【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第9章:海皇の娘

第5話:ホトケのレオナルト

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 レオナルト=ヴィッダーが緋だるまになり、草地の地面に身体を擦り付けながら転げまわる。しかし、そんなことをしても無駄だと言わんばかりにレオナルト=ヴィッダーの身体を覆う緋色の炎はレオナルト=ヴィッダーをますます焼いていく。見かねたエクレア=シューが地面に転がっていたターコイズブルーの宝石が先端にはめこまれた魔法の杖マジック・ステッキを拾い上げ、近くの池から大量の水を操作し、その全てをレオナルト=ヴィッダーの頭上から降り注ぐ。

「うっぷ、うっぷ! 火責めの次は水責めかっ! 神よっ! レオナルト=ヴィッダーに艱難辛苦を与えたまえっ! うっぷ、うっぷ!!」

 レオナルト=ヴィッダーは天から降り注いでくる水柱によって、今度は溺れ死にそうになる。しかし、頭から水をどれだけかぶろうが、身体からの熱は引いていくことはなく、レオナルト=ヴィッダーは熱さと冷たさを同時に味わうこととなる。見かねたリリベル=ユーリィはエクレア=シューにレオナルト=ヴィッダーに向かって水を放射するのを止めさせる。

「でも~~~。火責めよりも水責めのほうがまだ苦しみは楽だと言われているのです~~~」

「た、確かにそう言われてるけど、緋喰い鳥様がレオを焼き殺すとはどうしても考えられないの。一時的に塗炭の苦しみを味わうかもしれないけど、倍々ゲームでレオを苦しませるのはやめましょ!?」

 エクレア=シューとしては、善意100%でレオナルト=ヴィッダーに池の水をぶち当てている。しかし、その善意こそがレオをさらに苦しめていると思ったリリベル=ユーリィはエクレア=シューを止めに入ったのだ。エクレア=シューはとことん渋い表情で、いた仕方ないといった感じでレオナルト=ヴィッダーへの池の水の放射を止める。普段はリリベル=ユーリィの言うことを快諾することはないエクレア=シューであったが、レオナルト=ヴィッダーを苦しめるのは本意ではないということで、リリベル=ユーリィの言葉に従うこととなる。

「クッ……。身を焼くほどの熱さに慣れてきた……。存外、気持ち良いものだな。痛みに身を委ねるってのは……」

 レオナルト=ヴィッダーは何かを悟ったのか、座禅を組みだし、まるでホトケ様のように両腕の構えを取る。デーブ=オクボーンはヒクヒクと頬を引きつらせ、緋だるまとなりながもホトケ様の構えを取り続けるレオナルト=ヴィッダーにドン引きする他無かった。

「心頭滅却すれば、緋もまた涼しってやつなのか?」

「ぼ、ぼくの顔を見て、問いかけるのはやめてほしいのですゥ……。レオン様は時折、マゾ発言しますけど、これはさすがにぼくにも理解しがたい光景なのですゥ……」

 ドン引きしつつも、心配をするという高度な態度を取らざるをえないデーブ=オクボーンとクルス=サンティーモであった。しかしながら、存外、レオナルト=ヴィッダーは緋だるまになりながも涼し気な表情でホトケ様の構えを取り続けている。レオナルト=ヴィッダーから少しだけ距離を取っているリリベル=ユーリィたちは、彼自身が平気ならそれでいいのか? と怪訝な表情になりながらも、今の状況を受け入れる他無かった。

 ホトケ様の構えを取り続けるレオナルト=ヴィッダーは緋の色を吸収しはじめる。段々と緋だるま状態が解けていき、レオナルト=ヴィッダーは身体から陽炎を立ち昇らせるに至る。レオナルト=ヴィッダーはまるでサウナ部屋に長時間居たかのように全身から気持ち良い汗を流していた。

「ああ、気持ち良い。これがデドックスってやつなのかなあ~?」

 レオナルト=ヴィッダーは身体に溜まった老廃物が汗と共に一緒に流れ落ちていく感覚にとらわれる。最初、レオナルト=ヴィッダーが身体全体から噴き出していた汗の色は、真っ黒なアブーラのような色をしていた。しかし、老廃物を出し切った後に流れるのは、まるで青春を力いっぱいその身で駆け巡ったかのようなさわやかな汗に変わっていたのだ。

 しかしながら、それでもレオナルト=ヴィッダーの身体からは異臭を通り越して、腐臭が発散されていた。レオナルト=ヴィッダーを取り囲む面々は、思わず、レオナルト=ヴィッダーを中心として流れてきた黒い汗を踏まないように注意した。彼女らがそのような反応を示すのも当たり前であった。アブーラのように黒い汗は草地の地面を強酸でけがすように、ジュブジュブと不快な音を立てて、侵略を開始していたのだ。

 そんなものに足先と言えども触れてたまるかと言った感じで、リリベル=ユーリィたちはますますレオナルト=ヴィッダーから物理的に距離を空けていく。それによって出来上がった空間に緋喰い鳥がのっそりと首級くびを突っ込み、クチバシでアブーラのような黒い汗をついばみ、地面からそれを丸ごと一気に剥がして、次々とそれを自分の胃の中に流し込んでしまう。

「フム……。やはりワレの神力ちからをもってしても、根本的な解決には至らぬ味をシテオルナ。そこの若造ヨ。暴力に頼らざるをえない身であろうことは容易に想像がツク。しかし、出来るだけ生き延びて、ワレとコッシロー=ネヅが喜ぶ結末を迎えるノダゾ」

 緋喰い鳥はそう言うと、地面に散らばっている自分の羽根をクチバシでひょいひょいと拾い上げ、蒼髪オカッパの女の子のような男の娘に抱きかかえさせる。クルス=サンティーモは押し付けられたそれを落としてしまわぬように必死になってしまう。それもそうだろう。緋喰い鳥はわざわざ、クルス=サンティーモの身の丈ほどにありそうな大きな羽根を見繕って、拾い上げて渡したからだ。クルス=サンティーモは柔らかな緋色の羽根に埋もれて後ろへ倒れてしまいそうになるのを必死に我慢する。

 レオン様がこの先、何かあれば、この緋色の羽根がどうにかしてくれると思ったからだ。こんな貴重な回復アイテムに傷ひとつつけてはならぬと、クルス=サンティーモは抱えている緋色の羽根を懸命に抱え込む。

「おいおい、クルス。無茶すんなって。おいらが代わりに持ってやるっての」

「それはダメダ。貴様らの中で一番に純心ピュアな者にワレの緋色の羽根を委ねたノダ。賢明なお前たちなら、この言葉の意味、すぐに理解できるでアロウ?」

 緋喰い鳥は決まって、こちらの知性と見解の深さを試してくる物言いであった。しかしながら、今回の謎かけの難易度はかなり低いほうであり、レオナルト=ヴィッダーを取り囲む面々はクルス=サンティーモが所持者として選らばれた理由をあっさりと納得してしまう。

「そうね。エクレアに持たせたら、すぐに真っ黒に染まりあがりそうだもんね」

「ひっどいのです~~~。いっつもあたしのレオンに好き好きビームを放っている煩悩の塊のリリベルさんだけには言われたくないのです~~~」

「た、確かにそこは否定しづらいけど、あんたみたいにこれぞ女狐って感じのオーラは出してないわっ! エクレアのほうがよっぽど不適任者よっ!」
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