【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第5章:天使の嬉し涙

第7話:嬉ション

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 天使の嬉し涙を手に入れるための戦いにおけるレオナルト=ヴィッダーの話はここで終わる。レオナルト=ヴィッダーは最後に一言

「俺は悪くないっ! 断じて、アイリスを裏切ったわけじゃないっ! 俺はアイリスに自由を与えたいんだっ!」

 レオナルト=ヴィッダーは想いの丈をその口から力強く吐き出す。こう言われては、リリベル=ユーリィは何も言えなくなってしまう。リリベル=ユーリィはレオナルト=ヴィッダーが語っている間、幾度もツッコミを入れてやろうと思っていたが、ついにそれも叶わなくなる。全ては自分ことアイリス=クレープスのためにレオナルト=ヴィッダーは仕方なくやったことなのだと理解する。

「その……あの、何と言ったら良いのかわからないけど……。大変だったのね、レオン……」

「ああ。今回、俺は余りにも失ったモノが多すぎた。だが、それでも国王様が求める物のひとつは手に入れることが出来た。あとひとつだ。あとひとつあれば、俺はアイリスを手に入れれる……」

 レオナルト=ヴィッダーは今や、ひとりでは満足に普段の生活をおこなうことも出来ない身体になってしまっていた。クルス=サンティーモがいなければ、レオナルト=ヴィッダーはとうの昔に、ひとり、この宿屋の一室で餓死していたことだろう。こうなってしまったレオナルト=ヴィッダーの介護を買ってでてくれているクルス=サンティーモに頭が下がる思いのアイリス=クレープスであった。

「クルス様。今の今までレオン様を介抱していただき、ありがとうございます。これからは、わたしがレオン様の手足となります」

「と、とんでもないのですゥ! 騎士様にレオン様の下の世話をさせるわけにはいかないのですゥ!」

 下の世話と聞き、リリベル=ユーリィはますます渋面になってしまう。そこまでレオの容態が悪いのかと考えてしまう。車椅子を使った生活をしている以上、排泄行為も介助が無ければ出来ないのかと。しかし、それでもリリベル=ユーリィには覚悟が出来上がっていた。

「わたしは下の世話くらいでめげるような女ではありません。レオン様のモノなら、口に含んでしまっても構わない。そう宣言します」

 リリベル=ユーリィは褐色のダークエルフの騎士としての矜持を語ってみせる。今にも足が折れてしまいそうなおんぼろの椅子から立ち上がり、無い胸を張って、鎧の胸部部分に右腕を当ててみせる。この部屋に集まる面々は騎士然とした、彼女におお……と感嘆の声をあげてみせる。

「いやあ、リリベルくんは立派に育ちました。いやまあ……、先生が育てたわけじゃないんですけど。では、リリベルくん。クルスくん共々、レオナルトくんのお世話をお願いします」

「ええ。言われなくても、それはわたしの役目ですもの。わたしリリベル=ユーリィは、レオナルト=ヴィッダー様の盾と剣になります。クルス様、改めて、よろしくお願いいたします」

 リリベル=ユーリィはそう言うと、クルス=サンティーモに対しても左胸に右手を当てたまま、深々とお辞儀をする。その儀式ばったお辞儀を嫌ったクルス=サンティーモはフルフルと強めに頭を左右に振り

「様づけは余計なのですゥ。クルスと呼び捨てで良いのですゥ、リリベル様」

 この返答をおかしく思ったリリベル=ユーリィはクスッと軽く笑ってしまう。男の娘というモノが良く理解出来ていないリリベル=ユーリィであったが、所詮はおちんこさんがついた生物であることには変わりない。その点、自分はレオの恋人だという揺るぎない自負があり、こんな男か女か分類しずらい生物に負けるわけないと、この時点では思っていた。

 堂々と無い胸を張るリリベル=ユーリィに対して、キョトンとした顔つきのクルス=サンティーモであった。何故にリリベル=ユーリィが鼻高々なのかがすぐに理解できないクルス=サンティーモであったが、これは男の娘と女の戦いであることを数分後には察するに至る。

(うゥ……。強力なライバル出現ってことなのですね。でも、ぼくだって負けていられないのですゥ!)

 クルス=サンティーモはレオナルト=ヴィッダーが為すべきことを為した後に、自分は第二夫人辺りに収まれれば良いと考えている。しかし、自分はあくまでもおちんこさんつきの生物だ。ここで、褐色肌のダークエルフがまさにダークフォースとして現れたことに危機感を募らせることとなる。レオナルト=ヴィッダーの嫁の順位として、第1位はアイリス=クレープスであることは揺るぎない。

 そして、そこにいきなり食い込んでこようとしている存在がリリベル=ユーリィであった。クルス=サンティーモとしては、これほど面白くない話は存在しない。リリベル=ユーリィは今日出会ったばかりのヒトである。そんな彼女のどこにレオナルト=ヴィッダーの第二夫人の座を射止める資格があるというのだ? とばかりにクルス=サンティーモはレオナルト=ヴィッダーの右腕に自分の両腕を絡める。

 そんな彼? の態度にもちろんムッとなったのがリリベル=ユーリィである。彼女は明らかに自分に喧嘩を売ってきているクルス=サンティーモに対して、目力めぢからで屈服させようとする。しかし、そんなふたりのやり取りにまったく気づきもしないレオナルト=ヴィッダーは、やっとのことで手に入れた天使の嬉し涙が入ったポーションの瓶をふところから3つ取り出し、料理の皿で手狭なテーブルの上に乗せて、フィルフェン=クレープスに見せる。

「ほうほう……。これが天使の嬉し涙ですか……。でも、あれれ? 天使の嬉し涙って、液体状でしたっけ??」

 フィルフェン=クレープスがポーションの瓶をひとつ手に取り、それを後ろに控える白衣の者に手渡す。それを手渡された白衣の者も首を傾げる。フィルフェン=クレープスはひそひそと耳打ちしてくる白衣の者に対して、これはすごいですね……と息を飲んでいる。その様子を見ていたレオナルト=ヴィッダーは怪訝な表情に変わる。

「まさか、俺は偽物を掴まされたのか?」

「いやぁ……。これはこれですごく貴重なモノではあるのですが……」

 フィルフェン=クレープスは決して気落ちしないようにと断った後、レオナルト=ヴィッダーが手に入れたモノが何なのかを説明しだす。しかし、レオナルト=ヴィッダーは思わず、車椅子からずり落ちそうになってしまう。

「ははっ……。天使の嬉し涙じゃなくて、『嬉ション』って、どういうことだよ!?」

「いやはや。確かに手に入れにくいモノではあることには変わらないのですが、なんで『嬉ション』を手渡してきたんでしょうね? 言わば、これは『甘露』なんですよ。不老不死の薬を作るための材料とも言われているシロモノです……。貴重さで言えば、天使の嬉し涙と比較しようがないのですが……」
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