【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第2章:失って得るモノ

第7話:兵役の終わり

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 レオナルト=ヴィッダーは所属する部隊が壊滅するたびに次の部隊へと編入されつづけた。その回数は2年間で10回にも及ぶ。それもそうだろう。バルト帝国軍10万VSウィーゼ王国軍3万との戦いなのだ。しょせん、ウィーゼ王国軍は相手の3分の1程度しか兵力を持たない。それでも2年にも及ぶ攻防戦を繰り広げれているほうがおかしいのだ。だからこそ、ウィーゼ王国軍を率いる総軍団長:ゼンダー=ラウディスは名将の中の名将と言えただろう。

 総軍団長:ゼンダー=ラウディスは自軍の犠牲も計算に入れて、バルト帝国軍に抗い続けた。局地的に配置した急襲部隊が壊滅していく中でも、冷静に軍配を振るい続けた。そして、ついにバルト帝国軍の損害が3万を超えた時、バルト帝国軍から和睦の使者がやってくることとなる。

「まっことやってくれるでござる。これ以上の戦い、どちらにも益をもたらさぬでござる。ここらで手打ちとするのは如何でござる?」

 バルト帝国軍側から使者としてやってきたのは、第4大隊を率いるマッゲ=サーンであった。彼は1万5000の部隊をなだらかな丘陵地帯に展開し、ウィーダ王国軍1万5000と対峙し合っていた。だが、どちらからも動きを見せずに三日三晩が過ぎることとなる。両軍、にらみ合いを続けた後、第4大隊・大将軍ビッグ・ショウグンであるマッゲ=サーンがわずかな供を伴い、騎乗したままに両軍のど真ん中へと進み出る。それを視認したウィーゼ王国軍の総軍団長:ゼンダー=ラウディスも彼と同じようにわずかな供を従えて、彼の下へと騎乗しながら近寄っていく。

 顔を見合わせた両者はどちらからともなく下馬して、お互いの右手を籠手越しにがっしりと握りしめ合う。そして、互いの健闘を褒め合うかのように左腕を相手の背中側に回し、抱擁するのであった。

「事後処理は互いの国の宰相たちが話をつけよう。出来るならば、そなたともう一度、戦場で相まみえることがないことを願おうではないか」

「ククッ! 言ってくれるものでござるな。それは御上が決めることでござる。拙者たちは所詮、使い捨ての軍人にしかすぎぬ。しかしながら、数年は休ませてほしいものでござるな」

 マッゲ=サーンはニヤリと口の端を歪ませて軽く笑った後に、続けて言葉を放つ。ゼンダー=ラウディスは彼の言葉を受けて、まったくもってその通りだと受け答えしてみせる。今回は痛み分けでいくさは終わったが、バルト帝国軍としては小手調べとしての出陣であったが、それを相手にウィーゼ王国軍は半壊している。もし、最初からバルト帝国が本気でウィーゼ王国を攻め滅ぼすつもりであったら、ウィーゼ王国軍はもっと多くの犠牲者を出していたのは間違いなかったであろう。

 あくまでもバルト帝国としては、今回のいくさはウィーゼ王国に身の丈をわからせてやるというのが目的なのだ。自国は3万の犠牲を払うことになったが、それでも相手を半壊させたという実績を手に入れた。小手調べの兵数でそれが為されたのならば、これで手打ちにしておいてやろうという上から目線の和睦なのである。

 ウィーゼ王国からしても、自分たちが被った損害の2倍をバルト帝国に与えている。どちらの将兵にとっても、国主に対して面目が立つであろうところで、いくさをここらで一旦、終わらせてしまおうという気持ちを持っていた。そして、北ラメリア大陸の北半分を支配している帝国側がその器の大きさを示す形で一時停戦へと繋がっていく。

 この停戦が終戦に向かうかまでは、まだ誰にもわからなかったが、どちらの軍に属する者たちも、休息を欲しがっていたのは確かである。それゆえに停戦を決めた将を責める兵は誰一人とていなかった。

「やっと……終わったのか。アイリス、俺は生き延びたぞぉぉぉ!!」

「やりましたね、レオン様!」

 レオナルト=ヴィッダーは歓喜の声を上げつつ、クルス=サンティーモを抱き上げる。そして彼を抱きかかえたままに彼のほっぺたへと散々に口づけをしまくる。クルス=サンティーモはくすぐったいですゥとレオナルト=ヴィッダーに訴えかけるが、それでもレオナルト=ヴィッダーはクルス=サンティーモの頬をチュッチュッとついばみ続けた。いつ命を落とすかわからない状況に置かれて、それでもなお2年間戦い続けたレオナルト=ヴィッダーの身体は歴戦の戦士のモノへと様変わりしていた。

 2年前までは衛兵としての必要最低限な筋肉量しか持ち合わせていない身体つきのレオナルト=ヴィッダーであったが、今では身体のそこら中に戦士としての名誉ある傷にまみれ、さらには余分な脂肪がこそげ落ち、誰に見せても恥ずかしくない屈強なる戦士の肉体へと生まれ変わっていた。そんな彼に思いっ切り抱きかかえられているため、窮屈感を感じるクルス=サンティーモであったが、悪い気持ちには決してならない彼であった。

「ぶひぃ……。これでおいらは職無しなんだよ。おい、レオン。明日からどうやって飯のタネを探すつもりなんだ?」

 生き延びたことに対して、歓喜する2人をよそに、その2人のそばで尻餅をついて、やれやれと嘆息している豚ニンゲンオーク似のデーブ=オクボーンがげんなりとした顔つきになっている。そんなデーブ=オクボーンに対して、レオナルト=ヴィッダーは何故にそんな憂い顔なのかと逆に問いただしたくなる気持ちになってしまう。

「おいらは元々、傭兵団に所属していたんだ。それでいくさが起きて、傭兵団長がこのいくさに加わろうって話で、ウィーゼ王国軍に入隊したんだよ。しっかし……、風の噂でその傭兵団長殿が戦死したらしいんだわ」

「ああ……、そういうことか。デーブは正規のウィーゼ王国軍の兵士じゃないのか。それじゃあ、俺もデーブと同じく、国に帰ったら、まずは職探しからってか……」

 レオナルト=ヴィッダーは勝利の美酒に酔いしれる前にデーブ=オクボーンの言葉で、現実に引き戻されることとなる。2年間の兵役に就かされた時は、何が何でも生き延びることに注視しつづけてきた。しかし、いくさが終わった以上、今度は日常を生きていかなければならない。デーブ=オクボーンと同じく、レオナルト=ヴィッダーもまた無職になってしまうのだ。

「レオン。おいら考えたんだけど、同じような境遇の奴らに声をかけて、盗賊団もとい傭兵団に転職しないか? って誘ってみないか? 傭兵団長の座は、おめえに譲ってやるからよぉ?」

「いや……。俺はまっとうな手段で日銭を稼ぐ方法を模索してみるよ。アイリスに後ろめたい気持ちを持つような職には就きたくない。なあ、アイリス。俺が傭兵団くずれの盗賊団に落ちる姿は見たくないよな?」

「はいッ! レオン様はぼくにとっての騎士様なのですッ! レオン様が不名誉な職に就くのは嫌なのですゥ!」
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