【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第20章:東への帰路

第10話:謎の解明

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 エクレア=シューが甲板の下にあるフロアにまで響く大声を張り上げ、コッシロー=ネヅがそのフロアを大音を立てながら、ドタドタと走り回ったことで、何かあったのだろうかと察したリリベル=ユーリィ、クルス=サンティーモ、マリア=アコナイトがコッシロー=ネヅを追いかけて、甲板上に上がってきたのであった。

 そして、エクレア=シューがリリベル=ユーリィを乏しめる発言をしだしたことで、リリベル=ユーリィは怒りの矛先をエクレア=シューに向かって突き付ける。エクレア=シューは混沌としてきた甲板上で、えへへ~~~と……とごまかすような声を出す他無かった。

「なるほど……。そちらの男装の騎士様がこの事態の発端なわけね?」

「はい。ソフィアさんが言うには、ホワイトウルフ号の航路がおかしいって話なのです~~~。それで、船長さんをソフィアさんが斬捨て御免しようとしていたので、コッシローちゃんを急いで呼んだのです~~~」

 エクレア=シューはモンゴリアンチョップを喰らった額のやや上側をすりすりと両手でさすりながら、リリベル=ユーリィに弁明する。リリベル=ユーリィはふぅ……と軽く嘆息しながら、エクレア=シューにモンゴリアンチョップをかましたのはやりすぎたわねと反省するのであった。

「あうあうあう。非常事態だったのはわかりますけどォ。コッシロー様がカンカンなのですゥ」

「フンッ! 僕はルイ=マッケンドーがそこの男装娘に斬られたところで、痛くも痒くも無かったのでッチュウ! エクレア、チーズは別件で僕にお供えするでッチュウ!」

 コッシロー=ネヅはクルス=サンティーモの蒼髪オカッパの頂点に乗り、プンプン激おこであった。どうにも怒りが収まらぬと、胸の前で組んだ前足を崩そうとは決してしなかった。それほどまでに、コッシロー=ネヅはチーズが大好きなのだ。そして、チーズの次に好きなのは天カスである。エクレア=シューはコッシロー=ネヅに陸に上がったら、そのふたつをコッシロー=ネヅの腹が破裂するほどの量を用意するということで、なんとか、コッシロー=ネヅの機嫌を治すことになる。

「チュッチュッチュ。ルイ=マッケンドー船長たちが幻惑術にかけられていて、聖地:エルハレムでは無く、何故か湖岸から離れ過ぎないようにホワイトウルフ号を走らせている。それで僕の理解はあっているのでッチュウね?」

「はい。もしかしたら、わたくしの眼にだけ、陸地が見えている可能性も否定できませんが……」

「そこは安心するでッチュウ。僕の眼でもここから南に陸地がちらちら見えているでッチュウ。しかし、残念ながら、この船からは幻惑術の気配を感じないでッチュウ」

 コッシロー=ネヅは幻惑術の達人だ。レオナルト=ヴィッダーを黄金こがね色のシャワー大好きな便器にし、デーブ=オクボーンを紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンが放つ冷気すら拒む薪ストーブにした張本人である。そのコッシロー=ネヅが幻惑術の類をこの船や船長たちにかけられてないと言う。

 しかし、それでもソフィア=グレイプは食い下がる。それもそうだろう、ソフィア=グレイプはコッシロー=ネヅの幻惑術の腕がどれほどあるかがわかっていなかったからだ。コッシロー=ネヅはやれやれとばかりに前足を軽く身体の左右に広げ、呆れたという所作をしてみせる。

「論は証拠でッチュウ。マリア。お前の右の拳は伝説クラスの武器でッチュウ。一撃でデーブ=オクボーンを悶絶させるほどの威力を発することが出来るのでッチュウ」

 コッシロー=ネヅはからし色の瞳に紫色のオーラを漂わせて、マリア=アコナイトに幻惑術をかけてみせる。マリア=アコナイトの眼から光が失われ、ぶつぶつと、あたいの右のストレートは世界を取れると呟き始める。

 遅ればせながら甲板上へと上がってきたデーブ=オクボーンがマリア=アコナイトの渾身の右ストレートの犠牲になったのは言うまでもない話であった。

「うわあ……。俺っち、ドン引きッス……。マリアちゃん、女の子が暴力に頼るのは良くないッスよ?」

 結局のところ、ホワイトウルフ号の甲板上には、いつものメンバーが勢ぞろいしていた。なかなか下のフロアに戻ってこない4人娘のことを心配して、白銀の獣皇ことシロちゃん、豚ニンゲンオークのような体型をしたデーブ=オクボーン。そして、右腕に前腕固定型杖ロフストランドクラッチを装着したレオナルト=ヴィッダーが甲板上に姿を現したのである。

 そして、デーブ=オクボーンはふくよかすぎる腹をマリア=アコナイトの渾身の右ストレートで抉られたことで、前のめりに甲板へと沈むこととなる。

「すごい……。そちらの華奢な女性の一撃で豚ニンゲンオークが地に伏しました……」

「チュッチュッチュ。これでわかってもらえたと思うでッチュウけど、僕の幻惑術は相手に幻惑を見せるだけでは無いレベルなのでッチュウ。そのレベルの幻惑術を使いこなせる僕が、この船で幻惑術が施されていないと言えば、そうなのだと理解できる話でッチュウね?」

「はい……。しかしながら、ますますわからなくなってきました……。船長はわたくしと言葉を重ねていた感じ、本気で聖地:エルサレムへと向かっていると豪語していました。それが何故なのかがわからなくなってしまいました……」

 ソフィア=グレイプは未だに甲板上で気絶しているルイ=マッケンドーに視線を移す。彼はコッシロー=ネヅの全体重を乗せたジャンプキックを喰らい、昏倒してしまった。彼を起こして、また先ほどのように問答を繰り返せば、コッシロー=ネヅ殿に原因を解明してもらえると思ってしまう。

 しかしながら、コッシロー=ネヅは船長を起こすまでも無いと言い、船長がどうなってしまったのかを言い当てる。

「僕はあくまでも『幻惑術では無い』と言ったまででッチュウ。これは『催眠術』なのでッチュウ」

「催眠……術?? 幻惑術とは何が違うのです??」

 ソフィア=グレイプが眉根をひそめるのも当然であった。どちらも言葉の響きとしては同じであり、ソフィア=グレイプにはそのふたつの違いを明確に分けることが出来ない。しかしながら、コッシロー=ネヅはいつものようにチュッチュッチュと不敵な笑みを口から零し

「幻惑術は高等魔術なのでッチュウ。魔術のイロハを知ったくらいでは、幻惑術は使いこなせないのでッチュウ。しかし、催眠術は違うのでッチュウ。ちょっと魔術の才能を持っている小市民でも、短時間、相手を催眠状態にすることが出来るのでッチュウ」

「引っかかるものがあります……。『短時間』という言葉が、です。船長たちにそれを為している人物が傍らに居るということになります」

「聡い男装娘なのでッチュウ。船長にそれを為せる人物がこのホワイトウルフ号に居るという証左なのでッチュウ。さてと……。そろそろ出てきたらどうでッチュウ? ずる賢いだけの催眠術をその都度、かけ直している器量の小さい騎士団長殿……」
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