拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第8章:目覚めの兆し

第9話:不本意な決着

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 控室に運ばれたロック=イートが眼を覚ましたのは、試合が終わってから1時間後であった。簡素なベッドの上でロック=イートは上半身を起こし、頭を左右に振る。よくわからないがズキンズキンッと頭痛が襲いかかっていたためである。

「お? ようやくお目覚めになったっすか。いやあ、ロックさん、ありゃないですぜ?」

「本当にそうですわ。ロックらしくありませんでしたわ……」

 ロック=イートはセイ=レ・カンコーとリリー=フルールにそう言われ、頭痛に耐える顔が苦渋の表情へと変わってしまう。ロック=イートとしても、あの時、自分が取った行動に嫌気を感じていたからだ。

「俺はどうしちまったんだ……? まるで俺が俺でないような感じだった……。俺はやめろと言ったんだ! だが、身体が勝手に動いちまったんだ」

 ロック=イートは半鼠半人ハーフ・ダ・チュゥのコッチロー=ネヅをあそこまで痛めつける気は無かったとリリー=フルールたちに言う。だが、彼女たちはロック=イートの言っている意味がわからないといった感じであった。ああしたのはロック=イート自身であり、それに後悔するようであれば、やらなければよかったのにと思う。だが、ロック=イートはコッチロー=ネヅをあそこまで追い詰めたくなかったと言う。3人の会話は噛みあうことはなかったのであった。

「ふむ……。ロックはあの状態の時、確かに意識があったのじゃな? しかしながら、身体が言うことを聞かなかったと……。わらわが見た感じ、先祖返りジュウジンモードを使ったわけでもないのにおかしいのう?」

 ロック=イートが10カウントぎりぎりで立ち上がった時、彼の身体自体には変化は見られなかった。先祖返りジュウジンモードを使ったならば、種族に見合った体型変化が伴う。そして、そこからさらに暴走状態に入れば、自分の意思とは関係なく、身体が勝手に動くこともある。しかし、そうでなさそうであることは、ロック=イートの試合をつぶさに観察していたヨーコ=タマモも感づいていた。ならば、ロック=イートが冷酷無比にコッチロー=ネヅにトドメを刺した理由もよくわからないのであった。

 ヨーコ=タマモはう~~~むと唸り、ロック=イートが何故あのような行動を取ったのかを推測するが、ついぞ答えは出なかった。それよりもだ。第2回戦を突破したことを祝おうではないかとロック=イートたちに提案する。

「いや……。勝てたこと自体は嬉しいけど、やっぱりコッチローさんをあそこまで痛めつけたのは不本意だし、素直に喜べないっていうか……」

「難しい話ですなあ。そんなにコッチローのことが気になるなら、後で謝罪に行けばいいんじゃないっすか? まあ、勝者に謝られても、向こうとしてはふざけるなっ! って叱られそうですけどな?」

「そう……だよな。勝者が敗者にかける言葉があるわけないもんな。どう言い繕ったところで、嫌味にしか思われないもんだし」

 ロック=イートとしては今回の戦いにおける勝利についてはすっきりしていなかった。意識はあったが、あれは自分の意思でやったことではないという、はっきりとした自覚があった。急に全身に力がみなぎり、その力に飲み込まれて、相手を必要以上に痛めつけてしまったからだ。もちろん、ギリギリの戦いにおいて、そんなことを考えれるほどの余裕は微塵もない。

 だが、コッチロー=ネヅは戦槌バトル・ハンマを石畳の上に落としたすぐ後に、戦意喪失してしまったのは、ロック=イートも認識していたのである。あとは顔面に一発、ロケット・パンチを叩きこんでしまえば、それで終わりであった。だが、わざわざ金属鎧を破壊し、剥き出しになった腹をえぐってしまったのだ。重ねて言うが、ロック=イートの意識はあったが、ロック=イートの意思でそうしたかったわけではない。

(俺は何であそこまで相手を追い込んでしまったんだ? やりようなんて、いくらでもあっただろ!?)

 思いつめるロック=イートに対して、リリー=フルールがそっと優しく彼の握り込んだ左手の上に自分の両手を重ねる。ロック=イートはその両手から温かみを感じて、少しだけ心が軽くなる気がしたのだ。

「大丈夫ですわ。ロックにはわたくしがついていますのよ。今度、ロックが何か得体の知れないモノに飲み込まれそうになったら、わたくしが身体を張って、ロックを止めますわ」

 ロック=イートは彼女の言葉に救われたような気がした。そして、ロック=イートは優しく語り掛けてくるリリー=フルールが愛おしく感じ、彼女の左手を自分の唇近くに持っていき、軽く接吻せっぷんをする。

「ご、ごめん……。つい、リリー様に甘えたくなって……」

「うふふっ。どうせなら、唇でもよかったのに。でも、騎士様ならわたくしの手に接吻せっぷんするのは当然といえば当然ですわね?」

 ロック=イートは気恥ずかしさからか、右手で自分の頭をボリボリと掻くことになる。そんな二人を見て、ヨーコ=タマモは満足気にうんうんと頷くのであった。そして、ロック=イートの頭を左手でポンポンと軽く叩き

「おぬしはまだまだ若いのじゃ。若さゆえの過ちということで、今回は心に留めおく程度にしておくことじゃな。まあ、コッチローにはわらわがロックがやりすぎたことを後悔していたと伝えておくのじゃ。本人が直接言うよりかは遥かに穏便に済むじゃろうて」

「ありがとう、タマモさん。コッチローさんの件は任せたよ。てか、安心したら、何だか急に腹が減っちまった。何か食べる物を持ってないか?」

 ロック=イートはグルルゥとまるで獣が威嚇するような音が腹から鳴ってしまったことに赤面してしまう。先ほどまで空腹感を感じてなかったのだが、心に余裕が生まれたためか、急にお腹が空き始めたのだ。何かを腹に詰め込みたいと思ってしまい、リリー=フルールたちに何か持っていないか聞くことにする。

「バナナジュースがあれば良かったのですが、ロックが寝ている間、手持ちぶたさで皆で軽い昼食代わりに飲んでしまいましたの……」

「ううむ……。赤マムシの串焼きを控室に置いておいたのじゃが、いつの間にか消えてしまったのじゃ。どさくさまぎれに誰かが食べてしまったのかもしれないのじゃ」

 リリー=フルールとヨーコ=タマモが申し訳ないといった感じの表情に変わってしまった。ロック=イートは何だか催促してしまったようで、彼も悪いことを言ってしまったといった感じの表情に変わってしまう。そんな3人を見かねたセイ=レ・カンコーが、円形闘技場コロッセウムの観客席でうろついている売り子から何か買ってくると言い出し、控室から飛び出していくのであった……。
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