【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第8章:地上の楽園

第2話:エクレアの名乗り出

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 レオナルト=ヴィッダー一行が青銅製の戦士たちと出くわしたのは、森の真っただ中だというのに、開けた場所であった。平らな石が草原に敷き詰められており、石畳による闘技場を思わせる造りであった。そこに青銅製の戦士たちが立ち並び、レオナルト=ヴィッダーたちと問答を繰り返していたのだ。そして、レオナルト=ヴィッダーがいつも通りに神から与えられた試練に抗いを見せたと同時に青銅製の戦士たちは武器を手に取り、その闘技場の上へと登ったのだ。

「さあ、誰が最初にワレラを打ち倒してクレルノカ? ワレラは誰からの挑戦も受けヨウゾ」

 青銅製の戦士たちのリーダーがそう言ってくるのを受けて、レオナルト=ヴィッダーたちは円陣を組む。そして、誰が石畳製の闘技場の上にあがるのかと相談し始める。候補としては、デーブ=オクボーンとリリベル=ユーリィの両名である。しかし、デーブ=オクボーンはここまでの道中、道なき道を切り開いてきたために、体力を消耗しきっている。ここで怪我でもされたら、この後が大変になる。そういう理由から、皆の視線はリリベル=ユーリィに集中することとなる。

「あっ。リリベルさ~ん。あたしでも構いませんよ~? あたし、こう見えても人並み以上に戦えるんです~~~」

 暗黙の了解でリリベル=ユーリィに決まりかけていたところに、エクレア=シューが名乗りをあげる。リリベル=ユーリィは無意識に眉間にシワをよせてみせるが、エクレア=シューは実りかけのスイカのようなおっぱいを右手でドンと叩いてみせて、任せてほしいと願いでる。リリベル=ユーリィは難しい顔つきになりつつ、指示を仰ぐためにもレオナルト=ヴィッダーに顔を向ける。

「まあ、良いんじゃねえか? 名乗り出たのがクルスなら止めるが、エクレアがここまで自信ありげに言うからには、勝算が十分にあるんだろう」

 リリベル=ユーリィもまた、レオナルト=ヴィッダーと同じ考えを抱いていた。なんと言っても、エクレア=シューはかの海皇の娘である。73番目の娘と言えども、海皇の血を引いているのだ。そんな彼女が人並み以上に戦えるというのであれば、今のうちにその実力を見極めておいたほうが得だと思った。この先、自分だけの力ではレオを護り切れない時がやってくるかもしれない。戦力は多いほど良いのだ。それが自分の恋敵だとしても。

「じゃあ、エクレア。ここは任せたわよ。大怪我だけはしないでちょうだい」

「はい、わかりましたのです~~~。秒殺してくるので、腰を抜かさないように注意してくださいね~~~」

 リリベル=ユーリィは『秒殺』してくるという言葉を聞き、カチンと頭にきてしまう。闘技場を占拠している戦士たちは見るからに身体全体が青銅製だというのに、それを秒殺してくると宣言するこの女狐に腹が立ってしょうがない。現に向こうはエクレア=シューの呑気な秒殺宣言が聞こえたらしく、青銅製の顔でありながらも、コメカミにビキビキと青筋らしきものを立てている。

 どこからどう見ても悪いのはエクレア=シューである。しかし、彼女はまるでその辺に散歩でも行ってくるといった感じの軽やかなステップを踏みながら、闘技場にのぼっていってしまう。

「さて、お待たせしたのです~~~。か弱い女性ですが、どうかお手柔らかに全員でかかってくるのです~~~」

 エクレア=シューはあくまでも青銅製の戦士たちを挑発し続けた。青銅製の戦士たちの青筋は浮かびあがるだけでは済まずに、ビキビキッ! とはっきりとした亀裂へと変わってしまう。青銅製の戦士たちは戦士道精神を捨てて、闘技場にあがってきたエクレア=シューを取り囲んでしまう。そして、彼らはその手に武器を持ったまま、じりじりとその包囲網を狭めていく。しかしながら、エクレア=シューはまったくもって、無頓着に詠唱を開始する。


 エクレア=シューが詠唱を開始すると同時に、彼女の足元の石畳に申し訳ない程度の水たまりが出来上がる。そして、その水たまりの底から彼女の瞳の色と同じ色をしたターコイズブルーの宝石が先端にはまった魔法の杖マジック・ステッキが現出したのである。その魔法の杖マジック・ステッキは宙に浮いたまま、宝石から発する光を強めていく。光が強まると同時にエクレア=シューの身体の内側から海色の魔力があふれ出し、それがさざ波から津波へと変化するまで数秒程度しか時間を要さなかった。

 青銅製の戦士たちは、濃厚な密度を持つエクレア=シューの魔力の波を受け、後ずさりせずにはいられなかった。一歩、また一歩、海色の魔力押されて、物理的に彼女から距離を空けていく青銅製の戦士たちであった。しかし、たかが小娘に気圧けおされてばかりでいてたまるかと、青銅製の戦士Aが目に見えぬ濁流に向かって、前へ前へと歩を進めていく。

 しかし、他の青銅製の戦士B~Fの目には驚愕の光景が映ることとなる。なんと、青銅製の戦士Aが波に洗われるかのように、その青銅で出来た身体をボロボロに崩れさせ始めたのである。最初は身体の表面にある汚れた部分だけが洗い流されていた。しかし、エクレア=シューとの距離を縮めれば縮めるほどに、長年において付着した汚れだけでなく、青銅製の戦士Aが着る青銅製の全身鎧フルプレート・メイルまでもがボロボロに風化していく。

 この時点でエクレア=シューは自分の身から放たれる魔力を実際の物質へと変換してはいなかった。ただ、その身から溢れる海色をした魔力の波だけで、青銅製の戦士Aの身体全体が粉々のバラバラにしてしまったのだ。そうしたというのに、彼女はさも準備運動が終わったとばかりにブルーターコイズが先端に取り付けられた魔法の杖マジック・ステッキをその両手で握り、戦闘の構えを取る。

 青銅製の戦士B~Fはたまったものではなかった。眼の前の小娘が魔術のひとつでも使うその前段階だけで、自分たちの戦友とものひとりを砕いてしまったことに戦々恐々せんせんきょうきょうとなってしまう。青銅製の戦士B~Fは戦いを続行するか、それともおめおめと逃げ出すかの二択を迫られることとなる。

 だが誰一人、青銅製の戦士たちは逃げるという選択を選びはしなかった。青銅製の戦士B~Fは誇りを大事にした。その手に持つ武器を振り上げて、小娘に向かって振り下ろす。しかし、その凶刃は決してエクレア=シューを傷つけることは出来なかった。海色の魔術障壁マジック・バリアがエクレア=シューを包み込むように展開されており、青銅製の戦士たちが振り下ろした5重撃の全てが受け止められることとなる。

 そして、その5重撃の衝撃を受け止めきった海色の魔術障壁マジック・バリアは、受けた衝撃を鋭い棘へと変換し、障壁の外側へと発散させる。発散された棘エネルギーは真っ直ぐに青銅製の戦士B~Fに向かっていく……。
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