【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第11章:自由を縛る鎖

第4話:棒枯らしのマリア

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 それもそうだろう。レオナルト=ヴィッダーにはすでに固定の相手が居るように見えたからだ。ショートパンツ姿の女の子に見間違えるほどの蒼髪オカッパの可愛い男の娘がべったりレオナルト=ヴィッダーにくっついていたのだ。クルス=サンティーモはレオナルト=ヴィッダーにとっての厄除けのお守りとなっていたのだ。

 立ちんぼをしている女性がちらりとレオナルト=ヴィッダーたちを見ることは見るが、すぐに興味を失くし、この夜更けに向かっていく時間帯に立ちんぼ目当てでうろついている男性へ声をかけていく。

 オールドヨークはウィーゼ王国の首都ということもあり、ひとの出入りが激しい。そういった街には必ず娼館が並ぶ一画が存在する。オールドヨークは首都なだけはあり、娼館区画はみっつもあった。しかし、娼館区画はそれぞれに娼婦同士のこと細やかなルールが存在している。女性だけの縦社会がそこにあり、そういった縦社会を毛嫌いする娼婦は娼館区画にお世話になることはせずに、自分の足で客を取る。

 そういうった娼婦たちをまとめて『立ちんぼ』と称するのが一般的であった。しかしながら、娼館区画であれば、客とのトラブルを娼館の偉いヒト、黒い服を着ているヒトがその問題を解決してくれるように動いてくれる。

 立ちんぼをしている娼婦は自分を守ってくれる存在は一切無い。娼婦でありながら、客を選ぶ自由を得る代わりに、危険度を自ら高めるという矛盾と戦わなければならない存在であった。

 桃源郷こと、ヴァルハラ育ちのクルス=サンティーモは『立ちんぼ』について、レオナルト=ヴィッダーよりも遥かに知識を持っている。それゆえに立ちんぼをしている娼婦たちの身を案じてしまうが、それでも何か声をかけることは一切しなかった。娼館勤めをしている男の娘と、立ちんぼをしている娼婦は決して相いれない存在であるのを十分理解しているクルス=サンティーモである。

「レオン様。そろそろ宿屋に戻りましょうかァ。この時間帯に外を出歩いていると、トラブルが向こうからやってきそうですしィ」

 クルス=サンティーモは周りに居る立ちんぼからの視線がだんだん鋭いものに変わってきているのを感じ取る。客が上手く取れない立ちんぼたちからの恨みにも似た視線を感じつつあったのだ。彼女らは客を取れなければ、身銭を切って宿屋に泊まらなければならない。時間が経てば経つほどに苛立ちが募って当然なのだ。

「あんだよっ! 抱く気はあっても宿代はだせねーってんのかっ!」

「ちっ! 処女でもない、さらには肉付きも良くないガキを好き好んで抱くやつがいねえってから、誘いに乗ってやったっていうのに生意気言ってんじゃねえぞっ!」

 宿屋が立ち並ぶ道で立ちんぼのひとりと客が口論を始める。クルス=サンティーモはしまった……と思うしかなかった。こういうことはしょっちゅう起こりえるのだ、立ちんぼ界では。言い争っている娼婦は自分とあまり年齢が変わらない半猫半人ハーフ・ダ・ニャンの女性であった。その歳で何かあってこその娼婦なのだろうが、客が喚き散らすように、貧相な身体つきである。

 なんだかんだと言って、クルス=サンティーモは少なくとも1日2食は最低限、確保できているために女の子と間違えそうなくらいの男の娘の肉付きである。しかし、口論となっている年若すぎる娼婦は喰う物にも困っているといった感じで、華奢な体つきである。

 それなのに、娼婦っぽいぶかぶかな服装をしているために、その身体の貧相さがますます顕著となっている。

「おい……。乱暴はやめろ。その娘に宿代を出してやれ。それがルールってもんだろ」

「なんだてめえ!? 俺がシャボネット商会の若頭と知っての介入か!?」

 明らかにチンピラといった風貌の男がレオナルト=ヴィッダーに食って掛かる。シャボネット商会と言えば、ウィーゼ王国の3大商会のひとつに数えらえるほどの規模を有する商会である。しかし、こんなチンピラ風情が由緒正しきシャボネット商会の若頭とはどうしても思えないレオナルト=ヴィッダーであった。レオナルト=ヴィッダーは視線に込められる力を高めていき、チンピラをじっと睨みつける。

「うっ……。覚えてやがれよっ! てめえの顔はしっかり記憶させてもらったぜ!?」

 チンピラがチンピラらしい台詞を吐き捨て、早足でその場から去っていく。クルス=サンティーモはホッと胸を撫でおろすしかなかった。チンピラがシャボネット商会の幹部とはクルス=サンティーモも思ってはいなかった。せいぜい、構成員のひとりであり、さらには下っ端も下っ端であろうと予想していたのだ。そして、虎の威を借りるためにも『シャバネット商会の若頭』と言ってみせたのだろうと。

「おいおいおい! てめえ、何しやがる! あたいの客が逃げちまったじゃねえかっ!」

「なんだ? 追っ払ってやったっていうのに、今度は俺と口論するつもりか?」

「うるせえっつってんだ! こちとら、生きるか死ぬかで客を取ってんだよっ! 男の娘を侍らせている御身分のてめえにゃ、わからねえだろうがなぁ!?」

 貧相な体つきの女性が次に標的にしたのは、レオナルト=ヴィッダーであった。レオナルト=ヴィッダーは善意で、質の悪い客を追っ払ってやったというのに、けたたましく文句を言われる側にされてしまう。レオナルト=ヴィッダーは眉間にシワを寄せざるをえなかった。

「クルス。今、金はいくらか持ってきているか?」

「ふぁ、ふぁい!? 多少なりとも持っていますけどォ……。もしかして、この娘を買うつもりなんですゥ!?」

「ああ。クルス。お前も付き合え。俺が教育し直してやる!」

 レオナルト=ヴィッダーはこういった手合いを我慢できない性格であった。ヒトに世話になったら、まず最初は礼を言う事が肝要だ。それなのに、今にも呪い殺さんとばかりに睨みつけてくる年若い娼婦をこてんぱんにしてやろうという気になってしまってしょうがない。まさに売り言葉に買い言葉であった。

「おい、3Pの代金は支払ってやるから、俺の相手をしろ。俺は性欲を軽い散歩で発散させようとしていたが、気が変わった」

「けっ! 男の娘だけじゃ満足できないってか。こりゃ、あんたもハズレを引いたんだろうねえ? 見るからに腕がなさそうだもんなぁ!?」

 年若い娼婦はレオナルト=ヴィッダーだけでなく、クルス=サンティーモにも喧嘩を吹っ掛け始めた。クルス=サンティーモが可愛いだけの男の娘で、満足に男をイカせる性技など持っているはずが無いとタカを括ったのである。そして、それが間違いであったことを、十数分後には知ることとなる。

「あたいの名はマリア。マリア=アコナイト。『棒枯らしのマリア』って字名あざな持ちさっ! さあ、金だけじゃなく、スペル魔も出し切ってもらうぜ!?」
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