【R18】俺は悪くねえ! ~愛しのお姫様が女騎士に変化しているのを知らずに後ろの穴を穿ってしまいました~

ももちく

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第25章:七人の天使

第10話:並び立つ馬鹿

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「俺、何を慌てふためいていたんだ!? 馬鹿みたいじゃねえかっ!」

「そうっスね。さすがは北ラメリアで1、2番を競うほどの馬鹿っス」

「ちなみに俺と張り合っている馬鹿って誰なんだ?」

 レオナルト=ヴィッダーは前から疑問だったことを、魔皇、白銀の獣皇、そしてコッシロー=ネヅに尋ねることになる。魔皇たちは顔を見合わせ、言っても良いのか? とヒソヒソと話し合う。レオナルト=ヴィッダーは言いづらそうにしている面々に首級くびを傾げずにはいられなくなる。

「もしかして、豚ニンゲンオークとか小鬼ゴブリンあたりなのか?」

「いや……。一応、ヒトの範囲に入っているぞ。そいつは。しかし……。なんとも言い難いのである」

「そうッスねえ。もうひとりの方は『馬鹿と天才は紙一重』って言葉が似あうッスから」

「ちなみにレオンは『ただの馬鹿』でッチュウ」

 レオナルト=ヴィッダーは膝から崩れ落ち、ぐあああ!? と頭を抱えながら、木製の床の上でぐねぐねと気持ち悪くのたうち回る。自分と同列に馬鹿と称されるおとこならば、『ただの馬鹿』であることを願っていたからだ。

「レオ、落ち着きなさいよ。レオはヒトとして認識されているのよ」

「『馬鹿と天才は紙一重』って言葉が当てはまるってことは、そのひとは言い換えれば『狂人』ってことなのです~~~。レオン様は至って『ヒトの良すぎる馬鹿』なのです~~~」

「お前らってやつは……。俺をけなしてんのか褒めてるのか、わかんねえよっ! でも、俺はまだまともな『ただの馬鹿』って言ってくれるだけで、心がほんわかするぜっ!」

 レオナルト=ヴィッダーは自分を慰めてくれている? リリベル=ユーリィとエクレア=シューの存在に、ありがたみを感じてしまう。レオナルト=ヴィッダーは自分は馬鹿だという自覚がある。だが、そんな自分に寄り沿ってくれるリリベル=ユーリィたちに、涙が零れそうになってしまうレオナルト=ヴィッダーである。

「レオン様がまだヒトの領域テリトリーを逸脱していないレベルの馬鹿で収まっているってところがおおいに引っかかりますニャン」

「そう……ですねェ。レオン様が北ラメリア大陸で1番の馬鹿になるのはかなり難しいって話になりますよォ?」

「チュッチュッチュ。マリアとクルスはなかなかに聡いッチュウ。レオンはまだぎりぎり、ヒト科ヒト類でッチュウけど、あいつは片足を魔界の領域テリトリーに踏み込んでいるッチュウ」

 コッシロー=ネヅの言いに眉根をひそめてしまうクルス=サンティーモとマリア=アコナイトであった。『狂人』と称されるような人物の名を聞きたい気持ちがどんどんと膨らむのはしょうがない話であった。魔皇、白銀の獣皇、蝙蝠羽付きのネズミは、う~~~んと唸り、ここまで話をしておいて、はぐらかすのもどうかと思い、ついにその人物の名を告げることになる。

「え!? 俺がそのひとと名前を連ねらるって、すごいことじゃねえのか!?」

「そう……ね。意外な人物と言えば、意外な気がする」

「世間知らずのあたしでも知っている名が出てきて驚きなのです~~~!」

 レオナルト=ヴィッダーたちはレオナルト=ヴィッダーと並び立つ北ラメリア大陸を代表する馬鹿の名前を聞き、否応なく盛り上がることになる。しかしながら、沸き立つ皆を差し置いて、一言物申すのがソフィア=グレイプであった。

「あの方はかなりまともな人物評ばかりなのですが……。本当にあの方がレオナルト殿に匹敵する馬鹿なのですか? わたくしには想像がつかないのですわ」

「チュッチュッチュ。ソフィアがそう思うのも仕方無いかもしれないッチュウ。どこぞの馬の骨のレオナルトとは違って、向こうは随分な肩書を持っているッチュウからねぇ」

 魔皇たちがレオナルト=ヴィッダーに告げた名前とは『シャライ=アレクサンダー』であった。そう。彼の名は北ラメリア大陸に住むニンゲンなら、誰しもが知っている超大物であったからだ。彼は北ラメリア大陸の北半分を支配しているバルト帝国の現みかどである。

 そんな人物がレオナルト=ヴィッダーとどうすれば、北ラメリア大陸の1、2番を争うほどの馬鹿だと称されるのかが、まったくわからないソフィア=グレイプである。疑問で頭がいっぱいになってしまっているソフィア=グレイプに対して、コッシロー=ネヅは、あいつがどれほどの馬鹿なのかと説明をしはじめる。

「馬鹿すぎて、現竜皇の寵愛を一身に集めているんでッチュウ。紅玉眼の蒼き竜ルビーアイズ・ブルードラゴンは、現みかどのシャライ=アレクサンダーが大嫌いなんでッチュウ。しかし、ことあるごとに現竜皇のサンダーラ―がシャライ=アレクサンダーを庇っているのでッチュウ」

「眼の上のたんこぶとはまさにこのことよ。馬鹿を国のトップに据えるは、国の一大事になるのである。しかしながら、馬鹿が国のトップに据えられることは歴史上、多々あることである」

「そうっスねえ。でも、その馬鹿が暴走しないようにお目付け役ってのは、どこの国にも居るッスワン。ウィーゼ王国は海皇:ポセイトス=アドンが監督し、ミシガン王国は白銀の獣皇たる俺っちがその役割を担っているッス」

 世の中には『出来の悪い子ほど可愛い』という言葉がある。その言葉を忠実に再現してしまっているのが、バルト帝国であった。レオナルト=ヴィッダーと並び立つ馬鹿なニンゲンの話を発端として、レオナルト=ヴィッダーたちは、高い視点から北ラメリア大陸の情勢を知ることになる。

 レオナルト=ヴィッダーたちはほうほうへ~~~ふ~~~んと魔皇たちの話に興味津々の表情を顔に浮かべて、話に聞き入っていた。今、ルイ=マッケンドー船長が治療中のために、ホワイトウルフ号は五大湖の沿岸近くで停泊するしかなく、バージニア王国の本土へ足を踏み入れることも出来ない。

 このどうしようも動けない状況下、各々の傷を癒す目的も含めて、時間を潰すためにも、レオナルト=ヴィッダーたちは、魔皇たちによる北ラメリア大陸の情勢講座を受けることになる。

「へ~~~。おいらたちは、もしかして、歴史の生き証人になれるんじゃのねえのか?」

「生き証人どころか、大絶賛、巻き込まれ中でッチュウけどね。デーブはあからさまにわき役ポジションでッチュウけど、どこかで英雄に等しい働きを発揮するかもしれないのでッチュウ」

 コッシロー=ネヅがルイ=マッケンドー船長が大事に取っておいた年代物のワインを楽しみながら、軽口を叩いてみせる。デーブ=オクボーンもまんざらでもないといった感じで、コッシロー=ネヅにもっとすごい幻惑術をおいらにかけてくれよと頼みこんでいる。

 皆はコッシロー=ネヅによるデーブ=オクボーンの扱いが割とぞんざいであることを知っている。クルス=サンティーモやマリア=アコナイトのような、自衛力すら怪しいふたりを護ってくれるデーブ=オクボーンの存在はレオナルト=ヴィッダーや、リリベル=ユーリィ、そしてエクレア=シューにとって、かけがえのない存在である。

 しかし、それを差し置いても、コッシロー=ネヅは良いようにデーブ=オクボーンを扱っている。

(デーブ。お前に陽が当たる日がくると良いな……)

(デーブ。いつもクルスとマリアを護ってくれてありがとうね。でも、多分、今のままの扱いだと思う)

(デーブさんは心優しい力持ちの豚ニンゲンオークポジションですから~~~。それについ甘えちゃう、あたしたちも悪い気がするのです~~~)
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