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第3章:恋の味は蜂蜜
第2話:女らしさ
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2人が本丸に寄った理由は、それぞれにあったのだが、ちょうど、その任が終わった後に、3人ばったり、本丸前に集まったことにより、世間話に興じたという運びであった。
最初は、フランがやれ、後詰の砦からの食糧供給が滞っているとか、サクヤがキレイな包帯が少なくなってきたことをフランに告げて、フランが面倒くさいよ~~~と愚痴っていたわけだ。
現在、大怪我を負い、動けぬ身となり本丸の医務室で休むカゲツ=シュレインの付きっ切りの看病をしているのがサクヤ=ニィキューそのひとであった。だからこそ、サクヤはもっと多くのキレイな包帯が無いかとフランに尋ねたわけである。
「で? で? シャクマさまとはどこまで進んでいるわけニャ?」
「だーかーらー! わたしとシャクマはそんな仲じゃないって何度も言ってるでしょ?」
探りを入れているフランは終始、ニヤニヤとした笑顔だ。対して、探りを入れられているアキヅキは段々と頬を桜色に染めて行く。アキヅキがそんなのだからこそ、フランはますますからかってやれとばかりに矢継ぎ早にアキヅキを問い詰めて行く。
「ふふ~~~ん。じゃあ、もしシャクマさまがサクヤちゃんに好きだ、愛している、お前さんが欲しい! って言って、サクヤちゃんの寝室に飛び込んできたらどうするニャ?」
「お、おかまいなく!? 好きにしたら良いじゃないの!?」
「あれ? そうニャン? アキヅキちゃんはそれで良いニャ?」
急に真顔になるフランである。それに意表を突かれたアキヅキはまさか、フランはシャクマのことが好きだったの!? と驚いてしまうことになる。アキヅキがはわわ、はわわと宙に手をバタつかせて、慌てふためいたところに、フランがニタリとした笑みに変わる。
(し、しまったあああ! フランに騙されたっ!!)
「へっへっへ~~。策士:フランの真骨頂、ここにありニャ! まあ、冗談はさておき」
フランは一度、眼を閉じ、次に眼を開いたあとは本当に真剣な顔つきになり、力のこもった眼差しをアキヅキに向ける。
「アキヅキちゃん。『人生短し、恋せよ乙女』ニャ。このゼーガン砦がいつ、またショウド国軍に襲われるかわからないニャ。その時は血で血を洗う戦いになるのは必定ニャ。だから、自分の想いはきちんと伝えておくべきニャ」
フランは言うことは言ったとばかりに、アキヅキに背を向けて、トコトコと小走りでまた仕事へと戻っていくのであった。そんな背中に向かって、何も言えないアキヅキであった。
見かねたサクヤがアキヅキの頭を軽くポンポンと2度叩く。
「何を複雑な顔をしているのかしら? あなたはこの砦の大将なのですわ。そんな顔を見せませんことよ?」
サクヤはそう告げたあと、彼女もまたアキヅキに背を向けて、再び、カゲツ=シュレインが居る医務室へと向かう。
ひとり残されたアキヅキはシャクマはどこに行ってしまったのだろうと一瞬だけ思ったあと、顔をブンブンと左右に振る。そして、石床に突き刺していた両刃が蒼色の水晶製の大剣の柄をしっかり両手で握りしめ、キリっと顔を引き締め、前を向くのであった。
その夜、アキヅキは本丸のお風呂場にて沐浴を済ませた後、自室にて、頭にはタオルを巻き付け、身体はフワフワのバスローブで包み込み、ベッドの上で寝転がっていた。そして、手鏡で日焼けしているのではないかと顔をチェックしているのであった。
純血のエルフは日焼けがしにくい種族である。かといって、1日中、本丸の前で仁王立ちし、太陽の光を散々に浴びれば、もしかするとひょっとするとと思ってしまうのである。
ほっぺたや頬を細く白い指で入念にチェックしたあと、アキヅキはほっと胸を撫で下ろすのであった。
(今まではこんなこと気にもしてなかったのに……)
アキヅキはほんの軽くため息をつく。アキヅキは剣の道に生きてきた。その剣の腕を認められて、女性ながらも弱冠18歳という若さで、騎士の身分へと辿り着いた。そこには子爵である父:カゲツ=シュレインが宮廷に特段、働きかけたということはない。
純粋にアキヅキの武術が認められての騎士就任であったのだ。だからこそ、アキヅキ隊に所属している面々は、アキヅキに対して、尊敬の念を抱いているのである。
そんな騎士以上に騎士らしいアキヅキのはずなのに、このゼーガン砦にやってきて、鎧武者であるシャクマ=ノブモリに出会ってから、自分の中の何かが変わってしまったような気がしてならないのであった。
(なんで、シャクマの顔がわたしの頭の中から出ていかないの!?)
そう思えば思うほど、アキヅキの頬が紅潮してくる。熱を帯びてしまった頬はアキヅキを慌てさせるには十分であった。
そんな時であった。アキヅキが居る自室の外側に取り付けられていたシャクマ製・鳴子がカランコロン! カランコロン! と音を立てたのである。
(な、何!? 誰かがわたしの部屋の前にやってきた!?)
まさか、鳴子を仕掛けたシャクマ自身が自分が眠る部屋にやってくるわけがないだろうと思った。そんな、自分で仕掛けたのだろうから、鳴子が鳴らないように注意して、自分の部屋に忍び込んでくるだろうと。
(いや、そうじゃなくて!!)
アキヅキは邪念を払うかのようにブンブンと頭を左右に振る。そして、急いで部屋の武器立てに立てかけておいた父親から譲られた両刃が蒼い水晶製の大剣『真実の愛』の柄を両手で握りしめる。
そして、それを中段に構えて、襲って来れるものならいつでも来なさいとばかりに身構えるのであった。
鳴子は相変わらずカランコロン! カランコロン! と鳴り響いていた。そして、一瞬、それが鳴りやんだと同時に、大型の獣の咆哮が廊下で響き渡ることになる。
その咆哮と同時に、アキヅキが居る部屋の扉に何かがガンガンと体当たりをしだしたのである。アキヅキは不意打ちを喰らわぬように素早く魔術の詠唱を開始する。
「万物の力の素たる、火の精霊よ。水晶に宿り、部屋を照らしなさい。炎の照らし!!」
彼女がそう魔術の文言を唱えると同時に、薄暗い部屋は昼間の外のような明るさへと生まれ変わる。彼女の魔術に反応し、天上に吊るされた水晶製の照明器具が普段の3倍以上の明るさを生み出したのであった。
最初は、フランがやれ、後詰の砦からの食糧供給が滞っているとか、サクヤがキレイな包帯が少なくなってきたことをフランに告げて、フランが面倒くさいよ~~~と愚痴っていたわけだ。
現在、大怪我を負い、動けぬ身となり本丸の医務室で休むカゲツ=シュレインの付きっ切りの看病をしているのがサクヤ=ニィキューそのひとであった。だからこそ、サクヤはもっと多くのキレイな包帯が無いかとフランに尋ねたわけである。
「で? で? シャクマさまとはどこまで進んでいるわけニャ?」
「だーかーらー! わたしとシャクマはそんな仲じゃないって何度も言ってるでしょ?」
探りを入れているフランは終始、ニヤニヤとした笑顔だ。対して、探りを入れられているアキヅキは段々と頬を桜色に染めて行く。アキヅキがそんなのだからこそ、フランはますますからかってやれとばかりに矢継ぎ早にアキヅキを問い詰めて行く。
「ふふ~~~ん。じゃあ、もしシャクマさまがサクヤちゃんに好きだ、愛している、お前さんが欲しい! って言って、サクヤちゃんの寝室に飛び込んできたらどうするニャ?」
「お、おかまいなく!? 好きにしたら良いじゃないの!?」
「あれ? そうニャン? アキヅキちゃんはそれで良いニャ?」
急に真顔になるフランである。それに意表を突かれたアキヅキはまさか、フランはシャクマのことが好きだったの!? と驚いてしまうことになる。アキヅキがはわわ、はわわと宙に手をバタつかせて、慌てふためいたところに、フランがニタリとした笑みに変わる。
(し、しまったあああ! フランに騙されたっ!!)
「へっへっへ~~。策士:フランの真骨頂、ここにありニャ! まあ、冗談はさておき」
フランは一度、眼を閉じ、次に眼を開いたあとは本当に真剣な顔つきになり、力のこもった眼差しをアキヅキに向ける。
「アキヅキちゃん。『人生短し、恋せよ乙女』ニャ。このゼーガン砦がいつ、またショウド国軍に襲われるかわからないニャ。その時は血で血を洗う戦いになるのは必定ニャ。だから、自分の想いはきちんと伝えておくべきニャ」
フランは言うことは言ったとばかりに、アキヅキに背を向けて、トコトコと小走りでまた仕事へと戻っていくのであった。そんな背中に向かって、何も言えないアキヅキであった。
見かねたサクヤがアキヅキの頭を軽くポンポンと2度叩く。
「何を複雑な顔をしているのかしら? あなたはこの砦の大将なのですわ。そんな顔を見せませんことよ?」
サクヤはそう告げたあと、彼女もまたアキヅキに背を向けて、再び、カゲツ=シュレインが居る医務室へと向かう。
ひとり残されたアキヅキはシャクマはどこに行ってしまったのだろうと一瞬だけ思ったあと、顔をブンブンと左右に振る。そして、石床に突き刺していた両刃が蒼色の水晶製の大剣の柄をしっかり両手で握りしめ、キリっと顔を引き締め、前を向くのであった。
その夜、アキヅキは本丸のお風呂場にて沐浴を済ませた後、自室にて、頭にはタオルを巻き付け、身体はフワフワのバスローブで包み込み、ベッドの上で寝転がっていた。そして、手鏡で日焼けしているのではないかと顔をチェックしているのであった。
純血のエルフは日焼けがしにくい種族である。かといって、1日中、本丸の前で仁王立ちし、太陽の光を散々に浴びれば、もしかするとひょっとするとと思ってしまうのである。
ほっぺたや頬を細く白い指で入念にチェックしたあと、アキヅキはほっと胸を撫で下ろすのであった。
(今まではこんなこと気にもしてなかったのに……)
アキヅキはほんの軽くため息をつく。アキヅキは剣の道に生きてきた。その剣の腕を認められて、女性ながらも弱冠18歳という若さで、騎士の身分へと辿り着いた。そこには子爵である父:カゲツ=シュレインが宮廷に特段、働きかけたということはない。
純粋にアキヅキの武術が認められての騎士就任であったのだ。だからこそ、アキヅキ隊に所属している面々は、アキヅキに対して、尊敬の念を抱いているのである。
そんな騎士以上に騎士らしいアキヅキのはずなのに、このゼーガン砦にやってきて、鎧武者であるシャクマ=ノブモリに出会ってから、自分の中の何かが変わってしまったような気がしてならないのであった。
(なんで、シャクマの顔がわたしの頭の中から出ていかないの!?)
そう思えば思うほど、アキヅキの頬が紅潮してくる。熱を帯びてしまった頬はアキヅキを慌てさせるには十分であった。
そんな時であった。アキヅキが居る自室の外側に取り付けられていたシャクマ製・鳴子がカランコロン! カランコロン! と音を立てたのである。
(な、何!? 誰かがわたしの部屋の前にやってきた!?)
まさか、鳴子を仕掛けたシャクマ自身が自分が眠る部屋にやってくるわけがないだろうと思った。そんな、自分で仕掛けたのだろうから、鳴子が鳴らないように注意して、自分の部屋に忍び込んでくるだろうと。
(いや、そうじゃなくて!!)
アキヅキは邪念を払うかのようにブンブンと頭を左右に振る。そして、急いで部屋の武器立てに立てかけておいた父親から譲られた両刃が蒼い水晶製の大剣『真実の愛』の柄を両手で握りしめる。
そして、それを中段に構えて、襲って来れるものならいつでも来なさいとばかりに身構えるのであった。
鳴子は相変わらずカランコロン! カランコロン! と鳴り響いていた。そして、一瞬、それが鳴りやんだと同時に、大型の獣の咆哮が廊下で響き渡ることになる。
その咆哮と同時に、アキヅキが居る部屋の扉に何かがガンガンと体当たりをしだしたのである。アキヅキは不意打ちを喰らわぬように素早く魔術の詠唱を開始する。
「万物の力の素たる、火の精霊よ。水晶に宿り、部屋を照らしなさい。炎の照らし!!」
彼女がそう魔術の文言を唱えると同時に、薄暗い部屋は昼間の外のような明るさへと生まれ変わる。彼女の魔術に反応し、天上に吊るされた水晶製の照明器具が普段の3倍以上の明るさを生み出したのであった。
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