちした。
「な、なにをやって……!」
「こうすれば夢から覚めるかと思って……」
見事な打ち込みだった。止める間もない出来事。傷になったらどうするつもりなのだろう?
動揺のあまり、リチャードはメイベルの左手を離してしまう。こんなことなら右手の方も一緒に掴んでおけばよかった、とわけのわからない後悔が押し寄せた。
「赤く…はなっていないようだが、……いや、冷やした方がいいだろうな。腫れてしまってからでは遅い」
「そんな大袈裟な、」
「大袈裟なものか。たとえ君がどれほどの傷を負ったとしても俺の気持ちは変わらないが、しかし君はそういうわけにもいくまい。君が悲しい思いをするのだけはいやだ」
言い切ると、彼女は「あぁ」とも「うぅ」ともつかない呻き声を洩らす。いったいどうしたというのか。
暫し思考を巡らし、リチャードは自分の両手が少女の頬を包んでいることに気づく。怪我をしたのではと心配で、その顔を覗き込んでしまったが、まさかそのせいだろうか?そんなに強く掴んだつもりはないのだが……、いやしかし男の尺度で測るのは禁物だ。気づかぬうちに痛みを与えていた可能性もある。
「すまない、軽々しく触れるべきではなかったな」
「りっ、リチャードさまが謝られることではありませんわ!ただ少し、お顔が近かったものですから……」
「顔が?……重ね重ね申し訳ない、君に不快な思いをさせるとは」
「いえそういう意味ではなく……」
「しかし嫌だったのだろう?」
「ですから……!」
引き抜こうとした手が、手首が、掴まれる。それは思いもがけぬ力の強さだった。そして同時に多くのことを教えてくれた。
「嫌なのではありません!嫌なのではなく……、一介のファンにすぎないわたくしには刺激が強すぎるのです!!」
彼女は渇仰を集めるヴェレダの像でもなければ、甘やかな筆致で描かれる絵画の中のエロイーズでもない。今ここに存在している──意思を持ったひとりの人間なのだ。そんな当たり前のことを、今更ながら実感する。
だからこそ、知りたいと思うし、知らなければならないとも思う。彼女が何を感じ、何を考えているのか……。わかった気になって自己完結するのではなく、きちんと向き合わなければ。
「つまりその……嫌われてはいないと、自惚れてもいいだろうか?」
……それを言葉にするのは自尊心の高い男のようで、かなりの気恥ずかしさを伴うものだが。
ここで否定されたらこの先生きていく自信がない。けれどメイベルの返答は力強い首肯。「むしろもっと偉ぶってもいいくらいです!」とまで言われて、反応に困る。ここは喜ぶべき場面なのだろうか?
「ここまできたらもう正直に打ち明けますけれど、わたくしはあなたの大ファンなのです。尊敬だとか憧憬だとか救いだとか、そういう言葉では言い表せない……つまりリチャードさまはわたくしの【推し】なのですわ」
「推し……」
「『健やかであれ』、という祈りに似た感情ですわね。人によって多少定義は異なりますけれど」
「なるほど……?」
理解したい、とは思うのだが。それにしても彼女の操る言葉は難解だ。東洋の詩歌にも精通しているあたり才知に溢れた女性だとは思っていたが、まさかこれほどとは。
それともこれが今の流行りなのだろうか。……だとしたら、レオナルドには理解できるのだろうか。
どろりとした感情が洩れ出かけ、慌てて唇を噛む。──なんと諦めの悪いことだろう。浮かべた笑みが、引き攣っていないといいのだが。
「嫌われていないのなら、よかった」
「きらっ……なわけありません!むしろわたくしの方が分不相応と申しますか……、すっ、すきとか……そういうことを言っていただけるような人間では決してなく……」
「君こそ自分を卑下しすぎだ。俺は本当に心から君が好きで、僅かでもいいから心を寄せてほしいと、そう願っているのに」
「……っ、で、ですから、そういう発言がファンには心臓に悪いと申し上げましたのに……!」
「あ、あぁ、すまない」
「もう!」と胸を叩かれて、反射的に謝罪の言葉を口にする。しかし実際のところ、『申し訳ない』と思うより先に、『怒る彼女もかわいらしい』と思ってしまった。
こういう姿を見せてくれるということは、少しは心を開いてくれたと考えてもいいのだろうか。
「ならばまだ、希望を捨てずにいてもいいだろうか?君を好きでいることを、赦してもらえるだろうか、」
せめて、──それ以上は、望まないから。想うことだけは、その喜びだけは奪わないで。
「俺にとっても君は救いで、健やかであれと願わずにはいられない人だから」
その切実さが少しは伝わったのか。
彼女はまた「あぁ」とも「うぅ」ともつかない呻き声を洩らして、しかし最後にはちいさく頷いてくれた。
けれどその時生じた喜びも安堵も、そのすべてが伝わる時はきっと永遠に来ないだろう。
それでも構わないとリチャードは思う。
「……ありがとう」
慎ましやかに咲く木犀草、その仄かな香りのなか。恭しく取った少女の手に、リチャードはそっと口づけた。尊敬と憧憬と救いと……それだけでは言い表しきれない想いをこめて。
はじめは罪悪感から、そして今では己の不甲斐なさゆえに。伝える資格などありはしない、だからせめて遠くから見守っていよう。そう、言い聞かせてきた。
けれど──
『それは逃げじゃないのか』
騒動のあと、レオナルドに『彼女を頼む』と告げた。レオナルド──身の危険を省みず、彼女を凶刃から庇った男。それを知った時、『完敗だ』と思った。
彼には敵わない。いや──最初から勝敗は決していた。本当はそんなこと、わかっていたのに。うしろ暗い秘密を抱えた自分に、彼女の隣に立つ資格などありはしないのだと、改めて思い知らされた。
だからせめて自分の手で幕を引こう。ありもしない夢を見ないように、未練など生まれないように。この醜い恋心にこそナイフを突き立て、息の根を奪ってほしかった。
けれどレオナルドは『何を言うかと思えば』と顔を顰めた。
『彼女を頼むだの、幸せにしてくれだの、子どもの顔が早くみたいだの、いったい何様のつもりなんだ?』
『いや、そこまでは言ってない……』
『だから僕はキミが嫌いなんだよ、リチャード。戦うことすら放棄して、物分かりのいいふりをして。僕が何を言おうと涼しい顔を崩さない、そんなキミが嫌いで仕方なかった』
不愉快だ。そう、ありありと書かれた顔。隠しもせずにレオナルドは吐き捨てる。
侮蔑と──哀れみの混じる目で。
『キミのそれは【逃げ】だよ。自分が傷つきたくないからって、彼女から逃げてるだけ。まったく、そんな男が僕の終生のライバルだったとは……がっかりだよ』
『ライバル……?君はそんな風に思っていたのか?』
『いや待て、ライバルだろう!?共に切磋琢磨した仲じゃないのか!?まさか眼中にすら……!?』
『いや、そういったことは考えもしなかったから……』
『……ほんっとうに嫌みなヤツだな……』
ひとしきり騒いでから、レオナルドはやれやれと溜め息をつく。
それからなぜか年上ぶった表情で、『仕方ないな』と笑った。
『ライバルの背中を押すなんて本意ではない。が、へんに未練を持たれても困るからね。告白する権利ぐらいは与えてやろう』
『その権利は君から貰うものなのか?』
『うるさいな、いちいち口を挟まないと息もできないのか?』
『すまない、こういったことは勝手がわからなくて』
『……ああ、そう』
何しろ色恋沙汰とは縁がない。学生時代、(一方的に)彼女と知り合って以来、女性とは儀礼的な付き合いしかしてこなかった。年頃のご令嬢方を紹介されるようになってからは、休暇の際に家族の元へ帰るのすら億劫で、理由をつけては逃げ回っていたくらいだ。そう考えると……なるほど、逃げ癖がついているというレオナルドの指摘は尤もといえる。
『……だが、迷惑ではないだろうか?彼女の負担にはなりたくない』
なおも踏ん切りがつかないでいると、レオナルドには『それはオマエが決めることじゃないだろ』と呆れられてしまった。
『どう感じるかなんて彼女本人にしかわからない。なのに勝手にわかった気になっているなんて、ひどく傲慢じゃないのか?』
そうなのだろうか。それこそ自分にとっては都合のいい解釈ではないだろうか。
そう思いもしたが、けれど『逃避』であるという指摘も間違いではない。決定権を彼女に委ねるのが怖かった。拒絶されるより先に、自分から手を離そうとした。──傷つきたくない、ただそれだけのために。
だから──、
「──君のことが、好きだから」
それは告白であり告解でもあった。
月明かりに照らし出された庭園、薔薇の生垣のなかで跪き、彼女の手をとる。そんなことにすら震えてしまう自分の指先が情けない。侮蔑も糾弾も、どんな反応であれ受け入れると決めたはずなのに。なのにまだ、胸中には恐れが巣食う。
辺りを支配するのは緊張感のある静寂。けれどざわめく心臓の鼓動が耳について、落ち着かない。息を吸うにも躊躇いが先立ち、喉元は干上がる一方。
……沈黙が、これほど恐ろしいものだとは知らなかった。
「……すまない、何か言ってもらえると助かる」
答えが聞きたかったわけじゃない。そんな権利などないということくらい、とうに理解している。ただそれでも、拷問に等しい沈黙には耐えられなかった。
思わず口を開くと、目の前の少女はハッと肩を揺らす。
たったいま息を吹き返したみたいな、その仕草。どうやら息をつめていたのはリチャードだけではなかったらしい。メイベルはひどく狼狽えた様子で「ええっと、」と視線をさ迷わせる。
「……いたっ」
……かと思えば、いきなり自分の頬を平手打ちした。
「な、なにをやって……!」
「こうすれば夢から覚めるかと思って……」
見事な打ち込みだった。止める間もない出来事。傷になったらどうするつもりなのだろう?
動揺のあまり、リチャードはメイベルの左手を離してしまう。こんなことなら右手の方も一緒に掴んでおけばよかった、とわけのわからない後悔が押し寄せた。
「赤く…はなっていないようだが、……いや、冷やした方がいいだろうな。腫れてしまってからでは遅い」
「そんな大袈裟な、」
「大袈裟なものか。たとえ君がどれほどの傷を負ったとしても俺の気持ちは変わらないが、しかし君はそういうわけにもいくまい。君が悲しい思いをするのだけはいやだ」
言い切ると、彼女は「あぁ」とも「うぅ」ともつかない呻き声を洩らす。いったいどうしたというのか。
暫し思考を巡らし、リチャードは自分の両手が少女の頬を包んでいることに気づく。怪我をしたのではと心配で、その顔を覗き込んでしまったが、まさかそのせいだろうか?そんなに強く掴んだつもりはないのだが……、いやしかし男の尺度で測るのは禁物だ。気づかぬうちに痛みを与えていた可能性もある。
「すまない、軽々しく触れるべきではなかったな」
「りっ、リチャードさまが謝られることではありませんわ!ただ少し、お顔が近かったものですから……」
「顔が?……重ね重ね申し訳ない、君に不快な思いをさせるとは」
「いえそういう意味ではなく……」
「しかし嫌だったのだろう?」
「ですから……!」
引き抜こうとした手が、手首が、掴まれる。それは思いもがけぬ力の強さだった。そして同時に多くのことを教えてくれた。
「嫌なのではありません!嫌なのではなく……、一介のファンにすぎないわたくしには刺激が強すぎるのです!!」
彼女は渇仰を集めるヴェレダの像でもなければ、甘やかな筆致で描かれる絵画の中のエロイーズでもない。今ここに存在している──意思を持ったひとりの人間なのだ。そんな当たり前のことを、今更ながら実感する。
だからこそ、知りたいと思うし、知らなければならないとも思う。彼女が何を感じ、何を考えているのか……。わかった気になって自己完結するのではなく、きちんと向き合わなければ。
「つまりその……嫌われてはいないと、自惚れてもいいだろうか?」
……それを言葉にするのは自尊心の高い男のようで、かなりの気恥ずかしさを伴うものだが。
ここで否定されたらこの先生きていく自信がない。けれどメイベルの返答は力強い首肯。「むしろもっと偉ぶってもいいくらいです!」とまで言われて、反応に困る。ここは喜ぶべき場面なのだろうか?
「ここまできたらもう正直に打ち明けますけれど、わたくしはあなたの大ファンなのです。尊敬だとか憧憬だとか救いだとか、そういう言葉では言い表せない……つまりリチャードさまはわたくしの【推し】なのですわ」
「推し……」
「『健やかであれ』、という祈りに似た感情ですわね。人によって多少定義は異なりますけれど」
「なるほど……?」
理解したい、とは思うのだが。それにしても彼女の操る言葉は難解だ。東洋の詩歌にも精通しているあたり才知に溢れた女性だとは思っていたが、まさかこれほどとは。
それともこれが今の流行りなのだろうか。……だとしたら、レオナルドには理解できるのだろうか。
どろりとした感情が洩れ出かけ、慌てて唇を噛む。──なんと諦めの悪いことだろう。浮かべた笑みが、引き攣っていないといいのだが。
「嫌われていないのなら、よかった」
「きらっ……なわけありません!むしろわたくしの方が分不相応と申しますか……、すっ、すきとか……そういうことを言っていただけるような人間では決してなく……」
「君こそ自分を卑下しすぎだ。俺は本当に心から君が好きで、僅かでもいいから心を寄せてほしいと、そう願っているのに」
「……っ、で、ですから、そういう発言がファンには心臓に悪いと申し上げましたのに……!」
「あ、あぁ、すまない」
「もう!」と胸を叩かれて、反射的に謝罪の言葉を口にする。しかし実際のところ、『申し訳ない』と思うより先に、『怒る彼女もかわいらしい』と思ってしまった。
こういう姿を見せてくれるということは、少しは心を開いてくれたと考えてもいいのだろうか。
「ならばまだ、希望を捨てずにいてもいいだろうか?君を好きでいることを、赦してもらえるだろうか、」
せめて、──それ以上は、望まないから。想うことだけは、その喜びだけは奪わないで。
「俺にとっても君は救いで、健やかであれと願わずにはいられない人だから」
その切実さが少しは伝わったのか。
彼女はまた「あぁ」とも「うぅ」ともつかない呻き声を洩らして、しかし最後にはちいさく頷いてくれた。
けれどその時生じた喜びも安堵も、そのすべてが伝わる時はきっと永遠に来ないだろう。
それでも構わないとリチャードは思う。
「……ありがとう」
慎ましやかに咲く木犀草、その仄かな香りのなか。恭しく取った少女の手に、リチャードはそっと口づけた。尊敬と憧憬と救いと……それだけでは言い表しきれない想いをこめて。
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