拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第6章:予選大会

第6話:ヨーコの奥の手

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 左足を鎖状の鞭に絡め取られて、宙に放り投げられたロック=イートであったが、両足で砂地の地面に着地した後、間髪入れずにまたもやヨーコ=タマモとの距離を詰めていく。ヨーコ=タマモはイラつきを隠さぬままにコメカミに青筋を立てる。

(気に喰わぬとは思っていたが、ここまでわらわの予想を裏切ってくるとはのうっ!)

 ヨーコ=タマモはシャリリンという音を腕部分から鳴らし、砂地の地面に展開していた鞭の量を2倍に増やす。左右2本ずつ、計4本の金属製で鎖状の鞭を展開したのであった。その内、2本を防御に使い、別の2本を攻撃に用い始めたのだ。ロック=イートは相変わらず猪突猛進を繰り返し、平然と彼女の領域テリトリーに足を踏み入れる。

 今度は2本の鎖状の鞭に両足を絡め取られ、またしても宙に放り投げられるロック=イートであった。しかもヨーコ=タマモが2本、鞭を追加していたため、空中でその打鞭を喰らうこととなる。今度ばかりはロック=イートも地面に両足をつけることは出来ずに、受け身のみで対処することとなる。

「いたたたっ……。さっき控室でズタボロになった男を見た限り、2本の鞭だけでああなるはずがないと思っていたけど、やっぱり奥の手があったってわけか……」

 ロック=イートは背中を左手でさすりながら、2本の足で立ち上がる。ロック=イートは空中で迫りくる2本の鞭を両腕を斜め十字に構えることでブロックしたのであった。だが、生身の左腕にはくっきりと赤いアザが1本浮き出ており、彼女の鞭の破壊力を示すには十分であった。これをあと数発も喰らえば、左腕のほうはまともに動かなくなることは必然であった。それゆえにロック=イートは水の魔術を用いて、左腕に血液を高速に循環させる。

 ロック=イートは治療魔術に関しては不得意である。しかし、それはキレイに治すといった点においてであり、緊急回復程度には使いこなすことが出来る。そして彼は水の魔術を治療のみに使うわけではない。ロック=イートが水の魔術を発動させたと同時に、彼の左腕の筋肉が肥大し始めたのだ。

「ほう……。水の魔術をそのように使うということは、おぬし、誰かしらの流派に精通しているというわけじゃな? しかし、ニワカ拳法は自分の身を逆に痛めつけることになるのじゃ……」

 ヨーコ=タマモはロック=イートが何者なのかと推測を立てようとする。魔術を用いて、身体能力を上げること自体はどの流派でも用いられている。しかしながら、どの流派でもということもあり、彼女の推測が特定の結論に至ることはなかった。

(ふむ……。警戒しすぎているだけな気もするのじゃ。わらわが攻撃力を上げたために、あちらは水の魔術を用いて、防御力を上げただけであろうて……)

 彼女はそう考えたのだが、それが間違いであることにすぐ気づくことになる。なんと、ロック=イートはまたしても自分に向かって、真正面から突っ込んでくるのである。しつこいと思ったヨーコ=タマモは攻撃用に出していた2本の鞭も防御に回すことになる。4本の鞭に波としてのエネルギーを送り、さざ波から大波へと変化する。その大波はロック=イートの前で渦を巻く壁となる。だが、ロック=イートは渦と化した鞭の中心部に左のこぶしを真っ直ぐに叩きつけたのだ。

 そして、ヨーコ=タマモは驚愕の表情へと一瞬で変わる。防御のための左腕の強化だと思っていたのに、それは明らかに間違いで、どちらかと言えば攻撃力強化のためのモノだっただからだ。その証拠に自分の前面に渦上に展開した鞭の壁があっさりと左腕の一撃により、波が破砕するかのように弾き飛ばされたのである。そして、ロック=イートの攻撃はそこで止まらなかった。ドンッ! と右足を砂地の地面に叩きつけ、まるで大砲から大きな弾が発射されるかのように右腕を振りぬいたのだ。

「チィィィッッッ!」

 ヨーコ=タマモは何が何でも正面から自分の防御を打ち抜いてくる男にイラつきを隠せないでいた。そして、彼女は本当の意味での奥の手をロック=イートに晒すこととなる。彼女はまだ鎖状の鞭を隠し持っていたのだ。しかもその数は5本である。彼女の着物の両肩、両わき腹部分を突き破り、さらには尻尾の中から1本が飛び出してくる。そして、彼女の怒りの心を反映し、その5本の鎖はロック=イートの身を散々に打ち付ける。

 さしもの5本の鎖により、ロック=イートの必殺パンチは相殺されることとなる。ロック=イートは連続で自分の身を打ち付ける鞭を防ぐために斜め十字に両腕を構える。だが、それで防げるのは頭部への打鞭のみである。全身くまなく鎖状の鞭で滅多打ちにされて、ロック=イートの身体は悲鳴を上げ続ける。彼の身を包むカラテ着は鎖状の鞭により切り裂かれ、生身の身体が剥き出しになっていく。そして、剥き出しとなった部分にさらにヨーコ=タマモが展開している鞭が無情にもビシッ! バシッ! と叩きつけられる。ロック=イートが先ほど控室に運ばれていった男と同様の姿になることは観客席に座る観衆の眼からは明らかであった。

「こりゃあ、さしずめのロックくんでもここまでですかね……」

 試合の成り行きを見守っていたコープ=フルールが見ているだけで痛そうといった表情で、吐露するかのようにそう呟く。ひいき目である彼でもロック=イートの勝利は思いつかなかったのであった。しかし、コープ=フルールですら見捨てたロック=イートなのに、リリー=フルールだけは違った。

「ロックっ! 貴方は『世界最強の生物』になる男でしょうがっ! あんなおばさん相手にいつまでも手こずっている場合ではないのですわっ!」

 リリー=フルールは涙が両目からこぼれそうになるのを必死に堪えながら、ロック=イートに声援を送り続けたのである。喉が張り裂けそうになるほどの大声をあげる。きっと、彼は余りにもの痛みを感じて、意識を失いかけているかもしれないと考えていた。だが、それでも自分の声が届くはずだと信じて、彼に精いっぱいの声量で彼に勝って! と叫んだのであった。

 散々に鞭で打ち付けられていたロック=イートであったが彼の狼耳がピクリと動く。聞こえるわけがないリリー=フルールの声が聞こえた気がしたのだ。ロック=イートは両目を見開き、両腕を素早く左右に連続で振る。なんと彼の両手にはヨーコ=タマモが一見、無軌道に振り続けていたかのように見えた鎖状の鞭を5本とも収まっていたのである。そして、ロック=イートは間髪入れずにウオオオンッッッ! と吼える。

先祖返りジュウジンモード発動っ!!」

 彼がそう叫ぶと同時に半狼半人ハーフ・ダ・ウルフのロック=イートの腰から背中、そして左腕にかけての筋肉が膨れ上がり、さらには彼の蒼色ががった髪の毛が急速に伸びていく……。
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