拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第3章:コープ=フルール

第3話:身だしなみ

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 不穏な空気が多少漂いはしたものの、商談が成立し、正式にコープ=フルールがロック=イートたちの雇い主となる。ロック=イートはセイ=レ・カンコーの分も合わせて金貨60枚の負債を背負うこととなる。金貨60枚となれば、4人家族が生活できるほどの平屋建ての一軒家が建てられるほどだ。それをロック=イートは2~3年で稼がなければならぬ状況へと陥ったのだ。

 そもそもとして、コープ=フルールはアンゴリア大王国所属の商人である。そんな彼が何故にポールランド副王国まで奴隷を買いにきたかと言えば、それは成り行きとしか言いようがない。商談でこの国に訪れたは良いが、娘のために何かおみやげを買いに街を散策していたところ、奴隷商に誘われたのである。今月入荷した奴隷は粒ぞろいだと言う言葉を信じてはいなかったが、それでもなんとなくだが奴隷市場に足を運んだのである。

 そこでロック=イートを紹介されて、彼の黒光りする右の義腕を見て、ほう……と思わず感嘆の声をあげてしまったのだ。コープ=フルールはその場で目まぐるしく頭の中で算盤そろばんをはじき、貴族連中ともっと深く関わるためにもロック=イートを買い取ることを決めたのであった。彼の計算違いはセイ=レ・カンコーまでをも雇うことになってしまったが、ロック=イートに首輪と鎖を繋げておく意味においても役に立つだろうということで納得する形となる。コープ=フルールはあくまでも商人だ。自分の利益になるであろう人物であるなら、胸襟を開くことは忘れてはいないのである。

 しかしながら、貴族や商人たちとの間でおこなわれる非公式の武闘会でロック=イートに出場してもらう予定ではあるが、それがおこなわれていない普段の生活において、牢に繋いでおくわけにもいかない。自分の食い扶持は自分で稼いでもらうためにも、ロック=イートたちには表向き、屋敷の使用人として、働かせようと決めるコープ=フルールであった。

 彼は宿屋に戻る道すがら、服の仕立て屋に寄り、そこの主人にロック=イートたちのための服を準備させる。ロック=イートたちはあり合わせの服をコープ=フルールに与えられることとなる。

「この服が普段着で、そちらの服が私と同行してもらっている間に着てもらう服となります。我が家の使用人が正式に着る制服は、国に帰った後に準備することにしています。とりあえず、半裸のまま、このまま私と共にアンゴリア大王国まで付き従うよりかは、はるかにマシな恰好になるでしょう」

 ロック=イートたちが与えられた服は上は緑のポロシャツ、下は茶色の綿パンと、まさに地味と言って差し支えの無いモノであった。あり合わせもいいところである。ロック=イートたちは仕立て屋の中にある着替え場所で囚人服を脱ぎ、コープ=フルールが用意してくれた服に着替えるのであった。ぶっちゃけ、ボロボロの囚人服がキレイな囚人服に変わった程度にしか感じないロック=イートたちである。

「ああ、今まで着ていた服は処分してもらいますので、店員にでも渡しておいてくださいね?」

 膝に穴が開いたズボンであったが、それでも糸と布で穴を縫い合わせれば、まだまだ履けるシロモノである。だが、コープ=フルールの眼にはボロ雑巾のようにしか見えないらしく、フルール家に仕える者にはふさわしくないモノなので、廃棄してもらうようにと、もう1度、強めの口調でロック=イートに言いのけるのであった。不承ぶしょうながら、ロック=イートたちは彼の言いに従う他無かったのであった。

 着替えも終わったロック=イートたちを舐めるように下から上へ見つめるコープ=フルールが次に思いついたのは、髪と髭をセットさせることであった。ロック=イートも23歳だ。5年前の頃とは違い、放っておけば無精髭となってしまう年頃である。フルール家の使用人は紳士たれというのがコープ=フルールの信条であった。服を与えられたロック=イートたちが次に連れていかれた場所は散髪屋であった。

「ご主人。この2人のぼさぼさの髪を適当に短く切ってくれるかな? あと、髭も整えておいてくれたまえ。ロックくん、何か注文があるなら、無理のない程度にご主人に言ってくれて構わないからね?」

「は、はあ……。じゃあ、横は刈り上げる感じでお願いします」

 ロック=イートは半ば無理やりに背もたれが無い丸椅子に座らされて、首から下を白い布で覆われてしまう。そして、散髪屋の主人は器用にハサミと櫛を用いて、パパッとロック=イートの髪の毛をカットしていく。対して、セイ=レ・カンコーと言えば、散髪屋の主人の奥方であろう女性と談笑しながら、髪の毛をカットしてもらっていた。ご主人のほうは黙々と髪の毛をカットしつづけており、ロック=イートとしては席を変わってもらいたい気持ちになっていた。

 タイガー・ホールでは、ロック=イートの髪の毛を散髪するのはサラ=ローランの役目であった。サラ=ローランは近頃の調子はどう? とか、気さくに声をかけてくれたものだ。そして、囚人生活の時はその役目はセイ=レ・カンコーが担っていた。どちらも、今のご主人のように黙々と髪をカットしてくれることはない。だからこそ、堅苦しさをロック=イートは感じざるをえないのだった。

「ほれよ……。大体、こんな感じでいいだろ」

 散髪屋の主人が髪の毛のカットを終えたのか、縦20センチメートル、横15センチメートルほどの鏡を2枚、それぞれの手に持ち、ロック=イートにどのような髪型になったのかを見せてくれる。ロック=イートはふむふむと頭を左右に軽く動かし、自分の思い描く髪型にかなり近しい形になっていることを確認する。頭の上の方は自然と跳ね上がるほどの短さに。左右は短く刈り上げに。後ろは襟足が申し訳ない程度に出る程度に髪の毛が残されている。

 ロック=イートは散髪屋の主人が相当な腕前であることを思い知る。仕事をこなすための必要最低限の会話しかしてないというのに、ここまでロック=イートが思っていた髪型に寄せてくるとは思っていなかったのである。ロック=イートが散髪の礼を言うと、ご主人はニカッと白い歯を見せて

「なあに……、礼にはおよばんよ。あとは髭だな。全部剃っちまうか? それとも今風の若者のスタイルにしちまうか?」

 散髪屋の主人も自分の腕前に満足しているのか、鼻歌を歌いながら髭剃り用のカミソリを皮ベルトで研いでいる。ロック=イートは髭のセットもご主人の想うままに任せてしまって良いだろうと考えながら、髭剃り用の背もたれがある椅子に座り変えるのであった。
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