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第5章:首輪と鎖
第6話:ロックの気持ち
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「リリーが泣きそうな顔で懇願するんですよ。ロックにひどいことをしないで! って。私としてはロックくんの望むように磔刑なり、鞭打ちなりしたいところなんですが……」
「お父様! それはロックに言わないでほしいって約束だったでしょ! やめてほしいのですわっ。まるでわたくしがロックにべた惚れしているかのような言い方はっ!」
今まで黙っていたリリー=フルールが頬を紅く染めながら、自分の父親に抗議している。ロック=イートとしては、彼女がこんな自分に何故にそこまでご執心なのかがわからない。自分専用の騎士が欲しいなら、荘厳な鎧が似合いそうな美丈夫でも金で雇って、自分の側に侍らせればいいと思ってしまうロック=イートである。朴念仁ここに極まるとはまさにロック=イートのためにあるような言葉であった。
呆れ顔となっているロック=イートの表情を見たコープ=フルールはやれやれとばかりに大袈裟に両腕を広げてみせる。自分の娘は別れた妻と瓜二つにほど美しい娘に育った。それをロック=イートに進呈しようというのに、まったく食指を動かす気配がない彼が不思議でたまらなかったのである。
「ロックくん。ひとつ聞きたいのですが、本当にリリーに好意を抱いていないんです?」
「はい。俺はリリーお嬢様をどうにかしたいなどというやましい思いは一度たりとて抱いたことはありません」
ロック=イートは再び、きっぱりとその気は無いと言い切る。リリー=フルールがそのロック=イートの言葉を聞いて、唇をアヒルのクチバシのようにとがらせてしまう。そして、ウルウルと涙をその瞳に溜めていき、ついにはツーと一本の涙筋を作り出す。
「ひどいのですわっ! わたくしがこれほどまでにお慕いさしあげているというのに、ロックはわたくしのことなんて、これっぽちも思ってくれないのです?」
ロック=イートは、しまった……と思ってしまう。彼女を泣かせるのは本意ではなかった。ただ、コープ=フルールの思惑通りにことが運ぶのが嫌だっただけである。彼に対しての反意を示そうとしただけであり、決してリリー=フルールを傷つけたいと思ってのことではない。ロック=イートはどうしたらいいのかと慌てふためくこととなる。しかし、彼が手をこまねいている間に、リリー=フルールは涙の量をどんどんと増やしていき、今にも大声で泣きだしそうになっていた。それに対してコープ=フルールがニヤニヤと邪悪な笑みになっており、ロック=イートは彼をぶん殴ってやりたい気持ちになってしまう。
「わたくしに辱めを与えておいて、それで関係ありませんなどと、ひどい話なのですわっ!」
ついにリリー=フルールは号泣しだすこととなる。彼女は隣に立つ父親にひしっと掴まり、わんわんと泣きじゃくる。コープ=フルールはよしよしと彼女の金色に染まる頭を右手で優しくなでながら、対照的に邪悪な笑みでロック=イートに微笑みかける。ロック=イートは本気でコープ=フルールをぶん殴りたい気持ちで満杯であった。この後におよんでまだ自分を挑発する気満々のコープ=フルールに怒りすら覚えてしまう。
「ロックく~~~ん? 私の大事な娘を泣かしてくれましたね~~~?」
なおもコープ=フルールはロック=イートを挑発することをやめないでいた。彼としてもロック=イートに殴られる可能性をもっていなかったわけではない。これはコープ=フルールの賭けであった。彼は賭け事自体を忌避していない。ここがロック=イートとの商談においての分かれ道であるからこそ、その賭けに高々と賭け金を積み上げたのだ。そして、彼はその賭けに勝つことになる。
「わかりました……。俺が言い過ぎました。俺だって、リリーお嬢様のような美人に好かれて、悪い気なんてしません。だけど、なんで俺なんですか? 俺はリリーお嬢様の騎士になんてなれませんよ……」
「悪い気がしないって言うのは語弊を産むのではっきりとしてほしいところですね。好きなんです? 嫌いなんです? それとも『どうでも良い』んです?」
「あなたもしつこいですねっ! 何も思わない相手にアレがイキリ立つわけがないことくらい、同じ男であるコープ様ならわかるでしょうがっ!」
コープ=フルールは口の端をおおいに歪め、ニヤリと笑う。最近、ロック=イートに見せた邪悪の笑みの中では最上級のモノであった。ロック=イートは彼のその表情を苦虫を噛み潰したような表情で見る他無かった。そして、見られている側のコープ=フルールは腰を少しばかり落とし、自分の娘と目線の高さを合わせる。
「リリー。泣き止んでください。ロックくんはリリーを嫌っているから、あのような発言をしたわけではありません。ロックくんが憎いのはあくまでも私なのです。ですよね、ロックく~~~ん?」
「そうなの、ロック? お父様の言っていることは本当なの?」
リリー=フルールは眼を真っ赤に腫らし、グスグスッと鼻をすすりながらロック=イートへ真意を尋ねる。リリー=フルールが恐れと期待を込めての懇願するような顔つきであった。もちろん、コープ=フルールはここ一番の邪悪な笑みである。彼女らの顔つきが正反対なことにツッコミをいれてやりたいロック=イートであったが、これ以上、リリー=フルールを悲しませたくないのも事実であった。ロック=イートは頬を引きつかせながら、なるべく優しい口調で
「あ、ああ……。リリーお嬢様。俺はあくまでも俺を利用しようとばかり考えているコープ様に腹を立てただけなんだ。だから、リリーお嬢様のことは、あのその……」
「んん~~~? ロックくん、聞こえませんよぉぉぉ!?」
ロック=イートはググッ! と奥歯を噛みしめてしまう。事ここに至っても、まだ自分を挑発してくるかとロック=イートは急激に頭に血が昇ってきてしまう。しかし、自分の顔が怒りの表情を浮かべはじめてしまったのか、顔がさらにこうばってしまったことで、リリー=フルールは、ふぇっ……とまた泣き出しそうになってしまった。ロック=イートは右手でガツンと自分のこめかみを強めに叩き、冷静になれと自分に言い聞かせる。そして、一度、すううう……はあああ……と深呼吸をし、なるべく意識にコープ=フルールの顔を入れないようにしつつ、彼女の眼を真っ直ぐに見る。
「俺はリリーお嬢様のことを多分だけど、好いているんだと思う……。いや、多分って言い方はアレなんだけど、好きか嫌いかって問われたら、リリー様を嫌う理由が見当たらないっていうか……」
「はっきりしてほしいのですわっ! 乙女にあんなことさせておいて、どっちつかずなんてあんまりなのですわっ!」
「ご、ごめん……。でも、俺は武一辺倒に生きてきたニンゲンなんだ。そんな俺がリリーお嬢様に釣り合うかどうかなんて、わかるわけがないだろう!?」
「お父様! それはロックに言わないでほしいって約束だったでしょ! やめてほしいのですわっ。まるでわたくしがロックにべた惚れしているかのような言い方はっ!」
今まで黙っていたリリー=フルールが頬を紅く染めながら、自分の父親に抗議している。ロック=イートとしては、彼女がこんな自分に何故にそこまでご執心なのかがわからない。自分専用の騎士が欲しいなら、荘厳な鎧が似合いそうな美丈夫でも金で雇って、自分の側に侍らせればいいと思ってしまうロック=イートである。朴念仁ここに極まるとはまさにロック=イートのためにあるような言葉であった。
呆れ顔となっているロック=イートの表情を見たコープ=フルールはやれやれとばかりに大袈裟に両腕を広げてみせる。自分の娘は別れた妻と瓜二つにほど美しい娘に育った。それをロック=イートに進呈しようというのに、まったく食指を動かす気配がない彼が不思議でたまらなかったのである。
「ロックくん。ひとつ聞きたいのですが、本当にリリーに好意を抱いていないんです?」
「はい。俺はリリーお嬢様をどうにかしたいなどというやましい思いは一度たりとて抱いたことはありません」
ロック=イートは再び、きっぱりとその気は無いと言い切る。リリー=フルールがそのロック=イートの言葉を聞いて、唇をアヒルのクチバシのようにとがらせてしまう。そして、ウルウルと涙をその瞳に溜めていき、ついにはツーと一本の涙筋を作り出す。
「ひどいのですわっ! わたくしがこれほどまでにお慕いさしあげているというのに、ロックはわたくしのことなんて、これっぽちも思ってくれないのです?」
ロック=イートは、しまった……と思ってしまう。彼女を泣かせるのは本意ではなかった。ただ、コープ=フルールの思惑通りにことが運ぶのが嫌だっただけである。彼に対しての反意を示そうとしただけであり、決してリリー=フルールを傷つけたいと思ってのことではない。ロック=イートはどうしたらいいのかと慌てふためくこととなる。しかし、彼が手をこまねいている間に、リリー=フルールは涙の量をどんどんと増やしていき、今にも大声で泣きだしそうになっていた。それに対してコープ=フルールがニヤニヤと邪悪な笑みになっており、ロック=イートは彼をぶん殴ってやりたい気持ちになってしまう。
「わたくしに辱めを与えておいて、それで関係ありませんなどと、ひどい話なのですわっ!」
ついにリリー=フルールは号泣しだすこととなる。彼女は隣に立つ父親にひしっと掴まり、わんわんと泣きじゃくる。コープ=フルールはよしよしと彼女の金色に染まる頭を右手で優しくなでながら、対照的に邪悪な笑みでロック=イートに微笑みかける。ロック=イートは本気でコープ=フルールをぶん殴りたい気持ちで満杯であった。この後におよんでまだ自分を挑発する気満々のコープ=フルールに怒りすら覚えてしまう。
「ロックく~~~ん? 私の大事な娘を泣かしてくれましたね~~~?」
なおもコープ=フルールはロック=イートを挑発することをやめないでいた。彼としてもロック=イートに殴られる可能性をもっていなかったわけではない。これはコープ=フルールの賭けであった。彼は賭け事自体を忌避していない。ここがロック=イートとの商談においての分かれ道であるからこそ、その賭けに高々と賭け金を積み上げたのだ。そして、彼はその賭けに勝つことになる。
「わかりました……。俺が言い過ぎました。俺だって、リリーお嬢様のような美人に好かれて、悪い気なんてしません。だけど、なんで俺なんですか? 俺はリリーお嬢様の騎士になんてなれませんよ……」
「悪い気がしないって言うのは語弊を産むのではっきりとしてほしいところですね。好きなんです? 嫌いなんです? それとも『どうでも良い』んです?」
「あなたもしつこいですねっ! 何も思わない相手にアレがイキリ立つわけがないことくらい、同じ男であるコープ様ならわかるでしょうがっ!」
コープ=フルールは口の端をおおいに歪め、ニヤリと笑う。最近、ロック=イートに見せた邪悪の笑みの中では最上級のモノであった。ロック=イートは彼のその表情を苦虫を噛み潰したような表情で見る他無かった。そして、見られている側のコープ=フルールは腰を少しばかり落とし、自分の娘と目線の高さを合わせる。
「リリー。泣き止んでください。ロックくんはリリーを嫌っているから、あのような発言をしたわけではありません。ロックくんが憎いのはあくまでも私なのです。ですよね、ロックく~~~ん?」
「そうなの、ロック? お父様の言っていることは本当なの?」
リリー=フルールは眼を真っ赤に腫らし、グスグスッと鼻をすすりながらロック=イートへ真意を尋ねる。リリー=フルールが恐れと期待を込めての懇願するような顔つきであった。もちろん、コープ=フルールはここ一番の邪悪な笑みである。彼女らの顔つきが正反対なことにツッコミをいれてやりたいロック=イートであったが、これ以上、リリー=フルールを悲しませたくないのも事実であった。ロック=イートは頬を引きつかせながら、なるべく優しい口調で
「あ、ああ……。リリーお嬢様。俺はあくまでも俺を利用しようとばかり考えているコープ様に腹を立てただけなんだ。だから、リリーお嬢様のことは、あのその……」
「んん~~~? ロックくん、聞こえませんよぉぉぉ!?」
ロック=イートはググッ! と奥歯を噛みしめてしまう。事ここに至っても、まだ自分を挑発してくるかとロック=イートは急激に頭に血が昇ってきてしまう。しかし、自分の顔が怒りの表情を浮かべはじめてしまったのか、顔がさらにこうばってしまったことで、リリー=フルールは、ふぇっ……とまた泣き出しそうになってしまった。ロック=イートは右手でガツンと自分のこめかみを強めに叩き、冷静になれと自分に言い聞かせる。そして、一度、すううう……はあああ……と深呼吸をし、なるべく意識にコープ=フルールの顔を入れないようにしつつ、彼女の眼を真っ直ぐに見る。
「俺はリリーお嬢様のことを多分だけど、好いているんだと思う……。いや、多分って言い方はアレなんだけど、好きか嫌いかって問われたら、リリー様を嫌う理由が見当たらないっていうか……」
「はっきりしてほしいのですわっ! 乙女にあんなことさせておいて、どっちつかずなんてあんまりなのですわっ!」
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