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第3章:コープ=フルール
第2話:商談
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コープ=フルールにそう問われたロック=イートであったが、彼としては返答に困ることになる。なにせ、自分はあの事件が起きた時、右腕を黒毛の半兎半人に切断され、その後、この右腕の義腕をサラ=ローランの手によって装着されて、気絶に至ったからだ。その時の状況は彼の同胞であるセイ=レ・カンコーに伝聞で聞かされただけなのだ。自分の師匠が本当に反旗を翻そうとしていたかどうかなどわかるわけもない。
「ええと……。俺にはわかりません。そもそも、お師匠様がそんなことをしようとしていたこと自体に対して懐疑的なんです」
「ううむ? では、あれはやはり噂に過ぎないというわけなのでしょうか?」
「あの時、気絶していた俺より、状況を詳しく知っている者なら紹介できます。俺と同胞で、この奴隷市場に連れてこられているセイ=レ・カンコーって男です」
ロック=イートの言葉を受けて、コープ=フルールは事実関係をはっきりさせようと、部屋の机の上にある呼び鈴をチリリンと軽く鳴らす。すると、個室のドアを開けて、奴隷市場の使用人が中に入ってくる。コープ=フルールはその使用人にセイ=レ・カンコーという男も呼んできてほしいと頼むこととなる。使用人はコクリと首を縦に振り、個室から退出していくのであった。そして、5分後にはセイ=レ・カンコーも2人が居る個室に招き入れられることとなる。
「へぇ……。あっしなんかの話で良ければ言いますけど、もう5年前の出来事だということは考慮してほしいっす」
「ああ、構わないですよ。ロックくんを買い取りたいのだが、何かひとには言えぬ傷を持っているとしたら、こちらとしても困るのですから」
コープ=フルールはセイ=レ・カンコーに、5年前のあの日、タイガー・ホールで何があったのかを聞くのであった。セイ=レ・カンコーは、記憶を掘り返し、あの当時のことを出来る限り、正確に伝えようと努力する。コープ=フルールが合間あいまに質問をし、それにセイ=レ・カンコーは曖昧ながらも返答を行う。そのやりとりが10分ほど続いた後、コープ=フルールは椅子の背もたれに体重を預け、個室の天井に顔を向け、ふうううと一息つくのであった。そして、再び、セイ=レ・カンコーに顔向けて一言
「では、拳聖:キョーコ=モトカードは潔白なのですね? 何かの陰謀に巻き込まれて、タイガー・ホールの面々は無実の罪を被らせられたと」
「はい、そう思ってもらって間違いないと思います。なんたって、ロックさんは拳聖の後継者なんですぜ。ロックさんに嫉妬を抱いた奴らが、ロックさんを罠に陥れたとしか考えられないんですよっ!」
コープ=フルールはセイ=レ・カンコーが嘘を言っていないと直感で察していた。そもそもとして、彼が嘘を言う必要性が無いからだ。少しでも自分の有利に働くように、よりよい雇い主に買われたほうがマシな奴隷であるが、コープ=フルールの眼の前に立つ2人は奴隷と言うには態度が立派すぎるのだ。何か信念を持ち、その信念が背骨を支えている。だからこそ、彼らは臆することなく、悪びれることなく、媚びる気もない。彼らを利用しようといているコープ=フルールであるが、それに乗っかろうとする気を全くもって2人から感じられないのであった。
「よし……。ここは賭けに出させてもらいましょう。ロック=イートくん。キミを我が家に招きいれようと思います。異論や意見があるなら、今のうちに聞いておきますが」
もちろん、聞くだけ聞くのであって、それを実行するかどうかについては言及しないコープ=フルールであった。常に手綱はこちらが握るつもりのコープ=フルールである。飼い犬にはどうしても首輪と鎖が必要だ。そして、眼の前に餌をぶらさげることも忘れてはいけない。このぶらさげた餌にどう反応するかをコープ=フルールは試したわけなのだ。だが、コープ=フルールはロック=イートの言いに耳を疑うこととなる。
「な……に? 自分よりもセイ=レ・カンコーを雇ってほしいと?」
「はい。コープさんは良いひとだと感じました。だからこそ、俺の面倒を色々と見てくれたセイさんこそ、コープさんに雇われるべきだと思うんです」
コープ=フルールにはわけがわからなかった。自分が良いひとだと言われたことはもちろんのこと、自分の心配よりも他人の心配をしている眼の前の男の存在をだ。何故にこの男は純心なのか。他人を押し分けてでも、より良い条件を提示する雇い主に媚びへつらうべきなのではないのかと。コープ=フルールが雇いたいのはセイ=レ・カンコーではない。あくまでも大きな利益をもたらしてくれそうなロック=イートこそ買い取りたいのだ。
「もし、セイ=レ・カンコーを買い取らないと言ったら、キミはどうするのかね?」
「そ、そこまでは考えていません。ただ、俺のために色々と便宜を図ってくれたセイさんが収容所よりかはマシなところに買われてくれればと……」
コープ=フルールはヤレヤレとばかりに頭を左右に振る。青年という歳になりながら、他者の心配に心を砕けるニンゲンなぞ、ここ最近、お目にかかったこともない。それは商人であるからこその付き合いで、そう感じるだけなのかもしれないが、ここまでのお人良しなど、市中で探してもなかなかに見つからないだろうとも思えてしかたがないコープ=フルールであった。そして、コープ=フルールは再び呼び鈴を鳴らし、奴隷市場の使用人を呼び出す。そして、セイ=レ・カンコーの値段はいくらかを尋ねるのであった。
「ふむ……。ロック=イートくんが金貨50枚。セイ=レ・カンコーくんが金貨10枚か……。ロックくん、キミにはセイくんと合わせて、最低でも金貨60枚以上の利益を私にもたらせてくれるかな?」
「金貨60枚!? それを俺が稼ぎだせ……と? でも、そんな大金、俺でどうしろと言われるのですか?」
「なーに、簡単ですよ。キミはタイガー・ホール出身で、さらには拳聖:キョーコ=モトカードに後継者として指名されるほどの実力者だったんでしょう? 貴族たちが催すちょっとした賭け試合に出場してもらうだけで良いんですからね?」
コープ=フルールは拳闘士としてのロック=イートを高く買っていたのであった。彼に貴族や商人たちの間でもてはやされている闘技会で勝ちを積み重ねてもらうだけで良かったのだ。そこに賭け金をちょいとばかし上積みしてしまえば良い。ただそれだけで、彼ら2人を買い取った分をあっさりと取り戻せると踏んでいたのであった。
「というわけで、キミたち2人はコープ=フルールが買い取ることを約束しましょう。なーに、ロックくんが頑張れば2~3年ほどで金貨60枚くらいの損失をカバーできるでしょうよ……」
「ええと……。俺にはわかりません。そもそも、お師匠様がそんなことをしようとしていたこと自体に対して懐疑的なんです」
「ううむ? では、あれはやはり噂に過ぎないというわけなのでしょうか?」
「あの時、気絶していた俺より、状況を詳しく知っている者なら紹介できます。俺と同胞で、この奴隷市場に連れてこられているセイ=レ・カンコーって男です」
ロック=イートの言葉を受けて、コープ=フルールは事実関係をはっきりさせようと、部屋の机の上にある呼び鈴をチリリンと軽く鳴らす。すると、個室のドアを開けて、奴隷市場の使用人が中に入ってくる。コープ=フルールはその使用人にセイ=レ・カンコーという男も呼んできてほしいと頼むこととなる。使用人はコクリと首を縦に振り、個室から退出していくのであった。そして、5分後にはセイ=レ・カンコーも2人が居る個室に招き入れられることとなる。
「へぇ……。あっしなんかの話で良ければ言いますけど、もう5年前の出来事だということは考慮してほしいっす」
「ああ、構わないですよ。ロックくんを買い取りたいのだが、何かひとには言えぬ傷を持っているとしたら、こちらとしても困るのですから」
コープ=フルールはセイ=レ・カンコーに、5年前のあの日、タイガー・ホールで何があったのかを聞くのであった。セイ=レ・カンコーは、記憶を掘り返し、あの当時のことを出来る限り、正確に伝えようと努力する。コープ=フルールが合間あいまに質問をし、それにセイ=レ・カンコーは曖昧ながらも返答を行う。そのやりとりが10分ほど続いた後、コープ=フルールは椅子の背もたれに体重を預け、個室の天井に顔を向け、ふうううと一息つくのであった。そして、再び、セイ=レ・カンコーに顔向けて一言
「では、拳聖:キョーコ=モトカードは潔白なのですね? 何かの陰謀に巻き込まれて、タイガー・ホールの面々は無実の罪を被らせられたと」
「はい、そう思ってもらって間違いないと思います。なんたって、ロックさんは拳聖の後継者なんですぜ。ロックさんに嫉妬を抱いた奴らが、ロックさんを罠に陥れたとしか考えられないんですよっ!」
コープ=フルールはセイ=レ・カンコーが嘘を言っていないと直感で察していた。そもそもとして、彼が嘘を言う必要性が無いからだ。少しでも自分の有利に働くように、よりよい雇い主に買われたほうがマシな奴隷であるが、コープ=フルールの眼の前に立つ2人は奴隷と言うには態度が立派すぎるのだ。何か信念を持ち、その信念が背骨を支えている。だからこそ、彼らは臆することなく、悪びれることなく、媚びる気もない。彼らを利用しようといているコープ=フルールであるが、それに乗っかろうとする気を全くもって2人から感じられないのであった。
「よし……。ここは賭けに出させてもらいましょう。ロック=イートくん。キミを我が家に招きいれようと思います。異論や意見があるなら、今のうちに聞いておきますが」
もちろん、聞くだけ聞くのであって、それを実行するかどうかについては言及しないコープ=フルールであった。常に手綱はこちらが握るつもりのコープ=フルールである。飼い犬にはどうしても首輪と鎖が必要だ。そして、眼の前に餌をぶらさげることも忘れてはいけない。このぶらさげた餌にどう反応するかをコープ=フルールは試したわけなのだ。だが、コープ=フルールはロック=イートの言いに耳を疑うこととなる。
「な……に? 自分よりもセイ=レ・カンコーを雇ってほしいと?」
「はい。コープさんは良いひとだと感じました。だからこそ、俺の面倒を色々と見てくれたセイさんこそ、コープさんに雇われるべきだと思うんです」
コープ=フルールにはわけがわからなかった。自分が良いひとだと言われたことはもちろんのこと、自分の心配よりも他人の心配をしている眼の前の男の存在をだ。何故にこの男は純心なのか。他人を押し分けてでも、より良い条件を提示する雇い主に媚びへつらうべきなのではないのかと。コープ=フルールが雇いたいのはセイ=レ・カンコーではない。あくまでも大きな利益をもたらしてくれそうなロック=イートこそ買い取りたいのだ。
「もし、セイ=レ・カンコーを買い取らないと言ったら、キミはどうするのかね?」
「そ、そこまでは考えていません。ただ、俺のために色々と便宜を図ってくれたセイさんが収容所よりかはマシなところに買われてくれればと……」
コープ=フルールはヤレヤレとばかりに頭を左右に振る。青年という歳になりながら、他者の心配に心を砕けるニンゲンなぞ、ここ最近、お目にかかったこともない。それは商人であるからこその付き合いで、そう感じるだけなのかもしれないが、ここまでのお人良しなど、市中で探してもなかなかに見つからないだろうとも思えてしかたがないコープ=フルールであった。そして、コープ=フルールは再び呼び鈴を鳴らし、奴隷市場の使用人を呼び出す。そして、セイ=レ・カンコーの値段はいくらかを尋ねるのであった。
「ふむ……。ロック=イートくんが金貨50枚。セイ=レ・カンコーくんが金貨10枚か……。ロックくん、キミにはセイくんと合わせて、最低でも金貨60枚以上の利益を私にもたらせてくれるかな?」
「金貨60枚!? それを俺が稼ぎだせ……と? でも、そんな大金、俺でどうしろと言われるのですか?」
「なーに、簡単ですよ。キミはタイガー・ホール出身で、さらには拳聖:キョーコ=モトカードに後継者として指名されるほどの実力者だったんでしょう? 貴族たちが催すちょっとした賭け試合に出場してもらうだけで良いんですからね?」
コープ=フルールは拳闘士としてのロック=イートを高く買っていたのであった。彼に貴族や商人たちの間でもてはやされている闘技会で勝ちを積み重ねてもらうだけで良かったのだ。そこに賭け金をちょいとばかし上積みしてしまえば良い。ただそれだけで、彼ら2人を買い取った分をあっさりと取り戻せると踏んでいたのであった。
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