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第2章:東の果ての囚人
第10話:恩赦
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――大王歴1200年6月6日 ポールランド副王国東部 収容所:東の果てにて――
神聖アンゴリア大王国の東にはポールランド副王国が広がっていた。その副王国からさらに東は平原にも魔物が跋扈している土地である。この国から東には人類は版図を広げられずにいた。そして、その国境近くに収容所:東の果てが存在していた。アンゴルモア大王への反旗を企てた罪を背負ったロック=イートがこの地に収容されてから、早5年という月日が流れていた……。
「模範囚なのか、反抗者なのかまったくもって判断がつかないなっ! いい加減、独房入りを回避しようと思わないのかっ!」
そう怒声を飛ばすのは東の果ての看守副長:ツール=ビロンであった。これでかれこれ30回目の記念となる独房入りとなったロック=イートを出迎えるべく、わざわざと彼自らが作業所で働く彼の下に現れたのであった。今回の独房入りの理由は、シュージュ=ボウラー班と他の作業班との間にいざこざが起こり、ロック=イートがシュージュ=ボウラー班の代表として、他の班と1対3の勝負を行ったのであった。
この騒ぎが起きた原因は、他の班には今年の春に、腕っぷしに自信がある者たちが配属され、それで気を大きくもってしまったせいと、あと1対3でも構わないというロック=イートの台詞によって、他の班のリーダーたちの頭に一瞬で血が昇ってしまったことが関係する。もちろん、勝負はロック=イートの圧倒的勝利に終わっていた。
ブンブンと左右に作業用の大槌を振り回す半熊半人の懐に飛び込んだロック=イートは、その筋肉に包まれた腹に右のアッパーカットをぶち込む。地面で口から泡を吹きながら悶絶する半熊半人をよそに、半狼半人がロック=イートの左足にタックルを決めようとする。だが、ロック=イートはその半狼半人に左足を掴まれてもビクともしなかった。そして、左拳をハンマーのように振り下ろし、その半狼半人の首筋へ叩き込む。
半狼半人は当て身と言い難い1撃を喰らい、意識が一瞬で飛ぶ。そして、最後に半鳥半人が背中の両翼を広げて、素早くロック=イートの背中側に回り、彼を羽交い絞めにする。しかし、ロック=イートを抱えたまま、上空に飛び立つ前にロック=イートの右の裏拳を顔面に叩きこまれ、前歯を2本失ってしまうのであった。
ロック=イートはパンパンッと両手を叩き、まるで手に付着した砂を払うかのような仕草をする。彼は現在23歳。武人として、一番、脂が乗る年代に達していた。日々の厳しい魔結晶鉱石の精製作業はロック=イートの身体をさらにたくましいモノへと生まれ変われせていた。そして、実践タイプの組手の相手は他の作業班の人員が努めてくれるという願ってもない状況となっていた。
もちろん、実践タイプの組手を行った直後に看守たちがすっ飛んできて、ロック=イートを捕縛し、彼を独房送りにしてきたのだ。しかしながら、その看守たちもロック=イートとその相手をする囚人のどちらが勝つかの賭けに乗じていた。ロック=イートは5年間、負け無しのために、賭けは成立しないように見えたが、ロック=イート自らがハンディキャップを自らに設定するモノだから、今度こそは挑戦者の勝ちだろうと見込んで、大穴に賭けてみる看守も居たのであった。
今回は1対3であったが、ロック=イートはわざわざ、足で地面に直径1メートル半の円を描き、そこから自分を出せば、お前たちの勝ちだと宣戦布告したのである。当然、こんな舐めたことを言い出すロック=イートをぼっこぼこにしてやろうと半熊半人と半狼半人、半鳥半人の3人はそう思っていた。しかしながら、結果は自分たちが手も足も出せずに負けるという完敗っぷりだった。
新入りの教育をしてくれるのは看守副長:ツール=ビロンとしてもありがたい存在であったのだ、ロック=イートは。だが、ルールはルールであり、囚人同士でいざこざを起こしたロック=イートは独房へと案内されることとなる。しかしながら、ロック=イートはまったく悪びれた様子は無く、看守副長:ツール=ビロンに付き従い、黙って独房に入っていく。そして、鉄扉が閉められると同時に、ロック=イートは日々の鍛錬をこなすためにも、まずは型の反復練習から入っていく。その様子を鉄扉に取り付けれた小窓から見ていたツール=ビロンは、はあああと深いため息をつくのであった。
(こいつは、この5年間、1日も休まずに鍛錬を続けてやがる……。こいつを世の中に放り出して果たして良いのかどうか、私には判断をつけられない)
看守副長:ツール=ビロンは看守長から先日、とあることを告げられていた。アンゴルモア大王降誕1200年を祝して、全土の囚人たちの刑期を5年減刑するという恩赦を計画されていると。その刑期5年減刑により、東の果てから出所出来る者は10人ほど居た。そのひとりがロック=イートである。だが、収容所に入れられて、身も心も荒んでいくはずの男が、そうならずに逆にたくましくなってしまっている。この男を世に解き放てば、虎に鎖を繋げないのと一緒なのではないか? とさえ危惧してしまうツール=ビロンなのであった。
それから、さらに数週間が経ち、恩赦が正式にアンゴルモア大王の名の下に発布されることになる。大王歴1200年7月初め、ロック=イートたちは晴れて自由の身となる、そのはずであった。
「喜べ、シュージュ=ボウラー、ロック=イート、そしてその他8名よ。お前たちが出所して、いきなり盗賊団まがいのことをされては、こちらもたまらぬゆえに、奴隷市場に出品させてもらうことになった!」
看守副長:ツール=ビロンは、一計を案じ、無理やりに彼らの主人となる者たちを募ったのであった。元々は思想・政治犯として収容された輩たちなのである。このまま、黙って野に放てば、何をするかわからない連中なのは明白だ。ならば、強制的に奴隷として売買することにより、ご主人様に飼われる身とし、『社会の理不尽』という首輪と鎖をつけてやろうとしたのであった。
神聖アンゴリア大王国の東にはポールランド副王国が広がっていた。その副王国からさらに東は平原にも魔物が跋扈している土地である。この国から東には人類は版図を広げられずにいた。そして、その国境近くに収容所:東の果てが存在していた。アンゴルモア大王への反旗を企てた罪を背負ったロック=イートがこの地に収容されてから、早5年という月日が流れていた……。
「模範囚なのか、反抗者なのかまったくもって判断がつかないなっ! いい加減、独房入りを回避しようと思わないのかっ!」
そう怒声を飛ばすのは東の果ての看守副長:ツール=ビロンであった。これでかれこれ30回目の記念となる独房入りとなったロック=イートを出迎えるべく、わざわざと彼自らが作業所で働く彼の下に現れたのであった。今回の独房入りの理由は、シュージュ=ボウラー班と他の作業班との間にいざこざが起こり、ロック=イートがシュージュ=ボウラー班の代表として、他の班と1対3の勝負を行ったのであった。
この騒ぎが起きた原因は、他の班には今年の春に、腕っぷしに自信がある者たちが配属され、それで気を大きくもってしまったせいと、あと1対3でも構わないというロック=イートの台詞によって、他の班のリーダーたちの頭に一瞬で血が昇ってしまったことが関係する。もちろん、勝負はロック=イートの圧倒的勝利に終わっていた。
ブンブンと左右に作業用の大槌を振り回す半熊半人の懐に飛び込んだロック=イートは、その筋肉に包まれた腹に右のアッパーカットをぶち込む。地面で口から泡を吹きながら悶絶する半熊半人をよそに、半狼半人がロック=イートの左足にタックルを決めようとする。だが、ロック=イートはその半狼半人に左足を掴まれてもビクともしなかった。そして、左拳をハンマーのように振り下ろし、その半狼半人の首筋へ叩き込む。
半狼半人は当て身と言い難い1撃を喰らい、意識が一瞬で飛ぶ。そして、最後に半鳥半人が背中の両翼を広げて、素早くロック=イートの背中側に回り、彼を羽交い絞めにする。しかし、ロック=イートを抱えたまま、上空に飛び立つ前にロック=イートの右の裏拳を顔面に叩きこまれ、前歯を2本失ってしまうのであった。
ロック=イートはパンパンッと両手を叩き、まるで手に付着した砂を払うかのような仕草をする。彼は現在23歳。武人として、一番、脂が乗る年代に達していた。日々の厳しい魔結晶鉱石の精製作業はロック=イートの身体をさらにたくましいモノへと生まれ変われせていた。そして、実践タイプの組手の相手は他の作業班の人員が努めてくれるという願ってもない状況となっていた。
もちろん、実践タイプの組手を行った直後に看守たちがすっ飛んできて、ロック=イートを捕縛し、彼を独房送りにしてきたのだ。しかしながら、その看守たちもロック=イートとその相手をする囚人のどちらが勝つかの賭けに乗じていた。ロック=イートは5年間、負け無しのために、賭けは成立しないように見えたが、ロック=イート自らがハンディキャップを自らに設定するモノだから、今度こそは挑戦者の勝ちだろうと見込んで、大穴に賭けてみる看守も居たのであった。
今回は1対3であったが、ロック=イートはわざわざ、足で地面に直径1メートル半の円を描き、そこから自分を出せば、お前たちの勝ちだと宣戦布告したのである。当然、こんな舐めたことを言い出すロック=イートをぼっこぼこにしてやろうと半熊半人と半狼半人、半鳥半人の3人はそう思っていた。しかしながら、結果は自分たちが手も足も出せずに負けるという完敗っぷりだった。
新入りの教育をしてくれるのは看守副長:ツール=ビロンとしてもありがたい存在であったのだ、ロック=イートは。だが、ルールはルールであり、囚人同士でいざこざを起こしたロック=イートは独房へと案内されることとなる。しかしながら、ロック=イートはまったく悪びれた様子は無く、看守副長:ツール=ビロンに付き従い、黙って独房に入っていく。そして、鉄扉が閉められると同時に、ロック=イートは日々の鍛錬をこなすためにも、まずは型の反復練習から入っていく。その様子を鉄扉に取り付けれた小窓から見ていたツール=ビロンは、はあああと深いため息をつくのであった。
(こいつは、この5年間、1日も休まずに鍛錬を続けてやがる……。こいつを世の中に放り出して果たして良いのかどうか、私には判断をつけられない)
看守副長:ツール=ビロンは看守長から先日、とあることを告げられていた。アンゴルモア大王降誕1200年を祝して、全土の囚人たちの刑期を5年減刑するという恩赦を計画されていると。その刑期5年減刑により、東の果てから出所出来る者は10人ほど居た。そのひとりがロック=イートである。だが、収容所に入れられて、身も心も荒んでいくはずの男が、そうならずに逆にたくましくなってしまっている。この男を世に解き放てば、虎に鎖を繋げないのと一緒なのではないか? とさえ危惧してしまうツール=ビロンなのであった。
それから、さらに数週間が経ち、恩赦が正式にアンゴルモア大王の名の下に発布されることになる。大王歴1200年7月初め、ロック=イートたちは晴れて自由の身となる、そのはずであった。
「喜べ、シュージュ=ボウラー、ロック=イート、そしてその他8名よ。お前たちが出所して、いきなり盗賊団まがいのことをされては、こちらもたまらぬゆえに、奴隷市場に出品させてもらうことになった!」
看守副長:ツール=ビロンは、一計を案じ、無理やりに彼らの主人となる者たちを募ったのであった。元々は思想・政治犯として収容された輩たちなのである。このまま、黙って野に放てば、何をするかわからない連中なのは明白だ。ならば、強制的に奴隷として売買することにより、ご主人様に飼われる身とし、『社会の理不尽』という首輪と鎖をつけてやろうとしたのであった。
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