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第5章:首輪と鎖
第7話:まとまらぬ思考
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ロック=イートは青春の全てを捧げて、武術を極めんと励んできた。10歳の時にタイガー・ホールへと招かれて、そこで腕を磨き、18歳にはついに拳聖:キョーコ=モトカードの後継者として、本人から直々に指名されるほどの腕前にまで達していた。しかし、それからすぐにロック=イートは監獄:東の果てに収容されて、そこで5年間、囚われることとなる。だが、そこでも1日とも休まずに鍛錬を続けていた。
そんな男だからこそ、恋愛感情に疎いのは当たり前の話であった。拳聖:キョーコ=モトカードに自分の姉弟子であるサラ=ローランを当てがわれそうになったが、あの時も自分の気持ちについては、よくわかっていなかった。ただあの時の流れに乗ってしまっただけである。今もそうだ。一方的にリリー=フルールに好かれてはいるが、自分の本当の気持ちはどうなのだろうかと。彼女はまだ16歳だというのに大層、見目麗しい。そして自分は不覚にも男根をそそり立たせて、彼女の顔面にありったけのスペル魔をぶちまけてしまった。こんなことはロック=イートの人生において、産まれて初めての経験であった。
しかし、これはただの男としての性がさせたとも言えよう。それゆえにロック=イートはリリー=フルールにわたくしのことをどう思っているのか強く問われても、はっきりと彼女が好きだとは言えなかったのである。
「俺はリリーお嬢様のことをどう思っているのかを上手く言葉に表すことが出来ない……。あーーー! 俺はどうすればいいんだっ!」
ロック=イートは自由な右手で自分の頭をボリボリと掻き毟る。自分のやりたいこと。自分の夢。そしてリリー=フルールの存在。それらが頭の中でぐるぐると駆け巡る。リリー=フルールの手を取れば、そこで自分の夢が潰えてしまう気もするし、そうでない気もする。彼女は自分の夢を叶えるための後押しとなってくれる可能性もある。だが、自分の夢のために彼女を利用したいという気持ちだとかそんなことではない。それはリリー=フルールにとって不幸になってしまうに違いないと思えてしょうがない。だが、だとしても、これはチャンスであろうこともロック=イートにはわかっている。
そんな、どこにも行きつかないような自問自答に囚われてしまうロック=イートは、ただただ、髪の毛をくしゃくしゃにする他無かった。誰かがこの堂々巡りの思考にひとすじの光明を与えてくれればと願うようにもなっていた。
「リリーお嬢様……。俺は貴女のことが嫌いじゃないんだ。でも、俺は『世界最強の生物』になりたいんだ……」
悩むロック=イートが髪の毛をくしゃくしゃにするだけでは足りずに、ゴツンゴツンと右手でこめかみを叩きだす。そんな彼の自傷行為を止めるべく、リリー=フルールはロック=イートの右手首を掴み、彼女はロック=イートの右腕を自分のおしとやかな胸の谷間にうずめて、こう言い出す。
「わかっていますわ。ロックにはわたくしよりも大事な夢があることは。でも、安心してほしいのですわ。わたくしは貴方の支えとなりたいのですわ」
「だけどっ! それだと、俺はリリーお嬢様を自分の夢のために利用するだけになっちまうんだぞ!?」
ロック=イートは怒っているのか泣いているのかわからない表情になっていた。そして、怒りの矛先が自分へなのか、リリー=フルールへなのかも判別しづらい。しかし、これだけはわかる。ロック=イートは自分の想いのために悩み苦しんでいることだけは。そんなロック=イートに対して、リリー=フルールは聖女のような微笑みを顔に浮かべつつ
「それでもかまいませんわ。わたくしはロック=イートに命を救われたのです。ならば、失くしかけた命を救ってくれたロック=イートのために全て使ってしまっても良いと思っていますの」
リリー=フルールは努めて笑顔をたやさなかった。ロック=イートが心の底から悩んでいるのはわかっているからだ。そして、ロック=イートが願ってやまない夢と自分を天秤にかけてくれていることを。ロック=イートはあの日、自分に向かて言いのけた。俺が俺の夢を叶えていく姿をその眼に焼き付けてほしい。なんたって、俺は『世界最強の生物』になるのが夢だからと。ロック=イートの夢はリリー=フルールにとっても叶えてあげたい夢なのである。それをどうやって伝えれば、ロック=イートはわかってくれるのだろうとリリー=フルールはそう思う。
「いい? わたくしはロック=イートが夢を叶えるためのお手伝いをしたいの。そして、そのお手伝いをする代わりに、わたくしは貴方から愛をもらうの。これでわたくしと貴方の商談が成立すると思いませぬこと?」
「はは……。商談って。恋愛ってそんなもんじゃないだろ?」
「確かにそうかもしれませんわね。利害関係で結びつく男女の間を恋愛と呼ぶのは間違っていると、詩人たちが顔を真っ赤に染めながら、猛然と抗議するかもしれませんわね?」
リリー=フルールがそう言ったあと、くしゃっと破顔し、クスクスと笑う。それにつられて、ロック=イートもなんだか、自分がとるにたらないことに悩み過ぎていただけだと思えるようになってしまった。利害関係を絡めてしまったのは自分自身であることに気づいたのだ、ロック=イートは。リリー=フルールは本当なら、そんな恋愛は望んでいないはずである。そういうことを超越したところでロック=イートと結びつきたいと思っているのは当たり前の話だ。だが、わざわざ『商談』と言うことで、ロック=イートが背負った心の荷を少しでも軽くしようとしてくれたのである。
「ありがとう。リリーお嬢様。俺は何か勘違いしていたみたいだ。リリーお嬢様と付き合うとかどうとかで、俺の夢が潰えるようだったら、俺の想いなんて、そこまでだったってだけだったよ」
「あら? わたくしはお付き合いだけじゃなくて、ロックとは将来的に結婚したいと思っていましてよ? 遊ばれてポイッと捨てられるのではたまったものじゃありませんものっ!」
ロック=イートはこの言葉を受けて、苦笑せざるをえなかった。どこまでもしっかりしているこの女性には驚かされしまうばかりだ。男と女は精神年齢が違いすぎるとはよく世間で言われているが、23歳になった自分はまだまだ5~6歳児ほどの考え方であり、そして16歳の眼の前の女性は自分の実年齢よりも上なのではないのかと思ってしまう。
「あら? その何か言いたげな顔は何かしら? まるで弟が姉に抗議でもしたそうな顔になっていますわよ? わたくしはこんな老けた弟はいりませんわっ」
そんな男だからこそ、恋愛感情に疎いのは当たり前の話であった。拳聖:キョーコ=モトカードに自分の姉弟子であるサラ=ローランを当てがわれそうになったが、あの時も自分の気持ちについては、よくわかっていなかった。ただあの時の流れに乗ってしまっただけである。今もそうだ。一方的にリリー=フルールに好かれてはいるが、自分の本当の気持ちはどうなのだろうかと。彼女はまだ16歳だというのに大層、見目麗しい。そして自分は不覚にも男根をそそり立たせて、彼女の顔面にありったけのスペル魔をぶちまけてしまった。こんなことはロック=イートの人生において、産まれて初めての経験であった。
しかし、これはただの男としての性がさせたとも言えよう。それゆえにロック=イートはリリー=フルールにわたくしのことをどう思っているのか強く問われても、はっきりと彼女が好きだとは言えなかったのである。
「俺はリリーお嬢様のことをどう思っているのかを上手く言葉に表すことが出来ない……。あーーー! 俺はどうすればいいんだっ!」
ロック=イートは自由な右手で自分の頭をボリボリと掻き毟る。自分のやりたいこと。自分の夢。そしてリリー=フルールの存在。それらが頭の中でぐるぐると駆け巡る。リリー=フルールの手を取れば、そこで自分の夢が潰えてしまう気もするし、そうでない気もする。彼女は自分の夢を叶えるための後押しとなってくれる可能性もある。だが、自分の夢のために彼女を利用したいという気持ちだとかそんなことではない。それはリリー=フルールにとって不幸になってしまうに違いないと思えてしょうがない。だが、だとしても、これはチャンスであろうこともロック=イートにはわかっている。
そんな、どこにも行きつかないような自問自答に囚われてしまうロック=イートは、ただただ、髪の毛をくしゃくしゃにする他無かった。誰かがこの堂々巡りの思考にひとすじの光明を与えてくれればと願うようにもなっていた。
「リリーお嬢様……。俺は貴女のことが嫌いじゃないんだ。でも、俺は『世界最強の生物』になりたいんだ……」
悩むロック=イートが髪の毛をくしゃくしゃにするだけでは足りずに、ゴツンゴツンと右手でこめかみを叩きだす。そんな彼の自傷行為を止めるべく、リリー=フルールはロック=イートの右手首を掴み、彼女はロック=イートの右腕を自分のおしとやかな胸の谷間にうずめて、こう言い出す。
「わかっていますわ。ロックにはわたくしよりも大事な夢があることは。でも、安心してほしいのですわ。わたくしは貴方の支えとなりたいのですわ」
「だけどっ! それだと、俺はリリーお嬢様を自分の夢のために利用するだけになっちまうんだぞ!?」
ロック=イートは怒っているのか泣いているのかわからない表情になっていた。そして、怒りの矛先が自分へなのか、リリー=フルールへなのかも判別しづらい。しかし、これだけはわかる。ロック=イートは自分の想いのために悩み苦しんでいることだけは。そんなロック=イートに対して、リリー=フルールは聖女のような微笑みを顔に浮かべつつ
「それでもかまいませんわ。わたくしはロック=イートに命を救われたのです。ならば、失くしかけた命を救ってくれたロック=イートのために全て使ってしまっても良いと思っていますの」
リリー=フルールは努めて笑顔をたやさなかった。ロック=イートが心の底から悩んでいるのはわかっているからだ。そして、ロック=イートが願ってやまない夢と自分を天秤にかけてくれていることを。ロック=イートはあの日、自分に向かて言いのけた。俺が俺の夢を叶えていく姿をその眼に焼き付けてほしい。なんたって、俺は『世界最強の生物』になるのが夢だからと。ロック=イートの夢はリリー=フルールにとっても叶えてあげたい夢なのである。それをどうやって伝えれば、ロック=イートはわかってくれるのだろうとリリー=フルールはそう思う。
「いい? わたくしはロック=イートが夢を叶えるためのお手伝いをしたいの。そして、そのお手伝いをする代わりに、わたくしは貴方から愛をもらうの。これでわたくしと貴方の商談が成立すると思いませぬこと?」
「はは……。商談って。恋愛ってそんなもんじゃないだろ?」
「確かにそうかもしれませんわね。利害関係で結びつく男女の間を恋愛と呼ぶのは間違っていると、詩人たちが顔を真っ赤に染めながら、猛然と抗議するかもしれませんわね?」
リリー=フルールがそう言ったあと、くしゃっと破顔し、クスクスと笑う。それにつられて、ロック=イートもなんだか、自分がとるにたらないことに悩み過ぎていただけだと思えるようになってしまった。利害関係を絡めてしまったのは自分自身であることに気づいたのだ、ロック=イートは。リリー=フルールは本当なら、そんな恋愛は望んでいないはずである。そういうことを超越したところでロック=イートと結びつきたいと思っているのは当たり前の話だ。だが、わざわざ『商談』と言うことで、ロック=イートが背負った心の荷を少しでも軽くしようとしてくれたのである。
「ありがとう。リリーお嬢様。俺は何か勘違いしていたみたいだ。リリーお嬢様と付き合うとかどうとかで、俺の夢が潰えるようだったら、俺の想いなんて、そこまでだったってだけだったよ」
「あら? わたくしはお付き合いだけじゃなくて、ロックとは将来的に結婚したいと思っていましてよ? 遊ばれてポイッと捨てられるのではたまったものじゃありませんものっ!」
ロック=イートはこの言葉を受けて、苦笑せざるをえなかった。どこまでもしっかりしているこの女性には驚かされしまうばかりだ。男と女は精神年齢が違いすぎるとはよく世間で言われているが、23歳になった自分はまだまだ5~6歳児ほどの考え方であり、そして16歳の眼の前の女性は自分の実年齢よりも上なのではないのかと思ってしまう。
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