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第5章:襲撃者
第7話:バスターモード
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死霊術師はどこからともなく聞こえてきた2枚羽の天使と天界の騎乗獣の声の出どころを探る。しかし、どこに目配せしてもかの者たちの姿は見えないのであった。それもそうだろうカナリア=ソナタたちは屍竜の喉元に張り付いており、死霊術師から見て、屍竜の頭側からちょうど真反対に隠れていたのだ。
カナリア=ソナタはその位置から銀色の聖書の力を借りて、死霊術師に幻惑を見せつけていた。もし、竜が屍竜でなければ、逆鱗があると言われている喉元にいる存在を許すはずが無かった。そして、屍竜だからこそ、盲点となっている部分に身を潜めていたのがカナリア=ソナタたちだったのだ。
ようやく本体の位置を特定した死霊術師であったが、自分はこの位置から動くことが出来ない。竜ほどの巨体を操るには直接、自分が手を下さなければならない。それゆえに当てずっぽうに屍竜に喉元を前足で引っ掻かせることになる。
そして、自分たちの位置がバレた時点で、そこに留まるアホも居ないのは確かであった。とうの昔にカナリア=ソナタたちは屍竜の喉元から離脱しており、屍竜はいたずらに自分の鋭利な爪で自分の身を傷つける行為を繰り返すだけになる。
「おのれ、おのれ、おのぉぉぉレェェェ!」
死霊術師の頭には血が昇りに昇る。300年前の星皇との戦いでも、ここまで釈迦の手のひらで踊らされる猿のようなことをされなかった。たかだか2枚羽の天使にここまで良いように扱われたのは初めてであった。これが6枚羽の熾天使のような高位の存在にあしなわれたのであれば、まだ納得できたであろう。
そして、自分の身と屍竜を穿った相手がさらに片羽しかない出来損ないの天使であったことに、世界へ対する恨みを誰よりも抱く。
「ランチャーストライク・エンジェルモード発動デス。射線上のカナリアさん、コッシローさんは今すぐ退避してくだサイ」
死霊術師は自分の斜め上50ミャートル先にいる片羽の天使を呪い殺さんとばかりに両目をギラギラと輝かせていた。出来損ないが2本の太すぎる破城槌をこちらに向けており、その先端が光を放たんとしていた。しかし、その光自体を目力で押しつぶしてしまうのではなかろうか? というくらいに死霊術師は睨みつけを止めようとはしなかった。
「出力40、50、60、70パーセント。これはなかなかにしぶといのデス。おまけで80パーセントまで上げてあげまショウ」
アリス=ロンドは両腕で抱えている金色の破城槌から発射される光線の太さを増しに増していく。光の洪水に飲み込まれた死霊術師と屍竜はその身体を段々と光の粒子へと変えていく。しかし、アリス=ロンドが思っていた以上に、光の波で洗い流そうとしている相手はその存在を維持し続けた。
いい加減、うんざりといった表情になったアリス=ロンドは、エネルギーを惜しむ相手では無いと断じる。
「出力100パーセントにしマス。獅子はウサギ相手にでも100パーセントを出すのデス。アリスは相手を舐めたことを反省せねばなりまセン」
アリス=ロンドがランチャーストライク・エンジェルモードで発射できる光線の最大値を死霊術師と屍竜に対して、ぶつけることになる。死霊術師は身に纏う汚いローブと共に、この世に爪の先の欠片すら残さずに消え去ることになる。
アリス=ロンドはフゥ……と息を吐き、邪魔者が完全に居なくなったことを認知する。そして、今まさに大小の川が合流し、巨大な湖と化したそれを解消するために、もう1度、両腕で抱える金色の破城槌から光線を発射しようとする。
「ランチャーストライク・エンジェル・バスターモードで撃ちマス。カナリアさん、コッシローさん。広範囲に光線が拡散するので、もっと大きく退避してくだサイ」
アリス=ロンドはカナリア=ソナタたちにそう告げると、コッシロー=ネヅはカナリア=ソナタを背中に乗せたまま、大空高くへ向かって、急いで駆け登っていく。退避が終えたのを視認したアリス=ロンドは、再び地上へと視線を向け、戦闘が始まる前にカナリア=ソナタから送られてきたデータをオープン型フルフェイス・ヘルメットの前面、内側に表示する。
カナリア=ソナタが送ってきたデータは、竜の襲来によって、時間が経ったものであり、今の状況では、かなり使えない部分があった。それゆえにアリス=ロンドは超一級天使装束の演算機能を駆使し、データの見直しを急ぐことになる。
大小の川の水が流入して出来た大きな湖が決壊するまで、あと数分も必要としなかった。それゆえに、その湖が決壊したとしても、地上で待っているベル=ラプソティが巻き込まれないようにアリス=ロンドはデータを修正したのである。
そして、修正を終えたデータを元に、狙撃地部分を特定する。アリス=ロンドが頭に被るオープン型フルフェイス・ヘルメットの前面、内側に表示されているバツ印はその数を10倍に増やしていた。
「ランチャーストライク・エンジェル・バスターモードを選んだのは正しかったのデス。出力100パーセントでいきマス!」
ランチャーストライク・エンジェル・バスターモードで撃つ場合、金色の破城槌から発射される光線は四方八方へと拡散するように出来ている。正確な地点を狙って穿つ場合なら、通常のモードで問題無いのだが、今は50以上もあるバツ印の地点を同時に穿たなければならない。
アリス=ロンドは金色の破城槌を地上へ向けて、次々と拡散していくエネルギー弾を発射する。ひとつひとつの破壊力は低くはなるが、こういった土木作業における効率と言った部分では、フルバーストモード時とそれほど遜色は無い。
「これぞまさに汚い花火だぜぇ? ってやつなのでしょうかァ?」
「花火は大空に向かって打ち上げるモノでッチュウ。これはどっちかというと『汚物は消毒だぁ?』じゃないでッチュウ?」
カナリア=ソナタとコッシロー=ネヅは土木作業に従事するアリス=ロンドを遠巻きに見ながら、そう感想を述べる。アリス=ロンドが両腕で抱え込んでいる金色の破城槌から撃ち出されるエネルギー弾は遠慮なく地上を穿ち、地図を塗り替えていく。カナリア=ソナタの目論見通り、水路が出来上がり、決壊した巨大な湖は轟音をあげながら、出来上がったばかりの水路に水を運び入れるのであった……。
カナリア=ソナタはその位置から銀色の聖書の力を借りて、死霊術師に幻惑を見せつけていた。もし、竜が屍竜でなければ、逆鱗があると言われている喉元にいる存在を許すはずが無かった。そして、屍竜だからこそ、盲点となっている部分に身を潜めていたのがカナリア=ソナタたちだったのだ。
ようやく本体の位置を特定した死霊術師であったが、自分はこの位置から動くことが出来ない。竜ほどの巨体を操るには直接、自分が手を下さなければならない。それゆえに当てずっぽうに屍竜に喉元を前足で引っ掻かせることになる。
そして、自分たちの位置がバレた時点で、そこに留まるアホも居ないのは確かであった。とうの昔にカナリア=ソナタたちは屍竜の喉元から離脱しており、屍竜はいたずらに自分の鋭利な爪で自分の身を傷つける行為を繰り返すだけになる。
「おのれ、おのれ、おのぉぉぉレェェェ!」
死霊術師の頭には血が昇りに昇る。300年前の星皇との戦いでも、ここまで釈迦の手のひらで踊らされる猿のようなことをされなかった。たかだか2枚羽の天使にここまで良いように扱われたのは初めてであった。これが6枚羽の熾天使のような高位の存在にあしなわれたのであれば、まだ納得できたであろう。
そして、自分の身と屍竜を穿った相手がさらに片羽しかない出来損ないの天使であったことに、世界へ対する恨みを誰よりも抱く。
「ランチャーストライク・エンジェルモード発動デス。射線上のカナリアさん、コッシローさんは今すぐ退避してくだサイ」
死霊術師は自分の斜め上50ミャートル先にいる片羽の天使を呪い殺さんとばかりに両目をギラギラと輝かせていた。出来損ないが2本の太すぎる破城槌をこちらに向けており、その先端が光を放たんとしていた。しかし、その光自体を目力で押しつぶしてしまうのではなかろうか? というくらいに死霊術師は睨みつけを止めようとはしなかった。
「出力40、50、60、70パーセント。これはなかなかにしぶといのデス。おまけで80パーセントまで上げてあげまショウ」
アリス=ロンドは両腕で抱えている金色の破城槌から発射される光線の太さを増しに増していく。光の洪水に飲み込まれた死霊術師と屍竜はその身体を段々と光の粒子へと変えていく。しかし、アリス=ロンドが思っていた以上に、光の波で洗い流そうとしている相手はその存在を維持し続けた。
いい加減、うんざりといった表情になったアリス=ロンドは、エネルギーを惜しむ相手では無いと断じる。
「出力100パーセントにしマス。獅子はウサギ相手にでも100パーセントを出すのデス。アリスは相手を舐めたことを反省せねばなりまセン」
アリス=ロンドがランチャーストライク・エンジェルモードで発射できる光線の最大値を死霊術師と屍竜に対して、ぶつけることになる。死霊術師は身に纏う汚いローブと共に、この世に爪の先の欠片すら残さずに消え去ることになる。
アリス=ロンドはフゥ……と息を吐き、邪魔者が完全に居なくなったことを認知する。そして、今まさに大小の川が合流し、巨大な湖と化したそれを解消するために、もう1度、両腕で抱える金色の破城槌から光線を発射しようとする。
「ランチャーストライク・エンジェル・バスターモードで撃ちマス。カナリアさん、コッシローさん。広範囲に光線が拡散するので、もっと大きく退避してくだサイ」
アリス=ロンドはカナリア=ソナタたちにそう告げると、コッシロー=ネヅはカナリア=ソナタを背中に乗せたまま、大空高くへ向かって、急いで駆け登っていく。退避が終えたのを視認したアリス=ロンドは、再び地上へと視線を向け、戦闘が始まる前にカナリア=ソナタから送られてきたデータをオープン型フルフェイス・ヘルメットの前面、内側に表示する。
カナリア=ソナタが送ってきたデータは、竜の襲来によって、時間が経ったものであり、今の状況では、かなり使えない部分があった。それゆえにアリス=ロンドは超一級天使装束の演算機能を駆使し、データの見直しを急ぐことになる。
大小の川の水が流入して出来た大きな湖が決壊するまで、あと数分も必要としなかった。それゆえに、その湖が決壊したとしても、地上で待っているベル=ラプソティが巻き込まれないようにアリス=ロンドはデータを修正したのである。
そして、修正を終えたデータを元に、狙撃地部分を特定する。アリス=ロンドが頭に被るオープン型フルフェイス・ヘルメットの前面、内側に表示されているバツ印はその数を10倍に増やしていた。
「ランチャーストライク・エンジェル・バスターモードを選んだのは正しかったのデス。出力100パーセントでいきマス!」
ランチャーストライク・エンジェル・バスターモードで撃つ場合、金色の破城槌から発射される光線は四方八方へと拡散するように出来ている。正確な地点を狙って穿つ場合なら、通常のモードで問題無いのだが、今は50以上もあるバツ印の地点を同時に穿たなければならない。
アリス=ロンドは金色の破城槌を地上へ向けて、次々と拡散していくエネルギー弾を発射する。ひとつひとつの破壊力は低くはなるが、こういった土木作業における効率と言った部分では、フルバーストモード時とそれほど遜色は無い。
「これぞまさに汚い花火だぜぇ? ってやつなのでしょうかァ?」
「花火は大空に向かって打ち上げるモノでッチュウ。これはどっちかというと『汚物は消毒だぁ?』じゃないでッチュウ?」
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