拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
49 / 122
第5章:首輪と鎖

第8話:婚前交渉禁止の令

しおりを挟む
 ロック=イートは彼女の言いにまたしても苦笑せざるをえなかった。自分はこの女性の尻に敷かれることは間違いないだろうという気がしてたまらない。しかしながら、男女間のお付き合いにおいて、女性上位のほうが上手く行くというのはよく言われていることだ。結局、男は何歳になろうが精神年齢は子供のままなのだ。大人の女性に手綱を握っていてもらったほうがよっぽど上手く回っていくことは間違いないだろう。

「俺もリリーお嬢様の弟になる気なんてないよ」

「じゃあ、わたくしの素敵な旦那様になってくれると思っておいて良いのかしら?」

「ああ、期待していてくれ。俺は『世界最強の生物』であり、かつ、『世界最強の旦那様』になってみせるから」

 リリー=フルールは思わず、プッと噴き出してしまう。こんなプロポーズの言葉を紡ぎ出す男はきっとロック=イートのみであろうと思ってしまう。どこまでも純心ピュアで、どこまでも『夢追い人』であるこの男だからこそ、自分は彼に惹かれたのだと改めて認識させられてしまう。

「んっんー! 2人だけの世界に浸るのは良いですが、私もロックくんに話をしてよろしいでしょうか?」

「あら、お父様。まだ部屋にいらしたの? これから、わたくしはロックと愛について囁きあうのですから、お父様にはご退出してもらいたかったのですわよ?」

 コープ=フルールは娘に邪険に扱われる。彼女はシッシッ! とまるで半犬半人ハーフ・ダ・ワンを追い出すかのような所作で父親を部屋から追い出そうとしはじめたのだ。コープ=フルールは困りましたねとばかりの表情を顔に浮かべ

「じゃあ、1時間ほど席を外してから戻ってきますか……。いや、ロックくんなら3分で事をすませられますかね?」

「ちょっと待ってください……。それって俺がまるで節操無しみたいな言い方しないでくれませんか?」

「それを言うなら『早漏』であって、『節操無し』ではありません。ロックくんは学が足りないみたいなので、そこのところも後々のためになんとかしないといけませんねえ?」

 ロック=イートは、なるほど……とつい頷いてしまう。なんとなく覚えていた言葉を使ってみたものの、使い方を間違っているとコープ=フルールに指摘されてしまうのであった。ついでに『節操無し』のほうも解説してもらうあたりが、ロック=イートの純心ピュアさを象徴しているのかもしれない。コープ=フルールとしては、自分と似つかぬ純心ピュアさを持つロック=イートに好感を持っている。純心ピュアゆえに貪欲なのだ。吸収できるモノならば、なんでも受け入れようとするその姿勢を高く評価しているのだ、コープ=フルールは。

 向上を望む者は貪欲であらねばならない。だが、傲慢になってしまってはいけない。この条件をクリアしている存在がロック=イートである。コープ=フルールが教師であり、ロック=イートは出来の良い生徒であった。武一辺倒に生きてきてしまったために、ロック=イートが世情に疎いのは仕方がないとコープ=フルールは考えている。しかし、そこはこれからの教育次第でコープ=フルール好みの男へと成長させることはまだまだ可能性が高いことをうかがわせるには十分な素質を持っているロック=イートであった。

(なるべくこの純心ピュアさを黒く染めないように注意しつつ、彼を成長させていきたいですね……。商人としては不適合ですが、武人としては間違いなく超一流へと昇り詰めていくことでしょうし)

 コープ=フルールは娘をロック=イートにあてがうことは決めていたが、だからといって、自分の店を彼に任せる気はこの時点では一切無かった。ロック=イートの望む方向に突き進んでもらおうと、そう考えていたのである。だからこそ、コープ=フルールは次に彼をどうしようかという朧気な青写真を描いていた。

「じゃあ、私は1時間ほど席を外しますね。ロックくんのためになるようなことをちょっと調べてきますので」

 コープ=フルールはそう言うと、若い男女を残して、その部屋から退出していく。と思われたのだが、コープ=フルールは部屋の出入り口でピタッと足を止め

「あっ。待ってください。本番行為は結婚式を挙げた後にしてください。出来ちゃった婚は何かと世間様への体裁が悪いので……。お肌とお肌の触れ合いまでは許しますけど、棒と穴の結合までは許しませんからね!!」

 棒と穴とはいったいどういう意味だろう? と不可思議な顔をしだす男女の顔を見て、コープ=フルールは額に右手を当てて、あちゃーとばかりに天井を仰ぐこととなる。娘に性知識の一切合切を教えてこなかったのは、そういう初心うぶな女性を好む者もいるから、それに合わせてのことであった。初心うぶな女性をイチから自分好みに改造したがる性癖持ちの男は多い。コープ=フルールも漏れなくその類の男である。しかし、ロック=イートはそういったことからさらに超越しており、彼自身も穴が何を指し示しているのかわかっていないご様子である。

(ったく……。どこの誰がロックくんを教育したんでしょうか……)

 コープ=フルールは左手で自分の後頭部をボリボリと掻きつつ、その部屋から完全に退出してしまうこととなる。ほっといても、2人の仲は接吻せっぷん辺りで済むだろうということで、要らぬことを言わないほうがこの際、良いだろうという結論に至る。

「お父様って、結局、何が言いたかったわけなのかしら?」

「さあ……。俺にもよくわからない。出来ちゃった婚って何だろう?」

 部屋に残されたロック=イートとリリー=フルールは未だに不可思議な表情のままであった。コープ=フルールの言っていたことを二人そろってわかっていなかったのである。だが、わからないことは置いておいて、リリー=フルールはフフッと笑みを零してしまう。

「やっと素直になってくれましたわね。じゃあ、まずはロックが今までどうしていたのかを聞かせてほしいのですわ」

「え? 俺の生い立ちを聞きたいのか? そんな話を聞いても面白くもなんともないと思うぞ?」

「面白いか面白くないかは、聞いた後で述べさせてもらいますわ。でも、わたくしたちは出会ってからまだ1週間ほどですもの。正式な夫婦になる前に、洗いざらい、お話を聞かせてもらいますわよ?」

 ロック=イートはこの時、リリー=フルールが本当に知り得たい情報が何なのかを気づいていなかった。古今東西、男女問わず、お付き合いをしている相手の過去において、前に付き合っていた相手はどんなヒトなのかを知りたいのはしょうがないと言えば、しょうがない。もちろん、そのことを気にしないと言うヒトはいるだろう。だが、それはあくまでもそのヒトの事情であり、やはり気になるヒトの人口のほうが圧倒的に多いのも事実である……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。 失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった! この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。 一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。 「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」 底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...