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第四章『陸郎さんて呼んでもいい?』
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時刻は午後六時半。
リビングのソファーに座っている。テーブルの上には帰ってきて作ったアイスココアと駅前で買ったドーナツ。夕飯前だけど小腹が空いていた。それを齧りながらあれこれ考えていた。
家人はまだ誰も帰っていないのをいいことに思ったことを口にする。
『松村さん今日ありがとうございました』
『今度映画観に行きませんか?』
映画を観ると決め、さっそく陸郎にラインする。
(もう家に帰ってるかな)
二、三分して既読がつき『いいよ』と返信がくる。
『いつにしますか?』
『松村さん、観たいものありますか?』
『温くんが決めていいよ』
陸郎はあくまで受け身だ。仕方がない、デートをしたいのは僕のほうだから。
それからしばらくやり取りをして、ゴールデンウィーク中は避け、明けて土曜日に行くことに決めた。
午前十一時に駅前で待ち合わせ。それから昼食を食べて駅近くの映画館へ。何を観るかは行ってから決めることにした。男同士のせいかかなり雑なプランだがこういうのも楽しいかも知れない。
やり取りしている間にかなり気分があがってきた。
『じゃあそういうことで』
『楽しみにしてます!』
『おやすみなさい』
『おやすみ』
僕はもう一度『おやすみ』のスタンプを送りラインを閉じようとした瞬間。
「松村?」
背後から声がした。
「おわっ」
驚いて変な声が飛びだし思わずスマホを落としそうになった。
いつの間にか優雅が帰ってきていてリビングにいたのだ。
「お兄ちゃん帰ってたんだ。ってか勝手に覗かないでよ」
何処から見られていたのかどきどきする。
「『おかえり』くらい言えば」
内容には触れなかったからどうなのかわからなかった。それにしても上から目線な言い方にはちょっとむっとする。
「お帰り。今日も帰って来ないと思った」
ちょっと嫌味を言ってやる。実際ゴールデンウィークに入ってから優雅は家に帰っていない。大学も行っているのかわからなかった。
「ごめんね、帰ってきて」
嫌味に嫌味が返ってくる。
「温、お前陸と連絡取り合ってんの? それに今日陸と一緒にいたろ?」
「え?」
「恋人たちの森」
まるで暗号のような一言。
「一緒に歩いているのを見かけた」
なるほどと思った。やっぱりあの森には他の人間がいて木々がそれを隠していることもあるのだ。
(誰もいないように見えたからって腕組まなくて良かったよ)
そうほっとした。でも逆に優雅にだったら見せつけても良かったかな、という悪魔的考えも浮かんできた。
「へぇお兄ちゃんもいたんだ、矢尾さんと?」
矢尾静留は優雅の今の彼女だ。高校まではずっと陸郎と一緒にいて彼女の気配はまったく感じなかったのに、実は大学に入ってからは静留で三代目だ。何故か学年が変わるごとに変わっている。
「そうだけど。っておれのことはどうでもいいんだよ。お前陸と会ったりしてるの?」
リビングのソファーに座っている。テーブルの上には帰ってきて作ったアイスココアと駅前で買ったドーナツ。夕飯前だけど小腹が空いていた。それを齧りながらあれこれ考えていた。
家人はまだ誰も帰っていないのをいいことに思ったことを口にする。
『松村さん今日ありがとうございました』
『今度映画観に行きませんか?』
映画を観ると決め、さっそく陸郎にラインする。
(もう家に帰ってるかな)
二、三分して既読がつき『いいよ』と返信がくる。
『いつにしますか?』
『松村さん、観たいものありますか?』
『温くんが決めていいよ』
陸郎はあくまで受け身だ。仕方がない、デートをしたいのは僕のほうだから。
それからしばらくやり取りをして、ゴールデンウィーク中は避け、明けて土曜日に行くことに決めた。
午前十一時に駅前で待ち合わせ。それから昼食を食べて駅近くの映画館へ。何を観るかは行ってから決めることにした。男同士のせいかかなり雑なプランだがこういうのも楽しいかも知れない。
やり取りしている間にかなり気分があがってきた。
『じゃあそういうことで』
『楽しみにしてます!』
『おやすみなさい』
『おやすみ』
僕はもう一度『おやすみ』のスタンプを送りラインを閉じようとした瞬間。
「松村?」
背後から声がした。
「おわっ」
驚いて変な声が飛びだし思わずスマホを落としそうになった。
いつの間にか優雅が帰ってきていてリビングにいたのだ。
「お兄ちゃん帰ってたんだ。ってか勝手に覗かないでよ」
何処から見られていたのかどきどきする。
「『おかえり』くらい言えば」
内容には触れなかったからどうなのかわからなかった。それにしても上から目線な言い方にはちょっとむっとする。
「お帰り。今日も帰って来ないと思った」
ちょっと嫌味を言ってやる。実際ゴールデンウィークに入ってから優雅は家に帰っていない。大学も行っているのかわからなかった。
「ごめんね、帰ってきて」
嫌味に嫌味が返ってくる。
「温、お前陸と連絡取り合ってんの? それに今日陸と一緒にいたろ?」
「え?」
「恋人たちの森」
まるで暗号のような一言。
「一緒に歩いているのを見かけた」
なるほどと思った。やっぱりあの森には他の人間がいて木々がそれを隠していることもあるのだ。
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そうほっとした。でも逆に優雅にだったら見せつけても良かったかな、という悪魔的考えも浮かんできた。
「へぇお兄ちゃんもいたんだ、矢尾さんと?」
矢尾静留は優雅の今の彼女だ。高校まではずっと陸郎と一緒にいて彼女の気配はまったく感じなかったのに、実は大学に入ってからは静留で三代目だ。何故か学年が変わるごとに変わっている。
「そうだけど。っておれのことはどうでもいいんだよ。お前陸と会ったりしてるの?」
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