拳聖の一番弟子がぶっ放すロケットパンチ ~氷の悪役令嬢の心を一撃で砕いてチョロイン化~

ももちく

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第12章:ロケット・パンチ

第1話:乱入者

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 弓神:ダルシゥム=カーメンが碧玉サファイア色の外套マントをサラ=ローランの身体にかけようとした時、彼の左肩に手を置く人物が居た。それは蹴聖:コタロー=サルガミであった。彼は自分の大事な女性が先祖返りジュウジンモードの暴走状態になったことで、居ても立っても居られない状態となり、アンゴルモア大王に断りを入れて、この試合場へと足を踏み入れたのである。

 そして、弓神:ダルシゥム=カーメンもそのことを悟り、彼に自分の外套マントを預ける。蹴聖:コタロー=サルガミはこくりと彼に頷き、外套マントを受け取った後、サラ=ローランの身体にかける。そして、彼女の両腕から緋緋色金製の手甲ナックル・カバーを外した後、彼女をお姫様抱っこしながら石畳の上から退場していく。だが、そんな蹴聖:コタロー=サルガミに対して、ロック=イートが声をかける。

「コタロー兄。俺はこぶしでしか、サラ姐と語り合うことが出来なかった……」

「そうすることが拳聖:キョーコ=モトカードの弟子である僕たちの宿命だウキー。後悔するくらいなら、最初からこの場に立つんじゃないんだウキー」

 コタロー=サルガミは振り返りもせずに、そうロック=イートに告げる。ロック=イートは彼の言葉を受けて、自分たちはまだ兄弟子、姉弟子、弟弟子の仲であることを察する。それがどれほどまでにロック=イートにとっての救いであったろうか? ロック=イートは思わず膝から崩れ落ちる。顔を両手で抑えながら、瞳から流れる涙を覆い隠そうとする。そんな感傷的なロック=イートに対して、ふんっ……と鼻を鳴らすコタロー=サルガミであった。

「拳聖:キョーコ=モトカードが俺たちに残してくれた緋緋色金製の手甲ナックル・カバーは一旦、お前に預けておくんだウキー」

「それってどういう意味なん……だ?」

 ロック=イートは涙を無理やりに堰き止めて、石畳の上に転がっている緋緋色金製の手甲ナックル・カバーに視線を移す。そして、段々と自分から離れていく兄弟子:コタロー=サルガミに問いかける。だが、彼はそれ以上は何も言わない。何故に自分たちにとって大切なヒトの武具を自分に託すと言ってくれたのかがわからないロック=イートである。自分がこの武具を預かることで、拳聖の三大高弟たちの身に何かが起きようとしているのでないかという危惧が心に湧き上がってくる。

 ロック=イートの危惧はあながち間違っていなかった。コタロー=サルガミたちが試合場である石畳の上から立ち去った後、ロック=イートがその石畳の上に転がっている緋緋色金製の手甲ナックル・カバーを手に取ろうとしたまさにその時、それを邪魔する人物が登場したのだ。

「待つんだピョン! それはアルカード=カラミティ様の所有物なんだピョン! コタロー! 何を勝手にロック=イートに渡そうとしているんだピョン!!」

 サラ=ローランをお姫様抱っこしながら試合場から去っていくコタロー=サルガミと入れ替わりに、黒い毛が特徴的な半兎半人ハーフ・ダ・ラビットが現れる。その女性はコタロー=サルガミの尻にローリングソバットをかましたのだ。だが、コタロー=サルガミはフン……と小さく鼻を鳴らし

「ウキッ。貴様ら『裏』のお膳立てのためにサラはその身を犠牲にしたんだ。ならば、そのお代として拳聖の武具のひとつやふたつ、『表』側が失敬しても良いだろう?」

「なーにが失敬しても良いだろう? だピョン! ふざけるのも大概にするんだピョン!」

 黒毛の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットがもう一度、コタロー=サルガミの尻に向かって、蹴りを放つ。だが、コタロー=サルガミはハハッ! と笑いながら、今度こそ完全に試合場から姿を消していく。事情がよくわかっていないロック=イートはいったい彼女たちは何を揉めているのかと不思議に思ってしまう。ロック=イートは手甲ナックル・カバーを拾おうとした手を止めて、自分の方に向かってくる黒毛の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットに注視することに決める。

「何をジロジロと見ているピョン。ミーナちゃんの身体をまじまじと見て良いのは、この世ではアルカード=カラミティ様だけなんだピョン!」

 ロック=イートとしては、こいつはいったいぜんたい何を言っているんだ? という怪訝な表情になってしまう。そんなことを言われてしまったために胸から胴回りをフード付きのタイトなパーカーに身を包む半兎半人ハーフ・ダ・ラビットを余計にマジマジと見てしまうロック=イートであった。胸は同じ半兎半人ハーフ・ダ・ラビットであるリリー=フルール以下だし、パーカーの裾からはみ出ているふとももにかけては、やわらかそうというよりはぶっちゃけ堅そうといった具合で、とてもじゃないが女性らしさを微塵も感じない。なのに、自分を性的に見るなと言われては腹立たしさのほうが段々と勝ってくるのであった。

「おっとっと。ロックなんかに構っている暇なんて無いんだピョン。まったく……。拳聖:キョーコ=モトカードの武具はこちらが貸し出してやっているだけなのに、まるで自分たちのモノのような言い方はやめるんだピョン。これだから『表』の連中は厚かましいんだピョン」

 黒毛の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットはそう言いながら、ひょいひょいと緋緋色金製の手甲ナックル・カバーを二つとも拾い上げてしまう。そして、ささっとそこから立ち去ろうとするので、ロック=イートは待てっ! とつい叫んでしまう。呼び止められた彼女はうろんな目でロック=イートの方に振り向き

「なんだピョン? もしかして、俺こそが拳聖:キョーコ=モトカードの後継者とでも言いたいのかピョン?」

 ロック=イートはこの言われ方に完全に頭に血が昇ることとなる。自分だけでなく、師匠のことまで馬鹿にされた気がしてならないのであった。そのため、ロック=イートは右手を真っ直ぐと突きだし、人差し指で小生意気な黒毛の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットを指さしてしまう。それに対して彼女は眉間にシワを寄せつつハアアア……と深いため息をつき

「キミは訳ありの存在だから、仕方なく生かしてやると言っているのがわからないピョン? もしかして、ミーナちゃんのことを思い出せないんだピョン?」

「てめえっ! やっと思い出したぞっ!」

 ロック=イートは頭に昇った血がさらに沸騰するかのようであった。どこか既視感のある黒毛の半兎半人ハーフ・ダ・ラビットだとは思ってはいたが、自分にとって因縁の相手であることを今更ながらに気づく。彼女はあの5年前の日にロック=イートの右腕を切断した張本人なのだ。何故に今の今となってそれを思い出したのかとロック=イートは切歯扼腕となってしまう。

 ロック=イートは彼女をこのまま逃がす気はまったく無くなっていた。ヒトを見下すかのようなあの表情を浮かべる顔面に右のこぶしをめり込ませてやろうと思い立つ。そして、そう思った時は既に行動を開始しているロック=イートである。左足で石畳を力強く蹴っ飛ばし、右足でドスンッ! とその石畳を踏みつける……。
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