【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第20章:東への帰路

第9話:一触即発

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 エクレア=シューは失礼ながらも、ソフィア=グレイプの頭のてっぺんから靴先まで舐めるように何度も視線を動かし、彼女が本当に女性なのかを確かめる。じっとりねっとり見られているソフィア=グレイプは苦笑する他無かった。

「貴女ほどにわたくしに関心を寄せてくる方も珍しいです。わたくしを女と知るや否や、興味を失うヒトが多いので……」

「普通は逆じゃないです~~~? 美少年の中身が女の子なんですよ~~~? うちのレオン様なら、おちんこさんがビッキビキになってもおかしくないのです~~~」

「おちんこさんって……。わたくしも殿方のようにいっそ、この身におちんこさんが付いていれば、どれほど良かったと思う時は多々あります。うちの国の騎士団は基本、男所帯なので、形見が狭いのですよ」

 ソフィア=グレイプの言いに、エクレア=シューは色々とあったんだろうなと想像する。軍隊はどうしても、男所帯となりやすい。その中に女性の身で所属すれば、どれほど居心地の悪い空間なのかは想像に難くない。きっと、女性であるゆえに苦労せざるをえないことがあったのだろうと、同情心を抱いてしまうエクレア=シューであった。

「わたくしのことよりも、この船がどこに向かっているかが気になります。船長のルイ=マッケンドー殿を問いただそうと思うのですが、なんならご一緒しますか?」

「それは面白そうなのです~~~。でも、いきなりドンパチを始めるのはやめてくださいね~~~。この船には傷病人が乗っていますので~~~」

「それは向こうの出方次第といったところでしょう」

 ソフィア=グレイプがいたずらな笑みを浮かべつつ、エクレア=シューと談笑する。エクレア=シューは本当に女性にしておくにはもったいないといった印象をソフィア=グレイプから受ける。もし、彼女が男性ならば、間違いなく、街の人気者となる騎士になるのは間違いなかったからだ。

 しかし、談笑はすぐに止まることになる。ソフィア=グレイプがホワイトウルフ号の船長にこちらから合いに行く前に、向こうから船の甲板に上がってきたからだ。ソフィア=グレイプは今までの柔らかな笑顔を称えていた表情を一瞬で曇らせて、苦々しい表情のままにホワイトウルフ号の船長と視線を交わすこととなる。

「んん!? 俺様の顔に何かついてますかい? ソフィア=グレイプ様。何故、そんな敵対に近い強い視線を俺様に飛ばしてきているんですか!?」

「何をとぼけているっ! この船は聖地:エルハレムへを経由するはずだっ! なのに、五大湖の湖岸を沿うように船を走らせているではないかっ!」

「へっ!? そちらこそ、何を言っているですかい!? 湖岸なんてどこにも見えないでしょ? ここは五大湖のど真ん中ですぜ?? 俺様は貴女の上司の言われるままに船を動かしておりますぜ!?」

 ルイ=マッケンドーがしどろもどろになりながら、ソフィア=グレイプに対して必死に弁明する。嘘を言おうものなら、彼女が腰の左側に佩いている長剣ロング・ソードで首を跳ね飛ばされそうであったからだ。しかし、ルイ=マッケンドーが口を開き、その口から言葉を紡ぎ出せば出すほど、眼の前の相手の表情は険しくなっていく。それゆえに、ルイ=マッケンドーはますます、聞いている者には言い訳じみた言葉に近しい声調へとなっていく。

「あくまでもしらばくれるつもりか! しかも、船乗りは陸のニンゲンよりも、眼が良いはずだっ! なのに、ここから南に広がる大地が眼に入らないとでも言いたいのかっ!」

「本当に言っている意味がわかりませんぜっ! 俺様の視力20.0の眼をもってしても、辺り一面、水面と麗しいソフィア=グレイプ殿しか映っていませんぜ!?」

 あくまでも陸など見えないと主張し続けるルイ=マッケンドーに対して、ソフィア=グレイプはギリッ! と強めに歯ぎしりする。船の上では船長が法律だ。その船長を斬りつければ、非常に困ったことになるのは、ソフィア=グレイプ自身である。しかし、それでもこの嘘吐きをどうにかしてやらなければいけないという感情に心が支配されていく。

「あの~~~。ソフィアさん。熱くなるのはわかるのですけど~~~。もしかしたら、ルイ=マッケンドー船長は幻惑術をかけられている可能性があるのです~~~」

「幻惑術!? ルイ=マッケンドー殿はそれにかかっているために。この方の眼には陸地が見えていないと!?」

「はい、そうなのです~~~。ちょっと、待ってください~~~。コッシローちゃん、コッシロー=ネヅちゃん~~~。ワインが進む極上のチーズを船長さんが隠し持っていることがわかりました~~~! コッシローちゃんに黙って、船長さんがその極上のチーズを全て、胃の中に収めてしまおうとしているのです~~~!!」

 エクレア=シューはこれ以上、事態が悪化しないようにと、無い知恵を振り絞って、コッシロー=ネヅをこの場へとすっ飛んでくるような言葉を大声で言ってみせる。エクレア=シューが大声を張り上げるや否や、木製の床をドタドタと小動物が4本足で騒がしく転げるように走って迫ってくる音が甲板の下のフロアから聞こえるのであった。

「チューーー! ほっぺたが蕩け落ちそうなほどに美味しい極上のチーズを船長がひとり占めしようとしている聞いて、飛んできたでッチュウ! 船長をしばいて、すまきにして、湖に放り捨ててやるのでッチュウ!!」

 コッシロー=ネヅが背中に生えている4枚の蝙蝠羽で飛ぶ時間も惜しいと言った感じで、4本足を駆使して、下のフロアから甲板へと上がってくる。そして、甲板上でルイ=マッケンドー船長を視認するや否や、短い後ろの右足で船長の横っ面にジャンプキックをかます。

 船長は不意をつかれたことと、体重5キュログラムくらいのコッシロー=ネヅの渾身のジャンプキックをまともに喰らうことで、グラっと身体を横に倒していってしまう。

「コッシローちゃん、やりすぎなのです~~~。あ~~~あ~~~。船長さんが気絶してしまったのです~~~」

「チュッチュッチュ。食べ物の恨みは、最愛の彼女を寝取られるよりも、罪が深いのでッチュウ。さあ、頬が蕩け落ちるほどに美味い極上のチーズはどこでッチュウ!?」

 コッシロー=ネヅの眼は血走っており、もし、極上のチーズをエクレア=シューが隠し持っているようであれば、すまきにして、五大湖に沈めてやらんという意思をそのカラシ色の瞳に宿らせれていた。その鋭い目力めぢからにエクレア=シューは苦笑せざるをえなかった。

「コッシローちゃん、落ち着いてほしいのです~~~。極上のチーズとは、チーズ臭のするリリベル様のラブジュースのことなのです~~~」

「ちょっと、エクレアっ! 言うにこと欠いて、わたしのラブジュースが腐ったチーズ臭ですって!? 言っていいことと悪いことがあるわよっ!?」
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