拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第2章:東の果ての囚人

第9話:ずれている日常

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 半虎半人ハーフ・ダ・タイガのシュージュ=ボウラーは顎が外れるかと思えるほどに口をポカーンと大きく上下に広げ、眼を白黒させる。普通はこれくらいの大きさの魔結晶マギ・メタル鉱石は大人3人で大槌を用いて、周囲から少しづつ殴り削っていくのだが、それを根本から否定する存在がいた。それがロック=イートであった。

 彼と同じ場所で修練を積んだと言うセイ=レ・カンコーには、こんな芸当などできなかった。『砕く』ではなく、縦に真っ二つに『割る』と言う、どんなレベルの域に達すれば、たかだかニンゲンにこんなことが出来るのか? シュージュ=ボウラーはこの1撃を見せつけられて、これからは変にロック=イートにつっかからないようにしようと固く心に誓うのであった。

「ロックさーーーん。このままじゃまだ大きすぎるから、横方向に2分割、縦方向に4分割してほしいですぜっ!」

「ああ、割っても良かったんだな? じゃあ、そうさせてもらおうか」

 ロック=イートはセイ=レ・カンコーの言葉を受けて、軍手で包まれた両手でもう一度、金属製の大槌の柄を握りしめ、まずは横薙ぎに大岩に大槌の片側を勢いよくぶつける。すると、大岩はビキィ! という悲鳴をあげて、横一文字にキレイに割れる。そして、トドメだとばかりにロック=イートは大岩の横へと周り込み、フッ! と勢いよく息を吐きながら、上段構えから、下方向へと大槌を振るう。バッキョーン! という断末魔を魔結晶マギ・メタル鉱石があげると同時に、その大岩は計8分割されることとなる。

「なんか懐かしい気持ちになるなぁ。タイガー・ホールでは基礎訓練と称して、石や岩をハンマーで殴って細かくしていく作業を」

「そうですなあ。まずは身体作りからと、タイガー・ホールにやってきた時に誰しもがキョーコ=モトカード様に特大のハンマーを渡されましたよねっ!」

 拳聖:キョーコ=モトカードはタイガー・ホールでの修行において、まずは基礎となる体幹作りを新入りに徹底させていた。大岩割りはもちろんとして、炊事にもつかう薪を割ったりなど、新入りにはとことん、身体を鍛えてもらうことから始めさせていたのである。これはロック=イートだけに限った話ではなく、下から数えたほうが早い序列のセイ=レ・カンコーでもおこなっているのだ。

 だからこそ、タイガー・ホール出身の2人にはこれくらいの大岩を砕き割る作業はそれほど苦痛ではなかった。8分割した大岩の一部を今度はセイ=レ・カンコーが大槌を振るって、細かくする作業に入る。こいつらがこれくらいごく普通の作業と言いのけるところから、一体、今までどんな生活を送ってきたのかとあっけにとられるしかないシュージュ=ボウラーであった。

 何はともあれ、魔結晶マギ・メタル鉱石を割る作業はロック=イートとセイ=レ・カンコーの出現により、おおいにはかどることとなる。シュージュ=ボウラーをリーダーとする作業班は8人ほどで構成されていた。そこに新入りのロック=イートとセイ=レ・カンコーが加わり、1日にこなす作業量は午後3時を過ぎる頃には、とっくにこなしてしまっていた。

 砕いた魔結晶マギ・メタル鉱石を手押し車に乗せて、溶鉱炉近くの集積所に運び終えたシュージュ=ボウラーたちは、ふうううと一息つこうとする。だが、そんな作業班がさらに驚く言動をロック=イートから受けることとなる。

「なんだ。これで今日1日分は終わりなのか。やっぱり8人もいたら、これくらいの作業なんて、ちょちょいのちょいか。んじゃ、セイさん。組手の相手をお願いしていいか?」

「へいへい、任せてくだされ。基礎訓練の後は、組手もやっておかないと、身体がなまっちまいますからなぁ! あ、あとセイと呼び捨てしてくれて良いんですぜ?」

 セイ=レ・カンコーが『さん』づけは要らぬと言うが、さすがに自分より4歳も年上を相手に呼び捨ては何かとはばかれると言い出すロック=イートであった。だが、その様子をあきれ果てた顔つきで見ていた面々は、気にするところはそこじゃねえだろっ! とロック=イートに総ツッコミを入れる他無かった。そもそもとして、今までシュージュ=ボウラーが率いる作業班は1日の仕事量をその日の内にこなせることなど、稀であった。だいたい、上が求めてくる作業量自体がおかしいのだ。これは罪を犯した者に与えらえる罰なのだ。

 看守たちがいちゃもんをつける意味も込めての作業量であり、こなせないことこそが正当なのである。だが、それを易々と覆しておきながら、さも準備運動は終わったとばかりに、組手をし合おうと言い出す2人なのである。作業が始まったばかりの時から、こいつらの物差しは狂っていると感じていたシュージュ=ボウラー率いる作業員たちだったが、事ここに至り、ついに総ツッコミを入れざるをえなくなってしまったのだ。

「いいか!? これは俺様たちに課された罰なわけな!? 1日分の作業量をこなしたら、それ以上に自分の身体を痛めつけて何になるってんだ!?」

「え……? タイガー・ホールでは、基礎訓練と個人訓練が終わった後に1日の〆として、お師匠様に足腰立たなくなるまで、ぶん殴られたんだけどなあ……?」

「そうっすねえっ。キョーコ=モトカード様が100人組手と称して、弟子の9割近くと1対1でやりあってましたもんでしたよ。キョーコ=モトカード様が居ない今となっては、訓練量に不安を覚えてしまいますぜ」

 いくら思想犯として長年、この牢獄:東の果てイースト・エンドに捕らわれの身となっているシュージュ=ボウラーたちの耳にも、アンゴルモア大王の四天王の中で1番強いと言われている拳聖:キョーコ=モトカードの凄さは耳に入っている。だが、そのキョーコ=モトカードが、弟子たち相手に連日そんなことをしていたのかとロック=イートたちから聞かされて、右手を額に当てて、天を仰ぐ他無かったのであった。

 修行馬鹿は放っておこうということで、シュージュ=ボウラーを含む作業員たちは休憩に入る。そして、休憩がてら、時間つぶしとばかりにぼんやりとロック=イートとセイ=レ・カンコーの組手を眺めていた。しかしだ。

「うーーーん。こう言っちゃなんだけど、セイさんだけじゃ、物足りないなあ?」

「力及ばず申し訳ないですぜ……。というわけで、そこの腕っぷしに自信がありそうなリーダー! ちょっと混ざってくれないですかい?」
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