【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第3章:石造りの楽園

第1話:激怒する国王

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――北ラメリア大陸歴1495年1月14日 ウィーゼ王国:首都オールドヨークにて――

「ええい、このロータス=クレープスをたばかりおって! 誰ぞ、この者を牢に入れておけっ! 嘘吐きに相応しい罰を与えておくのだっ!」

 ウィーゼ王国の国王であるロータス=クレープスは激怒していた。今月に入り、これが何度目になるかわからない怒髪天である。婆娑羅マゲが総立ちになるだけでなく、鼻下周りのぶっとい髭までが天井に向かって逆立っていた。

 ロータス=クレープスが怒りで身体を震わせるのも致し方ない状況となっていた。彼が一カ月半前にぶち上げた、5つの秘宝を持ってきた者には娘であるアイリス=クレープスを下賜すると国民たちに約束はしたものの、今日の今日まで国王に献上されたどの品も偽物しかなかったからである。海皇の三叉槍だと主張する者が持ってきたのは、ただ金箔押しされただけの刺又さすまたであった。

 それならまだマシといったもので、白銀狼の牙の場合は紙と木で作られたハリボテであった。さらに竜皇の珠玉だと主張する者が持ってきたのは、そこらの露天商で購入したのか? と言ってしまいそうなただのガラス玉であった。国王の眼ですらガラス玉であることは一目瞭然であり、わざわざ目利き役となっている第1王子:フィルフェン=クレープスの手を借りるまでもなかったのである。

 そして、偽りの品を献上しようとする者は後を絶たず、ついに国王は偽物を持ってきた者は投獄すると国中に伝達することとなる。だが、それでも今日、王宮にやってきて、玉座に座る国王に失われた朱鷺を持ってきたと提示した者は、なんとそこらの鳩を朱色に染めただけのモノであった。それゆえに国王は今まで以上に激怒したのだ。いくら、誰も見たことが無い鳥だったとしても、ここまで国王を馬鹿にした話は無い。

 その染色しただけの鳩を持ってきた者は、見せしめのために縛り首となる。そうすることで、やっと国民たちも理解したのか、刑が執行されたその日からぱったりと国王に偽物を提示する者はいなくなる。

「いやはや……。父上は少々、気が短いのではないでしょうか? ちょっとした詐欺に対して、死罪はさすがにやりすぎですよ?」

「う、うるさいっ! フィルフェン、貴様が門前払いさえしておけば良いものを、わざわざ謁見させているくせに、よくも私ひとりのせいにしてくれるな!?」

 国王:ロータス=クレープスは自分の執務室にやってきたフィルフェン=クレープスに対して、文句を言ってみせる。フィルフェン=クレープスはあくまでも忠言を申し上げにきたという体を取っている。しかしながら、ロータス=クレープス本人としては、自分の長子がわざわざ嫌がらせしにきただけだと考えていた。国王:ロータス=クレープスがそう考えたのは、苦言を呈しにきたのがフィルフェン=クレープスだけでなかったからだ。彼は王妃を伴って、自分の眼の前に現れたのだ。一緒についてきた王妃は明らかに不満気な表情をその顔に浮かべている。

 王妃:オリビア=クレープスは言葉こそ発しないが、国王:ロータス=クレープスが偽物を持ってきた者を縛り首にしてしまったことに無言の抗議をおこなっているのである。王妃の態度は言葉を発するよりも、強力に国王への圧迫となる。国王はムム……と唸る他無く、フィルフェン=クレープスの進言を聞かざるをえなくなる。

「そもそもとして、誰も見たことが無いような秘宝を国民たちに提示し、さらにそのうちのふたつも持ってこいなんて言うから、国民は偽物を持ってくるしかなくなるのですよ」

「しかしだ……。今更、条件を変えれば、私は私の手でアイリス=クレープスの価値を貶めることになる。それだけはならぬっ! 私は他国の国王たちに馬鹿にされることになる!」

 国王:ロータス=クレープスは第1王子の進言を聞くことはするが、それを受け入れることは決してしなかった。フィルフェン=クレープスはやれやれ……と肩をすくめ、では、どうするおつもりなのですか? と逆に父上に問いただす。国王は少し考えた後に、ポンと両手を合わせ、まるで名案が思い付いたかのように次の言葉を紡ぎ出す。

「そもそもとしてだ。根本的なことを私は間違えていたのだ。私が絶対にやりたくないのはアイリス=クレープスがレオナルト=ヴィッダーという根なし草と一緒になることの後押しすることだっ! ああ、そうだ、それをうっかり失念していたのだ!」

 国王:ロータス=クレープスはまるで今更ながらに初志を思い出したとばかりにそう言ってのける。自分が国民たちに5つの秘宝のうち、ふたつも持ってこいと言った根本的な原因はレオナルト=ヴィッダーにあるとまで言ってのける。どこをどう話が繋がっていけば、その結論に達するのかと王妃:オリビア=クレープスは左手を左頬に添えて、ハアアア……と長いため息をついてみせる。

「こういうのを八つ当たりと言うのですわ。レオナルトさんは2年の兵役を終えたのですわよ? アイリスさんに手を出した罪はすでに償っておりますわ」

 王妃:オリビア=クレープスの言うことはまさにド正論であった。罪を犯した者には罰が必要であるが、その罰をきっちり受けた者に対して、さらに鞭打つ必要は無いはずだ。だが、国王:ロータス=クレープスはレオナルト=ヴィッダーがこの世に産まれたきたこと自体が罰であるとでも言いたげな論調で話を進めている。今の今まで黙っていた王妃もさすがにそれは無体だと言ってしまう。

「ええぃ! オリビア! 何故に奴の肩を持つような発言をするのだ! お前は私の妻であろうっ! 妻が夫の意見に寄り添うのは当たり前ではないのか!?」

「確かにわたくしは貴方の嫁ですわ。しかし残念ながら、わたくしはわたくしという独立した人格を持っていますの。わたくしが貴方を愛しているように、わたくしはアイリスさんを同じように愛しているのです」

「わ、私とてアイリスのことを愛しておるっ! いくら手のかかる娘だと思っていても、邪険にしたいと思ったことはないわい!」

 国王:ロータス=クレープスはアイリス=クレープスを愛してないかのように言ってくる王妃に対して、目くじらを立ててみせる。自分の愛の深さは王妃が示すソレよりも浅いと言われている気がしてならないと感じたゆえの反論であった。だが、王妃はますますヤレヤレ……といった態度を強めていく。国王は何故にそんな態度を示されなけばならないのかと憤慨する。面倒くさく感じたのか王妃は説明を第一王子:フィルフェン=クレープスに任せる。

「父上……。まだおわかりにならないのですか? 母上は愛が浅い深いを問うてはいません。アイリスくんにとって、何が幸せなのか? 親として心配すべきなのはその一点につきるのではないか? と母上は申し上げているのですよ」
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