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第23章:魔皇
第1話:腹黒い教皇
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――北ラメリア大陸歴1495年4月15日 五大湖中央:聖地:エルサレムにて――
トーマス=ロコモーティブとの死闘を終えたばかりだというのに、レオナルト=ヴィッダーたちは教皇の親衛隊たちに捕縛され、ほぼ半裸のままで教皇の間へと連行される。レオナルト=ヴィッダーたちは怒りに身体全体を震わせている教皇に対して、横柄な態度で相対することなる。
「だから、俺たちは悪くねえっつってんだっ! あっちから喧嘩を吹っ掛けてきたら、教皇様でも低身低頭でいられるのかって聞いてんだっ!」
「何故にマロがそのようなことをせねばならぬっ! マロが頭を下げる相手は創造主:Y.O.N.N様のみぞっ!」
「なら、俺だって、同じようにしてやるってんだよっ!」
売り言葉に買い言葉とはまさにこのことであった。教皇は謝罪を要求している相手が未だにそのような態度に出ず、さらには口答えを繰り返すレオナルト=ヴィッダーにキャンキャンと犬のように吼える。しかしながらレオナルト=ヴィッダーとしてはトーマス=ロコモーティブは明らかに殺意をもってして、レオナルト=ヴィッダーを殺そうとしてきていた。
いくら明けの明星と呼ばれる天使の使いだとしても、トーマス=ロコモーティブに討ち取られる気など毛頭無いレオナルト=ヴィッダーである。教皇は天界の代弁者であるがゆえに、レオナルト=ヴィッダーにこの事態に対しての謝罪を要求している。彼らふたりが折り合うところなど、何一つなかった。
レオナルト=ヴィッダーは両脇に立つ近衛兵ふたりに刺又で抑えつけられて、教皇に対して無理やり土下座をさせられている姿勢となっている。レオナルト=ヴィッダーはそのこと自体が腹立たしい。さらには教皇の隣でほくそ笑んでいるフルチン姿の魔皇がとことん憎たらしくてたまらない。
「魔皇様よっ! あんたもあの場に居たんだろうがっ! 俺たちは身にかかる火の粉を打ち払っただけにすぎないって証言してくれよっ!」
レオナルト=ヴィッダーは立派な背もたれ付きの椅子に座っている教皇から視線を外し、今度は魔皇に噛みつき始める。だが、魔皇はますますニヤニヤと笑い始め、レオナルト=ヴィッダーの頭には血が昇る一方であった。
(こいつは誰にでも噛みつく狂犬である。ほっとけばほっとくほど、面白い展開を生み出してくれるに違いない)
魔皇こと、第六天魔皇・波旬はレオナルト=ヴィッダーが噛みついてくればくるほど、ゾクゾクといった快感が身体の下から上へと駆け上がってくるのを覚える。自分はマゾ属性など持ち合わせていないのは自覚している。このはねっ返りをどのようにいたぶってやろうという、まさにサド属性の血が騒いでしまって仕方がない。
「我は教皇と一心同体也。教皇がレオナルト=ヴィッダー。お前に謝罪を要求するのであれば、我も教皇と同意見を持たねばならぬ」
「くっそっ! あんたが明けの明星とやらに、あからさまに喧嘩を売ってたのをこの眼で見てたんだぞっ! それで俺だけ謝るのは筋が通らねえだろっ!」
「知らん。あいつが我を見て、久方ぶりの再会を喜んでいただけであろう。それだけで我が咎められる理由など、どこにあるのだ?」
この魔皇の言葉に堪忍袋の緒が切れたレオナルト=ヴィッダーは、ついに自分の身体を抑えつけている刺又を両腕でへし折ることとなる。そして、身体に自由が戻るや否や、散々挑発し続ける魔皇に向かって、犬のように4本足で駆けだす。
「ソフィア、そこをどけっ!!」
「ダメです、レオナルト殿っ! ここはどうか抑えてくださいっ!」
魔皇の前に立ちふさがる恰好となったのがソフィア=グレイプであった。彼女だけは聖騎士らしい恰好へと着替えさせられていた。パンツ一丁のレオナルト=ヴィッダーでは、フルチン姿の魔皇を組み伏せることは出来ても、聖騎士装備のソフィア=グレイプをどうにか出来る力を持ち合わせていなかった。
レオナルト=ヴィッダーは4本足で吼える犬のような恰好のまま、動けずじまいとなってしまう。ソフィア=グレイプを相手にどうこうしてやろうとは一切思っていない。それゆえにレオナルト=ヴィッダーはそこから一歩も動けず、新しい刺又を持ってきた近衛兵たちに取り押さえられ、またしても無理やり土下座をさせられる恰好となる。
そんなレオナルト=ヴィッダーから視線を外したソフィア=グレイプはうやうやしく騎士の礼を教皇相手にする。獣のように這いつくばるレオナルト=ヴィッダーに少しばかり満足した教皇は、背もたれ付きの椅子にどっかりと背中を預け、ふぅ……と一呼吸入れることとなる。
「女子供にまで手をあげぬレオナルト=ヴィッダーには感心するばかりである。マロもいささか、喧嘩腰すぎた。ここは誤解を解こうではないか?」
「誤解? 誤解っていう言い回しが胡散臭えっ! 俺はてめえと折り合う気なぞ、これっぽっちもねえぞっ!」
レオナルト=ヴィッダーがそう吼えるや否や、両脇に立つ近衛兵が刺又に体重をかける。それによりレオナルト=ヴィッダーは潰れたカエルの如くにグェッ! っと口から漏らしてしまう。
「そう粋がるでない。吼える犬ほど弱くみえるぞよ。マロは明けの明星様がこの地に降臨したというのに、追い返す形となってしまったことを憂いておる。それゆえ、その原因となったレオナルト=ヴィッダー、貴様から詫びの言葉のひとつでももらえると、こちらとしても安心感を得られるのだ。そこはわかってくれたまえ?」
「わっかんねえよっ! コッシローから聞いてた感じ、あんたは魔皇とタッグを組んでいるんだろ!? だったら、その時点で天界に喧嘩を売っているのと同義じゃねえかよっ!」
「ほっほっほ。マロは教皇ゆえに、天界もお目こぼしをしてくれているのだ。お前とマロでは根本的に立ち位置が違うのだよ。下賤の身のお前と、高貴なるマロとでは、そもそもが違うのだ」
尊大な態度を取り続ける教皇に対して、レオナルト=ヴィッダーはペッ! と血が混じった鍔を横に向かって吐きつける。レオナルト=ヴィッダーもこの時になって、ようやく教皇が自分に執拗に謝罪させようとしているのかがわかってきた。
「ああ、あんたは相当な狸ってのがわかったよ。天界に対しても、魔皇に対しても良い顔をしたいわけだな!?」
「ほっほっほ。そんなに褒められると照れてしまう」
「褒めてねえよっ! 力いっぱい皮肉ってんだよっ!」
「レオナルト殿……。心中お察ししますが、どうか堪えてください。教皇様と謁見できるだけでも僥倖と思うべきなのです、本来ならば」
ソフィア=グレイプはなんとなくであるが、教皇が考えていることを察していた。教皇は教皇で何かいかがわしいことを考えており、本来ならば、牢獄に放り込めば済むはずのレオナルト=ヴィッダーたちをわざわざ謁見の間に連れてきたのだと。そして、ソフィア=グレイプの予感通り、教皇は次の言葉を口から紡ぎ出す。
トーマス=ロコモーティブとの死闘を終えたばかりだというのに、レオナルト=ヴィッダーたちは教皇の親衛隊たちに捕縛され、ほぼ半裸のままで教皇の間へと連行される。レオナルト=ヴィッダーたちは怒りに身体全体を震わせている教皇に対して、横柄な態度で相対することなる。
「だから、俺たちは悪くねえっつってんだっ! あっちから喧嘩を吹っ掛けてきたら、教皇様でも低身低頭でいられるのかって聞いてんだっ!」
「何故にマロがそのようなことをせねばならぬっ! マロが頭を下げる相手は創造主:Y.O.N.N様のみぞっ!」
「なら、俺だって、同じようにしてやるってんだよっ!」
売り言葉に買い言葉とはまさにこのことであった。教皇は謝罪を要求している相手が未だにそのような態度に出ず、さらには口答えを繰り返すレオナルト=ヴィッダーにキャンキャンと犬のように吼える。しかしながらレオナルト=ヴィッダーとしてはトーマス=ロコモーティブは明らかに殺意をもってして、レオナルト=ヴィッダーを殺そうとしてきていた。
いくら明けの明星と呼ばれる天使の使いだとしても、トーマス=ロコモーティブに討ち取られる気など毛頭無いレオナルト=ヴィッダーである。教皇は天界の代弁者であるがゆえに、レオナルト=ヴィッダーにこの事態に対しての謝罪を要求している。彼らふたりが折り合うところなど、何一つなかった。
レオナルト=ヴィッダーは両脇に立つ近衛兵ふたりに刺又で抑えつけられて、教皇に対して無理やり土下座をさせられている姿勢となっている。レオナルト=ヴィッダーはそのこと自体が腹立たしい。さらには教皇の隣でほくそ笑んでいるフルチン姿の魔皇がとことん憎たらしくてたまらない。
「魔皇様よっ! あんたもあの場に居たんだろうがっ! 俺たちは身にかかる火の粉を打ち払っただけにすぎないって証言してくれよっ!」
レオナルト=ヴィッダーは立派な背もたれ付きの椅子に座っている教皇から視線を外し、今度は魔皇に噛みつき始める。だが、魔皇はますますニヤニヤと笑い始め、レオナルト=ヴィッダーの頭には血が昇る一方であった。
(こいつは誰にでも噛みつく狂犬である。ほっとけばほっとくほど、面白い展開を生み出してくれるに違いない)
魔皇こと、第六天魔皇・波旬はレオナルト=ヴィッダーが噛みついてくればくるほど、ゾクゾクといった快感が身体の下から上へと駆け上がってくるのを覚える。自分はマゾ属性など持ち合わせていないのは自覚している。このはねっ返りをどのようにいたぶってやろうという、まさにサド属性の血が騒いでしまって仕方がない。
「我は教皇と一心同体也。教皇がレオナルト=ヴィッダー。お前に謝罪を要求するのであれば、我も教皇と同意見を持たねばならぬ」
「くっそっ! あんたが明けの明星とやらに、あからさまに喧嘩を売ってたのをこの眼で見てたんだぞっ! それで俺だけ謝るのは筋が通らねえだろっ!」
「知らん。あいつが我を見て、久方ぶりの再会を喜んでいただけであろう。それだけで我が咎められる理由など、どこにあるのだ?」
この魔皇の言葉に堪忍袋の緒が切れたレオナルト=ヴィッダーは、ついに自分の身体を抑えつけている刺又を両腕でへし折ることとなる。そして、身体に自由が戻るや否や、散々挑発し続ける魔皇に向かって、犬のように4本足で駆けだす。
「ソフィア、そこをどけっ!!」
「ダメです、レオナルト殿っ! ここはどうか抑えてくださいっ!」
魔皇の前に立ちふさがる恰好となったのがソフィア=グレイプであった。彼女だけは聖騎士らしい恰好へと着替えさせられていた。パンツ一丁のレオナルト=ヴィッダーでは、フルチン姿の魔皇を組み伏せることは出来ても、聖騎士装備のソフィア=グレイプをどうにか出来る力を持ち合わせていなかった。
レオナルト=ヴィッダーは4本足で吼える犬のような恰好のまま、動けずじまいとなってしまう。ソフィア=グレイプを相手にどうこうしてやろうとは一切思っていない。それゆえにレオナルト=ヴィッダーはそこから一歩も動けず、新しい刺又を持ってきた近衛兵たちに取り押さえられ、またしても無理やり土下座をさせられる恰好となる。
そんなレオナルト=ヴィッダーから視線を外したソフィア=グレイプはうやうやしく騎士の礼を教皇相手にする。獣のように這いつくばるレオナルト=ヴィッダーに少しばかり満足した教皇は、背もたれ付きの椅子にどっかりと背中を預け、ふぅ……と一呼吸入れることとなる。
「女子供にまで手をあげぬレオナルト=ヴィッダーには感心するばかりである。マロもいささか、喧嘩腰すぎた。ここは誤解を解こうではないか?」
「誤解? 誤解っていう言い回しが胡散臭えっ! 俺はてめえと折り合う気なぞ、これっぽっちもねえぞっ!」
レオナルト=ヴィッダーがそう吼えるや否や、両脇に立つ近衛兵が刺又に体重をかける。それによりレオナルト=ヴィッダーは潰れたカエルの如くにグェッ! っと口から漏らしてしまう。
「そう粋がるでない。吼える犬ほど弱くみえるぞよ。マロは明けの明星様がこの地に降臨したというのに、追い返す形となってしまったことを憂いておる。それゆえ、その原因となったレオナルト=ヴィッダー、貴様から詫びの言葉のひとつでももらえると、こちらとしても安心感を得られるのだ。そこはわかってくれたまえ?」
「わっかんねえよっ! コッシローから聞いてた感じ、あんたは魔皇とタッグを組んでいるんだろ!? だったら、その時点で天界に喧嘩を売っているのと同義じゃねえかよっ!」
「ほっほっほ。マロは教皇ゆえに、天界もお目こぼしをしてくれているのだ。お前とマロでは根本的に立ち位置が違うのだよ。下賤の身のお前と、高貴なるマロとでは、そもそもが違うのだ」
尊大な態度を取り続ける教皇に対して、レオナルト=ヴィッダーはペッ! と血が混じった鍔を横に向かって吐きつける。レオナルト=ヴィッダーもこの時になって、ようやく教皇が自分に執拗に謝罪させようとしているのかがわかってきた。
「ああ、あんたは相当な狸ってのがわかったよ。天界に対しても、魔皇に対しても良い顔をしたいわけだな!?」
「ほっほっほ。そんなに褒められると照れてしまう」
「褒めてねえよっ! 力いっぱい皮肉ってんだよっ!」
「レオナルト殿……。心中お察ししますが、どうか堪えてください。教皇様と謁見できるだけでも僥倖と思うべきなのです、本来ならば」
ソフィア=グレイプはなんとなくであるが、教皇が考えていることを察していた。教皇は教皇で何かいかがわしいことを考えており、本来ならば、牢獄に放り込めば済むはずのレオナルト=ヴィッダーたちをわざわざ謁見の間に連れてきたのだと。そして、ソフィア=グレイプの予感通り、教皇は次の言葉を口から紡ぎ出す。
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