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第11章:慟哭
第4話:初めての敬称略
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セイ=レ・カンコーとヨーコ=タマモがそんな所作をしたのは、コープ=フルールの真意を理解したからだ。ロック=イートの飼い主であるコープ=フルールでさえ、今の彼を止めることなど出来ないことは百も承知だったのである。ただ、彼は飼い主として言っておかねばならぬことを言ったまでだ。そして、わざわざ嫌われ者にならなくても良いのにとばかりにセイ=レ・カンコーたちは呆れたというわけだ。
「最初からロック=イートの返答がどうなるか? そして、それを認めるつもりならば、そんな言い方をせんでも良いと思うのじゃがのう?」
「いやいや……。私はあくまでも自分の商品に傷がつくのが嫌なだけですよ。べっつにそれ以上もそれ以下の感情も抱いていません」
腹の底を読ませぬいつも通りの応答にヨーコ=タマモは、はんっ! と鼻を鳴らしてみせる。それでもコープ=フルールは笑顔を絶やさない。半狐半人と半狸半人の騙し合いとはまさにこのことであろう。いや、片方は半兎半人なのだが……。
それはともかくとして、コープ=フルールはロック=イートに色々言ってはいたが、彼が決勝戦に出ることを認めることとなる。だが、手足がもげようとも勝ってくださいと余計な一言を付け加える。ロック=イートとしてはそんな言い方は無いだろうと不満を顔にありありと映し出すが、コープ=フルールはハハッ! と笑い飛ばしてしまう。ロック=イートはむむむ……と唸りながら頭をボリボリと掻く他無かった。
「ふあああ……。気付いたら寝てしまいましたわ……」
そう言いながら口を手に当てつつ、あくびまじりの声をあげるのはリリー=フルールであった。彼女は寝ぼけまなこを左手でこすりつつ、今がいったいどういう状況なのかを頭を左右に振って確認しだす。彼女の眼にはスキンヘッドの半熊半人に、胡散臭いニコニコ笑顔の半兎半人が映る。自分がロック=イートの治療を行っていた時には居なかったメンバーである。
「お父様? それにそこのスキンヘッドの方はどなた?」
「そんなつれないことを言わんといていやー。わいはロックくんと第3回戦でやりあったヨン=ジューロやで? 1時間ほど前にも自己紹介したやんか?」
ヨン=ジューロにそう言われ、そう言えば一瞬だけ控室に現れて、わーわー喚いた後、控室から飛び出ていったスキンヘッドの方が居たような気がしないでもないリリー=フルールであった。彼女はロック=イートの治療に専念しており、ヨン=ジューロのことなどアウトオブ眼中であった。そのため、リリー=フルールとしては彼とまともにしゃべるのは今が初めてだったりする。
ヨン=ジューロが何故、ロック=イートが居る控室に居座っているのかは置いておいて、それよりももっと厄介そうな自分の父親の方に顔を向ける。そして、きつめの視線で父親を睨めつけることとなる。娘に睨めつけられたコープ=フルールはわざとらしく驚きの表情を見せる。そして、弁明をするかのように彼は口を開く。
「いやあ。ロックくんの具合はどうだろうかと思って、陣中見舞いにやってきたんですよ。ねえ、ロックく~~~ん?」
コープ=フルールは口裏を合わせてくれとばかりに控室に居る皆に目配せする。だが、皆は一様にジト目でコープ=フルールを見るのであった。そんな父親と皆の顔を交互に見たリリー=フルールはふうう……と長めにため息をつく。皆とコープ=フルールがどんなやりとりをしていたのかを知らないリリー=フルールであったが、どんなことがあったかは容易に想像がつくのであった。どうせ、言わなくても良いことを言って、皆の反感を買ったのだろうと。
非難の眼で見られたコープ=フルールはごほん……とわざとらしく一度咳をつき、リリー=フルールの両肩に自分の両手をポンと乗せて
「リリー。決勝戦に向かうロックくんに何か励ましの言葉を送ってください。どうやら、私が言うと、嫌味にしか聞こえないみたいでして……」
それは自業自得でしょ? と言ってしまいたくなるリリー=フルールであったが、それは喉から先へは出ないように注意するのであった。自分がどれほど眠ってしまっていたかは正確にはわからない。もしかすると、5分も経たずにロック=イートは試合場に向かってしまうかもしれないのだ。腹黒い自分の父親と言い合っていることで時間を浪費している余裕などないと感じたリリー=フルールはロック=イートの左手を両手で優しく包み込む。
「わたくしの騎士様。どうかリリーのために生きて帰って来てほしいのですわ」
「いや……。そんな大げさな……。大怪我をする可能性はあるかもだけど、命までは取られないような……」
リリー=フルールがまるで夫が戦に出立していくかのような台詞を吐くので、ロック=イートとしてはどう返答していいのか困ることになる。だが、周りの皆はそこはチュゥですぜ! チュゥでっせ! チュゥじゃな! と小声で忠告してくれる。ロック=イートは右手でボリボリと頭を掻き、お節介にもほどがあると思ってしまう。だが、こんな王道展開も悪くは無いなと思い直し、自分の左手を包み込んでいる両手を外側から右手を添える。
そして、彼女の右手を両手ですくいあげて、その甲に軽く接吻をする。その後、ロック=イートは微笑みを顔に浮かべつつ
「ああ、俺は必ずリリーの下に帰ってくる。だから、リリーは俺の生き様をその眼に焼き付けてくれ。なんたって俺は『世界最強の生物』になる男だからな?」
リリー=フルールはロック=イートの言いに破顔してしまう。それの一番の理由はロック=イートが彼女を『リリー』と呼び捨てにしてくれたことだ。今までロック=イートは『リリーお嬢様』や『リリー様』と一歩引いた呼び方であった。殿方で敬称を付けずにリリーと呼び捨てにするのは彼女の父親のみである。リリー=フルールは嬉しくなり、彼の腹から背中にかけてロック=イートを抱え込むように自分の両腕を回す。ロック=イートは自分で呼び捨てにしておきながら、恥ずかしさから軽く赤面していたのである。
「良いのう、良いのう。わらわもロックに呼び捨てで呼ばれたいのじゃっ! 二人を見ていると腹の奥がキュンキュンしてくるのじゃっ!」
「タマモ姐さん。そこは胸がキュンキュンでっせ? 腹の奥だとそれは下ネタになっちゃうんやで?」
「何を言っておるのじゃっ! 男は脳で考える生き物じゃが、女は腹で考える生き物なのじゃ。そんなこともわからぬから、おぬしはモテぬのじゃっ!」
「最初からロック=イートの返答がどうなるか? そして、それを認めるつもりならば、そんな言い方をせんでも良いと思うのじゃがのう?」
「いやいや……。私はあくまでも自分の商品に傷がつくのが嫌なだけですよ。べっつにそれ以上もそれ以下の感情も抱いていません」
腹の底を読ませぬいつも通りの応答にヨーコ=タマモは、はんっ! と鼻を鳴らしてみせる。それでもコープ=フルールは笑顔を絶やさない。半狐半人と半狸半人の騙し合いとはまさにこのことであろう。いや、片方は半兎半人なのだが……。
それはともかくとして、コープ=フルールはロック=イートに色々言ってはいたが、彼が決勝戦に出ることを認めることとなる。だが、手足がもげようとも勝ってくださいと余計な一言を付け加える。ロック=イートとしてはそんな言い方は無いだろうと不満を顔にありありと映し出すが、コープ=フルールはハハッ! と笑い飛ばしてしまう。ロック=イートはむむむ……と唸りながら頭をボリボリと掻く他無かった。
「ふあああ……。気付いたら寝てしまいましたわ……」
そう言いながら口を手に当てつつ、あくびまじりの声をあげるのはリリー=フルールであった。彼女は寝ぼけまなこを左手でこすりつつ、今がいったいどういう状況なのかを頭を左右に振って確認しだす。彼女の眼にはスキンヘッドの半熊半人に、胡散臭いニコニコ笑顔の半兎半人が映る。自分がロック=イートの治療を行っていた時には居なかったメンバーである。
「お父様? それにそこのスキンヘッドの方はどなた?」
「そんなつれないことを言わんといていやー。わいはロックくんと第3回戦でやりあったヨン=ジューロやで? 1時間ほど前にも自己紹介したやんか?」
ヨン=ジューロにそう言われ、そう言えば一瞬だけ控室に現れて、わーわー喚いた後、控室から飛び出ていったスキンヘッドの方が居たような気がしないでもないリリー=フルールであった。彼女はロック=イートの治療に専念しており、ヨン=ジューロのことなどアウトオブ眼中であった。そのため、リリー=フルールとしては彼とまともにしゃべるのは今が初めてだったりする。
ヨン=ジューロが何故、ロック=イートが居る控室に居座っているのかは置いておいて、それよりももっと厄介そうな自分の父親の方に顔を向ける。そして、きつめの視線で父親を睨めつけることとなる。娘に睨めつけられたコープ=フルールはわざとらしく驚きの表情を見せる。そして、弁明をするかのように彼は口を開く。
「いやあ。ロックくんの具合はどうだろうかと思って、陣中見舞いにやってきたんですよ。ねえ、ロックく~~~ん?」
コープ=フルールは口裏を合わせてくれとばかりに控室に居る皆に目配せする。だが、皆は一様にジト目でコープ=フルールを見るのであった。そんな父親と皆の顔を交互に見たリリー=フルールはふうう……と長めにため息をつく。皆とコープ=フルールがどんなやりとりをしていたのかを知らないリリー=フルールであったが、どんなことがあったかは容易に想像がつくのであった。どうせ、言わなくても良いことを言って、皆の反感を買ったのだろうと。
非難の眼で見られたコープ=フルールはごほん……とわざとらしく一度咳をつき、リリー=フルールの両肩に自分の両手をポンと乗せて
「リリー。決勝戦に向かうロックくんに何か励ましの言葉を送ってください。どうやら、私が言うと、嫌味にしか聞こえないみたいでして……」
それは自業自得でしょ? と言ってしまいたくなるリリー=フルールであったが、それは喉から先へは出ないように注意するのであった。自分がどれほど眠ってしまっていたかは正確にはわからない。もしかすると、5分も経たずにロック=イートは試合場に向かってしまうかもしれないのだ。腹黒い自分の父親と言い合っていることで時間を浪費している余裕などないと感じたリリー=フルールはロック=イートの左手を両手で優しく包み込む。
「わたくしの騎士様。どうかリリーのために生きて帰って来てほしいのですわ」
「いや……。そんな大げさな……。大怪我をする可能性はあるかもだけど、命までは取られないような……」
リリー=フルールがまるで夫が戦に出立していくかのような台詞を吐くので、ロック=イートとしてはどう返答していいのか困ることになる。だが、周りの皆はそこはチュゥですぜ! チュゥでっせ! チュゥじゃな! と小声で忠告してくれる。ロック=イートは右手でボリボリと頭を掻き、お節介にもほどがあると思ってしまう。だが、こんな王道展開も悪くは無いなと思い直し、自分の左手を包み込んでいる両手を外側から右手を添える。
そして、彼女の右手を両手ですくいあげて、その甲に軽く接吻をする。その後、ロック=イートは微笑みを顔に浮かべつつ
「ああ、俺は必ずリリーの下に帰ってくる。だから、リリーは俺の生き様をその眼に焼き付けてくれ。なんたって俺は『世界最強の生物』になる男だからな?」
リリー=フルールはロック=イートの言いに破顔してしまう。それの一番の理由はロック=イートが彼女を『リリー』と呼び捨てにしてくれたことだ。今までロック=イートは『リリーお嬢様』や『リリー様』と一歩引いた呼び方であった。殿方で敬称を付けずにリリーと呼び捨てにするのは彼女の父親のみである。リリー=フルールは嬉しくなり、彼の腹から背中にかけてロック=イートを抱え込むように自分の両腕を回す。ロック=イートは自分で呼び捨てにしておきながら、恥ずかしさから軽く赤面していたのである。
「良いのう、良いのう。わらわもロックに呼び捨てで呼ばれたいのじゃっ! 二人を見ていると腹の奥がキュンキュンしてくるのじゃっ!」
「タマモ姐さん。そこは胸がキュンキュンでっせ? 腹の奥だとそれは下ネタになっちゃうんやで?」
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