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第3章:恋の味は蜂蜜
第3話:蒼き虎
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アキヅキ=シュレインは夜中に突然やってきた来訪者を迎撃する準備を整える。何がこの部屋に飛び込んできても良いように、身体の体温は急激に上がっていき、逆に心の中はどんどんと冷めて行く。
身体に熱が入らねば、ニンゲン、素早い動きは出来ない。かといって、心まで熱しっては戦いの中で、身体の暴走を許してしまう。常に自分の身体の手綱を握っていろ。それがアイス師匠の格言であった。
アキヅキが鋭い眼光を自室のドアに向けて放っていると、その向こう側で外からドンドンッ! と体当たりらしきことをしていた物体が音を立てるのをやめる。しかしながら、アキヅキには一瞬の隙もなかったのであった。
(来るっ!!)
アキヅキが頭の中にそう思った瞬間であった。廊下にいた物体は渾身の力を込めて、ドアに体当たりをし、バゴーーーンッ! という大きな音を立てて、ドアを破壊し、さらにはアキヅキに肉薄するのであった。
その物体は蒼き虎であった。蒼き虎の顔つきはまさに『どうだ? 一瞬であるが油断したであろう?』であった。
しかし、その余裕しゃくしゃくの顔つきは次の瞬間には驚愕の色を映し出すのであった。
両足を左右に大きく開き、そのまま床に無い胸がつかんとばかりに、前かがみに身体を出来る限り低くしていたアキヅキが『フッ!!』と鋭く息を吐く。そして、斜め下から蒼き虎の下腹を逆袈裟斬りにし、蒼き虎を胴の真ん中で真っ二つにしてしまったのである。
蒼き虎が普通の虎であったなら、離れ離れになった胴体から盛大に紅き血をまき散らすはずであった。しかし、蒼き虎が実際にまき散らしたのは、ぬめっとした蒼き液体であったのだ。
アキヅキはその返り液体(?)を自分の身体の隅々に浴びてしまうことになる。幸いなことに蒼い液体は毒の類ではなかったようで、アキヅキの体調に変化をもたらすことは無かった。
胴体の前と後ろ部分に2分割された蒼き虎は、未だに絶命していなかった。前足2本をじたばたとさせ、この部屋から必死に出て行こうとしていた。
(こいつ。どこかに帰ろうとしている? いったい、どこへ?)
アキヅキが疑問に思っていると、自室の外が騒がしくなっていた。
「姫っ! 大丈夫かっ!? 何かとてつもなくデカい音がしやがったけどさ!!」
シャクマ=ノブモリを始め、フラン=パーン、アイス=ムラマサが壊れたドアが部屋の出入り口を塞ぐ格好になっていたので、その壊れたドアにさらに蹴りを入れて、部屋の角へと蹴り飛ばすのであった。そして、彼らは部屋に入るなり、アキヅキに対して失礼なことを言い出すのであった。
「くっさ~~~い!! この部屋、とてつもなくお酒くさいニャ~~~!!」
「くんくん、くんくん。この匂いはショウド国産の虎焼酎だブヒッ。なんだいなんだい。身体が火照って眠れないから、寝酒をして、さらには酔っぱらって暴れちまったのかブヒッ?」
「フランもアイス師匠も失礼ねっ! ほら、そこっ! そこの蒼い虎を見なさいよっ!!」
アキヅキは大剣の切っ先を自分のベッドの上へと向ける。そこにはついに力尽き、絶命してしまった蒼き虎の上半身が転がっていたのであった。その無残な虎の死骸を見て、アキヅキの部屋に集まった面々がほぉっ! と思わず感嘆の声を上げるのであった。
「すげえな。太刀筋を見るに、こりゃ一刀両断ってか……。姫、お前さん、鎧武者としても十分にやっていけるんじゃねえの?」
「ブヒッ。ますます剣の腕を上げたようだブヒッ。いやあ、これは師匠冥利に尽きるんだブヒッ」
蒼き虎の死骸を検分しているシャクマ=ノブモリとアイス=ムラマサがすごいすごいと手放しにアキヅキを褒めたたえるのであった。アキヅキはなんだか照れ臭い気分である。ここまでアイス師匠が手放しに褒めてくれたことなど、2,3回程度しかアキヅキは経験したことがない。
照れ臭さが過ぎると、なんだか誇らしい気分になってしまうアキヅキである。アキヅキは腰の左右に自分の両手の甲をあてて、えっへんとばかりに胸を張ってしまうのであった。
バスローブの前がはだけて、スミレ色のブラジャーとパンツ、そして引き締まったウエストが丸出しになっているアキヅキにツッコミを入れるべきか迷っていたフランが、まあ、あとで気付いて、顔から火を噴くほどに恥ずかしがるのも面白いかと思う。
そして、そんなアキヅキを放っておいて、フランは蒼き虎の切り離された下半身部分を見るのであった。そこでフランはある物体に気づくことになる。
「あれ? 虎の下半身に半分に割れた玉があるニャ」
「ん? この虎はオスだったってことか?」
「違うニャ! そっちのタマタマじゃないんだニャ! シャクマのボケに付き合っていたら、夜が明けるニャ!」
シャクマがフランにきつめのツッコミを喰らい、困り顔で自分の後頭部を軽くポリポリと左手で掻くのであった。
フランが蒼き虎の体内から半分に割れた玉、といよりは宝石のように艶がある珠を取りだし、両手に片方づつ持って、皆に見せるのであった。
「これ、いったい、何なのニャ?」
フランが首を傾げながら、アキヅキ、シャクマ、アイスにそれを見せつける。他の3人も一様に首を傾げて、うーーーん? と唸る一方であった。
その時であった。突然、アキヅキが首につけていた蒼色の水晶がはめ込められたペンダントの水晶が怪しく明滅しはじめたのである。
しかもだ。それに呼応してフランが両手に持っていた半分に割れた珠も明滅し始めたのである。さらには、今まで死んだとばかり思っていた蒼き虎の眼がクワッ! と蒼く光り出す。そして、ベッドの上で前足をバタつかせ、アキヅキの使用しているベッドの布団をバリバリとその鋭い爪で破壊し始めたのである。
「うわっ! びっくりしたわっ!」
シャクマたちは急に動き出した死骸に驚くのは当然のことであった。フランは驚きの余りに半分に割れた珠を床の上に落としてしまう。するとだ。パリーンッ! という甲高い音を鳴らし、さらに細かく珠は割れてしまうのであった。
それと同時に蒼き虎はピクピクと細かく痙攣し、数分後にはまた物言わぬ死骸へと戻ってしまったのであった。
身体に熱が入らねば、ニンゲン、素早い動きは出来ない。かといって、心まで熱しっては戦いの中で、身体の暴走を許してしまう。常に自分の身体の手綱を握っていろ。それがアイス師匠の格言であった。
アキヅキが鋭い眼光を自室のドアに向けて放っていると、その向こう側で外からドンドンッ! と体当たりらしきことをしていた物体が音を立てるのをやめる。しかしながら、アキヅキには一瞬の隙もなかったのであった。
(来るっ!!)
アキヅキが頭の中にそう思った瞬間であった。廊下にいた物体は渾身の力を込めて、ドアに体当たりをし、バゴーーーンッ! という大きな音を立てて、ドアを破壊し、さらにはアキヅキに肉薄するのであった。
その物体は蒼き虎であった。蒼き虎の顔つきはまさに『どうだ? 一瞬であるが油断したであろう?』であった。
しかし、その余裕しゃくしゃくの顔つきは次の瞬間には驚愕の色を映し出すのであった。
両足を左右に大きく開き、そのまま床に無い胸がつかんとばかりに、前かがみに身体を出来る限り低くしていたアキヅキが『フッ!!』と鋭く息を吐く。そして、斜め下から蒼き虎の下腹を逆袈裟斬りにし、蒼き虎を胴の真ん中で真っ二つにしてしまったのである。
蒼き虎が普通の虎であったなら、離れ離れになった胴体から盛大に紅き血をまき散らすはずであった。しかし、蒼き虎が実際にまき散らしたのは、ぬめっとした蒼き液体であったのだ。
アキヅキはその返り液体(?)を自分の身体の隅々に浴びてしまうことになる。幸いなことに蒼い液体は毒の類ではなかったようで、アキヅキの体調に変化をもたらすことは無かった。
胴体の前と後ろ部分に2分割された蒼き虎は、未だに絶命していなかった。前足2本をじたばたとさせ、この部屋から必死に出て行こうとしていた。
(こいつ。どこかに帰ろうとしている? いったい、どこへ?)
アキヅキが疑問に思っていると、自室の外が騒がしくなっていた。
「姫っ! 大丈夫かっ!? 何かとてつもなくデカい音がしやがったけどさ!!」
シャクマ=ノブモリを始め、フラン=パーン、アイス=ムラマサが壊れたドアが部屋の出入り口を塞ぐ格好になっていたので、その壊れたドアにさらに蹴りを入れて、部屋の角へと蹴り飛ばすのであった。そして、彼らは部屋に入るなり、アキヅキに対して失礼なことを言い出すのであった。
「くっさ~~~い!! この部屋、とてつもなくお酒くさいニャ~~~!!」
「くんくん、くんくん。この匂いはショウド国産の虎焼酎だブヒッ。なんだいなんだい。身体が火照って眠れないから、寝酒をして、さらには酔っぱらって暴れちまったのかブヒッ?」
「フランもアイス師匠も失礼ねっ! ほら、そこっ! そこの蒼い虎を見なさいよっ!!」
アキヅキは大剣の切っ先を自分のベッドの上へと向ける。そこにはついに力尽き、絶命してしまった蒼き虎の上半身が転がっていたのであった。その無残な虎の死骸を見て、アキヅキの部屋に集まった面々がほぉっ! と思わず感嘆の声を上げるのであった。
「すげえな。太刀筋を見るに、こりゃ一刀両断ってか……。姫、お前さん、鎧武者としても十分にやっていけるんじゃねえの?」
「ブヒッ。ますます剣の腕を上げたようだブヒッ。いやあ、これは師匠冥利に尽きるんだブヒッ」
蒼き虎の死骸を検分しているシャクマ=ノブモリとアイス=ムラマサがすごいすごいと手放しにアキヅキを褒めたたえるのであった。アキヅキはなんだか照れ臭い気分である。ここまでアイス師匠が手放しに褒めてくれたことなど、2,3回程度しかアキヅキは経験したことがない。
照れ臭さが過ぎると、なんだか誇らしい気分になってしまうアキヅキである。アキヅキは腰の左右に自分の両手の甲をあてて、えっへんとばかりに胸を張ってしまうのであった。
バスローブの前がはだけて、スミレ色のブラジャーとパンツ、そして引き締まったウエストが丸出しになっているアキヅキにツッコミを入れるべきか迷っていたフランが、まあ、あとで気付いて、顔から火を噴くほどに恥ずかしがるのも面白いかと思う。
そして、そんなアキヅキを放っておいて、フランは蒼き虎の切り離された下半身部分を見るのであった。そこでフランはある物体に気づくことになる。
「あれ? 虎の下半身に半分に割れた玉があるニャ」
「ん? この虎はオスだったってことか?」
「違うニャ! そっちのタマタマじゃないんだニャ! シャクマのボケに付き合っていたら、夜が明けるニャ!」
シャクマがフランにきつめのツッコミを喰らい、困り顔で自分の後頭部を軽くポリポリと左手で掻くのであった。
フランが蒼き虎の体内から半分に割れた玉、といよりは宝石のように艶がある珠を取りだし、両手に片方づつ持って、皆に見せるのであった。
「これ、いったい、何なのニャ?」
フランが首を傾げながら、アキヅキ、シャクマ、アイスにそれを見せつける。他の3人も一様に首を傾げて、うーーーん? と唸る一方であった。
その時であった。突然、アキヅキが首につけていた蒼色の水晶がはめ込められたペンダントの水晶が怪しく明滅しはじめたのである。
しかもだ。それに呼応してフランが両手に持っていた半分に割れた珠も明滅し始めたのである。さらには、今まで死んだとばかり思っていた蒼き虎の眼がクワッ! と蒼く光り出す。そして、ベッドの上で前足をバタつかせ、アキヅキの使用しているベッドの布団をバリバリとその鋭い爪で破壊し始めたのである。
「うわっ! びっくりしたわっ!」
シャクマたちは急に動き出した死骸に驚くのは当然のことであった。フランは驚きの余りに半分に割れた珠を床の上に落としてしまう。するとだ。パリーンッ! という甲高い音を鳴らし、さらに細かく珠は割れてしまうのであった。
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