【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第3章:石造りの楽園

第4話:魔術の才能の無駄遣い

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 城内全体に響き渡るほどの国王の怒号が響き渡るのに、さして時間は要さなかった。第1王子:フィルフェン=クレープスは底意地悪そうにククッ! と邪悪な笑みをこぼしてみせる。しかし、それを気に喰わない者がいた。それは彼にベッドの上で組み伏せられている第2王女:フローラ=クレープスであった。

「久方ぶりの逢瀬というのに、兄上ときたら、余所に気をもっていかれすぎですの……」

「すいません。つい、父上の怒号が聞こえてきたので、そちらに気を取られてしまいました」

 今、第1王子であるフィルフェン=クレープスは妹の寝室に転がり込んでいた。フィルフェン=クレープスは妹である第1王女:フローラ=クレープスとある決め事をしていた。彼らは互いに金と銀のブレスレットを両腕の手首辺りに装着している。それは平たく言えばイエスノー枕であり、夫婦がむつみ合うための合図となっていた。互いに金のブレスレットを右の手首に、銀のブレスレットを左の手首に装着することで、逢瀬をおこなう合図となっていた。

 それは同じベッドで一緒に眠ることだけを指すわけではない。本当の意味でのデートをしようという合図にも使われている。デートだけしようという場合は、同じブレスレットでも、そのブレスレットに走る紋様が違うのだ。当然、侍女の中で特に機微に鋭い者には、それが第1王子と第1王女の密会の合図だということを知っている。そして、そういった侍女は決まって、王宮であらぬ噂を立ててくれる。

 しかし、これはあくまでも隠れ蓑だ。ひとつのベッドの上に枕をふたつ並べ、さらにふたりがそのベッドの上で産まれたままの姿になる時は、その侍女は違う噂を王宮にそれとなく流すのだ。ぶっちゃければ、その侍女は第1王子:フィルフェン=クレープスにとっくの昔に買収されていた。それゆえに、今現在、行方不明となっているフィルフェン=クレープスとフローラ=クレープスがどこに居るのかを知っているのは、その侍女のみであった。

 情報を握る者は全てにおいて、相手の上を行くことが出来るのだ。そして、噂の元となっている侍女はこの時間帯、噂を流すだけ流して、城内からこっそり姿を消していた。それゆえに、誰もフィルフェン=クレープスとフローラ=クレープスの居場所を特定できることはなかったのだ。さらには木を隠すなら森の中と言われているように、第1王女であるフローラ=クレープスの寝室を捜索する者も居なかった……。

「先生はあなたと身体を重ねている時が一番エルフに産まれて良かったと思っています。だって、魔術の才能を無駄に発揮できますからね?」

 フィルフェン=クレープスは念のために防音用の魔術をフローラ=クレープスの寝室に施している。今、この寝室の四角には虹色に輝く蝶が数匹づつ舞っている。静寂の冥宮サイレント・メビウスという非常に高度な魔術である。物体の存在自体を希薄にすることも出来るので、隠形にも使える魔術と応用範囲が広い。しかしながら、フィルフェン=クレープス自体はこの魔術をフローラ=クレープスとの密会の時に多用しているので、皮肉を込めて、『魔術の才能の無駄遣い』と言ってみせる。

 しかしながら、皮肉を言いつつも、フローラ=クレープスの卑肉を丹念に指の先でこねくり回すことはやめないでいた。フローラ=クレープスの吐息は熱いモノに変わっており、彼女の卑肉からはテラテラと輝く愛液が留めなく溢れ出していた。そんな彼女の腹の下側には段々と紋様が浮かびあがってくる。

「ふふ……。だんだんといやらしい気持ちになってきたのと裏腹に、万が一にも孕まぬようにと魔力を集中させているのですね?」

「やめてくださいまし……。わたくしにこれを覚えろと言ったのはフィル、あなたなのですわ」

 フローラ=クレープスは神官プリーストが得意とする受胎の魔術を会得していた。神官プリーストたちは結婚式の際に、祈願にも似た形で新婦にこの魔術を施し、新郎新婦の間に早く子供が生まれるようにと神からの施しを与えるのだ。しかしながらこの魔術はあくまでも『率』を高めるだけの魔術である。出来やすい時期における受胎率を高めるのであって、絶対に孕むという確証は無い。だからこその『神からの施し』という表現なのだ。授かりものとはよく言ったもので、結局のところ、ふたりの間に赤ちゃんが出来るかどうかは、神頼みなのである。

 しかしながら、フローラ=クレープスは受胎の魔術を反転させて、避妊のための魔術として作用させている。そのため、彼女の下腹に浮かび上がっている紋様は通常の逆方向に広がっているのだ。

「そういえば、この魔術で思い出しましたけど、よくもまあ、アイリスとレオンくんとの間に赤ちゃんが出来ませんでしたね?」

「そればかりは致し方ありませんわ……。あくまでも『率』を高めるための魔術ですもの、これは。わたくしはふたりを応援したくて、通常通りに受胎の魔術をアイリスに施しましたのよ?」

 フローラ=クレープスとしては、このがんじがらめの石の檻から、妹だけは抜け出してほしかったのだ。それゆえに、アイリスに請われるままに、彼女の下腹部に紋様を描いておいたのだ。だが、結果として、アイリスが孕むことはなかった。それこそ、神の差配としか言いようがないのだ、フローラ=クレープスには。

 そんな彼女の心情を察してか、フィルフェン=クレープスはフローラ=クレープスの卑肉から指を離し、濡れたままの指先で彼女の下腹をむんずと掴む。そして、彼女の下腹の肉を思いっ切り掴んだ後、時計周りに捻り始めたのだ。そんな所作をする彼に対して、彼女はクスクスと可笑しそうに笑いだす。

「そんなことをしても、反転魔術をさらに反転させることは出来ませんことよ? わたくしの意思を挫くことから務めることですわ。そう、わたくしがフィルの子供を産んでも良いと思える状況を作りだしてくださいまし?」

 フローラ=クレープスの言いにフィルフェン=クレープスはベッドの上に居ながらにして、器用にも肩をすくめてみせる。その彼の仕草がおかしいのか、ますますフローラ=クレープスは笑顔になっていく。面白くないといった表情を浮かべる彼の唇にそっと彼女は唇を重ねる。

「ったく、普段は先生のことを毛嫌いしているように振る舞っているのに、ベッドの上では主導権を先生から奪うんですね?」

「それは致し方ありませんことよ。父の眼が光る場所でラブラブオーラを発していたら、いくらあの朴念仁と言えども、察してしまいかねませんもの。まあ、母にはバレバレで、ちょくちょく釘を刺されていますけど……」

「さすがは無言で父を上手く操作している母ですね。自分は産まれながらの策士だと思っていますが、母に勝てる気がまったくしませんよ」

「母は強し。まさにこの言葉がぴったりですわね。わたくしも誰かのお母さんになれば、母のようになれるのでしょうか?」
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