【完結】冷徹宰相と淫紋Hで死亡フラグを『神』回避!? ~鬱エロゲー溺愛ルート開発~

愛染乃唯

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「ひゃ!」

 素肌の尻が大理石に触れ、思わず声が出る。ヴィンセントの手が、反射的に逃げそうになった私の膝裏にかけられた。そのままぐっと押し上げられると、私はとんでもない格好で床にぬいつけられてしまう。

「や……!」

 反射的に見ないで、と叫びたかったけれど、もう遅かった。
 私の最奥、軽々しくひとに見せてはいけないところ、さっきから熱くて仕方のないところへの入り口に、男の指が触れる。
 さっきから見ているヴィンセントの手――大きくて、指が長くて、節がごつごつと骨張っている――を思うと、体がこわばる。
 けれど、実際には私のそこは、柔らかく彼の指を歓迎した、らしい。
 ぬちゅりと恥ずかしい音がして、私の肉が彼の指に絡んでいく。

 ……濡れてる。

「……ごめんなさ、い」

 しとどに濡れたそこがにちゅにちゅと音を立てるのがつらくて、私は思わず謝ってしまった。こんな状態でも、私は降って湧いた推しとの行為に喜んでいるらしい。

「謝るな。頼む」

 ヴィンセントは低くうなる。その指が私の秘所に浅くもぐりこむ。
 多分、指一本だ。痛くはない。
 痛くはないけれど、ものすごい違和感だ。私は思わず震え上がった。

 そういえば、生まれ変わる前の男運は最悪だった。何人か付き合ったひとはいたものの、行為らしい行為をする前に別れてばかり。私も、この体も、おそらく男女の営みを知らない。
 ヴィンセントもそれに気づいたのだろう、眉間の皺を深くして、すくいとった蜜を私の肉の芽に塗りつけた。そのまま信じられないほど優しく肉の芽に触られて、私は今度こそ悲鳴を放つ。強すぎる刺激が次々生まれ、体が勝手に突っ張ってしまう。

「ひゃっ、あっ、あっ、やあ、それ……それ、ダメですっ!」

 叫べば叫ぶほど頭にもやがかかる。甘い電流にずっと痺れさせられている。とろ、と体の中から新たな蜜がこぼれたのがわかる。ちゅ、ちゅ、とはしたない音を立てて、柔肉がヴィンセントに甘えている。

「う、ううっ、やっ…………!」

 いくら叫んでも許されず、私は、ひときわ大きな痺れに貫かれた。
 頭のてっぺんからつま先まで、じぃん……となって固まってしまう。周囲はがやがやとうるさいだろうに、すべての音が遠い。かろうじて聞こえるのは、ヴィンセントの冷たいほどの美声だけで。

「怪我をさせたくない。が、こんなもの、欺瞞だな」

 吐き捨てるように言うと、ヴィンセントは私から指を離した。
 代わりに、ぐっと押しつけられるもの。

「息を吐け……!」

 ひとに命じ慣れたひとの、重い声。私はとっさに従おうとする。
 けれど、できない。息が吐けない。まだ快楽に突っ張ったままの体は、人形みたいにこわばったまま。そこへ、彼自身のなめらかな表面が触れてくる。くちゅ、と優しいキスのような音がしたかと思うと、爆発的な痛みに襲われた。

「うぐっ……」

「我慢しろ。すぐだ」

 ヴィンセントは囁き、力をこめて押し入ってくる。ぐぐ、と先端が私の中に入ってくる。すごい。指なんかものにならない異物感と、痛み。ひりつく痛みに耐えようと、歯を食いしばる。と、いったんヴィンセントが離れた。
 ほっとする間もなく、どすん、と重量感のある腰がたたき付けられる。

「う、う、あ……!」

 どすん、どすんと打ち付けられるたびに、圧倒的な質量が私の中を分け入ってくる。引き裂いて、彼の居場所を作ろうとしてくる。衝撃が体中を襲い、自然と声が押し出される。死ぬ、と思う。引き裂かれて、死ぬ。それくらい圧倒的だ。

 でも、不思議。嫌じゃない。死んでもいい。
 もっと。もっと。全部……!

 声に出して叫びたいくらいだったけれど、体はついていかなくて。
 私の意識は、すっと白いもやに呑まれた。ほんの少しだけ、気絶していたのかもしれない。
 その間に私の意識は混乱して、過去のことを思い出した。
 転生する前のこと。びっくりするくらい最低の会社で、徹夜続きだったこと。
 残業続きで終電がなくなったからって、無理矢理雀荘に連れて行かれた。私はやけっぱちで煙草を吸い、ぬるいビールジョッキを横にひたすらにセクハラに耐えていた。

『お前は女って感じしないんだよね。なんつーの。むしろ、おっさん?』

 同僚が言い、ゲラゲラと笑うのを聞く。とげのある言葉は紙やすり。心はどんどん摩耗する。
 ぼうっとしながら、私は目の前を白い煙草の煙がたゆたうのを眺めたものだ。
 誰かに削られるための、私の人生。なんて薄っぺらいんだろう。
 薄っぺらくて薄っぺらくて、二次元の世界より薄っぺらくて。
 多分これは夢なんだ、と思いながら、ヤニで黄色くなった天井に向かって煙を吐いた。
 目の前が白く煙ってきて、夢なら覚めてほしい、そう思ったとき。

「っ……! ん、くぅ……ッ!?」

 喉の奥から悲鳴が絞り出されて、私は目を見開いた。
 熱い。体の奥が、とてつもなく熱い。
 じんじんするしびれが下腹部にある。
 なに、これ。私、どうなってるの? 
 何もわからないうちに、ずるり、体の芯から何かが引きずり出される。

「ひっ……」

 引き出されていくそれにまとわりつく場所が、震え上がるほどに痛む。
 信じられない。私、裂けてるんじゃないだろうか。下腹部から真っ二つに引き裂かれて、熱いものでその傷を広げられているような感覚。
 無理だ。我慢できない。私はもがき、とっさに手近なものをつかんだ。
 上質な布の感触。逃がさないようにわしづかみにして、浅い息を繰り返す。

「……エレナ」

 低音の囁きが、すぐそばから降ってくる。
 はっとして、私は目をこらす。

「ヴィンセント様」

  かすれきった声で、私はそのひとの名前を呼んだ。
 目の前にヴィンセントの顔がある。何度見ても飽きない、彫刻みたいな男性美をつめあわせたその顔。精悍で、気高さがはっきりと顔立ちに出ている、その顔。
 その顔が私を見下ろして、苦しそうに言う。

「すまない」

「ひあっ!! あっ! あ、ぐ……」

 信じられないくらい大きなそれが、ずるずると体に入ってくる。
 そんなのが入ってくる場所なんてないと思っていたのに、それはぎちりと私に埋まる。
 一番奥まで、満たされている。
 ひりひりする痛みの中にわずかな快楽の気配があって、私はほろりと涙をこぼした。
 悲しいわけじゃない。期待? もどかしさ? 恐れ?
 多分、どれも正解。
 私をすっかりと埋めたものは、やがて引き出されたかと思うと、また突きこまれる。

「くう、うっ、あ、んん……」

 跳び上がるほど痛いのはずっと同じだ。でも、気配だけだった快楽が膨らんでいく。お腹が熱くて重くて、今にも爆発しそうだ。ヴィンセント自身が私の中をかき乱す。

「きゃあっ!」

 誰にも触れられなかったところをすられると、あられもない声がほとばしった。
 声が、止まらない。叫ぶたびにヴィンセントがつらそうになっていくのに。
 止めたいのに、止まらない。
 少し離れたところから、調子っぱずれの哄笑が響き渡る。

「あははははは、やるではないか、宰相閣下! やれ! やれ、突けぇ!!」

 ぎり、と、酷い音がした。私を犯しているヴィンセントが、歯を食いしばったのだ。
 ぽたぽたっとぬるい汗が私の顔に落ちてくる。
 汚いとは思わなかった。むしろ、胸の真ん中が、ぎゅうっとした。
 あなたの涙みたいだね、と、私は思う。そして、どうにか、ヴィンセントに手を差し伸べる。あなたの両の頬を、私の手のひらで包みこむ。

「だい、じょうぶ……」

 言えたのはそれだけ。ヴィンセントは強く、強く目を閉じる。

「やめろ。許すな」

 食いしばった歯の間から、絞り出される声。
 どうしよう。ごめんね。

「許すよ。だって……」

 あなたが苦しんでいるのは、半分は皇帝のせい。
 半分は、私のせい。少しも、あなた自身のせいじゃない。
 どうにか思いを伝えようと、唇を開く。
 そこに、ヴィンセントの唇が重なった。

「!!」

 柔らかい。信じられないくらいに、柔らかい。私の体の中にある剛直とは反対の、優しい感触が、私の唇を押しつぶす。

 優しく、されている気がした。

 こんなときなのに、とても、優しくされている。
 嬉しかった。私も、優しくしたかった。

 拙い仕草で、彼の乾いた唇を舐める。
 彼はすぐに私の唇全体を覆うようにして、深い深いキスをした。
 私は呼吸を忘れた。ただただ温かな彼の唇と舌の感触に溺れていると、永遠にこうしていたい、と思う。
 閉じたまぶたの裏はどこまでも暗くて、温かくて、濡れていて。

 そして私は――おそらく、また気を失ったのだと思う。
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