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第14章;レオのかつての親友
第9話:計算違い
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レオナルト=ヴィッダー一行を乗せた幌付き荷馬車はナンクルヒル産の馬6匹に引かれて、北へ爆走し続けた。農業都市:ナンクルヒルから出発し、ふたつの都市を走り抜けること5日後、ついにレオナルト=ヴィッダー一行の眼には、ミシガン王国の首都:ジカーゴをグルっと取り囲む高さ10ミャートルの外壁が地平線の向こうに映し出されることとなる。
「チュッチュッチュ。旅は宿屋のベッドに足を放り投げるまで、終わりじゃないでッチュウ! さあ、ジルバ=フリューゲルが仕掛けてくるなら、ここを置いて、他には無いのでッチュウ!」
コッシロー=ネヅはデーブ=オクボーンの剃りあげた頭の上で、自分たちを上空30ミャートルの高さから監視しつづけるジルバ=フリューゲルを睨みつけていた。首都;ジカーゴの中にまで魔物を引き付けてくるのは難しいはずだと。ならば、ジカーゴの大外をグルっと取り囲んでいる外壁に設置された門に飛び込む前に、決着をつけてくるのは自明の理であった。
コッシロー=ネヅの予想通り、グリフィン2頭のうち1頭が大空から幌付き荷馬車に向かって、斜めに急降下してくる。コッシロー=ネヅはエクレア=シューに海色の魔術障壁を張るように指示を出す。
「チュッチュッチュ! エクレア=シュー。ジカーゴの外壁まで残り約5キュロミャートルでッチュウ。そこまで魔術障壁を幌付き荷馬車にかけつづけれるでッチュウか?」
「無理なのです~~~。ジルバ=フリューゲルの雷光を弾き続けるために必要な魔力を計算すれば、持続時間はもって3分ほどなのです~~~」
幌付き荷馬車は現在、時速40キュロミャートル毎時ほど出ている。エクレア=シューが3分しか魔術障壁を維持出来ないとすれば、ジカゴを取り囲む外壁まで残り2キュロミャートルを残して、レオナルト=ヴィッダーたちは空からの攻撃に無防備となってしまう。
コッシロー=ネヅは数秒ほど考え込む。3キュロミャートル進んだ後、残り2キュロミャートルをどうやり過ごすか。空からの攻撃への対応に迷うコッシロー=ネヅの尻尾を掴む人物が居た。その者は黒を基調とした部分鎧に身を包んでいた。
「コッシロー。考え方を180度改めるんだ。逃げるんじゃない。ここで決着をつけておくんだ。今まで逃げに逃げてきたのは、俺の体調が少しでも良くするための時間稼ぎだろ?」
「チュッチュッチュ……。ある一方ではレオンの言う通りでッチュウけど、もう一方は純粋にレオンに無茶してほしくなかったのでッチュウ」
「ははっ……。いつも手厳しいコッシローなのに、明日は雨じゃなくて槍でも振ってくるのか? しかし、その明日を迎えるためにも、俺が出張らなきゃいけないんだろ? 違うか?」
6匹の馬に引かれる幌付き荷馬車は海色の魔術障壁に包まれているというのに、ジルバ=フリューゲルはグリフィンに跨り、雷光を大剣から放ち続けた。幾百もの稲光が幌付き荷馬車だけでなく、周りの乾いた大地をも穿つ。幌付き荷馬車を中心として、轟音が鳴り響く。それと同時に砂埃が宙に舞い上がり、馬たちの視界は一気に不良となる。
しかし、ナンクルヒル産の馬は神経が図太いのか、轟音が鳴り響いても、眼の前が雷光でピカピカと光輝いても、その脚速を緩めようとはしなかった。グリフィンに跨り、大空を舞うジルバ=フリューゲルはチッ!! と盛大に舌打ちをする。馬は本来、大変臆病な動物だ。幾百もの落雷が一か所に集中すれば、図太い豚ニンゲンですら慌てふためくはずである。
ジルバ=フリューゲルはまずは馬の脚を止めようとしたのに、それが為されなかったことに切歯扼腕となる。
(チッ! チッ! チィィィッ!! なんで馬は脚を止めやがらねえ!? 何か俺様の知らない細工が施されているのか!?)
ジルバ=フリューゲルは3度目となる急降下からの落雷を降らせる。しかし、レオナルト=ヴィッダー一行を乗せた幌付き荷馬車はそのスピードを決して緩めなかった。ジルバ=フリューゲルが馬だと思っているのはまやかしで、実は合成獣が幌付き荷馬車を引いているのか? とすら思ってしまう。
しかし、ジルバ=フリューゲルが手に入れている情報では、レオナルト=ヴィッダー一行の中に魔物使いは居ないはずである。幻惑魔法を得意とするコッシロー=ネヅが、合成獣を馬に偽装しているのかと思っていたが、そうではなさそうなのだ。
しかしながら、ジルバ=フリューゲルの推測は半分当たっていた。確かにコッシロー=ネヅは幻惑魔法を使っている。合成獣を馬に仕立てているのでは無く、馬の目と耳に幻惑魔法を施していたのだ。今、幌付き荷馬車を引いている6匹の馬の目には、眼の前に穏やかな風が流れる牧草地帯が広がっているように見えていた。
そして、馬たちの気分を上げるために、どこか遠くから流れてくる軍の行進曲が馬たちの耳に届いていた。ジルバ=フリューゲルが創り出している地獄の蓋を開いたかのような光景と音は一切、幌付き荷馬車を引く馬たちに届いていなかったのだ。
そういったカラクリに気づかぬままに、ジルバ=フリューゲルは何度も幌付き荷馬車に向かって、落雷を仕向けた。都合6度目になる大空からの落雷攻撃を繰り出す。焦りを感じていたジルバ=フリューゲルの眼に黒い物体が飛び込んでくる。
その黒い物体を放ったのは、レオナルト=ヴィッダー本人である。レオナルト=ヴィッダーは御者台の方に身体を移動させ、上空から斜めに突っ込んでくるジルバ=フリューゲルに対して、左腕を真っ直ぐに突き伸ばす。突き伸ばされた左手の先から直径30センチュミャートルほどの黒い球体が生み出される。レオナルト=ヴィッダーは素戔嗚から呪力を引き出して、黒いエネルギーを創り出したのだ。
まるで大砲の口から弾が飛び出すかのように、レオナルト=ヴィッダーの左手の先に固定されていた黒いエネルギーの塊がジルバ=フリューゲルの方へとすっ飛んでいく。ジルバ=フリューゲルにとって、幌付き荷馬車から飛んでくる黒い塊は不意打ちも不意打ちであった。
ジルバ=フリューゲルはレオナルト=ヴィッダー一行が空からの急襲に対して、対抗手段を持ち合わせていないと思い込んでいた。レオナルト=ヴィッダーは左の腕先に装着した素戔嗚から黒い大蛇を生み出すことは知っており、その黒い鞭は生き物のように動くだけのシロモノだとタカを括っていたのだ。
しかし、レオナルト=ヴィッダーが大砲の弾のように黒いエネルギーの塊を大空に向かって連続的に放てるとなれば、話は違ってくる。ジルバ=フリューゲルは幌付き荷馬車から物理的に距離を空けざるをえなくなる……。
「チュッチュッチュ。旅は宿屋のベッドに足を放り投げるまで、終わりじゃないでッチュウ! さあ、ジルバ=フリューゲルが仕掛けてくるなら、ここを置いて、他には無いのでッチュウ!」
コッシロー=ネヅはデーブ=オクボーンの剃りあげた頭の上で、自分たちを上空30ミャートルの高さから監視しつづけるジルバ=フリューゲルを睨みつけていた。首都;ジカーゴの中にまで魔物を引き付けてくるのは難しいはずだと。ならば、ジカーゴの大外をグルっと取り囲んでいる外壁に設置された門に飛び込む前に、決着をつけてくるのは自明の理であった。
コッシロー=ネヅの予想通り、グリフィン2頭のうち1頭が大空から幌付き荷馬車に向かって、斜めに急降下してくる。コッシロー=ネヅはエクレア=シューに海色の魔術障壁を張るように指示を出す。
「チュッチュッチュ! エクレア=シュー。ジカーゴの外壁まで残り約5キュロミャートルでッチュウ。そこまで魔術障壁を幌付き荷馬車にかけつづけれるでッチュウか?」
「無理なのです~~~。ジルバ=フリューゲルの雷光を弾き続けるために必要な魔力を計算すれば、持続時間はもって3分ほどなのです~~~」
幌付き荷馬車は現在、時速40キュロミャートル毎時ほど出ている。エクレア=シューが3分しか魔術障壁を維持出来ないとすれば、ジカゴを取り囲む外壁まで残り2キュロミャートルを残して、レオナルト=ヴィッダーたちは空からの攻撃に無防備となってしまう。
コッシロー=ネヅは数秒ほど考え込む。3キュロミャートル進んだ後、残り2キュロミャートルをどうやり過ごすか。空からの攻撃への対応に迷うコッシロー=ネヅの尻尾を掴む人物が居た。その者は黒を基調とした部分鎧に身を包んでいた。
「コッシロー。考え方を180度改めるんだ。逃げるんじゃない。ここで決着をつけておくんだ。今まで逃げに逃げてきたのは、俺の体調が少しでも良くするための時間稼ぎだろ?」
「チュッチュッチュ……。ある一方ではレオンの言う通りでッチュウけど、もう一方は純粋にレオンに無茶してほしくなかったのでッチュウ」
「ははっ……。いつも手厳しいコッシローなのに、明日は雨じゃなくて槍でも振ってくるのか? しかし、その明日を迎えるためにも、俺が出張らなきゃいけないんだろ? 違うか?」
6匹の馬に引かれる幌付き荷馬車は海色の魔術障壁に包まれているというのに、ジルバ=フリューゲルはグリフィンに跨り、雷光を大剣から放ち続けた。幾百もの稲光が幌付き荷馬車だけでなく、周りの乾いた大地をも穿つ。幌付き荷馬車を中心として、轟音が鳴り響く。それと同時に砂埃が宙に舞い上がり、馬たちの視界は一気に不良となる。
しかし、ナンクルヒル産の馬は神経が図太いのか、轟音が鳴り響いても、眼の前が雷光でピカピカと光輝いても、その脚速を緩めようとはしなかった。グリフィンに跨り、大空を舞うジルバ=フリューゲルはチッ!! と盛大に舌打ちをする。馬は本来、大変臆病な動物だ。幾百もの落雷が一か所に集中すれば、図太い豚ニンゲンですら慌てふためくはずである。
ジルバ=フリューゲルはまずは馬の脚を止めようとしたのに、それが為されなかったことに切歯扼腕となる。
(チッ! チッ! チィィィッ!! なんで馬は脚を止めやがらねえ!? 何か俺様の知らない細工が施されているのか!?)
ジルバ=フリューゲルは3度目となる急降下からの落雷を降らせる。しかし、レオナルト=ヴィッダー一行を乗せた幌付き荷馬車はそのスピードを決して緩めなかった。ジルバ=フリューゲルが馬だと思っているのはまやかしで、実は合成獣が幌付き荷馬車を引いているのか? とすら思ってしまう。
しかし、ジルバ=フリューゲルが手に入れている情報では、レオナルト=ヴィッダー一行の中に魔物使いは居ないはずである。幻惑魔法を得意とするコッシロー=ネヅが、合成獣を馬に偽装しているのかと思っていたが、そうではなさそうなのだ。
しかしながら、ジルバ=フリューゲルの推測は半分当たっていた。確かにコッシロー=ネヅは幻惑魔法を使っている。合成獣を馬に仕立てているのでは無く、馬の目と耳に幻惑魔法を施していたのだ。今、幌付き荷馬車を引いている6匹の馬の目には、眼の前に穏やかな風が流れる牧草地帯が広がっているように見えていた。
そして、馬たちの気分を上げるために、どこか遠くから流れてくる軍の行進曲が馬たちの耳に届いていた。ジルバ=フリューゲルが創り出している地獄の蓋を開いたかのような光景と音は一切、幌付き荷馬車を引く馬たちに届いていなかったのだ。
そういったカラクリに気づかぬままに、ジルバ=フリューゲルは何度も幌付き荷馬車に向かって、落雷を仕向けた。都合6度目になる大空からの落雷攻撃を繰り出す。焦りを感じていたジルバ=フリューゲルの眼に黒い物体が飛び込んでくる。
その黒い物体を放ったのは、レオナルト=ヴィッダー本人である。レオナルト=ヴィッダーは御者台の方に身体を移動させ、上空から斜めに突っ込んでくるジルバ=フリューゲルに対して、左腕を真っ直ぐに突き伸ばす。突き伸ばされた左手の先から直径30センチュミャートルほどの黒い球体が生み出される。レオナルト=ヴィッダーは素戔嗚から呪力を引き出して、黒いエネルギーを創り出したのだ。
まるで大砲の口から弾が飛び出すかのように、レオナルト=ヴィッダーの左手の先に固定されていた黒いエネルギーの塊がジルバ=フリューゲルの方へとすっ飛んでいく。ジルバ=フリューゲルにとって、幌付き荷馬車から飛んでくる黒い塊は不意打ちも不意打ちであった。
ジルバ=フリューゲルはレオナルト=ヴィッダー一行が空からの急襲に対して、対抗手段を持ち合わせていないと思い込んでいた。レオナルト=ヴィッダーは左の腕先に装着した素戔嗚から黒い大蛇を生み出すことは知っており、その黒い鞭は生き物のように動くだけのシロモノだとタカを括っていたのだ。
しかし、レオナルト=ヴィッダーが大砲の弾のように黒いエネルギーの塊を大空に向かって連続的に放てるとなれば、話は違ってくる。ジルバ=フリューゲルは幌付き荷馬車から物理的に距離を空けざるをえなくなる……。
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