拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
42 / 122
第5章:首輪と鎖

第1話:目覚め

しおりを挟む
「リリーお嬢様。何も使用人のひとりにそこまで情をかける必要などないはずですのじゃ」

「うるさいわね、ゴーマ。あんたはお父様の仕事を手伝ってなさいよ。これは趣味。趣味の範疇でやっていることなのだから、ほっといてほしいのですわっ!」

 裏武闘会で一つ目入道サイクロプスを打倒したロック=イートであったが、深手を負い、そのまま気絶に至る。そして、彼は急いで医務室に運ばれる。大怪我はしているが、命に別状は無いと、そこの医者が言っていた。しかしながら気が気でなかったリリー=フルールはロック=イートの看病は自分がすると言い出したのだ。そして、ロック=イートはコープ=フルールの屋敷に運ばれ、さらにはリリー=フルールの部屋にある薄桃色のレースがかかった天蓋つきのベッドで寝かされることとなる。

 ロック=イートはあの闘いから三日間、目を覚ますことはなかった。リリー=フルールはそれでも彼が再び目覚めることを信じて、熱心に彼の看病をしつづける。そして、四日目の朝を少し過ぎた頃にロック=イートが目を覚ますことになる。

「うーーーん。よく寝たなあ……。って、俺、なんでこんなふかふかなベッドの上で寝ているんだ?」

 ロック=イートは薄桃色のレースがかかったベッドの上で目覚めたことにより、驚きの表情をまずは浮かべることとなる。産まれてこの方、これほどまでに寝心地の良いベッドで横になったことなど1度たりとてない。身体全体が包み込まれるようにベッドのマットに沈んでいた。それなのに不快感は一切ないのだ。身動きは当然しにくいのだが、逆にそれが心地よく感じてしてしまうことに不思議な感情を抱いてしまうことになる。

 ロック=イートは額の上に乗っているタオルをどかし、次に上半身を起こし、ベッドの上から辺りを見回す。その眼に映るのは薄紫色の壁に鏡台や箪笥などの家具類。そして、ベッドの近くにあるテーブルには水が張ってある大き目の真鍮製のボールであった。あきらかにそのボールに入っている水でさきほどまで自分の額の上に乗っけられていたタオルを湿らせていたのが想像できた。

(誰かが俺を看病していてくれていた? でも、いったい誰が?)

 ロック=イートがそう疑問を抱く。自分の左腕は木板を支えにして包帯でグルグル巻きにされている。その左腕に力を込めると、ズキッ! という鈍い痛みが全身を駆け巡ることとなる。ロック=イートはその痛みにより、裏武闘会で無理をしすぎたことを思い出すこととなる。多分ではあるが、ロック=イートの左肩は『轟を以てして重を制す』を発動することにより、肩が外れかけていたのだろうと。そして、その状態でありながら、一つ目入道サイクロプスとの戦いを続行した。結果的に左腕のスジを痛めてしまったのだろうとうと予想する。

 ロック=イートが他にも怪我をしている箇所が無いかとその両目で全身をくまなくチェックする。そして、この時になってようやく自分がまるで赤ん坊のようにオシメ姿なことに気づくこととなる。

「あっ! ロック! 気が付いたのですわねっ! 良かったのですわ……」

 部屋のドアを開き、中に入ってきた人物の第一声がそれであった。彼女はロック=イートが目を覚まし、上半身を起こしている姿を見て、心底、安堵した表情へと変わっていた。そして、嬉しそうなステップを踏んでベッドに近づく。ロック=イートは次に彼女が取った行動に眼を白黒させてしまう。

「あっは~ん。わたくしの騎士様……。目覚めのキスは必要でして?」

 なんとリリー=フルールはベッドの上で上半身を起こしているロック=イートにいきなり抱き着き、潤んだ瞳のままにロック=イートの顔に自分の顔を近づけていくのである。ロック=イートは驚きのあまりに体勢を崩し、ベッドの上でリリー=フルールに押し倒される形となる。だが、そんなロック=イートに対して、リリー=フルールはさらに攻勢を強め、ロック=イートの頬にチュッ! と接吻せっぷんしてしまうのである。自分からそうしておいて、リリー=フルールは今度は自分の頬を両手で抑えつつ、顔を左右に振り

「あら、いやですわ。わたくしとしたことがはしたない……。ロックが眼を覚ましてくれたことで、少しばかり舞い上がってしまいましたわ」

 リリー=フルールは恥ずかしそうな所作をしつつ、そう言うのであるが、反省している様子は一切感じられない。そして、テキパキと手を動かし、ベッドの上に転がっているタオルを真鍮製のボールに入れて、その中の水で洗いだす。そして、雑巾を絞るかのようによいしょっとタオルを力いっぱいに絞り、今度はロック=イートの身体を拭き始めたのである。

「ちょっと待ってくれっ! まったくもって状況がわからないんだがっ!」

 ロック=イートが右腕を彼女によって無理やり引っ張られて、上半身を起こされる。そして、彼女はフンフン~と鼻歌まじりにロック=イートの右腕を湿ったタオルで拭っているのだ。何故にあれほどまでに自分を邪険に扱ってきたリリー=フルールがそんなことをしているのかが一切理解できないロック=イートである。

「今更、恥ずかしがることではありませんことよ? 貴方の身体を拭くだけじゃなく、貴方が今つけているオシメも、わたくしが交換してさしあげていましたのよ?」

「え……。えええ!?」

 素っ頓狂な声をあげるロック=イートであったが、それでもリリー=フルールはうふふと笑みを零すだけの反応であった。まるで自分は当たり前のことをしたまでだという感じを態度で示すリリー=フルールである。リリー=フルールはロック=イートの右腕を濡れタオルでよーく拭きあげた後、さらに彼の右わきから横腹にかけてを拭く。ロック=イートはこそばゆくてたまらない感じであった。やめてほしいのはやまやまなわけで、彼女にそんなことをしなくても良いと言っているのに、リリー=フルールは一向に止めるつもりは無いらしく、背中をこちらに向けてほしいと言い出す始末であった。

「ロックの身体の隅々まで、わたくしはお世話をさせてもらいましたのよ? それこそシモのお世話まで……。責任を取ってもらわないと困る立場になっていますのよ?」

 ロック=イートは天蓋付きのベッドを仰ぎみる他無かった。自分が気を失い、このベッドの上に運ばれてから、どんなことをされていたのか、考えただけでもゾッとしてしまう。自分を看護してくれていたのがセイ=レ・カンコーならどれほど良かったモノかと思ってしまう。気絶してしまい無抵抗であった自分を恨めしく思わずにはいられない。ロック=イートが裏武闘会で倒れてから、この三日間、タイガー・ホールに居たあの5年前のショックをぶり返すほどの出来事が自分の身に起きていたのである……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。 失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった! この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。 一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。 「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」 底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...