拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第5章:首輪と鎖

第5話:チェックメイト

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「裏武闘会に出入り禁止って、それはいったいどういうことなんです? 俺は何かしちゃいけないことをしてしまったんですか?」

 ロック=イートは自分が罪を犯した意識などなかった。正々堂々と赤い三錬星レッド・アルケミィを打ち倒したし、その後は会場内で暴れ出した一つ目入道サイクロプスを鎮圧せしめたのだ。褒められることはあれど、出入り禁止などという罰を与えられるようなことは一切ないはずだ。だが、それがいけなかったとコープ=フルールが言う。なんでも、やりすぎたのだと。ニンゲン相手に圧勝するのは構わない。それなら、ルールを変更して、ロック=イートが不利になるように貴族側が調整すれば良いだけだ。

 だが、ロック=イートは魔物モンスターの中でもかなり強い部類に入る一つ目入道サイクロプスをひとりで倒した。しかもスイカをカチ割るかのように、彼奴の頭部を破砕せしめたのだ。ロック=イートは裏武闘会で収まるニンゲンでないことが周知されたのである。ならば、こんなところに彼を縛り付ける必要はないだろうと、ルイ=ブルゲ侯爵が彼を『表』の世界に出させろとコープ=フルールに進言したのであった。

「簡単に言うと、厄介払いってことです。裏武闘会は強者と強者が闘い、血と汗を流す場所ではないのです。貴族たちがボロボロになっていく戦士たちにお小遣いを賭けながら楽しむ場所ですからね」

 コープ=フルールはさらに言う。ルイ=ブルゲ侯爵はすっかりロック=イートのファンになっており、このまま彼を裏武闘会に出場させようものなら、ロック=イートをコープ=フルールの手から無理やり奪い取ってしまいかねないと。もちろん、半分冗談が混じっている。だが半分本気であり、だからこそ、自分が権力を使い、ロック=イートを意のままに操ろうと考える前に、彼を自分の目から遠い場所に置いておいてほしいとコープ=フルールに願い出たのであった。

「いやまあ、私としてもロックくんは金の卵を産み出す鶏ですからね。ロックくんの去就を巡って、ルイ=ブルゲ侯爵と争うわけにもいきませんので……」

 ロック=イートにとってはどっちでもいい話であった。自分の主人が変わるだけで、結局のところ、どこらかしこの闘技場で闘ってこいと言われるのがオチなのである。自分は闘うことしか出来ないニンゲンだということはロック=イート自身も十分にわかっている。そして、ロック=イートには叶えたい夢がある。その道を突き進むにおいて、主人が誰かなど些細な問題だ。

「あれ? あれれ? どっちがロックくんの雇い主でも構わないって表情をしていますね? よーく考えてください? 16の金髪碧眼の美少女がロックくんを好いているんですよっ!? あっちはひょろひょろのもやしっこです。比べるまでもないでしょう??」

「いや……。別に俺は男色の趣味はもちあわせていません……。てかコナン様は俺を抱きたいとでも思っているんですか?」

「はい。実のところ、コナン=ブルゲ様は男色の気がありましてですね。それで我が娘との婚約話がなかなに進んでいなかったという裏話があったりします。父親のルイ=ブルゲ侯爵は割と純粋に闘争を楽しむ御人ですが、コナン=ブルゲ様とくると……」

 コープ=フルールのその言葉を聞いて、げんなりといった表情に変わるロック=イートであった。父親は闘い自体を楽しむのに対して、その息子は男を愛でるために裏武闘会の観客になっていると考えると、うすら寒さを覚えてしまう。ルイ=ブルゲ侯爵家の未来は暗いな……と他人事でありながら、同情を覚えるロック=イートであった。ここでコープ=フルールはごほん……と一度、咳をする。話が本題から外れていくので、それを戒めるための一呼吸である。

「まあ、その辺の事情については、私が暇な時にでも説明しますよ。それよりもロックくん。キミは我が娘:リリー=フルールに思うところは無いのですか?」

「ありません」

 ロック=イートがきっぱりとコープ=フルールにそう言いのける。言われた側のコープ=フルールはわざとらしく額に手を当てて天井を仰ぎつつ、あちゃーと言い出す始末であった。その後、胸の前で腕組をし、うんうんと頷きながら

「そうですよね。気もないのに、美少女の手でシコシコされたり、あげくの果てには端正な顔に驚くほどの量の顔射をかましたところで、ロックくんがリリーに無しかしらの情を抱くわけがありませんものね……」

 ロック=イートは左胸に短剣ダガーを2本ほどぶっ刺されたかのようにズキリと痛みを感じてしまう。年頃の娘が何も思われてない男のスペル魔を顔面にぶちかまされて良い訳が無い。ロック=イートは準強姦罪を適用されてもおかしくない位置に立っていた。それがなされてないのは、リリー=フルールがロック=イートに好意を抱いているからである。だから、ギリギリ、ロック=イートは罪人でないだけなのだ。それをコープ=フルールに指摘されては、ロック=イートもたまったモノではない。いや、溜まっていたモノをリリー=フルールに散々にぶちまけたのだから、今は溜まっていないのだが……。

 ロック=イートは、はあああ……と深いため息をつくしかなかった。自分はチェスで言うところのチェックメイトにあと3手ほどの位置に立たされていることを実感する。チェスは一旦、追い詰められると逆転するのはとてつもない至難の技が必要となる。ロック=イートは身体を動かすのは得意だが、こういった脳みそを使った言葉による駆け引きはとことん苦手である。

(俺の首に繋がれた首輪と鎖を喰いちぎるのは容易じゃないってことか……)

 物理的に存在するソレならば、ロック=イートはいとも容易く、膂力で引きちぎることが出来る。しかし、これは雇用主と使用人の契約である。眼に見えぬ首輪と鎖により、ロック=イートは息苦しさを感じてしまう。そして、その首輪のサイズをさらに大きくするためにコープ=フルールは自分の娘をロック=イートにあてがおうとしているのだ。それはロック=イートも重々に承知している。そして、それを拒否することはかなり難しい状況に陥っていることもだ。

「しかしながらですね。私もこんな手を使う気は最初ありませんでした。そりゃ、いくら根っからの商人だからといって、手塩にかけた娘をどこぞの馬の骨ともわからぬ小僧に渡す気なんて、これっぽちもありませんでした」

「なら、その思うままに俺を罰すればよかったじゃないですか」

 ロック=イートは娘をけがしたことは事実であるために、鞭打ちでもなんでもござれとばかりに投げやりにコープ=フルールに言いのける。しかし、コープ=フルールの応えはロック=イートの思惑通りには進まなかった……。
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