拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第5章:首輪と鎖

第4話:ご褒美という罠

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 ロック=イートは続けざまの二発目を発射した後、今度こそ、深い眠りへと落ちていく。抗おうとしても、身体がそうさせてくれない。ただただ、頭の芯まで痺れるような感触に流されるままにロック=イートは意識が遠のいていってしまう。このままリリー=フルールを自由にさせていては、身の危険を感じていたのだが、それでも急激に襲いかかる眠気に勝てないロック=イートであった。抗えぬ眠気に負けていくロック=イートの耳にリリー=フルールが優しく言葉をかける。

「おやすみなさい。わたくしの愛する騎士様……。次に目覚めた時はわたくしが美味しい料理を運んできますわね……」

 リリー=フルールはロック=イートがまぶたを閉じていくのを穏やかな表情で眺めていた。愛しい彼はスースーと穏やかな寝息を立てている。そんな彼を起こさないように、その頬に軽く接吻せっぷんをするのみにしておく。そして、彼女は顔全体に付着したヌルヌルとした液体を洗い流すべく、屋敷にある洗面所へと向かっていくのであった。

 それから6時間が経ったあたりで、ロック=イートは再び覚醒を果たす。ロック=イートは上半身をゆっくりと起こし、目覚めたばかりだというのにハア……と深くて長いため息をつく。自分のスペル魔で汚してしまったオシメは新しいモノに代えられており、リリー=フルールがそうしてくれたのだろうと予想する。ロック=イートがそう思ったのは彼女がベッドの上によりかかるように上半身を乗せて、クークーと可愛らしい寝息を立てて、眠っていたからだ。

 ロック=イートは彼女に対して、どのような感情を抱くべきなのだろうと考える。リリー=フルールにあんなことをさせておいて、自分は関係ない、巻き込まれただけだと主張することは難しい。なら、彼女をけがしたことについて、男らしく責任を取るべきなのかと問われれば、それは違う気もするロック=イートである。

「俺はいったいどうしたら良いんだ……」

「簡単ですよ。責任を取れば良いんです」

 ロック=イートは独り言を呟いたというのに、それに対して返事があったために、ベッドから転げ落ちそうになるほど身体をビクッと跳ね上げさせる。ベッドが急に揺れたものだから、そこに寄りかかっていたリリー=フルールが何ですの……? と起きてしまう。先ほどの声の主は眠っていたリリー=フルールではなく、部屋の入り口で立っているコープ=フルールであった。彼はニヤニヤとした表情であったために、ロック=イートは猛烈に嫌な予感を感じていたのである。

「いやあ。私としては一線、越えてもらっていたほうが話が早かったんですけどねえ。ロックくんは私の娘に対して、好きとか愛しているとかって感情はなかったわけですか?」

「お、俺はコープ=フルール様の使用人であって、それ以上でもそれ以下でもありませんっ。だから、リリーお嬢様に対して、やましい感情を抱いているはずもありませんっ!」

 コープ=フルールは、そんなロック=イートの返事に、ほほぅ……それはそれはと何か思うところがありそうな言葉を紡ぎ出す。そして、彼は部屋の入口から中へとズカズカと入って来て、未だベッドの上に居るロック=イートの近くにまでやってくる。そして、リリー=フルールの頭をよしよしと撫でて

「リリー。ロック=イートくんのことをどう思います?」

「わたくしですか? わたくしはロックのことをわたくしだけの騎士様だと思っていますわよ。お父様もそうして良いと言いましたわよね?」

 ロック=イートは2人のやりとりを聞き、いったい今、自分がどんな状況に陥っているのかと怪訝な表情になる。明らかにハメられつつあるのはわかっている。しかし、ロック=イートはまだリリー=フルールを物理的にハメたわけではない。もちろん、スペル魔をそのキレイな顔にぶっかけたという犯罪歴は持っている。だが、それでもその罪には執行猶予はつくはずだと考える。

「おやおや。ロックくんが疑わしい表情で私を見てきますよ……。私はただ自分の娘とロックくんが結ばれて、幸せになってくれれば良いと思っているだけなのですが……」

「そんな言葉遊びは良いですから、本題に入ってください。また俺に何かしてほしいんですよね?」

 おおいに疑念が含まれたロック=イートの返事にコープ=フルールはおおげさに両腕を左右に広げ、さらには頭を横に振る。ロック=イートはこの所作にいらつきを覚えるのは致し方なかった。もしかすると、リリー=フルールが先ほど自分の愚息をいじり倒したのは、コープ=フルールの策略だったのではないかと思うようになっていた。出来るなら沸き立つ欲情のままにリリー=フルールを自分が抱いてしまえば、彼の策略が完成していたと言いたげな表情をしているのである、コープ=フルールは。

「まあ、裏武闘会が終わった後に色々と考えたんですよ。リリーがロックくんにご執心となってしまいましてね。私としても、リリーをその気も無い貴族のボンボンと結婚させるのは心が痛んで仕方がなかったんです」

 ロック=イートはこの言葉を半分本気で半分嘘だと感じる。一つ目入道サイクロプスが観客席に躍り出たと同時にいち早く逃げ出したルイ=ブルゲ親子がだらしないのはわかるが、彼らがあそこで踏みとどまるほうがおかしい。彼らは侯爵家のニンゲンだ。あそこで命を散らして良い存在ではない。だからこそ、いくら結婚話が進んでいるリリー=フルールを置いて、先に逃げても彼らに一切のとがなど無い。そして、コナン=ブルゲとの結婚話よりも、今はリリー=フルールと自分をくっつけようとしているのは火を見るよりも明らかである。

「俺がリリーお嬢様と結婚することで、コープ=フルール様は何か得をするのですか?」

 ロック=イートは失礼を承知で棘のある言い方をした。しかしながら、コープ=フルールはそれで機嫌を損ねることは無く、逆に上機嫌にハハッ! と笑いだす。

「聡いロックくんのことを私は大好きですよ。いやあ、商談でもそうなんですが、察しの悪い相手をするのは肩がこってしまいましてね。リリーはロックくんのことを好いている。そして、私はロックくんにもっと稼いでほしい。わかりますよね?」

「ああ、わかります。リリーお嬢様は俺に差し出されたご褒美というわけですね。そして、俺はさらにご褒美をコープ様からいただくために、貴方のために働くということですね?」

「そう。その通りですっ! いやあ、話が早くて本当に助かります。ロックくんは裏武闘会に出入り禁止となってしまったので、他のめぼしい大会に出てもらおうと考えていたのですよっ! そうこう考えているところに、リリーがロックくんを自分のモノにしたいと言い出してましてね?」
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