蒼星伝 ~マッチ売りの男の娘はチート改造され、片翼の天使と成り果て、地上に舞い降りる剣と化す~

ももちく

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第3章:星皇の重い愛

第7話:お花摘み

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 アリス=ロンドがお花摘みに言っている隙を狙い、ベル=ラプソティが自分の軍師であるカナリア=ソナタに、アリス=ロンドの扱いをどうすべきかを問う。カナリア=ソナタは有益な存在であるなら、それを最大限に発揮すべきだと主張する。まさに軍師ならではの発言をしてみせるカナリア=ソナタであった。

 こちらの方にも問題はあった。周りからは軍隊ごっこだと揶揄されているベル=ラプソティとカナリア=ソナタであったが、それでもベル=ラプソティはカナリア=ソナタを側に置き続けた。そして、カナリア=ソナタはあるじであるベル=ラプソティの思いを現実化する策を示し続けてきた。

 ただひとつ、カナリア=ソナタから知恵を授かったことで大失敗したと思ったことは、星皇と結婚してしまったことであろう。星皇がお尻大好き好き好きずっぽし淫な男であることを、ベル=ラプソティだけでなく、カナリア=ソナタも気付かなかったのである。カナリア=ソナタはベル=ラプソティの口から、夫に恥辱を与えられたと訴えた時に発した言葉は『策士、策に溺れたのですゥ』であった。

 星皇:アンタレス=アンジェロはカナリア=ソナタですら脱帽せざるをえない策士であった。彼がお尻大好き好き好きずっぽし淫な性癖を持ち合わせていることなど、周囲にはまったく匂わせていなかったのだ。それゆえに安心して、カナリア=ソナタはベル=ラプソティの恋路を応援したのである。

 実際のところ、星皇の妻の座を狙う女性たちは数多いた。ベル=ラプソティがいくら天界が誇る才女だとしても、その才女たちのひとりに過ぎなかったのである。ライバルたちとの熾烈な争いを勝ち残ったベル=ラプソティであったが、カナリア=ソナタが居なければ、有象無象のひとりとして、ベル=ラプソティは終わっていたかもしれない。

 とある日、星皇:アンタレス=アンジェロの結婚相手として、最有力候補のひとりが失脚するという事件が天界で起きる。その時、カナリア=ソナタがベル=ラプソティに贈った言葉が『ご武運が開けましたのですゥ』であった。そこから、ベル=ラプソティは他のライバルたちが頭ひとつ抜きでた存在となる。その事件から3カ月も経たぬうちに、ベル=ラプソティは星皇との婚約へとたどり着く。

 ベル=ラプソティが天界で催された舞踏会で星皇と出会ってから、婚約までの期間は半年であった。そこからさらに3か月後にベル=ラプソティと星皇は初夜を迎えることとなったのだ。

「ふゥ。すっきりしたのデス」

「お帰り、アリス。でも、男の娘がお花摘みから帰ってきた第一声が、それなのはちょっといただけないわよ?」

「えっ。ベル様は言わないんデス?」

「当然よっ! なんで、そんな報告をするのか、そっちのほうが理解に苦しむわよっ!」

 ベル=ラプソティはこの辺りが、おちんこさんが付いている生物とそうでない生物との境なんだろうなと思わずには居られない。自分についてない身体の器官のために、おしっこを済ませた時の感覚が違うのだろうと予想してしまう。普段は紳士面している星皇ですら、アリスと同じことを言っていたのを思い出してしまうベル=ラプソティである。

 しかも、おちんこさんの付いている生物は、それが食事中であろうが、リビングでくつろいでいる時であろうが、同じことを同じ感じで日常のように言ってのける。言われるこっち側としたら、眉根をひそめる他無い台詞である。

「まあ、そんなことは良いわ。そろそろ出発になるわよ。カナリアがクォール様にそれとなく、あいつからのプレゼントを回収できるルートを指し示しておいてくれたわよ」

「ありがとうございマス。もう少しだけ我慢すれば、星皇様の愛をたっぷり補給できマス」

「チュッチュッチュ。崑崙山クンルンシャンを半壊できるほどの愛が詰まっているのは、ドン引きだったッチュウ」

 天界の騎乗獣であるコッシロー=ネヅは今、休息モードである天使の4枚羽が背中についている白いネズミの姿であった。彼はカナリア=ソナタの頭に乗りながら、ちくりと嫌みを言ってみせる。カナリア=ソナタはコッシロー=ネヅの嫌味をすぐ近くで聞くことになり、アハハ……とため息交じりの笑みを零すことになる。

 しかしながら、オリハルコン以上の硬さを持つアリス=ロンドの心はまったく揺るぐことなく、アリス=ロンドはまるでコッシロー=ネヅの発言自体が無かったかのような振る舞いで、幌付き荷馬車の荷台に乗り込んでしまう。コッシロー=ネヅは『暖簾に腕押し』とはまさにこのことなのだろうと思い、これ以上は何も言わなくなってしまう。

 クォール=コンチェルト第1王子を先頭に据え、一団はようやく崑崙山クンルンシャン経由でのグリーンフォレスト国への旅路を始める。彼らの運が良かったことは、崑崙山クンルンシャンの高い部分まで登る必要が無くなったことであろう。そうしたのは、星皇:アンタレス=アンジェロである。

「アリスに対して、嫌味を言うつもりじゃないけど、これもあいつの計算通りだったりするわけ?」

「それはさすがに無いんじゃないですゥ? 成り行き上、こうなったと思うのですゥ」

 崑崙山クンルンシャンの麓から標高1000ミャートル地点までは、かつては森林に覆われていたのだが、その崑崙山クンルンシャンの南西側には草木の一本すら生えてない大きなクレーターが出来上がっていた。そうなったのも全て、星皇のはからいだとするにはさすがに無理がありすぎた。

 ベル=ラプソティとカナリア=ソナタは結果オーライからの副産物的なモノとしか捉えなかった。聖地を襲撃され、着の身着のままである聖地の住人たちにとって、崑崙山クンルンシャンの周りをびっしりと覆う森林地帯を抜けつつ、崑崙山クンルンシャンを登り、向こう側へ行くことは無謀と断じて良いことであった。しかしながら、予想されていた苦難は星皇のおかげ? で、半分以下へと減じるという、まさに神の御業がおこなわれたのである。

 クォール=コンチェルト第1王子を先頭としている一団は、足元に気をつけつつ、出来上がったばかりのクレーターの中を進んでいく。この地を進むのに不便なことと言えば、周りから見て、一団が見えすぎているという点がひとつ。他にもうひとつあり、それは水場が無いということであった。直径30キュロミャートル近くあるクレーターの中をさっさと潜り抜けてしまわねばならない事態に一団は置かれている。

 しかしながら、これほどまでの大きさのクレーターということは、逆に30キュロミャートルはなだらかな勾配の道を行くだけで済むということである。生物も草木も無いクレーター内ではあるが、先ほどの2点しか不便が無いという割と快適な道であったりもする。

「あのゥ。お花摘みに行きたくなりましたァ」

「奇遇ね。わたくしもよ。でも、こんな開けすぎたところのどこで、お花摘みをするわけ!?」

「チュッチュッチュ。お花摘みに行こうにも、花どころか草木の1本も無いでッチュウ。本当に誰が上手いこと言えとツッコミを喰らいそうなのでッチュウ」
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