【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第9章:海皇の娘

第7話:仲良きことは美しきかな

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 レオナルト=ヴィッダーたちは浜辺近くの野営地に戻ると、早めの夕食にありつくことになる。行って帰っての往復だけでも8時間近くが経過しており、結局のところ、昼食用に準備していたサンドイッチなどを夕食と合わせて食べることとなる。クルス=サンティーモは自身の両腕で抱え込んでいた緋喰い鳥の羽根をどうしようか未だに悩んでいると、コッシロー=ネヅは尻に敷く布代わりにでもしておけばよいというとんでもないことを言い出す。

「コッシロー様ァ。緋喰い鳥さんとは因縁浅からぬ雰囲気だったから、あまりあの方のことをよく思ってないのはわかっているんですけどォ」

「チュッチュッチュ。だからこそ、尻に敷いとけばよいと言っているのでッチュウ。クルス。あいつの羽根を尻に敷いておくと、毎日、快便出来るでッチュウよ?」

「ちょっと……、コッシロー。食べてる時にそっち系の話はやめてもらえる? 一気に食欲が無くなったじゃないの……」

「女性の永遠の悩みと言えば、お通じなのでッチュウ。便秘が続けば、身体だけでなく、顔までむくんでいってしまのでッチュウ。僕は親切にもアドバイスをしているつもりでッチュウけど?」

 ああ言えば、こう言うの典型であるコッシロー=ネヅに皆は呆れ顔になってしまう。皆はデリカシーの欠片も無いコッシロー=ネヅから物理的に距離を空けてしまう。コッシロー=ネヅはうぐぐ……と唸り、次にはゴホンと咳をひとつする。

「ああ。わかった、わかった。今回ばかりは僕が悪かったのでッチュウ。おい、クルス。僕が魔術でその羽根のサイズを小さくしてやるから、魔法の荷物入れマジック・バッグにしまうのでッチュウ」

「最初からそうすれば良いんです~~~。コッシローちゃんはなんでそんなにへそ曲がりなの~~~?」

 コッシロー=ネヅは皆から無視されるのを嫌がり、結局のところ、クルス=サンティーモに助け舟を出す。コッシロー=ネヅは身体から紫色の魔力を漂わせ、前足を器用に動かす。紫色の魔力はクルス=サンティーモが両腕で抱え込んでいる緋喰い鳥の羽根に纏わりつき、見る見るうちに元の大きさの3分の1のサイズに縮ませる。クルス=サンティーモの顔はパッと華が開いたかのような笑顔になり、急いで肩紐付きの魔法の荷物入れマジック・バッグに8枚の緋喰い鳥の羽根をしまい込んでしまう。

「これでぼくもようやく夕食にありつけるのですゥ。コッシロー様、ありがとうございますゥ」

「うう。なんだかすっごく悪いことをしていた気持ちにさせられるのでッチュウ……。おい、クルス。お前はもう少し、心が汚れていたほうが身のためでッチュウ」

 クルス=サンティーモはコッシロー=ネヅに意地悪をされていたというのに、魔法の荷物入れマジック・バッグに緋喰い鳥の羽根をすんなりと収められたとたんに、ペコリとコッシロー=ネヅに頭を下げてみせる。こんなことをされれば、調子を崩すのはコッシロー=ネヅの方である。リリベル=ユーリィや、エクレア=シューのように憎まれ口には憎まれ口で返してくれたほうが、よっぽど気が楽なものだ。

 だが、クルス=サンティーモはどこまでも汚れを知らない純心ピュアさそのもので、感謝の念を伝えてくる。コッシロー=ネヅは前足で後頭部をボリボリと掻き、何かをごまかすように、お椀に盛られた海魚と野菜のごった煮をバクバクと食べ始めるのであった。

 リリベル=ユーリィとエクレア=シューはそんなコッシロー=ネヅの様子を見た後、お互いの顔を見合い、一度、プフッと軽く微笑みあう。この二人にとっても、クルス=サンティーモの純心ピュアさは羨ましいものであり、そんな彼女? に対して、嫉妬心を抱くこと自体がやましい行為な気がしてたまらない。

「仲良きことは美しきかな。これって誰が言った言葉だったっけかな?」

 デーブ=オクボーンが頭の中に思いついた言葉をそのままに言葉にする。誰しもが聞いたことがあるような言葉であり、それを一番最初に言い出したのが誰かがわからない。昔から人々の間で語られている言葉であろうと思っていると、意外な人物から回答を得ることとなる。

「それは、天使界の偉い天使様が言われた言葉なのですゥ。天界には多くの天使が住んでいるのですが、その中でも天使階級第2位に位置するラファエル様の御言葉なのですゥ」

 クルス=サンティーモの解説では、大天使ラファエルが地上の様子を水鏡を通して、のぞき見をしていると、とある森、とある湖のほとりで、若いハイエルフとダークエルフが仲良く歌を唄い合い、互いの頭に花冠と草冠を乗せ合っていたのを見たのだそうだ。

 そして、彼女らはあられもない姿になり、互いの身体をついばみあっていた。それを微笑ましい表情でのぞき見をしていたラファエルは同僚のミカエルに何か面白いものでも見ているのか? と問われたのだと。

 その時に、ラファエルはごまかすかのように『仲良きことは美しきかな』という名言を残しながら、ミカエルにのぞき見がバレないようにと水鏡を手でかき混ぜて、自分が見ていたものをミカエルが見れないようにしてしまったのだと。

「ようは百合百合しいものを見ていたラファエル様が、こんなのミカエル様に見せられるわけがねーーー! ってことで、ごまかしたんです~~~?」

「そういうことらしいのですゥ。ぼくはウルト様からそう聞かされていますゥ。本当のところはどうなのかはわからないですが、デーブさんの先ほどの言葉はラファエル様が起源っぽいんですゥ」

 皆はなるほど……と納得せざるをえなかった。これがおっさん同士のむつみ合いから取られた言葉ではなかっただけマシだと思うしかなかった。おっさん同士がそういう関係なのが悪いわけではない。ただ、絵面が汚いというだけだ。クルス=サンティーモのような可愛い男の娘同士がむつみ合いをしているのなら、好意的に捉えることはなんとか出来る。しかし、おっさんはおっさんであり、その当時のことを夢想するにしても、おっさんに結び付けるのはキツイものがあった。

「チュッチュッチュ。天界は基本、平和ゆえに、地上のもめごとを水鏡を使ってのぞき見するのが普通でッチュウから、案外、クルスの言っていることは、そのままの通りに受け取っていっかもしれないのでッチュウ」

「そういうものなの? じゃあ、今、わたしたちが談笑しながら、ごはんを食べているところを、天使たちはのぞき見してかもってこと?」

 リリベル=ユーリィが興味深そうに天使たちの普段の行動について、コッシロー=ネヅに尋ねてみる。コッシロー=ネヅはいつも通り、チュッチュッチュと不敵な笑い声をあげつつ

神々の黄昏ラグナロクの時に、神々は地上の生物たちを巻き込んだせいで、あわや、世界の存在そのものが崩壊の危機に陥ってしまったのでッチュウ。奴らはそれを猛省し、地上への積極的な介入をしないことを約束し合ったのでッチュウ。だから、僕たちが奴らの監視対象になろうが、あちらからはそうそう手を出せないから、安心すると良いのでッチュウ」
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