拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第10章:神槍

第10話:代価

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 彼女の言いについ眩暈めまいを起こしてしまう神槍:ブリトニー=ノーガゥであった。ベッドの上に背中から倒れてしまいそうになるところを剣聖:プッチィ=ブッディが彼の背中を支える形となる。高等治療魔術はどちらかと言えば復元魔術に近いモノであった。そのため、術者の魔力消費も激しく、クオン=ズィーガーも神槍:ブリトニー=ノーガゥから精力を失敬せねばいけないほどに消耗してしまう。

 だからこそ、神槍:ブリトニー=ノーガゥも彼女を責めることは出来ない。今、自然に呼吸をおこなえるほどに回復しているのは、彼女のおかげなのである。しかしながら、半鳥半人ハーフ・ダ・バードの精力と生命力は直結していると言っても過言ではない。精力を半年分、彼女に吸い取られたということは、そのまま寿命が半年縮まったと同義なのである。

 半鳥半人ハーフ・ダ・バードは他の種族と比べれば、短命である。長くて60年生きれれば良いほうだ。今、神槍:ブリトニー=ノーガゥは齢48である。そこから逆算すれば、彼は老い先短いというのに、さらにそれを削られたこととなる。

「ぼくは悪くないのです~。ぼくに頼らなければならないほどの大怪我をしたブリトニーちゃんが悪いのです~」

「そうッスね……。本当にその通りなんッスけど、そこは上手く嘘をついてやれッス……」

 剣聖:プッチィ=ブッディはどちらにも同情する他無かった。それほどまでにクオン=ズィーガーの高等治療魔術の効果はすさまじいのである。根本的に治療魔術は治療される者だけでなく、その魔術を施す者にも代価を支払うことを前提としている。クオン=ズィーガーはその代価を支払うために、その分を怪我人の精力で賄っているのであった。

 そもそもとして、彼女が高等治療魔術を施さなければならぬほどに傷ついた殿方は、生死の境をさまよっている場合がほとんだ。そのため、オスの生存本能で、ちんこのほうはビッキビキに立ち上がっている。通常では考えられないほどのソリと硬さを誇示するわけだ。それゆえに彼女が余りある精力を摂取したところで、何ら彼女が責められるいわれなどないことがほとんどなのだ。

 ただ単に今回は半鳥半人ハーフ・ダ・バードの神槍:ブリトニー=ノーガゥが生死の境をさまようほどの大怪我をしてしまっただけなのである。重ねて言うが、クオン=ズィーガーに罪はないのであった。

 眩暈めまいから回復した神槍:ブリトニー=ノーガゥが、その間、身体を支えてくれていた剣聖:プッチィ=ブッディに礼を言う。プッチィ=ブッディは頭を左右に振り、気にするなッスと応えるのであった。そんな彼ら三人が居る控室にひと際大きな観客たちの声援が飛び込んでくる。観客たちが興奮していることは間違いないことがわかる。今、試合場ではもう一方の準決勝がおこなわれているのだ。

 いよいよ、その準決勝での勝者が決まろうとしているのだろうと、控室にいる三人は思うのであった。そして、数分後には惜しみない盛大な拍手が聞こえてきて、結果が出たのだろうと予想するに至る。神槍:ブリトニー=ノーガゥが破れた今となっては、剣聖:プッチィ=ブッディももう一方の準決勝の結果にあまり興味を持っていなかったのだが、どういった反応をするのが正しいのだろうかと逡巡しているところに、控室の扉をバコーン! というけたたましい音を響かせて、飛び込んでくる人物が居たのであった。

「わいの愛しのロックく~~~ん! あんたさんの決勝の相手が決まったやでぇ!? って、あれ……あれれ?」

 剣聖:プッチィ=ブッディたちがいる控室に勢いよく飛び込んできた人物は、ロック=イートと第3回戦で闘った男であった。彼の名はヨン=ジューロ。半熊半人ハーフ・ダ・ベアなのに、頭をスキンヘッドにしているちょっと変わった男である。もちろん、彼がスキンヘッドなのにはちゃんとした理由があることはある。対戦相手に先祖返りジュウジンモードを使用していることを知られないためのモノだ。今はその先祖返りジュウジンモードを解除している状態であるために、もともとのスキンヘッドを皆に晒しているという形なのだ。

 ヨン=ジューロはええと……とバツの悪そうな顔つきになる。明らかに飛び込む先を間違えてしまったことが彼の表情にありありと映っているのであった。そして、困ったヨン=ジューロは知っている顔がいるので、その人物に声をかけることになる。

「お!? クオンくんやんかっ! 脇おむすびをありがとうやで!? でも、わい、3回戦で負けてもうたけどな?」

 そうヨン=ジューロに言われたクオン=ズィーガーは顎に右手を添えつつ首を傾げてしまう。スキンヘッドの半熊半人ハーフ・ダ・ベアの知り合いなぞいたかどうかなど、記憶が定かではないからだ。ヨン=ジューロが彼女から脇おむすび入りの弁当を買った時は先祖返りジュウジンモードを発動した状態であり、その時は頭の毛はフサフサのアフロヘアーだったのだ。そういうわけで、クオン=ズィーガーの記憶に該当する人物が居ないという状態であった。

 ヨン=ジューロもそのことに気づき、しまったんやで……と口から漏らし、余計に困り顔へと変わってしまう。そして、彼が取った行動は……

「ほな、クオンくん、またウサウサ弁当を買わせてもらうさかい、今日はこの辺で、さいならなんやで~~~」

 ヨン=ジューロは逃げるように入ってきた扉を右足で蹴り飛ばし、剣聖たちが居る控室から出ていってしまう。あいつ、何しにきたんッスか? と剣聖:プッチィ=ブッディが神槍やクオン=ズィーガーに聞くが、彼らもまた、さあ……? としか応えようが無かったのであった。

 ヨン=ジューロは剣聖たちが居た控室から逃げ出した後、通路を通り、試合場へ一旦、足を踏み入れる。そして今度こそは間違えないようにロック=イートたちが居る控室へ先ほどと同様に扉を右足でドカーン! と蹴っ飛ばして、中へ入っていく。

「わいの愛しのロックく~~~ん! あんたさんの決勝の相手が決まったんや~~~!!」

 ヨン=ジューロがその控室に入るや否や、大声でロック=イートに声をかけ、さらには彼に抱き着いたのだ。ロック=イートは神槍:ブリトニー=ノーガゥによって傷つけられた身体が完治しきっておらず、あまりの痛みに抱き着いてきたヨン=ジューロを左手で剥がして、彼の左頬に右のこぶしをぶち込んでしまうのであった。

「あいたーーーっ! ロックくん、それはひどないか? わいの愛が重いからと言って、鉄拳制裁で迎え撃たんでもよろしいやんか!?」
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