拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
67 / 122
第7章:上覧武闘会・開催

第6話:達人というもの

しおりを挟む
 乱心しかけたロック=イートはリリー=フルールの一言で、われを取り戻す。その後、セイ=レ・カンコー相手にいつものミット打ちを再開しはじめる。リリー=フルールはいつものロック=イートに戻ってくれたことに心底、ホッと安堵する。

「ふむふむ。ロックをしっかり尻に敷いているようじゃな。めかけのわらわとしては頼もしい限りなのじゃ」

「ちょっと……。居たのなら、あなたもロックを止めてくれませんこと?」

「正妻は旦那を尻に敷くのがちょうど良いのじゃ。そして、そんな手厳しい正妻を相手することに疲れ果てた旦那がめかけに甘えにくるという寸法じゃ。わらわは役得じゃのう」

 いつの間にか控室にやってきて、自分の傍らに立つヨーコ=タマモに対して、頭にきそうになってしまうリリー=フルールであった。彼女はヨーコ=タマモの足を自分の足で思いっきり踏んでやろうとさえ思ってしまう。しかし、それでは嫉妬深い女だと言われるのがオチなのもわかっており、ついぞ、彼女はヨーコ=タマモの足を踏んづけることはしなかったのである。

 それよりもリリー=フルールはヨーコ=タマモにロック=イートの第1回戦の相手がどれほどの強者なのかを聞こうと思ったのだ。そして、ヨーコ=タマモはふぅむと息をつき

「本戦に出場する以上は、その二つ名に恥じぬほどの実力者ということには間違いないのじゃ」

「『奇術師マジシャン』でしたかしら? 魔術師コンジュラーと名乗らないところが怪しいといったところですわね」

「そうじゃな。実戦配備されて間もない『銃』とやらを自在に操る男と言われているのじゃ。だからこそ、『奇術師マジシャン』という二つ名がお似合いなのじゃろうて」

 ヨーコ=タマモは実際にその銃とやらをタライ=マークスが使っているところを見たわけではない。だが、銃というものがどういうものかは知っている。だからこそ、それについてのアドバイスをロック=イートにするために、この控え室へとやってきたわけである。ヨーコ=タマモは自分の知る限りの銃についての説明をロック=イートにしだす。ロック=イートはうんうんと頷きながら、ヨーコ=タマモの話を聞くのであった。

「ありがとう、タマモさん。おぼろげだけど、打開するための糸口は掴めそうだよ」

「しかしながら、注意は怠らないことじゃ。あくまでもわらわは銃の基本的な使い方を説明しただけなのじゃ。『奇術師マジシャン』と呼ばれるが所以ゆえんまでは、わらわは知り得ぬのじゃ」

 ヨーコ=タマモが言いたいことは、利点は多いが欠点も多い銃をどのように応用して使うかまではわかっていない。それゆえに自分の話を鵜呑みにするなと言うことである。ロック=イートももちろんそのことは理解している。だが、基本部分を知っているか知らないかでは雲泥の差があるのは当たり前である。ロック=イートはセイ=レ・カンコーにこう動いてほしいと注文をつけ、セイ=レ・カンコーもロック=イートの言う通りにミットを前後に動かす。前に突き出されるミットをロック=イートは身をひねらせてかわし、ミットを上に弾くようにこぶしを合わせる。

 それを見ていたヨーコ=タマモにはロック=イートがどのように銃に対処しようとしているのかがわかる。だが、ヨーコ=タマモには一抹の不安があった。

(はてさて、タライ=マークスはそんなに素直な性格の相手かのう? 奇術師マジシャンたる所以ゆえんは試合が始まってから明らかになるじゃろうて……)

 ヨーコ=タマモは色々と考えるところがあるが、実際に自分が闘うわけでもないために、要らぬことをロック=イートへ言わぬように口を噤む。予断は時として仇となる。ヨーコ=タマモ自身も戦士であるため、そのことはよくわかっているのだ。だからこそ、銃に関する説明を基本部分で止めたのである。実際の闘いの流れはどのように変わっていくかは誰にもわからない。闘い合う本人たちにすら、それは決着の間際になってから判明するモノだ。

 達人と呼ばれる域に達すれば、闘う前から脳内にありありと闘いの趨勢が映し出されると言われている。達人はただ脳内に映し出されたイメージに沿って、身体を動かしているとも言われている。しかし、そんなことが本当に果たして起こり得るのかどうかは、今の時点のヨーコ=タマモにはわからない。達人の領域テリトリーは努力だけでも才能だけでも到達できる場所ではないのだ。そして、両方を備えているからといって、成れるモノではないと言われている。

(わらわが達人になれるかどうかはわからぬ……。しかし、ロック。おぬしならば、その領域テリトリーに足を踏み入れることは出来るような気がしてならぬのじゃ……)

 調整を続けるロック=イートたちを見ながら、ヨーコ=タマモはふとそんな考えへと至る。自分が成し遂げられずにいることを、眼の前の若き男が自分を飛び越えて、成してくれるのではないかという期待感を込めて、彼に熱い視線を送る。

「あは~ん。ロックを見ていると、身体が火照ってくるのじゃ……。ロックよ、もしタライ=マークスに完勝できたら、わらわがロックを抱いてやるのじゃ……」

「あああああん!? 今、何と言いましたのかしら!?」

「じょ、冗談じゃ……。だから、着物の襟を力強く引き絞るのは止めるのじゃっ! 息ができぬ……のじゃっ!」

 ヨーコ=タマモが着物の上から自分の股間部分に右手を差し込み、左手の人差し指を口に咥えて、くねくねと身体をよじらせていると、怒りの表情に様変わりしたリリー=フルールが彼女の襟を両手で掴み、さらには引き絞るように両手に力を込めたのだ。ヨーコ=タマモがギブアップとばかりに左手でパンパンとリリー=フルールの右手首辺りを叩く。リリー=フルールはふんっ! と鼻を鳴らし、彼女の襟から両手を放すこととなる。

「わたくしのロックに手を出そうモノなら、屋敷から追い出しますわよ?」

「おお、怖い怖い……。ロック。最近、リリー嬢とはご無沙汰なのかえ? リリー嬢が欲求不満をわらわにぶつけておるのじゃ」

 ヨーコ=タマモがロック=イートにそう声をかけると、ロック=イートは首を傾げて、セイ=レ・カンコーにご無沙汰ってどういう意味だ? と問いかける。問いかけられた側のセイ=レ・カンコーはヨーコ=タマモの方に身体を向けて、大袈裟に左右に両腕を広げてみせる。そんな彼の所作を見て、ヨーコ=タマモは、ふぅ……とため息を口から漏らすこととなる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

処理中です...