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第7章:淫蕩の王
第1話:黒鏡の向こう側から
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草地の上へと落下したサフィロ=ラプソティはゲホガハゴホッ! と大量の真っ黒な血反吐を吐くことになる。しかし、彼の身体の変化はそれだけではなかった。真っ黒に染まった神官の服から色素が抜け落ちるかのように黒が草地の地面へと流れ出す。サフィロ=ラプソティを中心として、真っ黒な水たまりが出来上がることになる。
その水たまりの中心でサフィロ=ラプソティはうつ伏せで倒れ込むことになる。そんな状態の彼に向かって、アリス=ロンドは長さ1ミャートルの金筒を右手に持ち、その先端を突きつける。しかし、その先端から光線を発射することは無かった。
「ヘルメットから受け取る情報を精査した結果、サフィロ様は何者かに操られていただけだと推測されマス。ベル様、まだサフィロ様に近づかないでくだサイ」
アリス=ロンドはベル=ラプソティが父親に駆け寄ろうとしたところを言葉で釘を刺す。自分の父親の下へと駆け寄ろうとしていたベル=ラプソティはビクッと身体を震わせながら、無理やりに初動を止めてしまうことになる。静止を喰らったベル=ラプソティは立ち止ったは良いが、この後、どう動けば良いか戸惑うことになる。サフィロ=ラプソティはあくまでも文官であり、武人としての才能は欠片も所持していない。それなのに、アリス=ロンドとの肉弾戦では、アリス=ロンドと引けを取らぬほどの戦いを見せた。
ベル=ラプソティがどうしたものかと思案に暮れていると、サフィロ=ラプソティの身体からあふれ出す黒い染みはどんどん大きなモノとなっていき、今や水たまりというには大きすぎる範囲にまで広がっていた。アリス=ロンドとベル=ラプソティは広がりを見せる黒から自然とじりじりと距離を開けていく。サフィロ=ラプソティを操っていたのが、この黒だとすれば、次の宿主を探すためにこの黒に触れる者を探しているようにも感じたからだ。
やがて、広がりを止めた黒から一本の線が生まれ、アリス=ロンドとベル=ラプソティの間を割って入るかのように走り出す。アリス=ロンドとベル=ラプソティはその黒い線の端を眼で追うことになるが、その線が伸びていくスピードが段々と早まり、アリス=ロンドたちは倒れているサフィロ=ラプソティに向かって背中を見せる恰好となる。それに関して、危機感を持つ2人であるが、それでも黒い線が走っていくその先を注視せねばならないという直感があった。
黒い線はとある一点で動きを止めると、次は空へと向かって真っすぐな黒い線を作ることになる。そして、上空10ミャートル地点のところで黒い線は点となり、さらには面となるように広がりを見せていく。黒い面と化した黒はまるで黒鏡のような形となる。
「何かがあの黒の向こう側から来ますゥ! ベル様、戦闘準備をォ!」
赤縁のメガネで黒をモニタリングしていたカナリア=ソナタが大声でベル=ラプソティに伝える。魔素測量器と魔力残量確認石が示す値がデタラメなモノになり、カナリア=ソナタはこれまでとは比較にならない存在がこの場に出現することを予測したのだ。そして、カナリア=ソナタの予測通り、今まで相手をしてきた悪魔がまるで虫けらであったが如くの異様な魔素を身体全体から噴き出す存在が現れることになる。
黒鏡の表面にいくつもの亀裂が入り、さらには外側へと向かって、鏡面を弾かせる。ベル=ラプソティは戦乙女装束の襟元にあるスイッチを押し、急いでオープン型フルフェイス・ヘルメットを物質化させて、それを頭に装着することになる。
割れた黒鏡の中心部はさらに黒よりも黒い渦巻が生じており、さらにその渦巻の奥から外側に向かって、右腕が突き出されることになる。その右腕の先にある右手が黒鏡の縁を掴む。さらに黒い渦巻から左腕が突き出されて、その先にある左手で先ほどと同様に黒鏡の縁を掴むことになる。
次に黒い渦巻から出てきたのはこの世に産まれてきたことに喜びを感じているような表情をした顔であった。額の部分には2本の立派な角が生えており、どんな槍よりも鋭利な印象をベル=ラプソティたちに与えた。
「アア。空気が美味い。しかし、聖母の血はこれ以上に美味いに違いない……」
かの存在は今や黒鏡から上半身を出しつつあった。黒鏡の向こう側から現世に現れ出でようとしている真っ最中であることは確かであり、ベル=ラプソティは自然と身構えることになる。そんな臨戦態勢を取りつつあるベル=ラプソティを舐めるように見つめる、かの存在は口の端をおおいに歪ませることになる。まるで今から食べてあげるから、そんなに恐怖を抱かなくても良いんだよ? と言いたげな表情でもあった。
「ランチャーストライク・エンジェルモード発動デス。ベル様は巻き込まれないように注意してくだサイ」
「え!? ちょっと待ちなさいよっ!?」
黒鏡の向こう側から、こちら側へと身を乗り出そうとしてきた存在に向かって、破城槌の大きさもある金筒を両脇に抱えたアリス=ロンドをベル=ラプソティは注視せざるをえなくなる。相手がまだ名乗りをする前に攻撃をしてしまうのはアリス=ロンドらしいと言えばらしいのだが、それでも相手が何者かを知った後だろうとツッコミを入れざるをえなくなるベル=ラプソティであった。
しかし、アリス=ロンドの最優先事項は『ベル=ラプソティを護る』ことである。かの存在が今、どういう状況なのかなど、知ったことではない。危険な存在がこちら側に完全に出てくるのをゆうちょに待っているほうが馬鹿らしいのだ、アリス=ロンドにとっては。
アリス=ロンドは両脇に抱えた金色に輝く破城槌の先端から太い光線を2本、撃ち出す。そして、黒鏡ごと、かの存在を光の彼方へと送り出そうとする。しかし、アリス=ロンドの先制攻撃はまったくもって効果など無いと言いたげに、かの存在は太い光線に晒されている中でも、動きを止めることは無かった。牛頭鬼をその先にある森林ごと焼き払ったアリス=ロンドのランチャーストライク・エンジェルモードによる一撃を喰らっているというのに、まるで寝起きに朝日を浴びているかのような表情を顔に浮かべる存在であった。
「なかなかに気持ちが良い光よ。目覚めるにはちょうど良い神力を感じるぞ」
かの存在は黒鏡の向こう側から完全に身体を出す。一見、ニンゲンそのものの姿をしていたが、その身体からは魔素が膨れるように溢れ出す。その途端にヒトの頭の左に雄牛顔、右には雄羊顔が首元から生えてくる。そして胴体も膨れ上がり竜を思わせるような肉付きと鱗付きへと成り代わっていく。
かの存在の変化はそれだけでなく、下半身にある足の太さは樹齢1000年を超える大木のような太さとなり、さらには足の先端に生える爪は猛禽のような鋭い爪が生えていた。そして、鞭のように地面をビシバシと叩く蛇のような尾がかの存在の尻から生えていた……。
その水たまりの中心でサフィロ=ラプソティはうつ伏せで倒れ込むことになる。そんな状態の彼に向かって、アリス=ロンドは長さ1ミャートルの金筒を右手に持ち、その先端を突きつける。しかし、その先端から光線を発射することは無かった。
「ヘルメットから受け取る情報を精査した結果、サフィロ様は何者かに操られていただけだと推測されマス。ベル様、まだサフィロ様に近づかないでくだサイ」
アリス=ロンドはベル=ラプソティが父親に駆け寄ろうとしたところを言葉で釘を刺す。自分の父親の下へと駆け寄ろうとしていたベル=ラプソティはビクッと身体を震わせながら、無理やりに初動を止めてしまうことになる。静止を喰らったベル=ラプソティは立ち止ったは良いが、この後、どう動けば良いか戸惑うことになる。サフィロ=ラプソティはあくまでも文官であり、武人としての才能は欠片も所持していない。それなのに、アリス=ロンドとの肉弾戦では、アリス=ロンドと引けを取らぬほどの戦いを見せた。
ベル=ラプソティがどうしたものかと思案に暮れていると、サフィロ=ラプソティの身体からあふれ出す黒い染みはどんどん大きなモノとなっていき、今や水たまりというには大きすぎる範囲にまで広がっていた。アリス=ロンドとベル=ラプソティは広がりを見せる黒から自然とじりじりと距離を開けていく。サフィロ=ラプソティを操っていたのが、この黒だとすれば、次の宿主を探すためにこの黒に触れる者を探しているようにも感じたからだ。
やがて、広がりを止めた黒から一本の線が生まれ、アリス=ロンドとベル=ラプソティの間を割って入るかのように走り出す。アリス=ロンドとベル=ラプソティはその黒い線の端を眼で追うことになるが、その線が伸びていくスピードが段々と早まり、アリス=ロンドたちは倒れているサフィロ=ラプソティに向かって背中を見せる恰好となる。それに関して、危機感を持つ2人であるが、それでも黒い線が走っていくその先を注視せねばならないという直感があった。
黒い線はとある一点で動きを止めると、次は空へと向かって真っすぐな黒い線を作ることになる。そして、上空10ミャートル地点のところで黒い線は点となり、さらには面となるように広がりを見せていく。黒い面と化した黒はまるで黒鏡のような形となる。
「何かがあの黒の向こう側から来ますゥ! ベル様、戦闘準備をォ!」
赤縁のメガネで黒をモニタリングしていたカナリア=ソナタが大声でベル=ラプソティに伝える。魔素測量器と魔力残量確認石が示す値がデタラメなモノになり、カナリア=ソナタはこれまでとは比較にならない存在がこの場に出現することを予測したのだ。そして、カナリア=ソナタの予測通り、今まで相手をしてきた悪魔がまるで虫けらであったが如くの異様な魔素を身体全体から噴き出す存在が現れることになる。
黒鏡の表面にいくつもの亀裂が入り、さらには外側へと向かって、鏡面を弾かせる。ベル=ラプソティは戦乙女装束の襟元にあるスイッチを押し、急いでオープン型フルフェイス・ヘルメットを物質化させて、それを頭に装着することになる。
割れた黒鏡の中心部はさらに黒よりも黒い渦巻が生じており、さらにその渦巻の奥から外側に向かって、右腕が突き出されることになる。その右腕の先にある右手が黒鏡の縁を掴む。さらに黒い渦巻から左腕が突き出されて、その先にある左手で先ほどと同様に黒鏡の縁を掴むことになる。
次に黒い渦巻から出てきたのはこの世に産まれてきたことに喜びを感じているような表情をした顔であった。額の部分には2本の立派な角が生えており、どんな槍よりも鋭利な印象をベル=ラプソティたちに与えた。
「アア。空気が美味い。しかし、聖母の血はこれ以上に美味いに違いない……」
かの存在は今や黒鏡から上半身を出しつつあった。黒鏡の向こう側から現世に現れ出でようとしている真っ最中であることは確かであり、ベル=ラプソティは自然と身構えることになる。そんな臨戦態勢を取りつつあるベル=ラプソティを舐めるように見つめる、かの存在は口の端をおおいに歪ませることになる。まるで今から食べてあげるから、そんなに恐怖を抱かなくても良いんだよ? と言いたげな表情でもあった。
「ランチャーストライク・エンジェルモード発動デス。ベル様は巻き込まれないように注意してくだサイ」
「え!? ちょっと待ちなさいよっ!?」
黒鏡の向こう側から、こちら側へと身を乗り出そうとしてきた存在に向かって、破城槌の大きさもある金筒を両脇に抱えたアリス=ロンドをベル=ラプソティは注視せざるをえなくなる。相手がまだ名乗りをする前に攻撃をしてしまうのはアリス=ロンドらしいと言えばらしいのだが、それでも相手が何者かを知った後だろうとツッコミを入れざるをえなくなるベル=ラプソティであった。
しかし、アリス=ロンドの最優先事項は『ベル=ラプソティを護る』ことである。かの存在が今、どういう状況なのかなど、知ったことではない。危険な存在がこちら側に完全に出てくるのをゆうちょに待っているほうが馬鹿らしいのだ、アリス=ロンドにとっては。
アリス=ロンドは両脇に抱えた金色に輝く破城槌の先端から太い光線を2本、撃ち出す。そして、黒鏡ごと、かの存在を光の彼方へと送り出そうとする。しかし、アリス=ロンドの先制攻撃はまったくもって効果など無いと言いたげに、かの存在は太い光線に晒されている中でも、動きを止めることは無かった。牛頭鬼をその先にある森林ごと焼き払ったアリス=ロンドのランチャーストライク・エンジェルモードによる一撃を喰らっているというのに、まるで寝起きに朝日を浴びているかのような表情を顔に浮かべる存在であった。
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かの存在の変化はそれだけでなく、下半身にある足の太さは樹齢1000年を超える大木のような太さとなり、さらには足の先端に生える爪は猛禽のような鋭い爪が生えていた。そして、鞭のように地面をビシバシと叩く蛇のような尾がかの存在の尻から生えていた……。
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※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
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