拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第5章:首輪と鎖

第8話:婚前交渉禁止の令

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 ロック=イートは彼女の言いにまたしても苦笑せざるをえなかった。自分はこの女性の尻に敷かれることは間違いないだろうという気がしてたまらない。しかしながら、男女間のお付き合いにおいて、女性上位のほうが上手く行くというのはよく言われていることだ。結局、男は何歳になろうが精神年齢は子供のままなのだ。大人の女性に手綱を握っていてもらったほうがよっぽど上手く回っていくことは間違いないだろう。

「俺もリリーお嬢様の弟になる気なんてないよ」

「じゃあ、わたくしの素敵な旦那様になってくれると思っておいて良いのかしら?」

「ああ、期待していてくれ。俺は『世界最強の生物』であり、かつ、『世界最強の旦那様』になってみせるから」

 リリー=フルールは思わず、プッと噴き出してしまう。こんなプロポーズの言葉を紡ぎ出す男はきっとロック=イートのみであろうと思ってしまう。どこまでも純心ピュアで、どこまでも『夢追い人』であるこの男だからこそ、自分は彼に惹かれたのだと改めて認識させられてしまう。

「んっんー! 2人だけの世界に浸るのは良いですが、私もロックくんに話をしてよろしいでしょうか?」

「あら、お父様。まだ部屋にいらしたの? これから、わたくしはロックと愛について囁きあうのですから、お父様にはご退出してもらいたかったのですわよ?」

 コープ=フルールは娘に邪険に扱われる。彼女はシッシッ! とまるで半犬半人ハーフ・ダ・ワンを追い出すかのような所作で父親を部屋から追い出そうとしはじめたのだ。コープ=フルールは困りましたねとばかりの表情を顔に浮かべ

「じゃあ、1時間ほど席を外してから戻ってきますか……。いや、ロックくんなら3分で事をすませられますかね?」

「ちょっと待ってください……。それって俺がまるで節操無しみたいな言い方しないでくれませんか?」

「それを言うなら『早漏』であって、『節操無し』ではありません。ロックくんは学が足りないみたいなので、そこのところも後々のためになんとかしないといけませんねえ?」

 ロック=イートは、なるほど……とつい頷いてしまう。なんとなく覚えていた言葉を使ってみたものの、使い方を間違っているとコープ=フルールに指摘されてしまうのであった。ついでに『節操無し』のほうも解説してもらうあたりが、ロック=イートの純心ピュアさを象徴しているのかもしれない。コープ=フルールとしては、自分と似つかぬ純心ピュアさを持つロック=イートに好感を持っている。純心ピュアゆえに貪欲なのだ。吸収できるモノならば、なんでも受け入れようとするその姿勢を高く評価しているのだ、コープ=フルールは。

 向上を望む者は貪欲であらねばならない。だが、傲慢になってしまってはいけない。この条件をクリアしている存在がロック=イートである。コープ=フルールが教師であり、ロック=イートは出来の良い生徒であった。武一辺倒に生きてきてしまったために、ロック=イートが世情に疎いのは仕方がないとコープ=フルールは考えている。しかし、そこはこれからの教育次第でコープ=フルール好みの男へと成長させることはまだまだ可能性が高いことをうかがわせるには十分な素質を持っているロック=イートであった。

(なるべくこの純心ピュアさを黒く染めないように注意しつつ、彼を成長させていきたいですね……。商人としては不適合ですが、武人としては間違いなく超一流へと昇り詰めていくことでしょうし)

 コープ=フルールは娘をロック=イートにあてがうことは決めていたが、だからといって、自分の店を彼に任せる気はこの時点では一切無かった。ロック=イートの望む方向に突き進んでもらおうと、そう考えていたのである。だからこそ、コープ=フルールは次に彼をどうしようかという朧気な青写真を描いていた。

「じゃあ、私は1時間ほど席を外しますね。ロックくんのためになるようなことをちょっと調べてきますので」

 コープ=フルールはそう言うと、若い男女を残して、その部屋から退出していく。と思われたのだが、コープ=フルールは部屋の出入り口でピタッと足を止め

「あっ。待ってください。本番行為は結婚式を挙げた後にしてください。出来ちゃった婚は何かと世間様への体裁が悪いので……。お肌とお肌の触れ合いまでは許しますけど、棒と穴の結合までは許しませんからね!!」

 棒と穴とはいったいどういう意味だろう? と不可思議な顔をしだす男女の顔を見て、コープ=フルールは額に右手を当てて、あちゃーとばかりに天井を仰ぐこととなる。娘に性知識の一切合切を教えてこなかったのは、そういう初心うぶな女性を好む者もいるから、それに合わせてのことであった。初心うぶな女性をイチから自分好みに改造したがる性癖持ちの男は多い。コープ=フルールも漏れなくその類の男である。しかし、ロック=イートはそういったことからさらに超越しており、彼自身も穴が何を指し示しているのかわかっていないご様子である。

(ったく……。どこの誰がロックくんを教育したんでしょうか……)

 コープ=フルールは左手で自分の後頭部をボリボリと掻きつつ、その部屋から完全に退出してしまうこととなる。ほっといても、2人の仲は接吻せっぷん辺りで済むだろうということで、要らぬことを言わないほうがこの際、良いだろうという結論に至る。

「お父様って、結局、何が言いたかったわけなのかしら?」

「さあ……。俺にもよくわからない。出来ちゃった婚って何だろう?」

 部屋に残されたロック=イートとリリー=フルールは未だに不可思議な表情のままであった。コープ=フルールの言っていたことを二人そろってわかっていなかったのである。だが、わからないことは置いておいて、リリー=フルールはフフッと笑みを零してしまう。

「やっと素直になってくれましたわね。じゃあ、まずはロックが今までどうしていたのかを聞かせてほしいのですわ」

「え? 俺の生い立ちを聞きたいのか? そんな話を聞いても面白くもなんともないと思うぞ?」

「面白いか面白くないかは、聞いた後で述べさせてもらいますわ。でも、わたくしたちは出会ってからまだ1週間ほどですもの。正式な夫婦になる前に、洗いざらい、お話を聞かせてもらいますわよ?」

 ロック=イートはこの時、リリー=フルールが本当に知り得たい情報が何なのかを気づいていなかった。古今東西、男女問わず、お付き合いをしている相手の過去において、前に付き合っていた相手はどんなヒトなのかを知りたいのはしょうがないと言えば、しょうがない。もちろん、そのことを気にしないと言うヒトはいるだろう。だが、それはあくまでもそのヒトの事情であり、やはり気になるヒトの人口のほうが圧倒的に多いのも事実である……。
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