拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

文字の大きさ
81 / 122
第8章:目覚めの兆し

第10話:遅咲きの青春

しおりを挟む
 セイ=レ・カンコーが控室から飛び出て、円形闘技場コロッセウムの観客席へと向かう。そこで売り子を探していたのだが、つい、試合場の方へと視線を移してしまう。そこでは戦士たちがしのぎを削り合っている真っ最中である。セイ=レ・カンコーはこの高い位置から戦士たちの試合を見るのは初めてのことであった。

(へえ……。観客席から見ると、また違った視点で試合を見ることができるような造りになっているんですなあ。こうなんて言うか、全体を俯瞰して見ていられるような……)

 セイ=レ・カンコーは不可思議な感覚に襲われていた。タイガー・ホールでも裏武闘会でも、この上覧武闘会でも、戦士たちとほぼ同じ視線の高さで試合を見続けていた。しかしながら、上覧武闘会が開かれている円形闘技場コロッセウムの観客席は試合場よりも7メートル以上高い位置に設置されており、観客たちはそこから試合を観戦することとなる。

 セイ=レ・カンコーは今、試合場に敷かれている石畳より12メートルほど高い位置に居た。そのため、戦士たちからは少し遠い気がするが、それはそれで違った感覚で試合を見ることが出来るために、新鮮さを感じたのである。今は第2回戦・第3試合が執りおこなわれていた。この勝負で勝った者は次の試合に勝った者と闘うことになる。だが、第2回戦・第4試合に出場するのは神槍:ブリトニー=ノーガゥそのひとである。

 この戦いに勝利したからといって、次も勝てる保証は全くなかったのであった。セイ=レ・カンコーはそんな戦士たちにナムナム……と憐れみを込めた呪文を唱える他無かったのである。本日、執りおこなわれるのは第2回戦・第5試合までである。セイ=レ・カンコーはロック=イートが腹を満たしたら、神槍:ブリトニー=ノーガゥが出る第4試合の観戦へと誘おうかと思ってしまう。

 そう思いながら、観客席をきょろきょろと眺めながらとうろついていると、目的であった売り子のお姉さんとようやく出会うこととなる。しかし、ここでセイ=レ・カンコーの心臓が跳ね上がってしまう。それもそうだろう。ただでさえ女性としては高伸長の見麗しい半兎半人ハーフ・ダ・ラビットがバニーガール姿だったのだ。太ももを強調する赤の網タイツ。ウエストが引き締まった身体をさらに締め付けるようなタイトな黒色のボディスーツを着込んでいる。セイ=レ・カンコーは思わず、ゴクリと喉を鳴らしてしまう。

「おせんべ~に麦酒ビール。ちーちくにワインなど如何ですか~。もちろんウサウサにぎり弁当もご用意させてもらっています~」

「あ、あのっ! お名前をっ! じゃなくて!? ウサウサにぎり弁当を6個、お願いしますっ!」

 セイ=レ・カンコーは何故か屹立した状態から、90度の角度で深々とお辞儀をしてしまった。その礼儀正しいお辞儀に売り子のお姉さんはびっくりとしてしまう。売り子に対して、ここまでの礼儀正しい態度を示す者など皆無だったからだ。観客席に座る面々は昼間から麦酒ビールやワインを楽しんでいるために、酔っぱらっていない者を探すほうが難しい状況であった。

 それゆえに売り子をしていると、いきなりふとももをやらしく撫でられたり、お尻を鷲掴みされてしまうこともしょっちゅうであった。いくらお給金が良いと言われていても、ふとももやお尻を無料ただで触られていたのでは、赤字も良いところであった。しかし、今、眼の前でウサウサにぎり弁当を所望している相手は、どこかの使用人みたいな服装であったが、それに似合わないほどの礼儀正しいお辞儀をしてくる。半兎半人ハーフ・ダ・ラビットの売り子はつい、ふふっと笑みをこぼしてしまうのであった。

(わ、笑われた!? あっしはすごく恥ずかしいですぜ!?)

 セイ=レ・カンコーは背中にドッと熱い汗が噴き出してくる。意味もわからないほどに身体が熱くなってしょうがない。しかも、汗は背中だけでなく、手のひらにもにじみ出てきてしまう。こんな汗まみれの手でウサウサにぎり弁当を受け取って良いモノかと逡巡してしまう。

「はい~。ウサウサにぎり弁当6個、毎度アリ~。ぼくの脇でにぎった特別製だから、よ~く味わって食べてね~?」

「ワキ!? あの、その……貴女様のその白い脇で握ったんっすか!? そんなのご褒美すぎるでしょうぜっ!!」

「冗談に決まってるんですよ~。何、喜んでいるです~? まさか本気にしてしまったんです~?」

 セイ=レ・カンコーは穴があったら入りたい気分になっていた。現在、自分は27歳のそろそろおっさんに仲間入りする年齢であるのに、20歳前後の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットの女性に言い様に扱われてしまっている。その女性はコロコロと喉を鳴らして、可笑しそうに笑っている。セイ=レ・カンコーは火が出そうなほどに顔を真っ赤に染めてしまうのであった。

「ここだけの話~。本当にこのお弁当の1個だけ、ぼくの脇で握ったおむすびを仕込んでいるんですよ~。当たりに出くわすと良いですね~。なんたって、ぼくは幸運の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットですから~」

 さすがにもう騙されないぞと思ったセイ=レ・カンコーはゴホンッ! と強く咳払いをし、邪念を吹き飛ばす。そして、売り子からウサウサにぎり弁当を6個受け取り、お代を手渡しする。お代を渡された半兎半人ハーフ・ダ・ラビットの女性は満面の笑みとなり、頭を軽く下げて会釈する。セイ=レ・カンコーは騙されないぞと思いつつも、頬がだらしなく垂れさがってしまっていた。

「と、ところで……。当たりはどのお弁当なんですかね!?」

「あはは~。お客さんには特別に教えておくのです~。弁当箱の角に、ぼくのだってわかるように名前を書いておいたのです~。もし、味が気に入ったのなら、また買ってほしいのです~」

 セイ=レ・カンコーはそれを聞くと、鼻の下までもが伸びてしまうのであった。そして、善は急げとばかりにロック=イートたちが待つ控室へ戻っていってしまう。そんな彼の背中を売り子のお姉さんは微笑ましく軽く右手を振って、見送るのであった。

 セイ=レ・カンコーは観客席から控室へ続く通路で、どの弁当箱に彼女の名前が書かれているのかをすぐさまチェックに入る。弁当箱は白くて丈夫な紙製であり、しっかりとした造りになっていた。セイ=レ・カンコーはその弁当箱のひとつに確かに人物名らしきモノを見つけ出す。

「クオン=ズィーガー……。クオンさんって名前なんですかい……。いやあ、良い名前だ……。おっといけませんぜ! あっしは青春を捨てた男ですぜ!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...