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第16章:逃避行

第6話:ミンミンとタケル

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 コッサンに命を救われたセツラは、コッサンと同じ馬に乗ることになる。だが、セツラはお尻から腰のあたりに当たる、コッサンの男のシンボルに戸惑ってしまう。しかしながら、コッサンから見れば、セツラは満足に馬を操ることが出来ない。追手を巻いたからといって、セツラを自分の身体にひっつかせて、出来る限り、馬の速度をあげなければならない状態だった。

「セツラ殿。身共の節操のないおちんこさんを嫌がるのはわかりますが……。もう少しだけ速度をあげます。我慢してもらえると助かります」

「は、はひ! な、なるべく大きくしないようにしていただけると助かりますっっっ」

 セツラは身体をこわばらせ、なるべくならコッサンから少しでも距離を開けようとした。だが、コッサンはそんなセツラの身体を左腕でがっちりホールドし、さらには腰を前へと少しだけスライドさせる。セツラは密着度が高くなったことで、顔を真っ赤にし、涙目になってしまうのであった。

「すいません……。もしも、セツラ殿の背中に出してしまった時は責任を取りますので」

「うひゃぃ!? 出すって何を出すのです!?」

 セツラは恐る恐る身体の向きを変えようとする。だが、その動きがまたしてもコッサンのおちんこさんに刺激を与えてしまう。セツラは背中にあたるコッサンのアレの固さと熱量が上がってきたことで、それ以上、身体を動かすことは危険すぎると判断した。

 固まり切ったセツラを馬上から落とさぬように移動するコッサンであった。コッサンの視線を向けている先には、血濡れの女王ブラッディ・エーリカの団員たちがいた。しかし、コッサンはとある人物を眼にすると、馬の速度を一切落とさずに、その男の横を通り過ぎていってしまうのであった。

「あっれ? セツラを助けてくれてありがとうって一言、言っておこうとしたんだけどな。あいつ、俺とすれ違う時に、確かに舌打ちしたよな??」

 タケルはおかしいなあ? という顔つきになっていた。エーリカに頼み込んで、自分もコッサンとセツラの方を見てくると告げて、血濡れの女王ブラッディ・エーリカの団の後方部隊近くにまで、馬に乗って、わざわざ下がってきた。しかしながら、何かを訴えるような顔をしているセツラがその何かを言おうとする前に、コッサンがセツラを馬に乗せたまま、走り去ってしまったのである。

 タケルはこりこりと顎の下を掻き、自分はいつもエーリカとセツラのお兄ちゃん役をやっている癖に、肝心なところでは役立たず野郎だと思われたのだろうと推測する。

「しゃあねぇ……。無事にケアンズ王国まで逃げ切れたら、改めて、詫びと感謝の念を伝えておくか」

 タケルはそう呟くと、馬の向きを変えて、エーリカの下へと向かう。その途上、アベルたちと出くわし、セツラはコッサンが無事、回収したと告げる。

「それは安心した。一時はどうなるかと思っていた」

「本当にびっくりしたのです! セツラさんだけ、このままアデレート王家軍に囚われの身になってしまうのかと思ってしまったのです!」

 アベルとレイヨンは胸を撫でおろしていた。しかしながら、ミンミンだけは心あらずと言った感じである。そんなミンミンにタケルがどうしたんだ? と声をかける。

「シュウザン将軍が直々に指揮を執っているんだべさ。もしかしたら、ケンキさんも一緒にいるんじゃないかと思うと、おいら、心配で心配でたまらないだべさ……」

「あーーー。そうだな……。チョウハン河の橋じゃ、未だにキョーコさんが踏ん張ってくれているみたいだしな。もしかすると、キョーコさんとケンキさんが戦っている真っ最中かもしれん……」

「おら、やっぱり、ケンキさんのことが心配だべさっ! アベル、レイヨン。皆には悪いけど、おいら、ケンキさんを説得してくるだっ!」

「おい、ミン! 行ってしまったか……。タケル殿、お手数をかけて申し訳ないが、ミンのことを頼んでよいか?」

「おう、任せとけ。俺が炊きつけた格好になっちまってるしな。それにミンミンは今、手ぶらだ。ケンキさんが振るう剣がミンミンの狂暴すぎる股間の棍棒を真っ二つにしちまうかもしれんからなっ!」

 タケルはそう言うと、馬の向きを変えて、ミンミンが走り去っていった先へと向かう。残されたアベルはレイヨンが乗っている馬に自分の馬を近づける。そして、心配そうにしているレイヨンの左手に自分の右手を沿えるのであった。

「アベル隊長……。やらしいのです……」

「う、うほんっ! レイが悲しい顔をしていたからなっ! ミンなら大丈夫だっ! タケル殿はああ言っていたが、ミンの股間の棍棒なら、下手な長剣ロング・ソードなど、かち折ってくれるはずだ!」

「アベル隊長のとはサイズが全く違いますもんね! ミンミン殿なら、そうできると信じていますのです!」

 アベルはレイを元気づけようと、自分なりにも冗談を言ってみせた。だが、悲しいかな? レイヨンはアベルがこの世で最も気にしていることのひとつをずばりと言ってしまう。アベルは乾いた笑いをしながら、顔をうつむかせていく。レイヨンは頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、アベル隊長は何で元気が無くなっていってるのだろう? と不思議に思ってしまう。

 そんな2人のことは置いておいてだ。タケルはミンミンを追いかけた。そのミンミンは橋を渡ってきたシュウザン将軍率いる2千の兵にすっかり囲まれてしまっていた。しかしながら、ミンミンはそんな状態にありながらも、男気を発揮し続けた。

「おいらはケンキさんに用があって、ここに戻ってきたんだべさ! 邪魔をするなら、シュウザン将軍と言えども、ぶっとばしてやるだっ!」

「ほう……。これはこれは、ミンミン殿ではないか。安心するが良い。ケンキ殿なら、この捕縛戦には同行していない」

「それは本当だべか!? じゃあ、ケンキさんは今、どこに居るだべか!?」

「自分は知らん。だが、敵前逃亡したのは事実だ。今頃、誰かがケンキ殿を追っているやもしれん」

 シュウザン将軍はミンミンを焚きつけるだけ、焚きつけた。ミンミンは『大槌のデーモン』と戦場で畏怖されている存在だ。ならば、彼ならきっと、ケンキ殿の窮地を救ってやれると思った。シュウザン将軍はミンミンの包囲を解けと、兵士たちに告げる。そう命じられた兵士たちは戸惑いの色を隠せなかった。

「ミンミン捕縛の功は他の者に譲るまでよ。なあに心配するな。あちらから血濡れの女王ブラッディ・エーリカの団の幹部がやってきてくれた。我らはその男を捕らえることで、我らの隊の功としようぞ!」

 シュウザン将軍はわざわざ邪悪な笑みを顔に浮かべ、ミンミンでは無く、タケルの方に視線を向けた。ミンミンはハッとなり、シュウザン将軍の視線の先を追うのであった。だが、タケルはミンミンに向かって、こう告げる。

「おっし。話はわかった! ミンミン! ケンキ殿を助けに行ってこい! その間、この2千の兵全部を俺が引き受けておいてやらぁ!」

「タケルさん、何を言っているんだべ!? おいらはタケルさんを犠牲にしたいとは思っていないんだべ!?」

「うっせぇ! ミンミンはケンキさんの前で恰好つけてくることだけ考えてろ! 俺はこんなとこで死ぬわけねーんだよっ! さあ、わざわざシュウザン将軍が道を開けてくれてるんだっ! とっとと行きやがれっっっ!」
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