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第4章:ゼーガン砦攻防戦
第1話:再侵攻
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――ポメラニア帝国歴259年4月1日 火の国:イズモ:ゼーガン砦にて――
この日の朝9時過ぎ。ついにショウド国軍がゼーガン砦攻略のために動く。
ゼーガン砦の石壁の上に立っていた物見が、ショウド国軍が動くや否や、石壁の上側の角にある櫓に飛び込み、早鐘を打つ。早鐘はガンガンガーン! と速く大きく鳴らされる。
ゼーガン砦内に緊張が走る。アキヅキ=シュレインは各々が持ち場に着くようにと素早く指示を出す。
ショウド国軍の征東、征北、征南、征北将軍たちはそれぞれ200名を率いて、ゼーガン砦を四方から囲むことになったのだ。
彼らは砦から300メートルほど離れた場所で、高さ1メートル半ほどの木の板数百枚を地面に突き立てる。それらは砦から飛んでくる矢を防ぐための簡素な盾であった。ポメラニア帝国の弓矢の射程距離はちょうど300メートル前後であり、ショウド国軍はそれを知ったゆえでの布陣であった。
砦から300メートル離れた地点で30分ほど、ゼーガン砦側とショウド国軍が睨み合いを続ける。矢盾を置かれた以上、物資に限りがあるゼーガン砦側はむやみやたらに矢を放つことはしなかったのである。
「ふむっ。あちら側はなかなかに統率が取れているダワス。やはり司令官代理を仕留められなかったのは失敗だったかもしれないダワス。まあ、良いダワス。各地に伝令を送るんダワス!」
征東将軍であるサラーヌ=ワテリオンはゼーガン砦の東側に陣取っていた。この戦において、彼がショウド国軍の指揮官であった。
砦を四方から囲む案はサラーヌ自身が示した策である。本来、兵力を分散させれば、砦から飛び出してきたゼーガン砦の兵たちに各個撃破される可能性も捨てきれないが、西と南側は後詰の砦から救援部隊がやってきた時用に対処してもらう予定である。
そのため、西と南側からは実際にはゼーガン砦を攻めさせる気は、この時点においてはサラーヌには無かったのであった。
まず動いたのは征北将軍:クラーゲン=ポティトゥ率いる200の兵たちであった。彼らは矢盾のわきから飛び出して、ゼーガン砦までの300メートルをジグザグに突き進む。
矢盾から飛び出した敵兵を討つために、ゼーガン砦側は石壁の上から次々と矢を放つ。しかし、半虎半人たちは馬のように速い速度でジグザグに進行し、矢をかわしながら、砦の石壁へと張り付くのであった。
そして、両腕に装着した手甲の先端から突き出ている鈎爪を上手に用いる。石壁の隙間に鈎爪の鋭い切っ先を突き立てて、次々とよじ登っていく。
しかしだ。彼らが石壁の一番上の石を鈎爪の先で掴んだ瞬間であった。その縦に50センチメートル、横に1メートルはあろうかという大石がグラグラと揺れて、石壁から剥がれ落ちたのである。
それに面食らった半虎半人であったが、時すでに遅し。腹にその大石を抱え込むようにして地面へと落下していく。さらには後に続いて石壁を登っていた他の兵士たちをも巻き添えにしてしまうのであった。
ドスウウウン! という重低音が砦の外側に響く。半虎半人たちは石の重みと自分たちの体重で絶命してしまうのであった。
「うひょう! こりゃおもしれえ! 敵兵が勝手に自滅してくれたんだぜ!!」
この仕掛けを石壁の頂上に仕込んでおくように指示していたのはシャクマ=ノブモリであった。ニコラス=ゲージはこんな単純な仕掛けなんかに敵さんが引っかかってくれるのかね? と訝し気であったが、実際に面白いように引っかかってくれるショウド国軍の間抜け面を拝めたことにより、彼は手放しでシャクマを絶賛するのであった。
ニコラスは自分の隊のほとんどを先の奇襲で失ったことにより意気消沈していたが、シャクマとの男と男の素手での殴り合いを経て、再び、自分の身体に活力を取り戻していた。そして、彼はもしショウド国軍がこの砦に攻め込んできた際は、如何様にでも使ってくれとシャクマに頼み込んでいたのである。
シャクマはアキヅキから認可をもらい、新生ニコラス隊を編成していた。20名ほどの老練な兵士たちがニコラスの新たな部下となり、このショウド国軍の動きに合わせて北の石壁の防御に回ったのであった。
次に動いたのは征東将軍であるサラーヌ=ワテリオンであった。
「何をあんな単純な策に引っかかっているダワス! ええい、お前ら、あの櫓があるところから壁をよじ登るダワス!」
サラーヌは正面から登れば、先ほどと同じ罠が仕掛けてあるだろうと考えて、壁の角にあたる部分からよじ登るようにと兵士たちに指示を出す。指示を出された側の兵士たちは征北将軍のところの兵士は将軍と同じく間抜けだと笑っていたのである。
かくして、間抜けはどちらであったのか? 結果がそれを証明することになる。
ゼーガン砦の東側から砦攻めを敢行した半虎半人たちは砦の石壁近くに接近し、よじ登り始めてから、櫓がおかしいことに気づいたのである。
「お、おい。あの櫓。なんで壁よりこちら側にせり出してんだみゃ~?」
「な、なあ? 俺様の気のせいかみゃ~? あの櫓の底に穴が空いてるように見えるみゃ~!?」
そうである。櫓は石壁の上から若干1メートルほど、はみ出るように建設されていたのであった。そして、そのせり出した部分の底には大石を落とすにはちょうど良い感じの穴が開いていたのである。
半虎半人たちがヒイイイ! と悲鳴を上げたのは、実際にその穴から縦に50センチメートル、横に80センチメートルはあろうかという大石が飛び出してきて、彼らの顔面にぶち当たった時であった。
彼らは大石により顔面を骨折し、さらには後から続く兵士たちを巻き込んで地面へと落下し、絶命するのであった。
「ふ、ふ、ふざけやがってダワス! 正面から登ればちゃちな仕掛けに引っかかり、角から登れば、あの建物の底から大石を落とされるダワス!」
サラーヌ=ワテリオンは怒りにわなわなと自らの身を震わせたのであった。それもそうだろう。彼の後方の野営地にに控えるのは、わざわざ本国の宮廷から呼び寄せた国主であり同時に大将軍でもあるネーロ=ハーヴァそのひとであったからだ。
この日の朝9時過ぎ。ついにショウド国軍がゼーガン砦攻略のために動く。
ゼーガン砦の石壁の上に立っていた物見が、ショウド国軍が動くや否や、石壁の上側の角にある櫓に飛び込み、早鐘を打つ。早鐘はガンガンガーン! と速く大きく鳴らされる。
ゼーガン砦内に緊張が走る。アキヅキ=シュレインは各々が持ち場に着くようにと素早く指示を出す。
ショウド国軍の征東、征北、征南、征北将軍たちはそれぞれ200名を率いて、ゼーガン砦を四方から囲むことになったのだ。
彼らは砦から300メートルほど離れた場所で、高さ1メートル半ほどの木の板数百枚を地面に突き立てる。それらは砦から飛んでくる矢を防ぐための簡素な盾であった。ポメラニア帝国の弓矢の射程距離はちょうど300メートル前後であり、ショウド国軍はそれを知ったゆえでの布陣であった。
砦から300メートル離れた地点で30分ほど、ゼーガン砦側とショウド国軍が睨み合いを続ける。矢盾を置かれた以上、物資に限りがあるゼーガン砦側はむやみやたらに矢を放つことはしなかったのである。
「ふむっ。あちら側はなかなかに統率が取れているダワス。やはり司令官代理を仕留められなかったのは失敗だったかもしれないダワス。まあ、良いダワス。各地に伝令を送るんダワス!」
征東将軍であるサラーヌ=ワテリオンはゼーガン砦の東側に陣取っていた。この戦において、彼がショウド国軍の指揮官であった。
砦を四方から囲む案はサラーヌ自身が示した策である。本来、兵力を分散させれば、砦から飛び出してきたゼーガン砦の兵たちに各個撃破される可能性も捨てきれないが、西と南側は後詰の砦から救援部隊がやってきた時用に対処してもらう予定である。
そのため、西と南側からは実際にはゼーガン砦を攻めさせる気は、この時点においてはサラーヌには無かったのであった。
まず動いたのは征北将軍:クラーゲン=ポティトゥ率いる200の兵たちであった。彼らは矢盾のわきから飛び出して、ゼーガン砦までの300メートルをジグザグに突き進む。
矢盾から飛び出した敵兵を討つために、ゼーガン砦側は石壁の上から次々と矢を放つ。しかし、半虎半人たちは馬のように速い速度でジグザグに進行し、矢をかわしながら、砦の石壁へと張り付くのであった。
そして、両腕に装着した手甲の先端から突き出ている鈎爪を上手に用いる。石壁の隙間に鈎爪の鋭い切っ先を突き立てて、次々とよじ登っていく。
しかしだ。彼らが石壁の一番上の石を鈎爪の先で掴んだ瞬間であった。その縦に50センチメートル、横に1メートルはあろうかという大石がグラグラと揺れて、石壁から剥がれ落ちたのである。
それに面食らった半虎半人であったが、時すでに遅し。腹にその大石を抱え込むようにして地面へと落下していく。さらには後に続いて石壁を登っていた他の兵士たちをも巻き添えにしてしまうのであった。
ドスウウウン! という重低音が砦の外側に響く。半虎半人たちは石の重みと自分たちの体重で絶命してしまうのであった。
「うひょう! こりゃおもしれえ! 敵兵が勝手に自滅してくれたんだぜ!!」
この仕掛けを石壁の頂上に仕込んでおくように指示していたのはシャクマ=ノブモリであった。ニコラス=ゲージはこんな単純な仕掛けなんかに敵さんが引っかかってくれるのかね? と訝し気であったが、実際に面白いように引っかかってくれるショウド国軍の間抜け面を拝めたことにより、彼は手放しでシャクマを絶賛するのであった。
ニコラスは自分の隊のほとんどを先の奇襲で失ったことにより意気消沈していたが、シャクマとの男と男の素手での殴り合いを経て、再び、自分の身体に活力を取り戻していた。そして、彼はもしショウド国軍がこの砦に攻め込んできた際は、如何様にでも使ってくれとシャクマに頼み込んでいたのである。
シャクマはアキヅキから認可をもらい、新生ニコラス隊を編成していた。20名ほどの老練な兵士たちがニコラスの新たな部下となり、このショウド国軍の動きに合わせて北の石壁の防御に回ったのであった。
次に動いたのは征東将軍であるサラーヌ=ワテリオンであった。
「何をあんな単純な策に引っかかっているダワス! ええい、お前ら、あの櫓があるところから壁をよじ登るダワス!」
サラーヌは正面から登れば、先ほどと同じ罠が仕掛けてあるだろうと考えて、壁の角にあたる部分からよじ登るようにと兵士たちに指示を出す。指示を出された側の兵士たちは征北将軍のところの兵士は将軍と同じく間抜けだと笑っていたのである。
かくして、間抜けはどちらであったのか? 結果がそれを証明することになる。
ゼーガン砦の東側から砦攻めを敢行した半虎半人たちは砦の石壁近くに接近し、よじ登り始めてから、櫓がおかしいことに気づいたのである。
「お、おい。あの櫓。なんで壁よりこちら側にせり出してんだみゃ~?」
「な、なあ? 俺様の気のせいかみゃ~? あの櫓の底に穴が空いてるように見えるみゃ~!?」
そうである。櫓は石壁の上から若干1メートルほど、はみ出るように建設されていたのであった。そして、そのせり出した部分の底には大石を落とすにはちょうど良い感じの穴が開いていたのである。
半虎半人たちがヒイイイ! と悲鳴を上げたのは、実際にその穴から縦に50センチメートル、横に80センチメートルはあろうかという大石が飛び出してきて、彼らの顔面にぶち当たった時であった。
彼らは大石により顔面を骨折し、さらには後から続く兵士たちを巻き込んで地面へと落下し、絶命するのであった。
「ふ、ふ、ふざけやがってダワス! 正面から登ればちゃちな仕掛けに引っかかり、角から登れば、あの建物の底から大石を落とされるダワス!」
サラーヌ=ワテリオンは怒りにわなわなと自らの身を震わせたのであった。それもそうだろう。彼の後方の野営地にに控えるのは、わざわざ本国の宮廷から呼び寄せた国主であり同時に大将軍でもあるネーロ=ハーヴァそのひとであったからだ。
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