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第17章:襲来
第10話:獣・天使・悪魔
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紅玉眼の蒼き竜は胃の中に創り上げた真円の氷の塊を核として、口から巨大な氷柱を吐き出していた。そして、その氷柱で貫こうとしていたのは、ジカーゴの街から避難しようとしていた住人たちであった。紅玉眼の蒼き竜の紅い両目はますます不気味に紅く輝く。まさに『赤より紅い月』と表現して良い怪しさを醸し出していた。
南の門に殺到している住民の数は5万はくだらない。その5万人が一斉に宙を舞う姿を想像し、紅玉眼の蒼き竜はそれを成し遂げる前に愉悦で顔が歪んでしまう。そして、口の中に今まで以上に巨大な氷柱を創り終えた紅玉眼の蒼き竜はいよいよ、それを黒い蟻の群れへと発射する。
「なん……ダト!?」
紅玉眼の蒼き竜は巨大な顎を下へと下げて、巨大な氷柱を吐き出したのだが、自分の眼の前、数十ミャートル先で吐き出したばかりの巨大な氷柱が穴だらけになり、さらにはボロボロになったその氷柱にイバラが巻き付き、一気に粉砕されてしまう。紅玉眼の蒼き竜はそれを為した存在に紅い眼を向ける。
「黒い獣……。それに紅い鎧に身を包む天使ダト!? ミカエルとその従者が天界からやってきたダト!?」
紅玉眼の蒼き竜は前方100ミャートルの空中に黒い獣と紅い全身鎧を着込み、背中から天使の羽根を生やしている人物を睨みつける。しかしながら、大空を飛んでいる紅い天使の羽根の枚数がたった2枚であり、天界の守護者であるミカエルではないと気づく。
(ミカエルは6枚羽根の天使ダ……。そして、彼女が乗り物としている天使は黄金色のケルビム……。こいつらはいったい何者……ダ?)
紅玉眼の蒼き竜は空中に浮かぶ黒い存在と紅い存在に対して訝しむ視線を送る。天界の住人が地上の出来事に介入してくることは、神々の黄昏を経た今の時代では考えられないことであった。そう考えれば、眼の前でフワフワと浮いているふたつの存在が、まったく違うモノであろうことに気づく。
そして、黒い存在の方は紅玉眼の蒼き竜の額にある古傷にズキズキと痛みを与えてくる。そのことから、紅玉眼の蒼き竜は、今、自分と相対している者たちのひとりは、かつて、自分に痛手を与えた人物であることに気づく。
「会いたかったゾ……。我に久方ぶりの痛みを教えた存在ヨ……。我は決して、お前を許さヌ……。我に傷をつけた償いをしてもらおうカ!!」
紅玉眼の蒼き竜は空気を震わせて、口から怒号を放つ。彼の怒号が冷えた空気が振動させる。それと同時に紅玉眼の蒼き竜の首級の周囲に大小さまざまな大きさの氷柱が創り出される。その氷柱群が一斉に黒い存在へと飛んでいく。
「レオ、来たわよっ! 間抜けに撃墜されないでねっ!!」
「ああ……。リリベルこそ、巻き込まれるんじゃねえぞっ! クルス、リリベルをしっかり誘導してくれっ!!」
「わかりましたのですゥ! リリベル様、少々、荒く飛びますけど、酔わないように注意なのですゥ!」
黒を基調とした全身鎧を着込むレオナルト=ヴィッダーが何もない空中を四本足で蹴り飛ばしながら、自分の身に向かって飛んでくる氷柱群を次々と避ける。
続けて、紅を基調とした全身鎧に身を包むリリベル=ユーリィの背中に乗り、彼女の細い胸板にしっかりと両腕を回しているクルス=サンティーモが背中に生えている二枚の天使の羽根をパタパタと羽ばたかせ、先ほどまでいた位置よりも、さらに上空へとリリベル=ユーリィの身体を運んでいく。
紅玉眼の蒼き竜は氷柱群をかいくぐり、自分に接近してくる黒い存在は囮だと考えた。自分の注意を一身に引き受けることで、さらに上空へと舞い上がった紅い全身鎧に身を包む天使に奇襲をさせるつもりなのだと予想する。それゆえに紅玉眼の蒼き竜は紅い眼の端で紅い天使の行方を追いつつ、それに向けて、針のように細い氷柱群を次々と打ち出す。
しかしながら、クルス=サンティーモはリリベル=ユーリィを抱え込んでいるというのに、リリベル=ユーリィの体重を気にもしないといった感じで、空中を自由自在に飛び回る。迫りくる細い氷柱群をクルクルと回転しつつ、無軌道に飛び、紅玉眼の蒼き竜が放ってきた氷柱群のことごとくを回避してしまう。
蝿のようにすばっしこい紅い天使を眼の端で追っていた紅玉眼の蒼き竜は、チイィィ! と舌打ちせざるをえなかった。身体の正面でちょこまかと動く黒い存在はもちろんうっとおしいが、眼の端でうろちょろする紅い天使はそれ以上に厄介な存在となってしまっている。紅玉眼の蒼き竜はどちらから屠るか躊躇せざるをえなくなる。
黒い存在と紅い天使はどちらも囮であり、奇襲部隊であることを今更に知る紅玉眼の蒼き竜であった。それゆえに、どちらにも気をかけていなければならなくなる。しかし、紅玉眼の蒼き竜はもうひとつの存在がいることに未だに気づきもしなかった。
「魔術灯ォォォ!!」
その声が紅玉眼の蒼き竜の耳に届くや否や、直径1ミャートルほどの海色をしたオーブが自分の首級の周りに展開されていた。紅玉眼の蒼き竜がそれに気づくや否や、海色をしたオーブが弾けつつ、まばゆい光を散乱させる。不意打ちを喰らった紅玉眼の蒼き竜は思わず眼を細めてしまう。
「クッ! 我の眼をごまかす幻惑術ダト!? まさか、コッシロー=ネヅカッッッ!!」
「チュッチュッチュ。ご名答でッチュウ。さあ、ぼくの幻術とエクレア=シューの海色の魔力が込められた魔術灯はさぞ、目障りだろうでッチュウ!」
コッシロー=ネヅはエクレア=シューの首筋辺りに革製のベルトでグルグル巻きにされながら、引っ付いていた。彼は背中に生えている4枚の蝙蝠羽を巨大化させて、エクレア=シューを空中へと運んでいた。もちろん、幻惑術をフルに使用してだ。それゆえに、さしものの紅玉眼の蒼き竜も、コッシロー=ネヅとエクレア=シューの接近を許してしまう形となる……。
南の門に殺到している住民の数は5万はくだらない。その5万人が一斉に宙を舞う姿を想像し、紅玉眼の蒼き竜はそれを成し遂げる前に愉悦で顔が歪んでしまう。そして、口の中に今まで以上に巨大な氷柱を創り終えた紅玉眼の蒼き竜はいよいよ、それを黒い蟻の群れへと発射する。
「なん……ダト!?」
紅玉眼の蒼き竜は巨大な顎を下へと下げて、巨大な氷柱を吐き出したのだが、自分の眼の前、数十ミャートル先で吐き出したばかりの巨大な氷柱が穴だらけになり、さらにはボロボロになったその氷柱にイバラが巻き付き、一気に粉砕されてしまう。紅玉眼の蒼き竜はそれを為した存在に紅い眼を向ける。
「黒い獣……。それに紅い鎧に身を包む天使ダト!? ミカエルとその従者が天界からやってきたダト!?」
紅玉眼の蒼き竜は前方100ミャートルの空中に黒い獣と紅い全身鎧を着込み、背中から天使の羽根を生やしている人物を睨みつける。しかしながら、大空を飛んでいる紅い天使の羽根の枚数がたった2枚であり、天界の守護者であるミカエルではないと気づく。
(ミカエルは6枚羽根の天使ダ……。そして、彼女が乗り物としている天使は黄金色のケルビム……。こいつらはいったい何者……ダ?)
紅玉眼の蒼き竜は空中に浮かぶ黒い存在と紅い存在に対して訝しむ視線を送る。天界の住人が地上の出来事に介入してくることは、神々の黄昏を経た今の時代では考えられないことであった。そう考えれば、眼の前でフワフワと浮いているふたつの存在が、まったく違うモノであろうことに気づく。
そして、黒い存在の方は紅玉眼の蒼き竜の額にある古傷にズキズキと痛みを与えてくる。そのことから、紅玉眼の蒼き竜は、今、自分と相対している者たちのひとりは、かつて、自分に痛手を与えた人物であることに気づく。
「会いたかったゾ……。我に久方ぶりの痛みを教えた存在ヨ……。我は決して、お前を許さヌ……。我に傷をつけた償いをしてもらおうカ!!」
紅玉眼の蒼き竜は空気を震わせて、口から怒号を放つ。彼の怒号が冷えた空気が振動させる。それと同時に紅玉眼の蒼き竜の首級の周囲に大小さまざまな大きさの氷柱が創り出される。その氷柱群が一斉に黒い存在へと飛んでいく。
「レオ、来たわよっ! 間抜けに撃墜されないでねっ!!」
「ああ……。リリベルこそ、巻き込まれるんじゃねえぞっ! クルス、リリベルをしっかり誘導してくれっ!!」
「わかりましたのですゥ! リリベル様、少々、荒く飛びますけど、酔わないように注意なのですゥ!」
黒を基調とした全身鎧を着込むレオナルト=ヴィッダーが何もない空中を四本足で蹴り飛ばしながら、自分の身に向かって飛んでくる氷柱群を次々と避ける。
続けて、紅を基調とした全身鎧に身を包むリリベル=ユーリィの背中に乗り、彼女の細い胸板にしっかりと両腕を回しているクルス=サンティーモが背中に生えている二枚の天使の羽根をパタパタと羽ばたかせ、先ほどまでいた位置よりも、さらに上空へとリリベル=ユーリィの身体を運んでいく。
紅玉眼の蒼き竜は氷柱群をかいくぐり、自分に接近してくる黒い存在は囮だと考えた。自分の注意を一身に引き受けることで、さらに上空へと舞い上がった紅い全身鎧に身を包む天使に奇襲をさせるつもりなのだと予想する。それゆえに紅玉眼の蒼き竜は紅い眼の端で紅い天使の行方を追いつつ、それに向けて、針のように細い氷柱群を次々と打ち出す。
しかしながら、クルス=サンティーモはリリベル=ユーリィを抱え込んでいるというのに、リリベル=ユーリィの体重を気にもしないといった感じで、空中を自由自在に飛び回る。迫りくる細い氷柱群をクルクルと回転しつつ、無軌道に飛び、紅玉眼の蒼き竜が放ってきた氷柱群のことごとくを回避してしまう。
蝿のようにすばっしこい紅い天使を眼の端で追っていた紅玉眼の蒼き竜は、チイィィ! と舌打ちせざるをえなかった。身体の正面でちょこまかと動く黒い存在はもちろんうっとおしいが、眼の端でうろちょろする紅い天使はそれ以上に厄介な存在となってしまっている。紅玉眼の蒼き竜はどちらから屠るか躊躇せざるをえなくなる。
黒い存在と紅い天使はどちらも囮であり、奇襲部隊であることを今更に知る紅玉眼の蒼き竜であった。それゆえに、どちらにも気をかけていなければならなくなる。しかし、紅玉眼の蒼き竜はもうひとつの存在がいることに未だに気づきもしなかった。
「魔術灯ォォォ!!」
その声が紅玉眼の蒼き竜の耳に届くや否や、直径1ミャートルほどの海色をしたオーブが自分の首級の周りに展開されていた。紅玉眼の蒼き竜がそれに気づくや否や、海色をしたオーブが弾けつつ、まばゆい光を散乱させる。不意打ちを喰らった紅玉眼の蒼き竜は思わず眼を細めてしまう。
「クッ! 我の眼をごまかす幻惑術ダト!? まさか、コッシロー=ネヅカッッッ!!」
「チュッチュッチュ。ご名答でッチュウ。さあ、ぼくの幻術とエクレア=シューの海色の魔力が込められた魔術灯はさぞ、目障りだろうでッチュウ!」
コッシロー=ネヅはエクレア=シューの首筋辺りに革製のベルトでグルグル巻きにされながら、引っ付いていた。彼は背中に生えている4枚の蝙蝠羽を巨大化させて、エクレア=シューを空中へと運んでいた。もちろん、幻惑術をフルに使用してだ。それゆえに、さしものの紅玉眼の蒼き竜も、コッシロー=ネヅとエクレア=シューの接近を許してしまう形となる……。
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