24 / 58
第四章『陸郎さんて呼んでもいい?』
3
しおりを挟む
「松村さん、誰かとここに来たことあるんですか?」
別に恋人限定の場所ってわけじゃないし普通に友だちと来ることもあるだろう。
(優雅と来たことあるとか言わないでよ)
「いや、普段余りここまで来ようってヤツはいないよ。だからこそ『恋人たちの森』なんだろうけど」
確かにこの近辺には校舎もないので来るとしたらわざわざ来るってことになる。裏門を使う学生もいなくはないだろうがロータリーのある正門を使う学生がほとんどだ。
「俺はたまに独りで来るけど」
「独りで来るんですか」
なんとなくほっとする。
「なんで僕を」
「そうだな……案内人としては桜葉大のすべてを案内しなければと思って」
そう無表情で言ったのは入学式の時に大学の案内をしてくれたことだろう。
(え……っと。これは松村さん流の冗談かな? そんな無表情で?)
ふふっと笑いが込みあげてくる。
「ありがとうございます。とても素敵なところだと思います」
またその腕に抱きつきたくなったけど、人影見えないとはいえ敷地内だ。さすがにそれはできないと思った。もしかしたら僕らからは見えない木々の間にやっぱりこうやって二人で歩いている人たちがいるかも知れない。
(また学校外で会いたいなぁ)
「あの……松村さん、今度デートしませんか?」
本当はかなりどきどきしているけど軽い気持ちで言ってる体を装う。
「デート?」
怪訝そうな顔をする。それはそうだろう。陸郎のほうはまだ『友だち』設定だ。
(でも友だち同士でもデートって言い方しないかな? 女の子たちがそういうふうに言ってるのを聞いたことあるけど)
「いいよ」
「えっ? いいんですかっ?」
意外にあっさり返事が返ってきたことに動揺したけど、それに気づかれないようにした。
(こういうことに慣れてるフリしなきゃ。全然慣れてないけどー)
「ああ。俺デートとかしたことないから、温くん考えてくれる? 決まったらラインして」
「わかりました。じゃあ僕考えますね」
慣れてるフリ慣れてるフリと心で念じながら余裕のある笑みを浮かべるが果たして上手くいってるのだろうか。
「そろそろ戻る? 腹減ってきたし」
「ですねー」
来たこと時の一.五倍くらいの早さで戻りながら頭の中で何時にしよう何をしよう何処に行こうと考えていた。
* *
「テーマパークとか行ってみたいな」
ネズミのキャラクターが有名な某テーマパークを思い浮かべる。
しかし、最初のデートにしては張り切り過ぎてるかなと思うし、陸郎とテーマパークってなんかしっくりこない。いつかは行ってみたいとは思うけど。
海とか山とか行っても何をするのか想像がつかない。水族館なんかはいいかも、などと散々悩み。
「やっぱり……無難に映画かな」
別に恋人限定の場所ってわけじゃないし普通に友だちと来ることもあるだろう。
(優雅と来たことあるとか言わないでよ)
「いや、普段余りここまで来ようってヤツはいないよ。だからこそ『恋人たちの森』なんだろうけど」
確かにこの近辺には校舎もないので来るとしたらわざわざ来るってことになる。裏門を使う学生もいなくはないだろうがロータリーのある正門を使う学生がほとんどだ。
「俺はたまに独りで来るけど」
「独りで来るんですか」
なんとなくほっとする。
「なんで僕を」
「そうだな……案内人としては桜葉大のすべてを案内しなければと思って」
そう無表情で言ったのは入学式の時に大学の案内をしてくれたことだろう。
(え……っと。これは松村さん流の冗談かな? そんな無表情で?)
ふふっと笑いが込みあげてくる。
「ありがとうございます。とても素敵なところだと思います」
またその腕に抱きつきたくなったけど、人影見えないとはいえ敷地内だ。さすがにそれはできないと思った。もしかしたら僕らからは見えない木々の間にやっぱりこうやって二人で歩いている人たちがいるかも知れない。
(また学校外で会いたいなぁ)
「あの……松村さん、今度デートしませんか?」
本当はかなりどきどきしているけど軽い気持ちで言ってる体を装う。
「デート?」
怪訝そうな顔をする。それはそうだろう。陸郎のほうはまだ『友だち』設定だ。
(でも友だち同士でもデートって言い方しないかな? 女の子たちがそういうふうに言ってるのを聞いたことあるけど)
「いいよ」
「えっ? いいんですかっ?」
意外にあっさり返事が返ってきたことに動揺したけど、それに気づかれないようにした。
(こういうことに慣れてるフリしなきゃ。全然慣れてないけどー)
「ああ。俺デートとかしたことないから、温くん考えてくれる? 決まったらラインして」
「わかりました。じゃあ僕考えますね」
慣れてるフリ慣れてるフリと心で念じながら余裕のある笑みを浮かべるが果たして上手くいってるのだろうか。
「そろそろ戻る? 腹減ってきたし」
「ですねー」
来たこと時の一.五倍くらいの早さで戻りながら頭の中で何時にしよう何をしよう何処に行こうと考えていた。
* *
「テーマパークとか行ってみたいな」
ネズミのキャラクターが有名な某テーマパークを思い浮かべる。
しかし、最初のデートにしては張り切り過ぎてるかなと思うし、陸郎とテーマパークってなんかしっくりこない。いつかは行ってみたいとは思うけど。
海とか山とか行っても何をするのか想像がつかない。水族館なんかはいいかも、などと散々悩み。
「やっぱり……無難に映画かな」
27
あなたにおすすめの小説
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
僕は今日、謳う
ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。
彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。
彼との最後の思い出が欲しかったから。
彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。
本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。
終始セリフばかりです。
話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。
名前が出てこない短編part4です。
誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。
途中手直しついでに加筆もするかもです。
感想もお待ちしています。
片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が!
あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。
私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
【完結】恋した君は別の誰かが好きだから
花村 ネズリ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。
青春BLカップ31位。
BETありがとうございました。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
二つの視点から見た、片思い恋愛模様。
じれきゅん
ギャップ攻め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる